ハリウッドなう by Meg
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ハリウッドを拠点に活動するテレビ評論家。Television Critics Association (TCA)会員として年2回開催される新番組内覧会に参加する唯一の日本人。Academy of Television Arts & Sciences (ATAS)会員でもある。アメリカ在住20余年。

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ハリウッドなう by Meg

米国テレビ業界の過去、現在、未来

クリスマスが終わって、今年も残り少なくなりました。今秋の新作は中休みの真っ最中で、来年早々まで後半は再開されません。新年1月5日から恒例の冬のTCAプレスツアーが始まります。地上波局、ケーブル局とも、春の新番組を紹介し、同時に1月以降再開される2016~17年期新番組の後半と継続番組についてもパネルインタビューが予定されています。

2017年冬のTCAプレスツアーの予定
1月5日  DirecTV
1月6日 セット訪問
1月7日 Hulu
1月8日 The CW
1月9日 CBS/Showtime
1月10日 Disney/ABC
1月11日 Fox
1月12日 FX
1月13日 ケーブル局
1月14日 ケーブル局
1月15日 PBS
1月16日 PBS
1月17日 NBCユニバーサル
1月18日 NBC


11月初旬、先ずNetflixが冬のプレスツアー不参加を発表しました。理由は色々と憶測されていますが、2013年初参加以降、Netflixが世界制覇しようと焦る余り、番宣費用を浅く広くばら撒き過ぎた結果ではないか?と思います。テレビ業界に殴り込みを掛けたものの、オリジナル作品以外は、地上波やケーブル局から購入したものをストリーミング配信している訳ですから、配給元を脅かせば、それなりの報復は免れません。旧体制への挑戦とは言うものの、旧体制としては黙って崩壊するのを見ている手はありません。ここ1年程、地上波局もケーブルもそれなりに対策を講じてきました。Netflixは自ら築き上げた新体制の中で、生き残れるのか?的記事がそろそろ出回り始めています。


来春、シーズン3で完了すると発表された「ブラッドライン」のパネルインタビューに参加できないことだけが心残りです。プレミアは毎年NYで開催され、大手紙媒体のみを対象に番宣をかけるNetflixですから、シーズン3は取材は疎か情報入手さえ更に困難になることが予想されます。


又、今月初旬には地上波局(ABC、CBS、Fox、NBC)がお偉方のインタビューを、夏のプレスツアー時のみに実施すると発表しました。つまり、来る1月にはABC、CBS、NBC3局の方向付けは聞くことができないと言うことです。Foxは、後日評論家から要望のメールが舞い込んだので、何とかスケジュールを調整して実施すると知らせてきました。CWとFox以外は、質問があればプレスツアーでお偉方を探し当てろと言うことです。


ストリーミング配信会社にも、地上波局にも見切りを付けられたTCAプレスツアーは、そろそろ古代の遺物として、葬り去られようとしているような気がします。TCAの存在自体が危ぶまれて10年余り、2017年夏にはもう開催されないかもしれません。プレスツアーがなくなってしまうと、どこでどうやって情報入手したら良いのでしょうか?お先真っ暗!!


ここ2週間、春の新番組のパイロットを視聴するように、各局からDVDが届いたり、オンライン視聴のパスワードが送られてきます。まだ、全て観た訳ではありませんが、HBOの「The Young Pope」は、「ボルジャ家 愛と欲望の教皇一族」の現代版と言っても良い、宗教団体の内幕暴露シリーズです。信者でもないのに、ローマ・カトリック教会傘下のミッションスクールに押し込まれ、苦難の12年を過ごした私は、権力の濫用や不条理な慣習などを指摘して憂さ晴らしできるので、内幕暴露シリーズは大歓迎です。


Official Trailer: The Young Pope (HBO)


又、同局の「Big Little Lies」は、ニコール・キッドマン、リース・ウィザースプーン、ローラ・ダーン、シェイリーン・ウッドリー等、有名な女優が出ている割には、「デスパレートな妻たち」の超高級版で、こんな海辺の豪邸に住んでいて何の文句があるの?と腹が立ちます。(笑)尊敬するデビッド・E・ケリーの手になる限定シリーズだとは、資料を読むまで気が付きませんでした。作風がすっかり変わってしまったのか、最後まで観ると趣旨が明確になるのか....


Big Little Lies: Official Trailer (HBO)


更新された番組としては、「Billions」と「ホームランド」に敵う作品はありません。「Billions」については、本年3月7日「現在進行中の新作」及び5月18日「女性キャラの台頭が目覚しい『Billions』に参加」で再三述べましたが、ヘッジファンドで巨万の富を築いたボビー・アクセルロッド(ダミアン・ルイス)対NY検事局のチャック・ローズ検事(ポール・ジアマッティ)の一騎打ちを描くシリーズです。シーズン2は、訴訟に持ち込めなかったチャックが二度と立ち直れないよう、ヘッジファンド界の競合会社と共謀、益々凶悪化して行くボビーを描きます。チャックとボビーの間を巧みに泳いで大金を手にしたウェンディ・ローズ(マギー・シフ)は、期待外れも良いところです。もっと、大それたことをしていて欲しかったのに....パフォーマンス・コーチの醍醐味が忘れられないのか?ヘッジファンド界の引っ張りだこの座を維持したいのかも知れません。


Billions | Season 2 Tease | SHOWTIME


「ホームランド」シーズン6はキャリー(クレア・デインズ)の故郷NYを舞台に、インターネットでテロ教育を受けた、今最も恐れられている「国産テロリスト」にどう対処するかが描かれます。テロリストは、最早遠方の脅威でも、他人事でもありません。米国本土で、密かに培われている現実を直視する時が来たのです。


Homeland Season 6 (2017) | Official Trailer | Claire Danes & Mandy Patinkin SHOWTIME Series


物騒な話で終わるのは何なので、12月4日から再開された「The Royals」シーズン3のトレーラーをご覧ください。2015年3月11日「スキャンダル満載!英国王室一族を描く『The Royals』」でご紹介したE!局初のオリジナル作品です。シーズン2は、サイモン国王(ヴィンセント・レーガン)が暗殺され、犯人の捜査と、国王の弟サイラス(ジェイク・モスコール)の暴君振りを描きました。シーズン3は、死んだ筈の長男ロバート(マックス・ブラウン)の奇跡的帰還と、国王の座に就く覚悟を固めた次男リアム(ウィリアム・モーズリー)との対決になりそうです。


The Royals “Are Crazy in Love” (Season 3 Promo # 3)


15年5月26日の「気になる英国人俳優達」でご紹介したトム・オースティンが演じるジャスパーは、シーズン2ではエレノア王女(アレクザンドラ・パーク)に取り入ろうと必死になればなるほど、足蹴にされる弱い立場でした。漸く、エレノア王女とよりを戻したジャスパーの活躍が期待されるシーズン3です。更に、王妃ヘレナ(エリザベス・ハーリー)の秘書のようにこき使われるスペンサー役に登板したジュールス・ナイトも、十二分に目の保養になります。番組の中では、歌唱力を披露できるのでしょうか?


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ポップグループ「ブレイク」の一員歌手から、俳優に転身。王妃ヘレナにこき使われるスペンサーとして登板したジュールス・ナイト。英国から次々と登場する期待のニューフェイスの一人だ。WENN.com

ペテン師と殺し屋の丁々発止のやり取りが面白い「Good Behavior」

去る2月1日「16年冬のプレスツアーで読み取った今春の傾向」で分析しましたが、テレビ業界は今正にアンチヒロインの時代と言えます。今回ご紹介するミシェル・ドッカリーの「Good Behavior」は、今春の傾向の5)暗~~いドラマで触れたTNT局のカラー激変!と、6)アンチヒロインの続出を実証する作品だと思っていたのですが、意外にも....


今年6~8月に放送されたTNTが局のカラーを変えようと持ち出した「Animal Kingdom」の極悪非道のアンチヒロイン、スマーフ(エレン・バーキン)とは月とスッポンです。パイロットからレティ(ドッカリー)の心痛と原因は明らかで、どん底から這い上がろうと必死に努力するにも関わらず、もうちょっと!と言う所で元の木阿弥になる、大いに共感できるキャラです。因みに、2016年現在、同情の余地ゼロ、最悪のアンチヒロインは、息子達を凶悪犯罪者に育てあげるスマーフと、法学部の生徒達を手下に悪事を働く「殺人を無罪にする方法」のアナリース(ヴィオラ・デイビス)です。何もかも曝け出せば良いと言うものではなく、ここまでワルだと観る気もしません。


「Good Behavior」は、ブレーク・クラウチの同名のテレノベラの主人公レティ・ドベッシュの危なっかしい生き様をテレビシリーズ化したものです。「シーズン1は、レティと殺し屋の複雑怪奇なラブストーリーを10話で描く」と、本作クリエイターのチャッド・ホッジが7月31日の制作発表の席で述べました。



出所したばかりのペテン師レティ・レインズ(ドッカリー)は就職して居を構え、10歳の息子ジェイコブ(ナイルス・ジュリアン・スティール)と生きていけば、心にポッカリ空いた穴を埋められると確信しています。しかし、母エステル(ルシア・ストラス)に親権を奪われ、実家に近づくこともできません。ジェイコブを引き取る為、マトモな人間になろうと努力はしますが、どうも辛抱が足りません。退屈極まりない普通の生活は性に合わず、スリルを求めてアルコールや薬物に走ります。更生を指導する保護司クリスチャン(テリー・キニー)もアルコール依存で教授職を失っただけに、同情の余り、レティの度重なる違反を見逃しては、上司に目を付けられ、針の筵に座る思いを味わいます。


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エステル(ルシア・ストラス)は、15歳でレティを生んだため、青春を謳歌できずに中年になった。結婚依存症(?)で、7回離婚したタフな女だが、好き勝手して生きているレティに嫉妬。歳が近いこともあって、エステルは娘を競争相手と見なしており、ジェイコブの親権を剥奪して優越感を満喫する。WENN.com


アルコールや薬物を避けようと、レティはカツラやブランド品で変装し、持ち前の美貌と色香で、高級ホテルの客室に忍び込み空き巣を働いたり、宝飾店で万引きしてスリルを味わいます。ホテルの一室で耳にした殺し屋と依頼者との会話から、身の程知らずの人命救助に乗り出したレティは、更生の道を踏み外すどころか、とんでもない方向に脱線していきます。


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タカビーのメアリーから180度転換、お先真っ暗レティを好演するドッカリー。「アメリカ人の役なので、故郷の人との会話を避けて、米語にどっぷり。演技中は、発音にまで気を使う余裕がないから」と告白。WENN.com


12月13日までに6話観ましたが、早く続きが観たい!と思わせる楽しいドラマです。TNT局の発表とは裏腹に、主人公レティは暗~~いキャラではなく、強がりかも知れませんが、思った事をそのまま口に出す、あっけらかんとした性格です。高飛車メアリーとは雲泥の差ですが、メアリーは貴族の後ろ盾があるので、強がる必要はないのでしょう。ハヴィエル(フアン・ディエゴ・ボット)の存在や殺し屋と言う職業柄、当然暗い場面もありますが、クリエイター(ホッジ)が意とするのは、「レティが何をどう感じているかを視聴者に見せること」です。お先真っ暗レティの目に写るのは、心中とは裏腹なキラキラ輝く極彩色の美しい世界なのです。


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善人を自負する(?)殺し屋ハヴィエル役のボット。自尊心が低いため、レティを救うことで、自己有用感を高めるメサイアコンプレックスがある。レティ自身が更生しようと一大決心しない限り、ハヴィエルのコンプレックスは、悪事や悪癖を助長するのみに終わるのでは?WENN.com


ハヴィエルもレティも一匹狼で、ジプシーのような流浪の民、世間の爪弾きであることが共通項です。回転の速さと機知で窮地を逸してきただけに、悪知恵と切返しの女王のタイトルがふさわしいレティ。一方、’善人’だと主張するハヴィエルは無口で四角四面。ホッジはそんな二人のラブストーリーだと言いますが、同じ穴の狢はお互いの悪癖や悪事を可能にしているだけで、二人で助け合ってマトモな人間になるなど、不可能ではないでしょうか?今後どのような展開を遂げるかは不明なので、今シーズンは、マトモな人間になるとは、具体的にどういう意味かを探る旅に出たレティとハヴィエルの丁々発止の渡り合いを楽しむことにします。


保護司クリスチャン以下、レティを捻じ伏せようとする人間を、煙に巻くのも特技です。しかし、煙に巻くのは、当座の逃避手段で、問題の解決にはなりません。もっとも本人は、自尊心の欠如から、「ふりをする」のが大好きで、アルコールも薬物も取り上げられた今、現実逃避の手段として「誰かに成り済まして、口八丁手八丁で盗みを働く瞬間がハイ!」とクリスチャンに告白しています。レティがクリスチャンに破天荒な現実逃避を伝授する第5話、「Beautiful Things Deserve Beautiful Things」は見応えがあります。


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クリスチャン(キニー)は、レティの保護司。依存症を断ち切るのが如何に困難かを知っているだけに、レティだけでも夢を叶えて欲しいと応援する。知的な会話ができる上、クリスチャンを遣り込める回転の速さと自由気ままな生き方に一目置いているからだ。WENN.com


「ふりをする」「誰かに成り済ます」のがハイなら、美貌も頭脳も揃っているレティですから、女優を目指すべきだと思うのは私だけでしょうか?

サラ・ジェシカ・パーカーのテレビ復帰作「Divorce」は離婚の機微をリアルに描くコメディー

「セックス・アンド・ザ・シティー」(「SATC」)の放送が終了して12年。映画「SATC」では、サラ・ジェシカ・パーカーがオリジナル・キャストと集合することは何度かありましたが、パーカーが古巣HBO及びシリーズへ復帰したのが、10月9日から放送されている「Divorce/ディボース」です。HBOはプレミアチャンネルのため、我が家では視聴できませんが、例年の如く感謝祭の週末(11月24日~27日までの4連休)はプレミアチャンネルも無料視聴できたので、早速本作をチェックしました。

Showtime局の「アフェア~情事の行方」に対抗するようなタイトルでHBOが制作した「Divorce/ディボース」は、離婚の機微をリアルに描く30分のコメディーです。とは言え、離婚と言う名の人生最大の危機を描く訳ですから、どんより曇った冬空のように、重~くのしかかって来ることは否めませんが、それなりに笑えるシーンも其処此処に盛り込まれています。もっとも、離婚過程真っ最中では、泣き笑いになること間違いなしです。


現在、米国での離婚率は49%と言われているので、視聴者の半分は私的体験のレンズを通して本作を観ているものと思われます。私も離婚と言う岐路に立たされ、第二の人生を切り開きましたが、長年かけて築き上げた結婚を破壊することが、如何に狂気の沙汰で、どれほどの労力を要するかを身を以て体験しました。本作が、哀しくも可笑しくもある狂気の沙汰を余りにも巧みに描いているので、クリエイターのシャロン・ホーガンは離婚体験者に違いない!と思ったのですが....


今夏開催された制作発表のパネルインタビュー記録を読み返してみた所、ホーガンは「他の作品では、自分の体験を基に書いていますが、残念ながら(?)離婚体験はありません。友達に離婚の現実を事細かに聞いて、心の痛みがどのような形で姿を現わすかを描写するよう心掛けました。」と告白しています。確かに、ホーガンの「Catastrophe」(Amazon)も、現実を直視する正直な作品ですし、離婚体験者からネタを引き出すのはいとも簡単なことです。故に、「そう、そう、そうなのよ!」「あー、そんな事があったな~」と共感できる場面が満載です。一旦、離婚列車のレールに乗ってしまうと、誰もが同じような体験をするものなんだ!と過去のお浚いをするような気持ちで私は十分に堪能しました。一方、上級プロデューサー/主演を務めるパーカーは「結婚とはそもそも何なのか?を描きたくて、結婚の終止符である離婚を選んだ」と説明しました。


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夫ロバート(トーマス・ヘイデン・チャーチ)のする事なす事に苛立つ妻フランシス(サラ・ジェシカ・パーカー)だが、フランシスとて決して良妻賢母ではない。「Divorce/ディボース」は、男と女の立場が逆転した21世紀米国の離婚を描く故、フランシスに’鼻持ちならぬ女’のレベルを貼る女性視聴者が多い。 Craig Blankenhorn/Courtesy of HBO


結婚して15年余り、一男一女を育てる中年夫婦が倦怠期を迎え、ある出来事をきっかけに、離婚の道を歩み始めます。夫の浮気で結婚が破綻し離婚に至る従来の筋書きではなく、一家の大黒柱も、不倫に走るのも妻フランシス(パーカー)で、夫ロバート(トーマス・ヘイデン・チャーチ)は、自由業の育メンと言う21世紀の設定になっています。所謂「慰謝料」や生活基準維持は稼ぎ手の妻に課せられるのが女性上位の離婚は、シーズン1後半で、喉から手が出るほどの仕事を諦めざるを得なかったフランシスで具現されます。ロバートに給料の半分を持っていかれることは阻止したものの、夢の仕事を諦めたフランシスの喪失は、夫を失う以上に大きいと私は思います。夢の仕事なんて、そこいらに転がっていませんよ。


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左から長女ライラ(スターリング・ジェリンズ)、フランシス(パーカー)、長男トム(チャーリー・キルゴア)は通学バスの停留所に向かう。二人とも親離れが始まっており、両親の不穏な空気は見て見ぬ振りをしているが、一旦離婚を知らされるとさらりと流す冷めた現代っ子だ。 Macall B. Polay/Courtesy of HBO


米国では、親の死以上に、離婚が人生最大級の喪失だと言います。長年連れ添っていると、いつどこで亀裂が生じたかを紐解くことは至難の技で、日々の生活に追われて、夫婦間の会話が途絶えたまま時間だけが過ぎて行きます。世間体や子供の手前、同居人として現状維持を続けるか?夢よもう一度!と離婚に踏み切るべきか?など、決定事項が山積みです。ご多分に漏れず、フランシスとロバートは結婚カウセリングに飛び込み、調停で離婚の泥沼を避けようと試みますが....


離婚は心のすれ違いを解消する手立てではなく、資産と親権の分割と言う法的処理でしかありません。心痛とは無縁の何とも興醒めな離婚訴訟にどっぷり浸かり、冷静な判断ができない混乱状態の真っ只中で、今後の人生を大きく左右する重大な決断を強いられます。「先ず、心を癒して頭がスッキリするまで待ってもらえませんか?」と思った人は多い筈ですが、一旦レールに乗っかってしまった離婚列車は誰にも止められません。


弁護士は友達でも話し相手でもなく、高時給で雇った法的アドバイスをしてくれるプロでしかありません。本作では、フランシスが雇った離婚弁護士マックス(ジェフリー・デマン)をはじめとする個性的な弁護士が笑いをとりますが、現実は常軌を逸した弁護士は使い物になりません。話し相手も慰めてくれる人もおらず、真の孤独を味わいます。ロバートのように、親友と結婚するのは、得作ではなかった!と気付いても、後の祭です。伴侶と親友の両方を失ってしまうのが離婚なのです。


幸い、女は結婚しても友達は維持しているものです。フランシスにも、頼りになるかならないかは別として、何らかの支えにはなるダイアン(モリー・シャノン)とダラス(タリア・バルサム)がいます。離婚を口にした瞬間、周囲の人が散り散りばらばらになってしまう体験をしました。伝染病ではないのに....結果的には、まるで篩にかけたように、真の友達だけが残りました。面白いものです。


時間が経ったからこそ、面白いなどと言えるのでしょうが、離婚は終止符と呼ぶには余りにも長く険しいイバラの道です。人生最大級の喪失に直面できず、即再婚に走る人あり、喪失に浸かったまま恨み辛みで残りの人生を無駄にする人もあります。火の海の苦しい体験から学べば、不死鳥になって飛び立つこともできます。既に制作が確約されたシーズン2では、フランシスとロバートは縒りを戻すのではないかと噂されていますが、「Divorce/ディボース」は「アフェア」と同じく、男女関係を客観的に深く考えさせ、主観的に離婚のお浚いができる私好みの作品です。

「アフェア~情事の行方~」シーズン3開始 [ネタバレ]

※「アフェア 〜情事の行方〜」シーズン1~3についてのネタバレがあります。


私の人間ドラマへの固執は今に始まったことではありません。幼い頃から、好奇心が強く、同年代の子供と遊ぶより、大人の会話を黙って観察するのが大好きな子でした。情報を収集して心理分析するのが好きだから、モノ書きになったのか、モノ書きの素質があった故、観察分析力が養われたのかは、卵が先がニワトリが先か問答になってしまいますが、結果的には観察分析力を十二分に活かして、私好みのドラマを観て頂く説得力のある番組評を書けるようになり、仕事が楽しくて楽しくて仕方がない幸せな「第二の人生」を満喫しています。


文句を言うとしたら、最近何度観ても飽きない、唸るほどの人間ドラマが影を潜めてしまったことです。「グッドワイフ」が完となり、今年のエミー賞関連の報道でも、授賞式でも、ほとんど言及されず、あれ程の秀作に何と冷たい仕打ち!と悲しい思いをしました。最終話を書き下ろしたキング夫妻が、最優秀脚本賞候補に挙がっていたので、これだけでも受賞して欲しい!と思う私の悲願も達成できず、何とも後味の悪いエミー賞でした。唯一の救いは、9月20日にご紹介した新番組「This is Us」が期待を裏切らない、新鮮なドラマとして君臨していることです。何がどう影響してキャラが今に至ったのか、私がいつも欲している’何故?’が巧みに描かれていて、どのキャラにも親近感を感じる故、痛みを我が事のように感じます。視聴率を維持していることは、更に嬉しい事実です。


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左からコール役のジョシュア・ジャクソン、アリソン役ルース・ウィルソン、ヘレン役モーラ・ティアニー、長女ウィットニー役のジュリア・ゴルダーニ・テレス。シーズン2のエミー賞根回しイベントは、NYで開催された。 Courtesy of Showtime

そして、待ちわびていた「アフェア~情事の行方~」シーズン3が始まったことも、吉報です。昨年11月23日の「『アフェア』シーズン2進行中。益々、面白くて目が離せない!」と同じく、日本での放送が予定されていると思うので、今回もネタバレは極力避け、新シーズンの方向を大雑把にお知らせします。これまで番宣用の小冊子とDVDが送られてきて、クリエイター自身の新シーズンの方向説明がありましたが、最近継続番組の評論を書きたくても、資料どころか、数話を視聴することもままならぬお粗末な現況です。何度も懇願して、やっと3話を観ることができたので、英文評を書くことができた次第です。

英文評

シーズン1は、不倫の当事者ノア(ドミニク・ウェスト)とアリソン(ルース・ウィルソン)の視点から描かれ、男と女では物の見方、感じ方がこれ程違うのか!と仰天する巧妙な描き方でした。現実逃避だったシーズン1とは打って変わり、シーズン2は不倫の犠牲者ヘレン(モーラ・ティアニー)とコール(ジョシュア・ジャクソン)の視点が加わり、ノアとアリソンが築こうとする新たな世界が遭遇する数々の障壁を、シーズン1よりは遥かに早いペースで描きました。置き去りにした家族や日々の生活に追われ、波打ち際に築いたノアとアリソンの砂の城は音を立てて崩れました。不倫から出発すると、お互いへの信頼は脆いもので、些細なことから疑心暗鬼を生ずることが実証されました。更に、「アフェア」は二組の夫婦を切っても切れない腐れ縁にするために、モントークで発生した刑事事件を織り込んでいます。


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エミー賞の根回しイベントの招待状として送られてきたシーズン2の番宣ポスター。 Courtesy of Showtime


シーズン2は、衝撃的なノアの告白で最終回を迎えました。そして、シーズン3は、ノアが拘禁されてから3年が経過し、不倫の波紋は表面的には収まったかのように見えますが、未だ未だ深く潜行して行きます。作家志望の大学生相手に教鞭を執るノアは、キャンパスで巡り合ったフランス人客員教授ジュリエット(イレーヌ・ジャコブ)に誘惑されます。今シーズンは、厳しい現実に耐え切れず逃避留学中のジュリエットが新たに加わって、5人の視点から描かれ、サスペンススリラー要素は、ノアを苛む謎のストーカーに替わります。


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「シーズン3は、各キャラの翳りの部分を更に掘り下げる」とトリームが発表。クリエイターの意図を映像化した番宣ポスターだが、5人目ジュリエットの視点が入っていないのが残念。 Courtesy of Showtime


クリエイターのサラ・トリームの意図は、シーズン1では男女の視点に加えて、生い立ち、階級、教養などのフィルターを通して不倫を描くことでした。「不倫の常習犯ではなく、善人が二人、落ち込んでいる時に巡り会い、赤い糸で結ばれているかのような錯覚に陥った。偶然が偶然を呼ぶ成り行き」と、ノアとアリソンを責め咎めることなく描写しました。


シーズン2は、置き去りにされたヘレンとコールの視点が加えられ、ファンタジーの世界が現実に豹変しました。’去られた’側の私的体験があるだけに、ヘレンとコールに感情移入するのはいとも簡単、心痛をじんじんと感じました。アリソンをミューズに祭たてていたノアは、暗い過去を引きずっている生身の人間である事実には目を背け、自作「Descent」に登場する魅惑的なキャラから少しでもズレようものなら、修正を加えようと試みます。アリソンの自己主張は、ノアにとっては大いに興醒めなのです。生身の女を自分なりの理想像に押し込めようとするのは、男の常套手段。不倫など考えたことのない私でさえ、ノアの勝手さに腹が立ち、アリソンを応援してしまいました。よくよく考えてみると、この秀作で同情や感情移入できないのは、ノア独りなのです。


しかし、ノアの正体見たり!のシーズン2第10話で、謎が解けました。セラピストに「浮気男は偉大な男であり得るか?のジレンマに陥っている」と、自ら告白しています。はー、マジですか?ジレンマというより、自惚れ屋の宣言に聞こえるのですが....不倫は一度で済む筈がありません。


ノアがアリソン(新妻)とヘレン(4人の子供の母親で元妻)を法から守るために、犯してもいない罪を認めてムショ入りしましたが、ジレンマ告白シーンでノアの心中が明らかになると、この奇特な行動を怪しむようになりました。どちらを突き出しても、娑婆で苦しむのは自分。村八分になって生きて行くより、いっそ全ての責任を逃れて離れ小島に隔離されている方がどんなに楽か....無意識かもしれませんが、現実逃避の手段だったのでは?と疑ってしまいます。それが証拠に、ノアは再出発に手を貸そうとする妹、よりを戻そうと必死になるヘレンを冷たく突き放します。


トリームは、「夫婦間の信頼は雲をつかむようなもの」と言います。お互いを信用していると夫婦が確信している時には存在しますが、いずれかが疑い始めた時点で、消え失せてしまうからです。信用できない人と、人生を一緒に歩いて行くことはできません。米国では、「男は恋人に変わらないで欲しいと願い、女は恋人に変わって欲しいと願って結婚する」と言われています。男は現実と結婚し、女は将来と結婚するという、男女の結婚観の違いでしょうか?言い得て妙です。観れば観るほど、心理分析したくなる「アフェア」は、今一番面白いドラマです。

「Crazy Ex-Girlfriend」シーズン2進行中。奥の深い名曲をご紹介

今秋もエミー賞授賞式が終了した翌9月19日から新番組/継続番組が開始/再開されましたが、CWは例年の如く、10月1週目まで再放送や夏の番組で繋ぎました。

新番組で言うと、「No Tomorrow」が10月4日、「Frequency」が10月5日に放送開始となりました。今年でシーズン3を迎えた「Jane the Virgin」は10月17日、「Crazy Ex-Girlfriend」シーズン2は10月21日から再開されています。

「Crazy Ex-Girlfriend」については、15年9月7日の「レイチェル・ブルーム、プリヤンカー・チョープラーの魅力でお薦め!」に始まり、16年4月15日「エミー賞根回しイベント」、更に16年9月6日の「今夏のプレスツアーのハイライト」として作品のみならず、鬼才ブルームについてもご報告してきました。

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8月6日、第32回TCA賞コメディー部門の個人賞を受賞したブルーム。今後の活躍が大いに期待できる歌って、踊れて、芝居が出来る「トリプル・スレット+α」である。 (c) Getty Images


レベッカ(ブルーム)はマンハッタンの法律事務所で、出世街道まっしぐらのデキる女ですが、母親が敷いたレールに乗っかっていただけで、幸せとは何か?自分は今幸せか?等、自分探しの旅に出ることなど考えたこともありません。そんなある日、街でばったりジョシュ(ヴィンセント・ロドリゲス3世)と再会します。10年前に逃がした魚の大きさに気付いたレベッカは、運命の糸に引かれて、ジョシュの故郷カリフォルニア州ウエスト・コヴィーナに引っ越し、焼け木杭に火をつけるべく、元カレ奪還作戦を開始します。「フェリシティ」と同様、初っ端から頼みもしないのに言い寄って来るのは、ジョシュの親友/しがないバーテンのグレッグ(サンティーノ・フォンタナ)。職場のポーラ(ドナ・リン・チャンプリン)は、公私共に平穏無事な毎日を送っていましたが、ロマンとスリルを求めて、レベッカのジョシュ奪還作戦を煽るのみでなく、嬉々として手を貸します。


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レベッカの狂気の沙汰を集めたコラージュがシーズン1のポスターだった。


シーズン1最終回。レベッカの恋い焦がれる気持ちが遂にジョシュに伝わり、ディズニー風のハッピーエンドで一件落着かと思いきや....レベッカは幸せの頂点で「追いかけてきたのよ」と、口が裂けても言ってはならない一言を発してしまいます。ジョシュの驚きと戸惑いの混じった顔で、シーズン1が幕を閉じました。


爆弾宣言がもたらした結果は如何に?待ちに待ったシーズン2が再開され、只今進行中です。10月27日の放送開始前に、英文評を公開しました。
英文評はこちら

本作のクリエイター・チーム(アライン・ブロッシュ・マッケンナとブルーム)は、シーズン毎にテーマを決めて展開しています。シーズン1はNYからジョシュを追いかけてきた事実を、屁理屈をこねて飽くまで’否定’するレベッカの自己防衛手段を、シーズン2は恋に一歩踏み込んだレベッカの’確信’を描くと言います。


シーズン2は、焼け木杭に火がついて、想いが伝わったと勘違いするレベッカの新テーマソングで始まりました。「♩恋は盲目、狂気の沙汰は♬私の所為じゃない、何しろ私は♪恋してるんだもの♩♪」的内容を、可愛く、無邪気に歌います。’夢中’だったら、何をしても良いってもんじゃないんだけどな~と思いつつも、余りにも愛くるしいレベッカがファンタジー(非現実)を歌うので、う~ん、ま、良いか?許しちゃう!と思わせるところが、味噌です。


Crazy Ex-girlfriend Season 2 Theme Song


更に、シーズン2プレミア回から、「スッゴイ!鋭い!!天才!」と唸ってしまったのが「Love Kernels」と題する曲です。彼氏の言葉の端々に思いを読み取ろうとする、何気ない無意味な’約束’から二人の将来を読み取ろうとする、片想いの女性の健気な努力(=実は、自尊心の不在)、蹴られてもすがりつく哀しさや浅ましさを、トウモロコシの粒やしずくに例えています。若い頃の自分の姿を見るようで、思わず目を背けたくなりますが、女の悲しいサガを直視しなければ自分探しの第一歩を踏み出すことはできません。片想いを両想いにすることは、不可能。愛情は買うことも、強いることもできません。


Crazy Ex-Girlfriend | Love Kernels | The CW


本作はロマコメ・ミュージカルではありますが、自らうつ病を患ったこともあるブルーム曰く、「恋愛って何なのか?自分を100%受け入れる前に、人を愛せるのか?がテーマよ」と奥深い発言をしたことが思い出されます。自分を100%受け入れずして、片想いに悩んでいる方、彼氏に心を満たしてもらおうとすがりついている女性必見の名曲です。詩は意味深でありながら、さらっと聞いていると現実的で笑えてしまうのが、本作の作詞/作曲家チーム(アダム・スラセンジャー、ジャック・ドルゲン、ブルーム)の偉大さです。恋愛真っ只中の若者には、不可解?かもしれませんが、いずれ解る時が来ますよ!恋愛入門講座のオープニングに使いたい名曲です。


11月4日に放送された第三話では、ブルームの歌唱力以上に演技力が光る「The Math of Love Triangles」が披露されました。三角関係をどのように解消するか、ジョシュ/グレッグのいずれを選ぶべきかをマリリン・モンロー風に、甘ったるく、幼児っぽく歌います。一方、インテリを象徴する数学者がバックシンガーを務め、三角形を数学的に説明しようと試みますが....明らかに「ダイアモンドは女の親友」をもじったものですが、そこはブルームのこと。元の楽曲を知らなくても、十分に楽しむことができます。


Crazy Ex-Girlfriend | The Math of Love Triangles | The CW

一見軽いノリながら、底深いロマコメ・ミュージカル「Crazy Ex-Girlfriend」です。今シーズンも、異ジャンルから数々の名曲が登場しそうです。レベッカが100%自分を受け入れるのは、もう先送りにして、それまでの目を覆いたくなる数々の失敗を満喫したいと思います。いずれ、レベッカに見合う、素敵な王子様が現れることを祈って....現実に、王子様は現れませんが、これは飽くまでロマコメですから、夢物語で終わっても良い筈です。

「Frequency」は同名映画のテレビ化

2005年公開の映画「Frequency」(邦題「オーロラの彼方へ」)を、主人公を女性に代えてテレビシリーズ化したのが、CWの今秋の新作「Frequency」です。パイロットが制作される初春に、3行ほどのあらすじを読んだ時にきらりと光る何かを感じ、以降実際にどのようなパイロットが出来上がってくるのか、興味津々で待つこと4ヶ月。CWから舞い込んだパイロットは、期待を裏切らない出来で、放送開始が待ち遠しい今秋の新作のトップの座を占めてきました。

Frequency


NYPD殺人課刑事レイミー・サリバン(ペイトン・リスト)は、20年前父フランク(ライリー・スミス)が殉職して以来、母ジュリア(デヴィン・ケリー)とひっそり暮らしてきました。ある日、ガレージで埃を被っていた父の形見アマチュア無線機に落雷してスイッチが入り、聞き慣れない男の声がコールサインW2QYVを送ってきます。レイミーが久しぶりに向かった無線機にもW2QYVが刻まれており、交信を続けるうちに、1996年のフランクと2016年のレイミーの世界が同時進行していることが判明します。交信が始まった2日後は、フランクの運命の日。殉職に至るまでの経緯を熟知しているレイミーは、フランクに詳細を伝え、無駄な死を阻止することに成功します。しかし、フランクを救ったことによって、何かが微妙に変わり、今度は母ジュリアが看護婦ばかりを狙う「ナイチンゲール連続殺人鬼」の犠牲者になる宿命が待ち受けています。母と過ごした過去20年、父が生きていた過去10年余りの記憶が、レイミーの頭に鮮明に残っていると言うのに....サリバン父娘はジュリアの宿命を書き変えるべく、無線機を介して殺人鬼の捜査に乗り出します。ジュリアの運命の日まで残り数ヶ月。20年を隔てた「声のタイムトラベル」で結ばれた父娘が、時間との闘いに挑みます。タイムパラドックスがテーマのSFファンタジー・サスペンス・ドラマです。

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NYPD殺人課刑事レイミー・サリバンを演じるリスト。「マッドメン」の秘書から重役夫人にのし上がったジェーン・スターリング役が、まだまだ印象に残っているが、本作ではタフな刑事役。逞しさに、繊細さを微妙に加味して、好演している。 The CW


以前にも指摘しましたが、昨今のリメイクは、数々の’ひねり’を盛り込まなければ生存し得ません。主人公の性別や人種を変えるのは、最も基本的な’ひねり’です。映画「オーロラの彼方へ」では、主人公は男性で、消防士の父フランクとの父子の絆が描かれましたが、テレビ版では、主人公は女性です。また、囮捜査で潜入していたギャング団に身元がバレて、消されてしまい、上司に汚職の罪を着せられて殉職する刑事フランクとの父娘関係が主軸となっています。更に、映画ではフランクは殉職と肺がんを免れて、現在生きている設定でしたが、本ドラマでは、フランクは殉職は逃れたものの、後に交通事故で死亡するため、2016年には存在しません。これもいずれは、変わる可能性があります。


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レイミーの父フランクを演じるスミス。「Nashville」では悪役だったので、最初は配役ミス!と思ったが、回を重ねる毎に馴染んできた。ちょっと、若過ぎるのでは?とは思うが... WENN.com


「Frequency」は母親の誘拐殺人を阻止するために、2016年現在生きているレイミーがコンピューターや生き延びた被害者から得た手がかりを、1996年の父フランクに伝え、捜査活動をしてもらいます。但し、20年前にパズルの一片を変えると、即座に現在に影響があります。


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ジュリア役に抜擢されたケリーは、『よみがえり 〜レザレクション〜』で日本でもお馴染みの女優。20年の差をメイクやヘアーでカバーしているが、「最初は、老けたり、若返ったりには戸惑いました」と明かした。 WENN.com


10月7日にご紹介した「Timeless」も、同様のタイムトラベルを扱っていますが、クリエイターが指摘した通り、タイムトラベルで過去に遡るのは飽くまでも背景で、ルーシー、ワイアット、ルーファスの異色トリオが描き出す人間模様に焦点が置かれています。ルーシーの家族構成が一変した点が最も顕著なタイムトラベル効果ですが、歴史は変えてはならないと言うルールの下でトリオが行動するので、大筋は変わらないため、安心して観ることができます。一方、流し観していると、訳が分からなくなってしまうのが「Frequency」です。本腰を入れて観ていないと「えー????」と困惑するのが落ちのタイムパラドックスです。


第4話まで観ましたが、殺人鬼の捜査は消去法で、ほとんどの捜査ドラマと同じく、こいつが犯人だ?!と追い詰めては、容疑者のリストから消去し次に進むの繰り返しです。消去法の謎解きは、一話完結型の捜査ドラマでは問題ありませんが、1シーズン(10~13話)を通じて続けるのは考えものです。そこまで、視聴者がのめり込んでくれるでしょうか?複雑な謎解きは大歓迎ですが、ABCの新作「Notorious」のように、殺人事件の解決を1シーズンの最後まで引き延ばすのは、かなりきついものがあります。それが証拠に、つい先日、今シーズンの制作本数を13話から10話に削減されてしまいました。現代人の忍耐力が底をついている事実を考慮に入れなかったのでしょうか?それとも、キャラに魅力があれば、視聴者がついて来ると思った誤算でしょうか?「Frequency」は、母を助けるためという大義名分が立つので、私は謎解きに参加したいと思います。

ロマコメ「No Tomorrow」が提唱する楽しむっきゃない!精神

6月初旬、CWから「Frequency」と「No Tomorrow」のパイロットが舞い込みました。今秋シリーズとして提案された作品リストを2月頃に目にした時に、「Frequency」は一番私の興味を引いた作品でした。早速「Frequency」を観て、大いに感激しましたが、「No Tomorrow」はタイトルを見る限り、例によって例の如く、宇宙人に占拠され荒れ果てた地球で繰り広げられるサバイバル劇か、細菌戦争で人類が滅亡した的、暗~~いドラマに違いないと想像。但し、この時点では、他に観るパイロットもなかったので、早目に処理しておこうと言う義務感から、試してみることにしました。

数年前にも、英国の地球最後の日をテーマにしたコメディーがあったような....全く、笑えないのでパイロットのみで放棄した記憶があります。同様の作品かと思いきや、人類滅亡に向かって毎日精一杯生きよう!的プラス思考のカラフルなロマコメと判明しました。何よりも主人公キャラ二人に魅力があって、思わず続きが観たい!と思いました。早速、CWの広報部長に激励のメールを送ったほどです。そして、待ちに待ったパネルインタビューは、今夏のTCAプレスツアーの最終日、8月11日に開催されました。

No Tomorrow


ブラジルのテレビ番組「Como Aproveitar o Fim do Mundo」(=世の終わりを如何に楽しむか)を基に、コリーン・バーケンホフが「No Tomorrow」を書き下ろしました。バーケンホフは、「とにかく最近、夢も希望もない暗いドラマばかりじゃない?暗~い世相に逆行して、どうせ明日がないなら、楽しむっきゃない!と言うロマコメにしたの」と制作の動機を語りました。


イーヴィ(トリ・アンダーソン)は、日々の生活に窮々とするオンラインショップ購買部マネージャー。四角四面で、上司にも、恋愛にも恵まれませんが、平穏無事な日々を送っているアラサー女性です。ある日、朝市で素敵な青年ゼイヴィア(ジョシュア・サス)と出会ったことから、イーヴィの人生は好転(?)します。問題は....ゼイヴィアは、8ヶ月12日後に遊星が地球に衝突し、人類が滅亡すると信じて止まないことです。世界の末日が決まっているならと、仕事を辞め、Apocalyst=死ぬまでにやりたい事の一覧表を手に、心置きなく死ぬ準備をしてきました。世界の末日は8ヶ月12日後に来るのでしょうか?科学的に証明できると息巻いていますが、ゼイヴィアの被害妄想でしょうか?

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イーヴィを好演するアンダーソン(27歳)は、現ロケ地の近くの農場で育ったカナダ人。「明日が来るっていう保証は何もないから、思い立ったが吉日よ。撮影が終わったら、バリ島でサーフィン、鳥獣サンクチュアリでボランティア活動しようと決めたの!」と発表。CWの視聴者ターゲットが他人事だと思わず、右に倣えしてくれると良いのだが.... WENN.com

平穏無事に飽き飽きしていたイーヴィは、き印?と疑いつつも、世間体を気にして躊躇していた冒険に敢えて挑戦する勇気を与えてくれるゼイヴィアにぐんぐん惹かれていきます。イーヴィなりの「我が人生に一片の悔いなし」リストを作り、実行し始めますが....イーヴィの生き様は、職場や家族にも連鎖反応をもたらし始めます。


パイロットはLAで撮影されましたが、抜けるように青い空が「No Tomorrow」のタイトルにふさわしくないと判断され、シアトルに設定されました。当然のことながら、撮影は椰子の木を避けるのが至難の技のLAから、バンクーバーに移転、パイロットのあちこちに現れた椰子の木は、上手に編集されています。


チャーミングなゼイヴィア役を射止めたのは、英国人俳優サスです。「Galavant」という中世の騎士を描いたミュージカル・コメディーに出演していた時は、さほど魅力は感じませんでしたが、サスでなければ続きが観たい!と思わなかったに違いありません。今回の役所について、「父は若くして亡くなったので、僕もいつ召されるかわかりません。ですから、今日しかないと思って楽しむぞ!精神で生きてきました。脚本を読んだ時に、これなら地で行ける!!と思いました。ユニークなロマコメを作らせてくれるCWには、とても感謝しています。マイナス思考もどん底の今、『今日を掴め』がテーマの明るいロマコメがあっても良いのではないでしょうか?」と熱く語りました。御尤も。

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恋は盲目と言うから、頭がおかしい?と思いつつも、女がついていくのは当然のチャーミングなゼイヴィアを好演するを英国人サス。「『地』で行ける!」と言う割には、控え目で礼儀正しい好青年だった。 WENN.com

英文評

手前味噌を並べるようで恐縮ですが、私は本作を観るまで、「我が人生に一片の悔いなし」を実行してきたと自負していました。離婚と言う名の我が人生最大の危機以降、不死鳥として何度も何度も生まれ変わって生きてきたからです。でも、喉元過ぎれば熱さを忘れるのが人間で、微笑ましい「No Tomorrow」を観て、早速私なりのApocalystを作り始めました。

おかげで最近、過去の人が多々夢に出て来るようになりました。無意識のうちに、過去を清算して、心置きなく死ぬ準備をしているのでしょう。死ぬまでに会いたいスターのリストには、まだ10人ほど残っていますが、ほとんどの夢は果たしたので、後は....長い間、ハワイに行っていません。地上の楽園マウイ島にもう一度行くのが、今のところ最優先です。何度も誘ったのに断り続ける最愛の妹と行けたら、本望です。


「我が人生に一片の悔いなし」を思い出させてくれた、ユニークなロマコメ。「テレビばかり観ているの!?」とよくバカにされますが、こんなご利益だってあるんだぞ!と声を大にして反論したいと思います。テレビから学ぶことは、まだまだ山ほどあります。

SFは苦手でも「Timeless」は面白い!

ご存知のように、私はSFものは苦手です。と言いつつも、キャラに魅力があると、ついつい引き込まれて観てしまうのも周知の事実です。好例が、「12モンキーズ」や「コンティニアム」で、内容はどんどん複雑化して行きましたが、アマンダ・シュルとレイチェル・ニコルズに魅せられて、不可解な部分は無視して観ています。 又、贔屓にしている役者が配役されると、SFものでも観ない訳に行かず、観ている内に、他にも面白いキャラに気が付き、病み付きになることもあります。「テラノバ」が正にそれで、シーズン2で打ち切られたことに大いに腹が立ちました。「やっと、面白くなって来たのに、それは酷だよ!」とFoxに抗議したくなりました。ジェイソン・オマラは、「延々と議論された挙句の果て、時期尚早の打切決定だったと思います」と悔しそうでした。(2012年8月15日の夏のプレスツアーレポートでご報告)


視聴者を引き込むチャンスはたった一度しかありませんから、莫大な予算をつぎ込んで、客寄せに一大スペクタクルを繰り広げるパイロットが鍵でしょう。但し、ドラマ制作数がまだ上昇を続けるテレビ界は、正に芋の子を洗うような混雑ぶりですから、パイロットのみではヒットするかどうかは疎か、ドラマの色調を読み取ることさえ日に日に困難になっていることも確かです。

NBCが今秋鳴り物入りで発表するドラマは「This is Us」と「Timeless」の2本です。「This is Us」は、9月20日「トレーラーに感銘を受けた人達を繋ぎ止めておけるか?」と不安と期待の入り混じった記事でご紹介しました。恐々観た第二話(9月27日放送)は、パイロットで感情移入したキャラ達の心痛がじんじんと伝わってきて、涙、涙の1時間でした。マイロ・ヴィンテミリア、ジャスティン・ハートリー、更には番組クリエイター自身の「期待を裏切らないよう頑張ります」の約束は嘘ではありませんでした。既に、シーズン1は18話制作と発表がありました。

一方、10月3日放送開始のSFドラマ「Timeless」はと言うと....ドラマの色調を更に読み取ってもらうためか、「This is Us」ほど話題性に欠けるからか、9月28日に、地元の評論家をソニー撮影所に集め、第二話の試写会が開催されました。ヒンデンブルク号爆発事故がパイロットの舞台なら、第二話はリンカーン暗殺事件にチームがタイムトラベルする逸話でした。アラモ砦の戦いや第二次世界大戦下のドイツ、ラット・パック(シナトラ軍団)が活躍した往年のラスベガス、ウォーターゲート事件、月面着陸など、全てカナダにセットを建設して撮影が進行中です。

Timeless

パイロットは、CW局の新作「Frequency」(これも一種のタイムトラベル)を観た後に送られてきたので、またタイムトラベル?と斜に構えて観ました。1937年5月、米国東海岸で発生するヒンデンブルク号事故の前日、謎の工作員フリン(ゴラン・ヴィシュニック)を追って、ルーシー(アビゲイル・スペンサー)、ワイアット(マット・ランター)、ルーファス(マルコム・バレット)が到着します。ルーシーは行く先々で何が起きたか、当時の服装や慣習を熟知している歴史学教授。ワイアットは、元デルタフォース隊員で、ルーファスは、タイムトラベルに詳しいエンジニアです。タイムマシーンの存在など知る由もないルーシーとワイアットは、国土安全保障省に招集され、何が何だか分からないまま、1937年5月5日のニュージャージー州レイクハーストに飛ばされます。フリンの目的は、歴史を変えることによって、米国を崩壊に導くことのようですが....

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「SUITS/スーツ」のスコッティ役がまだ記憶に新しいが、今シーズンはNBC新番組「Timeless」と「Rectify」最終シーズンでも活躍するスペンサー。7月31日にサンダンスTV局の「Rectify」のパネルインタビューで、聡明さを披露した。「Timeless」のショーン・ライアン(クリエイターの一人)も絶賛する、今乗りに乗っている女優。 WENN.com


面白いことに、「This is Us」と同様、パイロットのエンディングに本作の味噌が隠されています。私はそれに惹かれて、続きを観なければ!と思いました。タイムトラベルでフリンを逮捕することはできなかったものの、帰宅したルーシーが目にしたのは、朝家を出た時から一変した家族構成でした。思わぬところで歴史が書き換えられた結果、ルーシーの家族に異変が生じます。果たして、元の現実に戻ることはできるのでしょうか?


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ワイアット(ランター)は、腕力を買われてリクルートされた元特殊部隊の隊員。ワイアットの人生で最大の悲劇は妻を亡くしたことで、歴史を書き換えて妻を助けたいと、チャンスを狙っている。歴史を忠実に維持しようとするルーシーと、些細なことなら書き換えても差し障りないと信じるワイアットとの対立は絶えない。 WENN.com


クリエイターの一人ライアンは、「ユニット」「Chicago Code」「Last Resort」などの番宣で何度もお目にかかっていますが、アクションものが得意な放送作家です。但し、テレビアカデミーのイベントでは、普段語れないドラマへの情熱を熱く語り、傾倒振りに敬服していました。8月2日のパネルインタビューでは、「歴史上の異変の中でキャラがどう反応するかではなく、一見何も変化していないのに、もっとも私的レベルで異変が生じる方が、ドラマとしてはずっと面白い」と語りました。ルーシーの家族に異変を提案したのはライアンだったのです。さ、す、が。

9月28日の試写後に行われたパネルインタビューでも、ライアンは「タイムトラベルは人間ドラマを繰り広げるための背景に過ぎない」と語り、SFは大いに苦手な私がルーシーに磁石のように引きつけられた謎が解けた!と言うものです。

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ルーファス(バレット)は、チームの中で唯一タイムマシーン構築に関わったエンジニアだが、シカゴ西部(スラム街)出身の叩き上げ。「目立たないように、息を殺して生きてきたのに、冒険に引きずり込まれた上、人種差別を身を以て体験するキャラ」とルーファスを説明した。 WENN.com


当然ながらチームの構成は意図的で、白人男性、女性キャラ、黒人キャラの3人が主人公です。女性も黒人も2016年現在、まだ差別されていますから、過去に戻れば戻るほど、度合いは増す筈です。ルーファス曰く「どの時代に遡っても、黒人にとって生き易い時なんてない」。オバマ大統領が当選した日は、希望に満ち満ちていたのですが....

エイダン・ターナー、ポルダークを語る

英国では既に「ポルダーク2」の中盤あたりですが、米国では13ヶ月振り、9月25日から再開されました。シーズン1がロス・ポルダーク(エイダン・ターナー)の逮捕と言う崖っ淵で終わり、シーズン2の第一話は判決がおりるまでの過程を2時間で描きます。


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絞首刑に処せられるかどうかの裁判。ロス(ターナー・左)は、飽くまでも無罪を主張し、公平な社会ではないことを指摘するが、弁護人は信条を貫くより、家族の身になって折れることを勧める。判決は? Courtesy of Mammoth Screen Ltd.


このコーナーでは、2015年6月22日に「凛々しいエイダン・ターナーにうっとり!真の英雄『Poldark』放送開始」やエイダン・ターナーの変身振りを16年9月6日の「夏のプレスツアーのハイライトーエイダン・ターナー、レイチェル・ブルーム」でご報告しました。待ちに待ったシーズン2再開にあたり、今回は7月28日番宣に駆けつけたターナーと交わした英雄論を披露します。


18世紀グレートブリテン王国コーンウォールの名家ポルダーク一族の長編冒険談「ポルダーク」は、米国ではPBS(公共放送) MASTERPIECEシリーズ「ダウントン・アビー」の後釜として登場しました。一族の中で主役格はポルダーク分家の長男ロス(ターナー)で、アメリカ独立戦争で戦い、負傷して帰郷します。心身ともに傷ついたロスを待ち受けていたのは、父親の死、荒れ果てた分家の土地、廃坑、将来を誓い合ったエリザベス(ハイダ・リード)と本家の跡取りフランシス(カイル・ソラー)の婚約でした。お先真っ暗!?絶望の淵に立ったロスが、準貴族階級に後ろ指をさされながらも、型破りな選択と決断でどん底から立ち上がり分家を立て直す過程が描かれます。


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米国に出征する前に、ロス(ターナー)とエリザベス(リード)は、将来を誓い合うが、3年後帰郷した時には、エリザベスは本家の跡取りフランシス(ソラー)と婚約していた。未だにエリザベスを見るロスの目は、「逃がした魚は大きい!」を物語る。初恋の相手だし、本家に嫁いだエリザベスと、事ある毎に顔を合わせないといけないのも忘れられない理由である。 Courtesy of ©Robert Vigiasky/Mammoth Screen for MASTERPIECE


第一話で助けた家出少女デメルザ(エレノア・トムリンソン)は、ボロ家で飯炊きからポルダーク夫人に昇格、病に倒れた本家一家を看病して帰宅したものの、二人が溺愛していた幼い娘はデメルザから感染し、あっけなく死んでしまいます。ロスの帰郷から、結婚、長女を失うまでが目まぐるしく描かれ、もう少し時間をかけて欲しかったな~と思います。喪失の種類こそ違え、あそこまで次々と畳み掛けられると、癒しの間がなく、息を詰めたままシーズン1を観たような疲労感を覚えました。古い小説を基にしているだけに、もう少し緩やかに時が流れるものと期待していましたが、我慢のない現代人のペースに合わせるためか、3~4倍速で帰郷から逮捕に至りました。長編小説12巻の1~2巻を8話で綴るのも、この異例の3~4倍速に寄与しているのでしょう。このペースで行くと、6シーズンは継続する計算になります。


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家出少女デメルザ(トムリンソン・左)は、ロス(ターナー)に拾われて、ボロ家に戻ってくる。父から貰い受けた使用人は、飯炊きは疎か一番きつい野良仕事をデメルザに押し付けるが、文句も言わず働く。ある日、突然ロスの妻に昇格して、周囲の嫉妬を買うことに。 Courtesy of ITV pic (ITV Global Entertainment Ltd.)


アンチヒーローの横行に飽き飽きしている私にとって、「ポルダーク」は何度観ても飽きない壮大なドラマです。ポルダークは常に正しいことをしようと努力し、過ちから学んで成長して行く私の英雄なのです。ところが、シーズン1終了後、オンラインでターナーのインタビューを片っ端から観たところ、「ポルダークは英雄ではない!」と断言しています。はー???開いた口が塞がりません。私好みの英雄を十二分に映像化し、最近とみに欠乏している勇気と希望を与えてくれたのに、イメージをぶち壊すこの発言は何なのでしょう?以来、次回ターナーにお目もじできたら、絶対に聞こう!納得が行くまで説明してもらうぞ!と、待ち構えていました。


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’弱い者イジメ’は、人間の風上に置けぬと戦争体験で学び、故郷コーンウォールで平等な社会を築こうと心身を傾ける馬上のポルダーク。乗馬は得意と断言したものの、海辺の草原を馬で駆け抜けるシーンで撮影1日目が始まると聞きつけ、「ヤバイ!と思って、特訓を受けましたよ!」とは、ターナーの裏話。 Courtesy of ITV pic (ITV Global Entertainment Ltd.)


今夏のパネルインタビューには、トムリンソン、ターナー、リードの3人が登場し、質問が2015年のインタビューより分散され、シーズン2の種明かしは当然無く、特に面白い裏話も飛び出しませんでした。昨今のアンチヒーロー横行風潮に逆らうポルダークの人となりは?と尋ねられ、「とんでもない欠陥人間です」と答えたターナー。非の打ち所が無い人間なんて存在する訳がありませんから、欠陥は許せるんだけど....と密かに思っていると、「今で言う『仕切りたがり屋』ですね。何をするにもお山の大将でないと気が済まないし、人に任せられない性格って言うか....何でも自分で差配したがるタイプ。追い詰めると、冷淡、猪突猛進の自己チューで根性の悪い男に変身するしね」と畳み掛けました。えーっ!!!それって、誰のこと?私の英雄を引きずりおろすのは止めてください。


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番宣に駆けつけた(左から)トムリンソン、ターナー、リード。トムリンソンは当初、エリザベス役でオーディションを受けたが、翌日家出少女デメルザの扮装で挑戦して登板が決まった。ターナーはアイルランド出身、リードはアイスランドからロンドンに引っ越して9年、俳優修行中で登板。 (c) Rahoul Ghose/PBS


パネル後、場所を変えて午後の紅茶パーティーが開催されました。レッドカーペットを歩き終えた直後のターナーを捕まえて聞いてみました。シーズン2を演じてポルダークを見る目が一変したらしく、「失敗ばかりの男。やってしまってから気が付くんだけどね」と’欠陥人間’を語ります。若気の無分別からやらかす失敗は、無茶ではあっても、悪意から生まれた過ちではありません。完璧な人間しか英雄になれないとターナーは信じているのでしょうか?ポルダークは、阿漕を絵に描いたようなフランク・アンダーウッド(「ハウス・オブ・カード」)とは訳が違います。


押し問答の末、ターナーは止めを刺すように’謎だらけの不可解な男’、’無法者’、’裏切り者’、’反逆児’等の言葉でポルダークの影の部分を浮き彫りにし始めました。ぎょっ!最早、英雄の定義の差どころの話ではありません。米国人の英雄崇拝が度を超えているため、英雄のレッテルを貼ることに拒絶反応を示すターナーの私感が口を付いて出たのでしょうか?謙遜な西欧人として「英雄役を演じています」と宣言できないとも考えられます。ポルダークを英雄と称しても、ターナーの自画自賛ではないので、何の支障もないと思うのですが....あるいは、今後永遠に英雄役しか回って来なかったら困るな~の不安から英雄と呼びたくないとも読み取れます。思い起こせば、私が出席したいずれのパネルインタビューでも、ターナーの口から英雄と言う言葉は聞きませんでした。


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モニターを見て演技を確認するターナー。「ビーイング・ヒューマン」のミッチェル役同様、感情表現に幅があり、激情のみでなく、繊細さも十二分に表現できる役者だ。 Courtesy of ITV pic (ITV Global Entertainment Ltd.)


映画とは異なり、テレビシリーズは有機体です。状況に応じて変化を遂げて行くのが常識で、制作関係者しか知らない裏事情が多々あって、私など知り得ない無数の軌道修正が日々加えられているに違いありません。私は、シーズン2の第二話までしか観ていない上、原作を手にしたことさえありません。ポルダークを知り尽くしているターナーの発言には、それなりの理由や背景があるに違いありません。英雄か?否か?の判断は、もう少し先送りした方が良いのかなぁと思いつつ、インタビューを締めくくりました。


さて、シーズン2は、妻デメルザと本家に嫁いだエリザベスの間で揺れ動くロス・ポルダークの私生活と、家柄や権力を誇る準貴族階級対、財力で権力と家柄を手に入れようと躍起になる成金階級の激戦が描かれます。ロスは生まれ持った家柄やそれに付随する’力’には無頓着で、貧民を助けたり、地域を潤す手助けができないのなら、階級など何の役にも立たないと、炭鉱に資本投資してくれる人を探します。一方、幼い頃からロス・ポルダークになりたい!と憧れてきたジョージ・ウォーレッガン(ジャック・ファーシング)は、鍛冶屋から叩き上げた成金三代目で、当時台頭し始めた銀行家と言う名の商人です。ロスに依存して生きる家族、鉱夫や使用人の輪が広がった今、独り身の時に通用した善悪の判断ができなくなりました。信念を貫けば、波紋は大きく、遠くまで広がります。世渡り術を学ぶしか生きる道はないのでしょうか?ジレンマ続きのシーズン2は、益々面白くなりそうです。


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ターナーは、18世紀英国の乗馬用の丈の長いコートと、実用的な工夫を凝らした帽子が大いにお気に入り。シーズン2の番宣ポスターにしたい美しい構図だ。 Courtesy of ©Robert Vigiasky/Mammoth Screen for MASTERPIECE


英文の「ポルダーク」評を発表した後に、BBCのシーズン2の番宣トレーラーを観ました。英国ではロス、妻デメルザ、’元カノ’エリザベスの三角関係にスポットライトを当て、ロスが紳士ではないかも?を前面に押し出しています。シーズン2は、「英雄色を好む」的スキャンダラス路線を狙っているように見受けます。道理で、’英雄’のレッテルを引っぺがしたい訳だ~~と勝手に謎解きして納得している私です。


「This is Us」トレーラーに感銘を受けた人達を繋ぎ止めておけるか?

毎年5月、NYで開催されるスポンサー向けの新番組発表会がUpfrontと呼ばれるイベントです。プレスツアーとは異なり、キャストあるいは著名なプロデューサーが舞台に立ち、秋の新番組を手短に紹介するプレゼン+ショーで、CF放送時間を買ってもらうことが目的なので、局全体のプロモーションが狙いです。

今年のUpfrontで話題になったのは、「This is Us」のたった2分のトレーラーでした。美しいイメージを、勇気、寛容、希望、喜び、家族、愛などの心に響く言葉で繋ぎ合わせて人生模様を描き、涙と感動を誘いました。Upfront後、トレーラーは何と9100万回視聴され、NBCマーケティング部は異例の快挙を成し遂げました。

Upfront直後、NBCからクリエイターのダン・フォーゲルマンにインタビューしませんか?とお誘いが舞い込みました。飛びつきたいのは山々でしたが、パイロットを観るまでは何をどう質問すれば良いか分からないので、プレスツアーまで待ちますと丁重にお断りしました。想像以上のトレーラーへの反響を無駄にしてなるものか!と思う局のフライング行為です。気持ちは解るのですが....

夏のプレスツアー間際、待ちに待ったパイロットが郵送されて来ました。トレーラーはほんの序の口で、十年に一度登場すれば「ラッキー!」と言えるカテゴリーに入る、久々の涙と感動の人間ドラマです。止め処なく溢れる涙で心が洗われ、人間ってまんざら捨てたものではないな~と感動しました。「ギルモア・ガールズ」時代から知っているマイロ・ヴィンテミリアと、「リベンジ」以降注目しているジャスティン・ハートリーが配役されているのも相まって、8月2日のパネルインタビューを心待ちにしていました。

開口一番「パイロットの結末を、放送日まで内密にお願いします」と、フォーゲルマンが懇願しました。誕生日が同じ数人のキャラが、浮世の荒波を乗り越えて、たくましく生きて行く姿を描くパイロットには、漏らしてしまうと元も子もなくなる秘密が隠されています。パイロットを観て、プレスツアーに臨んだ評論家達に、ネタバレを回避するのに協力して欲しいと述べたフォーゲルマンの意図は「一般視聴者に皆さんと同じ体験をしてもらいたいので」でした。

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映画「ラストベガス」や「ラブ・アゲイン」で名を馳せた脚本家フォーゲルマン。「世知辛い世の中を、少しでも明るくしたい」と劇場用映画として書いた「This is Us」だが、「LOST」のドラメディー版だと説明してテレビシリーズ化に成功した。「LOST」の完に未だに憤慨している私には、決して好ましい表現ではないが、私の例えはパイロット放送後にしか明かせない。 WENN.com

そして、9月16日に公開した「This is Us」評です。今のところ、ネタバレは発覚していませんが、それを言ってはヤバイ!?と思う記事もチラホラ....守秘義務はどうなってしまったのでしょう?

ヴィンテミリアは、2015年1月に「見えない訪問者~ザ・ウィスパーズ」のビデオインタビューして以来ですから、1年半振りでした。見る度に、「えっ、これマイロ???」と目を疑う変身(?)振りで、今回は最近のトレンド’髭’で舞台に登場しました。そろそろ、40歳に手が届くと明かしたヴィンテミリアとの初対面は、かれこれ15年ほど前、「ギルモア」に不良少年ジェス役で登場した年でした。「仕事が面白いと思う歳になって当たった役が、21年の役者稼業の中で最も単純な役なんだ」とヴィンテミリアは、今回演じるジャックを過去の複雑な役どころと比較して指摘しました。

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Netflixの「ギルモア」にも登板が決まったヴィンテミリアだが、小柄な所為か40男には見えない。「HEROES/ヒーローズ」のピーター、「ザ・ウィスパーズ」のショーンなど、「This is Us」のジャックより遥かに根暗な役を演じてきたものの、この役が地で演じられるということは、大人になった証拠だ。 WENN.com

「ザ・ウィスパーズ」の予想外の暗い展開にがっかりしたので、ヴィンテミリアが「ダン(クリエイター)の頭の中を覗かせてもらったので、ジャックの人生行路を熟知した上で演技している」と披露したので、一安心しました。セッション後、「役者には何も教えてくれず、気が付いたらとんでもなく暗い作品になってしまって、残念だった」と「ザ・ウィスパーズ」についてコメント。それでも諦めなかったので、「最後まで観てくれてありがとう」と感謝されてしまいました。血みどろではなかったのが、唯一の救いです。

パイロットの脚本を読んだ友人から「ケヴィンって、君のことだよね。ダン・フォーゲルマンを知ってるんだ」と言われて、脚本を読み始めたハートリーです。読み始めたら止められなくなり、「どの役でも良いから出たい!と思いました」と登板の経緯を語りましたが、実はフォーゲルマンとはオーディションが初対面だった!そうです。

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「ヤング・スーパーマン」のグリーンアロー(オリバー・クィーン)役が代表作だが、最近「リベンジ」や「ミストレス」でも好演した。不思議な巡り合わせで、登板したケヴィン役がハートリーのはまり役になるのではないか? WENN.com

パイロットが’十年に一本出たらラッキー’の箱に入れた見事な出来栄えなので、二話以降この感動を維持できるのだろうか?が、最も気がかりです。8月2日の時点では、第二話を撮影し始めたばかりでしたが、ヴィンテミリアもハートリーも、「どの脚本も良く書けているよ」と太鼓判を押してくれました。役者や制作に関わっている人全員がすっかり惚れ込んだドラメディーは、パイロットで視聴率を獲得できることは間違いありません。フォーゲルマンは、「期待を裏切らないよう、頑張ります」と確約してくれましたが、短気な現代人のことです。何話繋ぎ止めておけるのでしょうか?

久々に彗星の如く登場した温かいドラメディーは、世知辛い世の中で生き残れるのでしょうか?これまで、何十本となく私好みのドラマを泣く泣く葬った辛い体験があるだけに、無意識に本作への期待度を下げているのでしょうか?取り越し苦労に終わることを祈りつつ....

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