Twitter
YouTube
Instagram
Facebook
注目トピックス
特集

「ネオン・デーモン」ニコラス・ウィンディング・レフン監督にインタビュー! カオスを愛する男がエル・ファニングにほれ込んだ理由とは?

2017年1月9日
ニコラス・ウィンディング・レフンニコラス・ウィンディング・レフン
(c)TVGroove.com
2011年の映画「ドライヴ」で日本の映画ファンの注目を集めたニコラス・ウィンディング・レフン監督が、最新作「ネオン・デーモン」のプロモーションのため来日を果たした。

「ネオン・デーモン」は、究極の美を追い求めるファッション業界の裏側に渦巻く欲望を、白昼夢のような幻想的かつ煌びやかな映像で描いた衝撃のサスペンス作。「マレフィセント」でオーロラ姫を演じたエル・ファニングが主人公ジェシー役に抜擢。純真な少女が、自身の心のダークサイドに目覚めていく姿を鮮烈に演じている。

レフン監督はインタビューで、エル・ファニングを主演に起用した理由や観客を作品の世界に引き込んでいく本作音楽へのこだわり、現在の映画製作の流れについて語ってくれた。


Q. シナリオの順を追って撮影していく順撮りという手法を行うことで知られるレフン監督ですが、本作で順撮りを行うにあたって特に苦労したことは?

レフン:順撮りに関しては、本作含め、特に壁があったということはありませんでした。むしろ作品の可能性を高めてくれるものでしかないと思っています。画家が絵を描くためにやっていくようなものだと、僕は捉えています。


Q. 本作ではスタッフを女性で固めたとのことですが、その理由とは?

レフン:女性と仕事する方が、男性と仕事するよりも楽しいですよね。それが理由です。


Q. 音楽に関してはクリフ・マルティネスとずっと仕事をされていますが、本作の音楽で特にこだわった点は?

レフン:音楽が大好きです。創造性において、音楽は最もインスピレーションを与えてくれるものであると思っています。「ネオン・デーモン」での大きなチャレンジは、まず初めに音楽のサウンドを決めることでした。というのも、どうやって作ったサウンドなのか、絶対にわからないようにしたかったからです。ある意味、すべて人工的な音を造形していきたかったのです。


Q. 劇中には、無音のシーンもあれば、アナログシンセのような音もありました。「タンジェリン・ドリーム」や「ゴブリン」のような70年代のホラー映画の音を目指したのでしょうか?

レフン:特にそうではありません。私は過去に興味がないのです。むしろ未来に興味がある人間ですので。しかし、未来に向かっていくには、過去のことを知っていなくてはいけません。僕はとにかく今自分がやっていること以外に興味がないのです。つまらない人間なのですよ。

(観客が過去の作品に繋がりを見出すことに関して)そういう風に解釈していただけることは、むしろ褒め言葉のように思っています。「タンジェリン・ドリーム」や「ゴブリン」と仰っていましたが、音楽が映画製作にここまで影響を及ぼせる、というお手本だと思っていますから。


Q. エル・ファニングを起用した理由は?

レフン:エルに関しては、他に候補がいなかったのです。彼女しかいないと思っていたので、エルが出演してくれてとても感謝しています。もし彼女が関わってくれなかったら、この映画を作ることはできなかったと思います。それほどまでに、彼女はこの役に必要な能力を持っていたのです。

© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch


Q. エルは、ジェシー役を演じるに必要な能力を全て持っていたと仰いましたが、その能力とは具体的にどのようなものなのでしょう?女優としての技量ですか?それとも、劇中で説明される彼女の持つ“美”なのでしょうか?

レフン:私が何を“美”と思うかは、人それぞれ価値感が異なるように、皆さんと違っています。私は、“完全でないこと”が美であると思っています。

それとは別に、エルには全て備わっていました。あの年齢で稀有な演技の才能があり、強力な集中力など、思わず目を向けてしまうようなものがありました。ルックスに関しても、誰とも違う、とてもユニークなものを持っていると思います。つまり、雪のような白い肌であったり、長くカールのかかった髪に、身長も非常に高い。このジェシーというキャラクターを皆さんにリアルに感じていただけるために必要な要素を、エルは全て備えていたのです。

ある意味、エルは本作を作るためのミッシングリンクであり、彼女がいなければ成立しなかったのです。ジェシーがそういう女性だと思えなければ、映画・物語自体が成立しませんからね。


Q. キアヌ・リーブスとのお仕事を熱望されていたそうですが、本作でようやく彼と仕事をされていかがでしたか?

レフン:キアヌは素晴らしかったです。ここ20年の映画製作をある種象徴するようなユニークな存在だと思います。我々が今親しんでいる多くのジャンルの形成に深く関わってきた、タイムレスな役者だと思っています。そのため、今回コラボできて非常に楽しかったです。


Q. この作品では女性同士の競争や嫉妬などが描かれますが、男性である監督にとって女性同士の戦いをどのように感じているのでしょうか?

レフン:すごく複雑なものだと思います。通常男性は、誰が一番強いのかということで競い合います。原始的な闘争だと思います。それに対し美はより複雑なものです。

特に理解しようという欲望はありませんが、観ているのは面白いですね。男性なので、本当の意味でわかることはないと思います。家庭では、「女であることはどうせわからないでしょ」と批判の言葉を言われることもあります。

(c)TVGroove.com


Q. レフン監督にとって映画製作の旅とは?

レフン:私は自分の作品を分析することができません。それにジャーナリストでも、評論家でもありません。自分がなぜこういうことをするのか、ということに全く興味がないのです。僕がなぜこういうものを作るのかという答えを見つけることに熱心に取り組まれている方がいることに感謝はしています。しかし、その答えを僕に求めても、僕は答えられないのです。


Q. 近年、映画の視聴形態が変化しています。その流れについてどうお考えですか?また、監督の映画製作に影響はあるのでしょうか?

レフン:未来が最高なのは、テクノロジーによって自分のスマホで創造という行為へのアクセスが容易になったことです。私にとっていいことです。私も、自分の作品が様々なフォーマットで視聴されることはいいことだと思っていますし、映画も映画館で見る、iPhoneで見る、ということを考えながら作らなければいけないと思います。

また、作品を何か一つのデバイス用に作るということは古いことだと思っています。デジタル革命を経た今は、全てが可能なのです。スタジアム内で見ることもできれば、メガネで再生することもできます。ルールなんてないのです。カオスですが、クリエイティビティにとってはとても良いことです。僕はカオスを愛する男なのです。


Q. 東京で撮影を予定されている「The Avenging Silence(原題)」について、可能な範囲で教えてください。

レフン:まだ準備の段階です。いつやるのかはまだ決めていません。日本に住みたいと思っているので、その口実として映画を作りたいと思っています。

(c)TVGroove.com


(インタビューおわり)

■作品情報

「ネオン・デーモン」
2017年1月13日(金)TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか 全国ロードショー

あらすじ:誰もが目を奪われる特別な美しさに恵まれた16歳のジェシーは、トップモデルになる夢を叶えるために、田舎町からロスへとやって来る。すぐに一流デザイナーやカメラマンの心をとらえチャンスをつかむジェシーを、ライバルたちが異常な嫉妬で引きずりおろそうとする。やがて、ジェシーの中に眠る激しい野心もまた、永遠の美のためなら悪夢に魂も売り渡すファッション界の邪悪な毒に染まっていく――。

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
出演:エル・ファニング、カール・グルスマン、ジェナ・マローン、ベラ・ヒースコート、アビー・リー and キアヌ・リーヴス
配給:ギャガ
© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

公式サイト://gaga.ne.jp/neondemon/
 
関連ニュース
海外ニュース
国内ニュース
DVDニュース
特集記事
ランキング/まとめ