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こちらブルームーン探偵社

Moonlighting (ABC 1985 - 1989)
放送チャンネル

AXN

放送日時

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番組紹介
アダルトなあなたに贈る大人のロマンティック・コメディー&ミステリー?

はっきり言って「こちらブルームーン探偵社」と聞いても、「なんじゃあ、そりゃあ?」と首をかしげる人が多いのではないかと思う。なにしろアメリカでの放送開始が1985年、実に20年以上も前なのだから。しかし、このドラマは放映当時、全米はもちろん、ここ日本でも大人気を博し、この2月もミステリーチャンネルでいくつかのエピソードが再放送されているという名作人気ドラマなのだ。それまで無名だったブルース・ウィリスを一躍有名にした、彼にとって記念すべき作品でもある。確かに、この番組は大人気のアメリカドラマ「ビバリーヒルズ青春白書」とか「ドーソンズ・クリーク」みたいにかわいい女の子やハンサムボーイが出てくるわけでもない。また、デイビッド・E・ケリー制作のシリアスな社会派ドラマでもないし、「X-ファイル」みたいな不思議ものでもない。しか~し、最近流行りのドラマと違うからといって、「ブルームーン」を見くびるなかれ。この作品は他のどの作品にも引けを取らない「お洒落な大人のロマンティック・コメディー&ミステリー」なのだから。

ストーリー

物語はマディ(シビル・シェパード)に降りかかった災難で幕を開ける。スーパーモデルのマディ・ヘイズは、メイドやおかかえコックそして運転手までついた大豪邸に住む優雅な暮らしをしていた。ところがある日、彼女のマネージャーが財産のほとんどを持ってドロンしてしまったからさあ大変!残った財産の整理をしていくうちに、自分がある赤字経営探偵社の名目上のオーナーであることを知る。これ以上お金が減っては困るマディは探偵社を解散させようとオフィスを訪ねるのだが、そこで探偵をしていたデイヴィッド(ブルース・ウィリス)に会ったのが運の尽き!デイヴィッドはマディにあれやこれやとまくし立て、一緒にパートナーとして探偵社を続けていこうと口説く。強引なデイヴィッドに驚き、あきれ、怒りさえ覚えるマディ。片や失業の憂き目に遭いたくないデイヴィッドも必死に説得を試みる。

そんなとき二人は期せずして殺人事件に巻き込まれる。マディは意に反してデイヴィッドと行動を共にし、事件を解決するハメになってしまうが、意外にもその事件でスリル満点の探偵業を楽しんでしまう。またデイヴィッドがただの軽薄おちゃらけ人間ではないということもわかり、彼女は「ブルームーン探偵社」の社長兼探偵として第二の人生をスタートすることを決意する。こうして「仕事のパートナー以上恋人未満」というマディとデイヴィッドとの微妙な関係が始まり、二人は数々の難事件・珍事件を解決していくのだ。二人が挑むミステリーはもちろん、デイヴィッドとマディの関係を明るく楽しく、そしてあくまでもく軽~いタッチで描いていく。

アダルトな魅力いっぱいの主役たち?

では「ブルームーン」が大人のドラマたる所以(ゆえん)とは?

まずは主役を務めたシビル・シェパードに注目して欲しい。番組放送当時すでに35歳の彼女。でも決しておばはんではな~い!誰もが「ワーオ!」と思わず見とれてしまう美貌とスタイル(ナイスバディーではなくスタイルなのだ)を持つシビル。そんな彼女が演じるマディ・ヘイズは決して「かわいさ」を売り物にはしない。ダサいビジネススーツでもなく、ボディーラインをやたらと強調するような服でもなく、女性の繊細さや優しさを象徴するようなやわらかな色と素材のファッションスーツ(ピンクが多い)をカッコよく着こなしている。「大人の女性の魅力」をいかんなく発揮している彼女はかわいい女性ではなくカッコイイ女性なのだ。一度はトップモデルという社会的地位を自分の力で勝ち取ったシングルウーマン。それが一転、信頼していたマネージャーに裏切られ破産するという悲惨な運命に遭う。表面上は強く見える彼女も心の中では様々な不安や葛藤を抱えて生きているに違いない。けれどそんな内面を表には見せず、独立した立派な女性を肩肘張ってがんばって演じ通そうとする。ところが彼女の男性蔑視とも思える行き過ぎた発言を批判したり、決してもう若くはない独身女性の不安や悩みをズバリと突いてくるのがパートナーのデイヴィッド。マディはそんなデイヴィッドの指摘を必死になって否定し、あくまで強がりを見せる。そんな彼女の姿は健気でコミカルでもあり、そして時に切ない。マディは良くも悪くも80年代社会に進出していった女性の象徴でもあるのだ。

さて、ご存知ブルース・ウィリス演じる本編のヒーロー、デイヴィッド・アディソン。ブルース自身、放映開始当時30歳。今ほどではないが、すでにオデコと髪の毛のボーダーラインがかなり後退してきている。つまりデイヴィッドは一見、誰もが想像するようなミスター・パーフェクト、ミスター・ハンサムではない。けれど彼が演じるデイヴィッドは母性本能をくすぐるかわいらしさとやんちゃさ、プラス頼もしさを兼ね備えたなチャーミングな男性だ。ふだんは唄って踊りながらジョークばかり言っているお調子者の彼だが、部下や仲間への情は厚く、仲間が困っているときは絶対に放っておかず、全身全力で助けてあげる。だけどまたデイヴィッドは大変な照れ屋でもある。本当の彼は優しく思いやりのある人間なのだが、それを相手に知られまいと、とんでもないことを言って大切な人を怒らせてしまったり、傷つけてしまったりする(特にマディ)。それをまた独りで後悔してしまう彼。そんなデイヴィッドの不器用さは彼の魅力の一つでもあり、マディや探偵社の職員、そしてこの番組を見る誰もが愛さずにはいられないキャラクターである。

遊び心いっぱいのセリフ

それに加えて二人の間で交わされる洒落っ気たっぷりのリズミカルな会話のキャッチボールがイカすのである。とにかく速いペースで二人ともよく喋る。同時に喋りまくることすらある。お互い相手に魅かれていることに気づいてはいるものの、自分の正直な気持ちへの照れのせいと、相手に悟られまいとして意地を張ってしまう二人は、なににつけても言い争ってしまうのだ。そんな二人のやりとりは実に軽妙で、愉快だ。また主役の二人だけでなく、探偵社の秘書であるアグネスのセリフも、絶品だ。まるでふざけた宣伝文句のような彼女のセリフはブルームーン探偵社名物といってもいい。彼女は電話対応の時にそのなんともおかしいセリフをいかんなく披露してくれる。そしてその英語のセリフに注意して耳を傾けると、本当の詩と同じように韻を踏んでいるのだからスゴイ。登場人物の口を介して脚本家がこの番組を楽しんでいるのが伝わってくる。

名脇役の音楽

そして忘れてはならないのが音楽。アル・ジャローが歌う主題歌はもちろん、作品の中で流れる曲もこのドラマを演出する大切な要素のひとつだ。流行りのポップスではなく、時にはロマンティックな、そして時にはセンチメンタルなドラマの一場面に視聴者を引き込んでうっとりさせてしまうシットリとした曲ばかりだ。シビルも番組の中で、ブルースに乗せてそのセクシーなハスキーボイスを披露してくれる。当時のテレビ番組としては珍しく、サントラが発売されたほどこの番組の選曲はすばらしいのだ。サントラではシビル・シェパードの歌声はもちろん、ブルース・ウィリスのナンバーもお楽しみいただける。そのほかリンダ・ロンスタッドやビリー・ホリデー、そして全く雰囲気を変えてリンボー・ロックなども収録されていて、ブルームーン・ファンでなくても十分楽しめるアルバムに仕上がっている。日本では絶盤となったと聞いたけれど、先日あるCDショップにちゃんと置いてあったので今のうちならゲットできるかもしれない。興味がある人は探してみては。はっきり言ってお勧めの一枚だ。

哀しい結末

さて、残念ながらこのような番組の楽しさは最終回までは持続できなかったようである。ファースト・シーズンそしてセカンド・シーズンまでは、少なくとも製作者側はこの作品を作ることを、とても楽しんでいたようで、そのノリというか勢いが脚本や出演俳優たちのセリフから視聴者にも伝わってくる。ところが当時からシビル・シェパードとブルース・ウィリスは、とても友好的といえる仲ではなかったらしい。しかもシビルが自分の演じるマディのセリフが気に入らず、プロデューサーに苦情を言っては衝突を繰り返していた。この番組の最大の見せ場であるセリフの掛け合いのせいで脚本の長さは通常のドラマの1.5倍もあり、ただでさえ撮影に時間がかかるのに、主役二人の不仲や、シビルの不満でスケジュールどおりに撮影を進めるのは至難の業となる。そのため、放送予定のエピソードの完成が間に合わず、以前のエピソードを再放送したり、本来の放映時間に満たない長さのエピソードを放映しなくてはならなかったり(そのときは主役の二人を番組の最初に登場させて「今回のエピソードは短いですよ」なんて言わせて、ギャップを埋めている)前途洋洋とは言いがたい状況で番組を続けていた。

そんな中、シビル・シェパードが妊娠。一方、この番組で一躍世間の注目を集めたブルース・ウィリスは、活躍の場を映画界まで広げていく。そのため主役二人のスケジュール調整が難しくなってしまった。ファイナル・シーズンではどちらか一方だけを出演させたり、二人の粘土人形を登場させたりして(クレイメーションとかいうものだと思う)なんとか番組を続けていくのだが、当然のことながら以前のようなクオリティの番組には仕上がらず視聴率はどんどん低下していく。さらにシビルとの不和でプロデューサーはついに番組を降板。「こちらブルームーン探偵社」のファイナル・シーズンは失速状態におちいる。こうしてストーリーも俳優も制作側も以前のような勢いを失い、1989年5月、「こちらブルームーン探偵社」は多くファンの失望のうちに幕を閉じた。


(文:シオン)
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