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Vol. 33 群雄割拠のドラマ界! 2007年エミー賞を大胆予想

2007年8月1日
ドラマ放送がオフシーズンに入り、話題作たちの次シーズンに関する新情報がチラホラと聞こえ始めた今日この頃だが、過ぎ去った先シーズンに想いを馳せるにつけて、しみじみ思う。「06~07年シーズンは、実に話題が豊富だったな……」と。

テレビ史上、最高値の放映権が付いたドラマ(「Studio 60」)があっさりキャンセルされかけたり(現時点で、来シーズンの放映に関しては不明)、対して放映前はほとんど話題になっていなかったドラマが大ヒットしてみたり、あるいはファンの熱視線を集めた人気ドラマの最終回が物議をかもしたりと、予測不能な事態が次々と起こった。

舞台裏に目を向けてみれば、若干36歳のテレビプロデューサーが、NBCエンターテインメント事業部の最年少チェアマンに就任したり、映画女優として活躍するサルマ・ハヤックがプロデューサーとして新境地を開拓するなど、ドラマ界全体が変革の時期を迎えており、同時に、かつては絶対的な隔壁が存在すると言われていた映画とTVドラマ界、さらには役者や制作者といった役職間の境界線すらも薄れてきた印象を受ける。  

そんな、エンターテインメント界新世紀の幕開けを感じさせる今年にあっては、どの作品がテレビ界最高の栄誉であるエミー賞を受賞するかというのも、今後の方向性を模索する上での大きな指標になるはず。

エミー賞自体の開催は9月16日。アメリカでの評価やメディアの声なども鑑みながら、大胆にも受賞作品の予想をしてみたいと思う。

【コメディ作品部門】

「フレンズ」の終了以降、視聴者数ということで言えば、コメディは非常に苦戦している。ここ数年の視聴者数トップドラマを見てみても、「CSI」シリーズやリアリティショーが上位の常連で、唯一、コメディで善戦しているのが「デスパレートな妻たち」。テレビにおけるコメディ的需要は、ドラマではなくリアリティショーに全て持って行かれてしまった感がありありだ(ちなみにここ4年連続で、テレビ視聴者数1位プログラムは「American Idol」)。

ただそのような趨勢にあって、「小ぶりながらも、良質なコメディを正しく評価していこう」という動きが評論家たちの間で強く見られるのも事実で、昨年「The Office」が受賞したのも、そのような風潮が追い風になってのことだろう。

同じような文脈で高い評価を受けているのが、個人的にも大好きな「30 Rocks」(※詳細は、5月掲載のコラムを参照)や、サルマ・ハヤックプロデュースの「Ugly Betty」。これら作品群は、日常(職場)を舞台にしながらも、バランスの良いキャラクター配置と錬度の高い会話劇によって成り立っている、昔ながらのコメディスタイルだ。  

今年でシーズン3を負え、円熟期に入った「デスパレートな妻たち」も、有力候補の一つ。そしてもう一つ、ノミネート確実と見られているのが、同じく今年シーズン3を好評のうちに終えた「Weed」。この両作品に共通しているのは、ハイソで平穏な郊外の住宅街に潜む暗部をモチーフにしていること。その主役となるのは、表向きには良妻賢母のハウスワイフたちで、不倫や自殺、ヤクの売買といったエキセントリックな事件が次々と起こるのが特徴だ。

と、ここまで前評判の高い作品を列挙してきたが、わたくし個人の予想としては、願望も込めて「30 Rocks」をピック! 対抗としては「Weed」を挙げたいところだが、ケーブル局という部分がネックとなりそうなので、「Ugly Betty」を選ばせて頂く。

【ドラマ部門】

ドラマは作品数そのものが多い上に、シーズンによって評価にばらつきがあるため、非常に予想が難しい。 例えば、昨年栄冠に輝いた「24」は、「エミー受賞作」という肩書きを引っさげ、そして「ジャックの家族がゾクゾク登場!」というコピーと共に華々しくシーズン6を迎えたが、物語内のボルテージが上がるにつれて、世間の熱は冷めて行った印象。さすがに6年もやっていると、敵対する相手にしてもテロの手法にしても、そしてアクションの内容にしても、既視感に溢れている感がぬぐえない。「主要キャラクターの死」「身内の裏切り」といった劇薬で見る者を驚かせ続けてきた同作品だが、こうも乱発されると、視聴者にも免疫や耐性が付く。ここに来て、劇薬乱用の付けが回ってきた、と言ったところだろうか。  

2004年の放送開始以来高い評価を受けていた「LOST」も、今シーズンは視聴者の期待を裏切ったとされる作品の一つ。視聴率の面でも、過去2年に比べると苦戦した。

いずれにしても、上記の二作品に限らず、ドラマ作品は例え一つのシーズンと言えど、長い目で見たときは物語の中間点にしか過ぎず、評価を下すのが非常に難しい。そうすると必然的に、「今シーズン始まったドラマ」、そして「今シーズンで終わったドラマ」が、査定の対象となりやすい。あるいはかつての「The West Wing」のように、一度受賞したが最後、何年も連続で受賞し続けたりするパターンもある。そのような傾向からすると、「24」は今年も有力なコンテンダーの一つ。今回のエミー放送局はFOXなので、それも多少は後押しをするかもしれない。

そして、「今年始まったドラマ」「今年終わったドラマ」からそれぞれ挙げられる候補作が、「Heroes」と「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」だ。「Heroes」はこのコラムでも何度か触れてきたように、今年最も話題を集めたニューフェース。カルト的な人気を博し、現在は出演者たちも、テレビに雑誌に引っ張りだこ状態だ。

だが、世間的に話題になったという意味では、最後の最後で喧々諤々の大論争を巻き起こした「ザ・ソプラノズ」の方が上だろう。最終回を楽しみにしている日本の視聴者も多いと思うので詳しくは触れないが、その最後は、ファンの間で「映画化される」という噂を生み、真相を知りたがった視聴者たちが大挙して公式サイトに詰め掛けたためサーバーがダウンしたほど。事態収拾を計った関係者が、「現時点で映画化の予定はありません」と公式声明を発表する始末だった。

ということで、そのような騒ぎの記憶もまだ生々しい「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」が、作品賞をかっさらって行くのではないかというのが、わたくしめの予想。対抗には、この半年間、大いにワクワク・ドキドキさせて頂いた「Heroes」を、感謝の意も込めて推したい。

とまあ長々と書いてきたけれど、「オマエの挙げた受賞予想作なんて、ノミネートすらされないよ!」ってな突っ込みを受けてしまうかもしれない。もしそうなったとしたら、つまりはそれこそが、現在のドラマ界がいかに群雄割拠であるかを物語っているということなのだ! 断じて、わたしの予想が的外れという訳ではないのだ!!