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本屋大賞作家フェルディナント・フォン・シーラッハにインタビュー! 日本でも放送予定のドラマ化に「うれしくないわけがない」

2015年6月18日
フェルディナント・フォン・シーラッハフェルディナント・フォン・シーラッハ
TVGroove.com
2012年、本屋大賞を獲得したドイツ人作家フェルディナント・フォン・シーラッハが初来日。敏腕弁護士からベストセラー作家へ転身するに至った経緯や、日本初放送を控えるドラマ化作品について語ってくれた。

シーラッハの初来日は、最新作「禁忌」が、「TABU」として舞台化されることに合わせて実現。もとは刑事事件弁護士という、異色の経歴を持つ作家シーラッハは、自身と同じく弁護士の主人公の視点を通じ、さまざまな事件を描くミステリー短編集「犯罪」で文壇にデビュー。同作はドイツの文学賞クライスト賞を獲得し、また、日本でも2012年本屋大賞「翻訳小説部門」にて、第1位に輝いた。7月には、ミステリー専門チャンネル「AXNミステリー」にて、「犯罪」に続く著作「罪悪」を原作にしたドラマ作品「罪悪~ドイツの不条理な物語~」が、日本独占初放送される。

ダークな雰囲気の作品とは異なり、終始笑顔で冗談を交えて話すなど、非常に気さくな人柄をうかがわせたシーラッハ。作家らしい独特の視点から見た世界観を、余すところなく語ってくれた。


――今回が初来日とのことですが、これまでに印象深かったことや、行った場所はありますか?
「日本が大変気に入っています。とても印象的な国で、人々の丁寧さが心に残ります。ひとつ例を挙げると、飛行機が着陸した後、機体と空港をつなぐ役割を負った男性がいるのですが、彼が飛行機に向かってお辞儀したことに、感銘を受けました。誰に会っても、日本の方々はみんな親切です。いろいろな国に行きましたが、ここまで親切にされたのははじめてです」
「浅草の浅草寺も行ったのですが、ここでは古い日本と現在の日本が同時に存在していました。高層ビルの隣には、木造の建物があって、とても美しかった」
「フライトが大変長く、時差ボケでほとんど眠れず、夜はホテルでずっと起きて過ごしました。最上階の部屋から窓の外を眺めてみると、夜景がとても美しかった。日本の場合は、ビルの上で赤い灯りが点灯しているんですが、それぞれに点滅のスピードが違っていて、それはいままで観たことのない光景でした。まるで妄想できるような(笑) ニューヨークへ行ってきたばかりですが、東京の夜景には向こうが負けてしまいますよ」
「(あの灯りは飛行機除けだという指摘を受け)そうですね、でも結構低い建物にもついていたので、おそらく飛行機は通過しないし、美しいからつけているのかと思いました(笑)」


――滞在中に、次回作へ向けて受けたインスピレーションなどはありますか?
「必ず書くと思います。昨日も眠れずに執筆していたんです。さっそくあの赤い灯りについて書きましたよ(笑)」


――今回、「罪悪」がドラマ化されましたが、感想は?
「作家にとって、自分の作品が映像化されるというのは、とてもうれしいことです。もしうれしくないと言う作家がいるなら、考えられないですね(笑)」
「作品を執筆するときは、夜にひとりでパソコンに向かい、静かに書いているんです。それが2年後のある日、テレビをつけると映像になって流れてくるのを観ることは、とても感動的でした。それまで自分の頭にしかいなかった登場人物が、実際の人間になって登場していることが、とてもうれしいのです」


――映像化にあたり、 監督や製作陣には何か要望しましたか?
「もともと映像と本というのは、完全に別々のものなんですが、それがいいとわたしは思います。本はいろいろなものを省略していくので、読者が頭の中で想像するしかありません。しかしそれがドラマ化されると、すべてを映像にしなければならないので、決まったイメージができます。だから完全に別のものにならないといけない。それ以外はまったく注文はつけませんでした。好きなものにしてくださいとしか伝えなかった。製作会社はドイツでは最大の会社でしたし、ポルノ会社でもありませんから(笑)、そこは大丈夫だと思っていましたよ」


――今回、「AXNミステリー」では、「世界のミステリー特集」と題して、ウクライナ・オーストラリアの作品と合わせて放送されますが、ドイツの作品は他国と比べてどう違うと思いますか?
「難しいですね。アメリカのドラマシリーズの製作費は、ドイツと比べて10倍、スペインと比べれば20倍にもなります。それはもちろん、英語圏はドイツ語圏よりずっと大きいので、かけるお金もそれほど高くなるし、CM収入もその分、多くなるからでしょう。ただこのシリーズに関しては、ドイツのすべての新聞や雑誌で、批評家からいい評価をいただきました。わたしも大変、よく出来た作品だと思います。わたし自身はまったく関与していないからこそ、素晴らしいと言えるのです(笑) ドイツらしさに関しては、舞台がベルリンなので、その街並み、そしてドイツの人々の日常生活の雰囲気が見えるのではないかと思います」


――シーラッハ先生はもともと弁護士として活躍されていましたが、実際に経験した事件はどの程度、影響されているのでしょうか?
「弁護士には守秘義務があるので、依頼人から聞いた話は絶対に話してはいけません。あなたが自分の恋人を殺して、弁護士に話すとする。それを弁護士がそのまま小説にしてはいけませんよね。もし最低の彼氏だったとしても、当然です(笑)」
「なので、いくつかの事件から、いくつかの要素を抜き出し、それを新たなひとつの事件に組み立てる作業をしなければいけません。場所や登場人物を変えてね。それぞれのパーツは真実ですが、ストーリーそのものは、現実や真実ではありません」
「たとえば殺人事件があった場合、裁判所にはおそらく2000ページ以上あるファイルが届きますが、短編小説はせいぜい15ページ。これだけ比較しても、そのままの現実ではないことがわかります。文学というのは、そのままの現実ではありませんが、より“真実”に近いのではないかと思います。より正確に書かなければいけませんし、様々な情報を省略していかなければいけません。そのためさっき話したようなエッセンスが残り、より真実、より本物になると思います」


作品とは異なり、素顔は意外におちゃめ作品とは異なり、素顔は意外におちゃめ
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――弁護士から小説家へ転身しようとしたきっかけは?
「ものすごく素晴らしい話をしましょうか。飛行機の墜落事故があり、わたしが唯一の生き残り。腕を一本失い、これが最後のチャンスだった――という話をしたいのですが、本当のところは、退屈していたから書きました(笑) 夜はあまり眠れないので、退屈しのぎに書きだした、というのが本当の話です。ヒーローでいたいんですけど(笑)」


――淡々と事実を並べるスタイルが、小説、ドラマともに強調していますが、そこにこだわりはありますか?
「はじめて小説を書いたときは45歳でした。そのときは自分の文章を“こうしたい!”とはいかなかった。作家を目指す若者なら、模索する時期もあるんでしょうが、わたしはもう年を取っていたので、そのままなんです。もし16歳だったら、村上春樹みたいに書きたいとか、ドイツ人なら(「ヴェニスに死す」などで知られる)トーマス・マンみたいな文体にしたいと思いますが、もういい年ですし、自分の職業もありましたら、そういったことは考えませんでした」
「簡単なことを難しそうに書くより、難しいことを簡単に書く方が困難です。わたしの執筆ペースは遅いのですが、それは複雑なことを、簡単に書くことが大変だからです。目指しているのは、誰にでもわかる文章。大学の教授でも、一般人でも誰でもわかる。みなさんに、法律や正義とは何か、人間とは何か、恐怖や不安の正体を伝えたい。そのためこういうスタイルになっています」
「わたしはあるとき、書き方を教える大学の作家志望コースに参加したことがあるのですが、そこで学生に『人間が呼吸することを、どう文章にすればいいのですか?』と聞かれました。逆に学生に尋ねてみると、『深呼吸する』、『肺に空気を入れる』といったいろいろな意見が出ましたが、それは全部間違い。呼吸をしていることを文章にしたいなら、『彼が呼吸をしています』と書けばいいのですよ」


――ドラマ化された「犯罪」、「罪悪」には、共通されてリンゴのモチーフが使われていますが、その意味は?
「リンゴはキリスト教の中では、大きな意味合いを持っています。神に作られたアダムとイブが、楽園にいたのにヘビに“このリンゴを食べなさい”とそそのかされてしまいます。あまり知られていませんが、実は聖書には『禁じられた木の実』とあるだけで、『リンゴ』とは書かれていないのです。しかし世界中のキリスト教教会で、よくイブがアダムに“リンゴ”を渡すという絵があります。しかし“リンゴ”というモチーフは間違い。それはラテン語で、悪という意味の“malus(マルス)”と、リンゴという意味の“malus(マルース)”が混同されたからです。ラテン語が理解できるのは、限られた人々だったため、マルスとマルースが間違えられて、リンゴが悪の象徴になってしまいました。だから小説の中では、わざとすべての短編にリンゴをモチーフとして登場させています。一見、悪を象徴しているようですが、それは間違い。なぜかというとわたしは悪ではなく、人間を描いているからです」


著作とともに著作とともに
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――村上春樹の名前を挙げられていましたが、好きな日本人クリエイターはいますか?
「古い俳句が好きです。みなさん、わたしよりご存じだと思いますが、松尾芭蕉や小林一茶が好きでよく読みました。ある時期は三島由紀夫をよく読みましたが、正直に言いますと、自分にとってはなかなか慣れない、難解な話でした。三島は西洋文化とは関係があり、なんとか腑に落ちる部分もありましたが、自分は外国人なので、100パーセント理解するのは難しいことです。日本の伝統文化や、儀式、武士道については知りませんから。現代ですと、村上春樹が好きです。彼は世界的に有名ですが、わたしはすべての作品を呼んでいます。もうノーベル賞を取るべきだと思いますよ!」
「映画に関していいますと、黒澤明監督が好きです。ハリウッドの映画作品を観ていますと、どれも何かしらクロサワの影響を受けていると感じます。彼が西部劇のすべてを開発したんですよ。『七人の侍』とかね。長い顔の、素晴らしい俳優は……(指摘を受けて)ミフネ!(三船敏郎) 素晴らしい男です。尊敬しています」


――ファンへメッセージをお願いします
「わたしは教師でも牧師でもないので、メッセージとはいいにくいのですが、唯一言えるのは、本を読むのは正しいことです。世の中を理解するためには、読むしかないのです。それだけが世界を理解する手助けになると思います。映像が多い時代ですが、静かに本を読むことは大切だと思います。(ドラマは?の指摘を受け)ドラマも観ましょうね!(笑) まずドラマをぜひぜひ観てください。そのあと、本を読んでください!」


■ 罪悪~ドイツの不条理な物語~
AXNミステリーにて、7月11日ほか放送AXNミステリーにて、7月11日ほか放送
© 2014 MOOVIE - the art of entertainment

AXNミステリーにて、【字幕版】 7/11(土) 5:00pm~11:00pm
※全6話一挙放送 日本独占初放送!

フェルディナント・フォン・シーラッハ原作の第2弾!
絶望、不条理、欲望・・・、一瞬の狂気がもたらす「罪の形」とは?

制作:2015年ドイツ / 製作総指揮:オリヴァー・バーベン
原作:フェルディナント・フォン・シーラッハ『罪悪』(東京創元社)/原題: Ferdinand von Schirach SCHULD /英題:Shade of Guilt
出演:モーリッツ・ブライプトロイ(弁護士:フリードリヒ・クロンベルク) ほか

c 2014 MOOVIE - the art of entertainment

罪悪
罪悪
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フェルディナント・フォン・シーラッハ(著)

酒寄 進一(翻訳)
東京創元社



■ 最新作
禁忌
禁忌
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フェルディナント・フォン・シーラッハ(著)

酒寄 進一(翻訳)

東京創元社
 
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