■内容
1930年代、血と暴力に満ちたロサンゼルスの街を舞台に、私立探偵フィリップ・マーロウが数々の事件を追って活躍するシリーズ。これまでにハンフリー・ボガートやロバート・ミッチャムなどアメリカを代表する名優がマーロウを演じて幾度も映像化されてきたが、今回マーロウに扮するのは、「ガイアナ人民寺院の惨劇」(1980年)でエミー賞主演男優賞に輝いたパワーズ・ブース。優しさと脆さを加味したタフガイ、マーロウを歴代俳優に負けない渋く重厚な存在感で演じている。
マーロウの独白から綴られるストーリーは、小説と同様、一人称一視点で進行し、ハードボイルドならではの世界観が存分に堪能できる。
「(男は)タフでなければ生きて行けない。優しくなければ生きている資格がない」(*1)
「さよならをいうのは、わずかのあいだ死ぬことだ」(*2)
(*1)… 生島治郎著「傷痕の街」より
(*2)… 清水俊二訳「長いお別れ」より
男の美学を語る上でよく用いられるこれらの言葉は、チャンドラーが生み出した孤高の私立探偵フィリップ・マーロウの名台詞。あの松田優作主演のドラマ「探偵物語」のなかで、「あんた誰?」と尋ねられた探偵・工藤俊作(松田)が「フィリップ・マーロウ」と答えるシーンがあるなど、日本のハードボイルド・ドラマにも多大な影響を与えている。この春には、村上春樹による「さらば 愛しき女よ」の新訳本「さよなら、愛しい人」(早川書房)が刊行。
■原作者 レイモンド・チャンドラー
1888年アメリカ・シカゴ生まれ。1959年没。
両親の離婚後、母親とともにイギリスへ渡り、少年期をロンドン、フランス、ドイツで過ごす。1912年、23歳のチャンドラーはアメリカに戻りロサンゼルスに居を定めるが、まもなく第一次世界大戦が勃発。カナダ陸軍、英国空軍に従軍し、大戦終結とともに除隊、再びロサンゼルスに戻る。その後は石油会社の役員を務めるも大不況のあおりを受け解雇されたのを境に、小説執筆に専念する。
1933年にパルプ・マガジン<ブラック・マスク>誌で処女中編を発表し、1939年、「大いなる眠り」で長編デビュー。「さらば愛しき女よ」「長いお別れ」「プレイバック」など私立探偵フィリップ・マーロウを主人公とする物語を書き続けた。1940年代には、ハリウッドで映画の脚色の仕事にも従事している。
それまでの推理小説の型とは逸した、リアリティーを追及した舞台設定、客観描写を重視した美しくも簡潔な独特の文体、冷酷非情な探偵が登場するスタイルは、ダシール・ハメットに続き、ハードボイルド文学を確立した代表的な作家として、今なお、後世に多大な影響を与え続けている。
(情報提供:ミステリチャンネル)


