サラ・ジェシカ・パーカーのテレビ復帰作「Divorce」は離婚の機微をリアルに描くコメディー - ハリウッドなう by Meg
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ハリウッドを拠点に活動するテレビ評論家。Television Critics Association (TCA)会員として年2回開催される新番組内覧会に参加する唯一の日本人。Academy of Television Arts & Sciences (ATAS)会員でもある。アメリカ在住20余年。

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サラ・ジェシカ・パーカーのテレビ復帰作「Divorce」は離婚の機微をリアルに描くコメディー

「セックス・アンド・ザ・シティー」(「SATC」)の放送が終了して12年。映画「SATC」では、サラ・ジェシカ・パーカーがオリジナル・キャストと集合することは何度かありましたが、パーカーが古巣HBO及びシリーズへ復帰したのが、10月9日から放送されている「Divorce/ディボース」です。HBOはプレミアチャンネルのため、我が家では視聴できませんが、例年の如く感謝祭の週末(11月24日~27日までの4連休)はプレミアチャンネルも無料視聴できたので、早速本作をチェックしました。

Showtime局の「アフェア~情事の行方」に対抗するようなタイトルでHBOが制作した「Divorce/ディボース」は、離婚の機微をリアルに描く30分のコメディーです。とは言え、離婚と言う名の人生最大の危機を描く訳ですから、どんより曇った冬空のように、重~くのしかかって来ることは否めませんが、それなりに笑えるシーンも其処此処に盛り込まれています。もっとも、離婚過程真っ最中では、泣き笑いになること間違いなしです。


現在、米国での離婚率は49%と言われているので、視聴者の半分は私的体験のレンズを通して本作を観ているものと思われます。私も離婚と言う岐路に立たされ、第二の人生を切り開きましたが、長年かけて築き上げた結婚を破壊することが、如何に狂気の沙汰で、どれほどの労力を要するかを身を以て体験しました。本作が、哀しくも可笑しくもある狂気の沙汰を余りにも巧みに描いているので、クリエイターのシャロン・ホーガンは離婚体験者に違いない!と思ったのですが....


今夏開催された制作発表のパネルインタビュー記録を読み返してみた所、ホーガンは「他の作品では、自分の体験を基に書いていますが、残念ながら(?)離婚体験はありません。友達に離婚の現実を事細かに聞いて、心の痛みがどのような形で姿を現わすかを描写するよう心掛けました。」と告白しています。確かに、ホーガンの「Catastrophe」(Amazon)も、現実を直視する正直な作品ですし、離婚体験者からネタを引き出すのはいとも簡単なことです。故に、「そう、そう、そうなのよ!」「あー、そんな事があったな~」と共感できる場面が満載です。一旦、離婚列車のレールに乗ってしまうと、誰もが同じような体験をするものなんだ!と過去のお浚いをするような気持ちで私は十分に堪能しました。一方、上級プロデューサー/主演を務めるパーカーは「結婚とはそもそも何なのか?を描きたくて、結婚の終止符である離婚を選んだ」と説明しました。


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夫ロバート(トーマス・ヘイデン・チャーチ)のする事なす事に苛立つ妻フランシス(サラ・ジェシカ・パーカー)だが、フランシスとて決して良妻賢母ではない。「Divorce/ディボース」は、男と女の立場が逆転した21世紀米国の離婚を描く故、フランシスに’鼻持ちならぬ女’のレベルを貼る女性視聴者が多い。 Craig Blankenhorn/Courtesy of HBO


結婚して15年余り、一男一女を育てる中年夫婦が倦怠期を迎え、ある出来事をきっかけに、離婚の道を歩み始めます。夫の浮気で結婚が破綻し離婚に至る従来の筋書きではなく、一家の大黒柱も、不倫に走るのも妻フランシス(パーカー)で、夫ロバート(トーマス・ヘイデン・チャーチ)は、自由業の育メンと言う21世紀の設定になっています。所謂「慰謝料」や生活基準維持は稼ぎ手の妻に課せられるのが女性上位の離婚は、シーズン1後半で、喉から手が出るほどの仕事を諦めざるを得なかったフランシスで具現されます。ロバートに給料の半分を持っていかれることは阻止したものの、夢の仕事を諦めたフランシスの喪失は、夫を失う以上に大きいと私は思います。夢の仕事なんて、そこいらに転がっていませんよ。


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左から長女ライラ(スターリング・ジェリンズ)、フランシス(パーカー)、長男トム(チャーリー・キルゴア)は通学バスの停留所に向かう。二人とも親離れが始まっており、両親の不穏な空気は見て見ぬ振りをしているが、一旦離婚を知らされるとさらりと流す冷めた現代っ子だ。 Macall B. Polay/Courtesy of HBO


米国では、親の死以上に、離婚が人生最大級の喪失だと言います。長年連れ添っていると、いつどこで亀裂が生じたかを紐解くことは至難の技で、日々の生活に追われて、夫婦間の会話が途絶えたまま時間だけが過ぎて行きます。世間体や子供の手前、同居人として現状維持を続けるか?夢よもう一度!と離婚に踏み切るべきか?など、決定事項が山積みです。ご多分に漏れず、フランシスとロバートは結婚カウセリングに飛び込み、調停で離婚の泥沼を避けようと試みますが....


離婚は心のすれ違いを解消する手立てではなく、資産と親権の分割と言う法的処理でしかありません。心痛とは無縁の何とも興醒めな離婚訴訟にどっぷり浸かり、冷静な判断ができない混乱状態の真っ只中で、今後の人生を大きく左右する重大な決断を強いられます。「先ず、心を癒して頭がスッキリするまで待ってもらえませんか?」と思った人は多い筈ですが、一旦レールに乗っかってしまった離婚列車は誰にも止められません。


弁護士は友達でも話し相手でもなく、高時給で雇った法的アドバイスをしてくれるプロでしかありません。本作では、フランシスが雇った離婚弁護士マックス(ジェフリー・デマン)をはじめとする個性的な弁護士が笑いをとりますが、現実は常軌を逸した弁護士は使い物になりません。話し相手も慰めてくれる人もおらず、真の孤独を味わいます。ロバートのように、親友と結婚するのは、得作ではなかった!と気付いても、後の祭です。伴侶と親友の両方を失ってしまうのが離婚なのです。


幸い、女は結婚しても友達は維持しているものです。フランシスにも、頼りになるかならないかは別として、何らかの支えにはなるダイアン(モリー・シャノン)とダラス(タリア・バルサム)がいます。離婚を口にした瞬間、周囲の人が散り散りばらばらになってしまう体験をしました。伝染病ではないのに....結果的には、まるで篩にかけたように、真の友達だけが残りました。面白いものです。


時間が経ったからこそ、面白いなどと言えるのでしょうが、離婚は終止符と呼ぶには余りにも長く険しいイバラの道です。人生最大級の喪失に直面できず、即再婚に走る人あり、喪失に浸かったまま恨み辛みで残りの人生を無駄にする人もあります。火の海の苦しい体験から学べば、不死鳥になって飛び立つこともできます。既に制作が確約されたシーズン2では、フランシスとロバートは縒りを戻すのではないかと噂されていますが、「Divorce/ディボース」は「アフェア」と同じく、男女関係を客観的に深く考えさせ、主観的に離婚のお浚いができる私好みの作品です。

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