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ハリウッドを拠点に活動するテレビ評論家。Television Critics Association (TCA)会員として年2回開催される新番組内覧会に参加する唯一の日本人。Academy of Television Arts & Sciences (ATAS)会員でもある。アメリカ在住20余年。

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ハリウッドなう by Meg

意外と面白い今秋の新作「The Brave」「The Orville」「Young Sheldon」。視聴率は?

2017~18年シーズンの秋の新作は、情け無いほど面白くありません。例年の如く、一応パイロット版は全て観たのですが、注目に値する作品が皆無に近い暗~いシーズンとなりました。


それでもめげずに、数話観たところ、うーん、なかなかの出来じゃないか!と感心したのが、NBCの愛国心バリバリの「The Brave」と「スタートレック」と見紛うFoxのSFモノ「The Orville」のドラマ二本です。


パイロットは、まあまあの出来でしたが、「The Brave」は主役のマイク・ヴォーゲルに惹かれて、しばらく我慢の子で観続けようと思っていました。「パンナム」に出演が決まった時に一度お目にかかったのですが、何と言ってもちょい役ながら映画「ヘルプ」でヴォーゲルの演じたキャラが好きで、地上波局の軍隊モノ新作の中から、俳優で選んでしまいました。


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左からマックG役ノア・ミルズ、ジャズ役ナターシャ・カラム、プリーチ役デミトリアス・グロス、諜報員アル・ライサニ役ハディ・タバール、特攻隊隊長のダルトン大尉役ヴォーゲル。(c) Jeff Riedel/NBC


内容は中東にお忍びで待機している特攻隊5人が、米国国防情報局(DIA)の指令で全世界の危機やテロに対処するアクション・ドラマです。ハラハラ、ドキドキの末、救出や脱出を果たすもので、毎回スリル満点です。ヴォーゲルがお目当てで観ようと臨んだプレスツアーのパネルインタビューですが、マックG役のノア・ミルズは画面で見るよりも、実物の方が遥かに魅力的でした。ミルズもヴォーゲル同様、モデル出身の好感度抜群の俳優です。視聴率が芳しくないので、先行きが心配です。


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ヴォーゲル(左)とミルズ。モデル出身の役者が2人揃うのは珍しい?ミルズは、「まだまだ新米なので、学ぶことが一杯です」と抱負を述べた。(c) Lewis Jacobs/NBC


CBSの「SEAL Team」は主役にデヴィッド・ボレアナズ(「BONES 骨は語る」)が起用されていることが判明した時点で、興味が半減しました。そして、何よりも興醒めだったのは、パネルインタビューでも、CBSオールスター・パーティーの席上でも、制作陣が「軍隊モノ」であることを執拗に否定したことです。何故認めないのかは未だに謎のままですが、家庭生活に重点を置くと主張するプロデューサーのサラ・ティンバーマン(「マスターズ・オブ・セックス」)に、「パイロットを観た限り、『ザ・ユニット 米軍極秘部隊』に似ていると思いました」とコメントしたところ、顔色が変わり、側に立っていたプロデューサーとヒソヒソ話をする始末。「ユニット」が好きだったから指摘したのですが、どうもご機嫌を損ねたようで、後味の悪い会話になりました。そこまで、否定するには、何か訳があるに違いありません。


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デヴィッド・ボレアナズは、ネイビーシールズ・ブラボーチームのヘイズ隊長に起用された。「BONES」後のシリーズ復帰作となる。WENN.com


一方、CW局のカラーにそぐわないもう一本の軍隊モノ「Valor」は、戦闘ヘリコプター操縦士として初めて女性が起用されたことに重点を置いたドラマです。こちらは、プロデューサーも俳優もあっさりと軍隊モノであることを認め、CBSとは対照的で爽やかでした。残念ながら、CW視聴者には受けが悪く、シーズン2は期待できそうにありません。


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番宣ランチが開催されたホテル中庭には、主役を演じるクリスティーナ・オチョア(左)とマット・バーの大型ポスターが展示された。(c) Meg Mimura


CBSオールアクセスのオリジナル第二弾として始まった「スタートレック ディスカバリー」は、余りの暗さに一話で見限りましたが、SFモノが大いに苦手な私でさえ、Foxの新作「The Orville」には、すっかりハマってしまいました。シーズン2が既に確約されている事実を見る限り、局自体が視聴率に満足しているものと思われます。


夏のプレスツアーの最中にパイロットを含めた全三話をオンラインで視聴できるようになっていたのですが、私の好きなジャンルではないので、視聴せずにパネルインタビューに臨みました。プロモはコメディーとして押していましが、第三話はとても奥が深いドラマなので、「コメディーとして宣伝しない方が良いのでは?」とある評論家から提案があり、これは一見の価値あり?と観て、すっかりファンになってしまいました。


映像がそれはそれは美しく、50インチのハイデフで観るために制作されたような宇宙探検ドラマに仕上がっています。又、ダークマターなどの概念が映像として表現され、私のようなSF苦手人間でも十分に理解できる点も気に入っています。そして、何よりも夢も希望もない昨今、制作主演のセス・マクファーレンの発言通り「希望のあるドラマ」としてキラリと光っており、毎週楽しみに観ています。現代社会、特にトランプ政権下を暗に批判するような筋書きも多々あり、いつの時代も、どんな世の中でも、人間は然程変わらないんだなぁと思い知らされます。つまり、進歩が無いと言うことなのですが....


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自作自演のセス・マクファーレンは、オーヴィル号のマーサー艦長を演じる。三話以降、コメディー傾向(主にダジャレ)を放棄したのが成功の鍵?WENN.com


今秋のコメディーの話題作「Young Sheldon」は、パイロットを9月25日に放送して、人気を確認してから、11月2日より二話以降を放送するという珍しい方法でデビューしました。「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」のシェルドン・クーパー(ジム・パーソンズ)の生い立ちを描くコメディーです。「ビッグバン★セオリー」でシェルドンの口から聞いた子供時代を映像化したもので、9歳の神童シェルドンを演じるイアン・アーミテージ君がとても愛くるしい上、幼いシェルドンが素直で無邪気な点が大いに気に入りました。ここ数年、シェルドンが意地悪になり、人を蔑む言葉が聞くに耐えないようになっていたからです。パネルインタビューで、パーソンズがまるでアーミテージを我が子のように暖かく見守る微笑ましい姿が印象的でした。


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ジム・パーソンズは、「ビッグバン★セオリー」が始まってすぐにインタビューして、独占記事を書いた思い入れの深い俳優。腰の低さは変わっておらず、「久しぶりですね!元気にしてました?」と声をかけてくれた。「僕自身は、もっと粗削りな自信のない9歳だった」とアーミテージ君を称賛。 WENN.com


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神童シェルドンに抜擢されたアーミテージは、読書が趣味。テレビはほとんど観ないので、登板が決まってから、「ビッグバン★セオリー」を数話観て撮影に入ったと余裕綽々。怖いもの知らずなのか、本当に自信があるのか? WENN.com

第二話は、神童でなくても、学校で除け者扱いをされた経験のある視聴者にはジーンと来る逸話でした。パーソンズのナレーションも、視聴率獲得に寄与していることは間違いありません。難を言えば、シェルドンの母メアリー・クーパーの若かりし頃に配役されたゾーイ・ペリーと、ばあば役アニー・ポッツです。ペリーは、「スキャンダル6」で冷酷で無惨な役を演じている最中に、本作のオーディションを受けたと言いますが、私はあの怖い怖いサマンサのイメージを未だに拭い去ることができず、何度観ても慣れません。イメージがダブって、いつ切れるのだろう?とハラハラします。


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狂信的なメアリーの30代に抜擢されたゾーイ・ペリーは、本家本元メアリーを演じて来たローリー・メトカーフとジェフ・ペリー(「スキャンダル」のサイラス・ビーン役)の実の娘という曰く付きだ。 WENN.com


ばあばは、私のイメージと正反対のポッツが配役されて、小説を読んだ時に、頭に描いていたキャラ像と映画化された時のイメージのギャップに驚くのと同じく、もっと古風なテキサスのおばあちゃんを想像していたんだけど....と思いました。それでも、ポッツはしばらくすればしっくり来るかも知れません。シェルドンにポーカーフェイスを教え込むなど、なかなか強かなばあばだからです。

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モダンなばあば役を演じるアニー・ポッツ。ポッツの代表作「浮気なおしゃれミディ」 の頃から、ファンだったので起用されたのは嬉しいが、私のイメージとは月とスッポン!WENN.com

「風の勇士 ポルダーク3」米国で放送開始。未熟な男対実質的な女の闘いは、いつの世も変わらず?但し、18世紀英国の女が近代化され過ぎ?感は否めない

※「風の勇士 ポルダーク」日本未公開シーズンについてのネタバレがあります。


今秋の新作は、お薦めできるものがほとんどないので、放送開始されている継続番組をご紹介します。


10月1日からシーズン3が始まったのは、「風の勇士 ポルダーク」です。夏のプレスツアーでも取り上げられず、広報からは新シーズンのオンライン視聴可のお知らせもありませんでした。英文評を書くために、ギリギリまで待って、シーズン3を最後まで観た上で、漸く掲載に漕ぎつけました。PBSは公共放送なので、広報予算が皆無と承知していますが、完全に無視する余裕があるのでしょうか?


英文評


シーズン2第8話で、ロス・ポルダーク(エイダン・ターナー)は、妻デメルザ(エレノア・トムリンソン)を振り切って、’逃した魚’エリザベス・ポルダーク(ハイダ・リード)の再婚を阻止すべくトレンウィズ(ポルダーク本家の館がある地所)に駆けつけました。ポルダーク家の領地も鉱山も略奪したジョージ・ウォーレッガン(ジャック・ファーシング)が、再婚相手!?とは。血気盛んなロスはまるで最後の砦を守るかのように、エリザベスと一夜の契りを結んでしまいます。ロスに救われると早まったエリザベスの期待も虚しく、ポルダーク本家唯一の跡取りジェフリー・チャールズ(ハリー・マーカス)を守るため、更に準貴族の華やかなライフスタイルを維持するために、ジョージと再婚せざるを得なくなります。ロスへの恨み辛みから、打算的再婚に走ったエリザベスですが、一夜の過ちのツケが回って来るのがシーズン3です。


シーズン2放送前に、ターナーと英雄論を交わしたことは、2016年9月29日「エイダン・ターナー、ポルダークを語る」でご報告しました。私の憶測通り、ターナーが’英雄’のレッテルを剥がそうとしたのは、ロスの’紳士にあるまじき行動’を演じた後だったからです。元々、家柄やそれに付随する’力’には無頓着なロスですが、経済的/法的/精神的に追い詰められた結果の型破りな行動が際立つシーズン2でした。ターナーが止めを刺すように’謎だらけの不可解な男’、’無法者’、’裏切り者’、’反逆児’等の言葉でポルダークの影の部分を浮き彫りにしたのは当然です。


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コーンウォール地方の名士ジョージ(ファーシング)&エリザベス(リード)・ウォーレッガン夫妻、ロス(ターナー)&デメルザ(トムリンソン)・ポルダーク夫妻、ドワイト(ルーク・ノリス)&キャロライン(ガブリエラ・ワイルド)・エニス夫妻を中心に、ストーリーが展開されるシーズン3。 Courtesy of ©Robert Vigiasky/Mammoth Screen for BBC and MASTERPIECE


シーズン2は、家柄や権力を誇る準貴族階級対、財力で権力と家柄を手に入れようと躍起になる成金階級の激戦が描かれました。幼い頃からロス・ポルダークになりたい!と憧れてきたジョージは、鍛冶屋から叩き上げた成金三代目で、当時台頭し始めた銀行家と言う名の商人です。数々の策略が功を奏して、恋い焦がれたエリザベスを娶り、トレンウィズ乗っ取りに成功したジョージは、シーズン3は更なる権力を求めて治安判事、代議士、果ては国会を目指します。次々と立身出世しつつも、逆立ちしても貴族にはなれない上、自己嫌悪は日に日に度を増し、何を手に入れても至福を味わうことはありません。妬みと復讐が動機だからです。極めつけは、エリザベスが産んだ長男ヴァレンタインが自分の子供ではないかも?と、疑心暗鬼を生じて益々復讐に身を焦がし、損得尽くの弱い者苛めに徹します。今なら、実父確定検査をすれば済むことですが、何しろ18世紀ですから、証明の仕様がありません。苛めっ子もここまで来ると、滑稽であり、哀しくもあります。エリザベスにさげすまされるのは、時間の問題です。


Poldark Series 3 Teaser Trailer - BBC One


一方、ロスに依存して生きる家族、鉱夫や使用人の輪が広がった今、独り身の時に通用した善悪の判断ができなくなりました。「自由、平等、兄弟愛」の信念を貫けば、波紋は大きく、遠くまで広がります。裁判沙汰になって世渡り術を学んだのか?と思いきや、シーズン2後半で取り返しの付かない過ちを犯してしまったロス。シーズン3は、親友エニス医師(ノリス)救出作戦なる大冒険に身も心も注ぎ、家庭を顧みない身勝手な男になってしまいます。ロスの願いは、飽くまでも望みのままに生きること、家族とポルダーク領地を支えてくれる貧民を守ることです。


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ロス(ターナー)は、地元の繁栄と富を満遍なく分かち合うことが目標のリーダー格。いつの世も、使命感に燃える男にとって、家族は二の次でしかない。 Courtesy of ©Robert Vigiasky/Mammoth Screen for MASTERPIECE


現実を直視して、もっと賢く立ち回って欲しいと願うのは、飯炊き女から妻となったデメルザです。今シーズン、ロスの身勝手を許して溜まるもんか!と、夫婦平等を主張して、積極的に不倫相手を求めたり、実弟サム(トム・ヨーク)とドレイク(ハリー・リチャードソン)の布教活動用に、不動産分与を一存で決めてしまいます。21世紀でも、夫婦が完全に平等!と言い切れる女性が、何人いるでしょうか?今シーズンは、女性キャラ(特にデメルザ)が超近代化されて、現代女性顔負けの強かな女に豹変しました。原作を読んでいない私の憶測ではありますが、これも時代の流れを反映した有機的軌道修正なのでしょうか?18世紀の耐える女や尽くす女が主人公では、21世紀の視聴者の心を繋ぎ止めておけないのでしょうか?


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頑固一徹の男女の結婚の行方は?未熟な男(ロスやジョージ)対実質的な女(デメルザやエリザベス)の闘いが見事に描かれる。 Courtesy of ©Robert Vigiasky/Mammoth Screen for MASTERPIECE


蝶々夫人並みに崖っ淵に立って夫の帰りを待ちわびるシーンも多々ある反面、ロスの出世欲の欠如に不満タラタラのデメルザ。分家の長男とは言え、ポルダーク家の末裔が、御上として農民や労働者を上から押さえつけることに抵抗を感じると説明したにも関わらず、文句は尽きません。完璧ではありませんが、概ねいつも正しいことをしようと心がけ、世のため、人のため日夜努力するロス・ポルダークは、私にとっては’英雄’の外、何者でもありません。尤も、私はロスの奥さんではないから、英雄と呼べるのでしょう。


人助けの使命感に燃える人と結婚すると、家族は優先順位の下の方、下手をすると最下位かも知れません。アメリカ同時多発テロ事件の後、家族を顧みず、ツインタワーに飛び込み殉死した消防士の話を何度も何度も聞きました。英雄は家族を踏み台にして成り立つものです。そこで、デメルザに一言。踏み台にされていると思うなら、文句タラタラ、言い寄ってくる男達(次々と出て来るから不思議です)を利用してロスの気を引こう等、つまらない策略を巡らすのは辞めましょう。ロスに尽くすか、子供を連れて出て行くか、二つに一つ。どちらにしますか?

「世界制覇を目指している訳ではない。買手独占を何とか阻止したいだけ!」と訴えるジョン・ランドグラフCEO。寡頭支配制シリコンバレー・モデルの渦に巻き込まれたテレビ業界の未来を憂う

2017年夏のプレスツアーは、8月9日FX局のパネルインタビュー(継続番組3本、新作1本、特別企画2本)、セット訪問2箇所、フォックス撮影所内の中庭でのイタリアンディナーで華麗に幕を閉じました。


午後5時半から開催された「The Assassination of Gianni Versace: American Crime Story」は、クリエイターのライアン・マーフィー以下5人のタレントが参加し、オペラ風の導入部が初公開されました。ほんの数時間前に、目にしたヴェルサーチ邸の玄関やバスルームが巨大スクリーンに映し出され、親近感が深まりました。セット訪問後に映像(5分程度)を見せるのは、巧みな演出です。「アメリカン・クライム・ストーリー」第二弾、ジャンニ・ヴェルサーチ暗殺事件は期待できそうです。因みに、’暗殺’には単に殺害するのではなく、ヴェルサーチのライフスタイルをこの世から抹殺することで、ゲイへの嫌悪を表現する意図が読み取れるからだと説明がありました。

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FX局の顔となったライアン・マーフィー。現在、「アメリカン・ホラー・ストーリー」「アメリカン・クライム・ストーリー」「フュード/確執」のアンソロジー3本を抱えている。「ヴェルサーチは、最も尊敬するアーチスト」とパネルインタビューで披露したほど、個人的な思い入れが深い。ゲイであることを公表して、華麗な生き方をしたヴェルサーチは、マーフィーのお手本と言うことだ。 WENN.com

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ジャンニ・ヴェルサーチ役を射止めたエドガー・ラミレス。マーフィーから声がかかって、「是非仕事をしたいプロデューサーだったので、即引き受けた」と語った。「兎に角、脚本のペースがとても気に入っている」とも披露。 WENN.com

しかし、同日の午前10時半から実施されたFX局ジョン・ランドグラフCEOのセッションは、これまでにない憂えに満ちた悲観的展望で、奈落の底に突き落とされたような気がしました。テレビをこよなく愛するランドグラフCEOは、年に2回、配信形態の多様化でどのような課題を抱えているか等、歯に衣着せぬテレビ業界の行く末や所見を披露し、希望の光を与えてくれる希少価値のお偉方でした。テレビ業界の’一抹の光’でさえ、今まさに風前の灯火であるかのような、後味の悪い感傷的なプレスツアー最終日となりました。


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ランドグラフCEO (左)と奥方/女優のアリー・ウォーカー。ランドグラフのセッションを体験せずしてTCAを語れないと言っても過言ではないほど、テレビ業界の守護神的存在で、業界からもメディアからも尊敬されている。 (c) Stewart Volland


このコーナーに記事を書くようになって、日本からは全く見えないテレビ業界の内情やストリーミング配信会社との複雑極まる関係などを折に触れてご報告してきました。特に「ピークTV」(=供給過剰)については、2013年以降、ランドグラフCEOが提示したグラフや表を利用して説明して来ました。供給過剰に加担する一方、飽くまでも視聴者数を明かさないストリーミング配信会社(特にネットフリックス)が、業界を根底から覆して混沌を生み出したからです。


プレスツアー開始2週間前の7月12日に、「遂にバブル弾けた?ネットフリックス社の相次ぐ打ち切りが引き金?」と題して、ネットフリックスの日の出の勢いが衰えた背景と事情を、「ブラッドライン」を例に挙げて、ご報告しました。しかし、ランドグラフCEOが持参した8月9日現在の統計では、2016年には、(脚本を元に制作された)ドラマ+コメディー計325本が放送されましたが、2017年同期には既に342本に増えていました。例年の如く、ストリーミング配信会社は、昨年の2割弱増の62シリーズを発表しました。既に配信の発表をしておきながら、配信に至っていない作品は、何と79シリーズもあります。ストリーミング配信会社が、何の理由か溜め込んでいると言うことです。「この驚くべき数字は、Apple TVが市場参入する以前のこと」とランドグラフCEOが指摘し、オリジナル・シリーズでしのぎを削る「ピークTV」は、まだまだ続く模様と予想しました。バブルは弾けたように見えましたが、あれは蜃気楼だったのでしょうか?数字を見る限り未だに膨らみ続けています。


そしてこの日、ランドグラフCEOが供給過剰を生み出した米国経済を分析して、噛み砕いて説明しました。要は、シリコンバレーの巨人が、テレビ領域に土足で踏み込んで来たのです。嘗て、私は地上波局を大衆相手のデパート、ケーブル局をブティック店に例えて業界を説明していました。そこに、大型量販店が乗り込んで来たと想像して頂ければ、現況が明白になります。大型量販店は、数をこなすこと、赤字などお構い無しに商品を買い漁り、消費者の’目’を捉えて現金化、最終的には世界を牛耳ることを目的としています。奇しくも、昨今エンタメ(映画・テレビ)業界を乗っ取ろうと目論んでいる大型量販店の1軒はアマゾンですが、流通産業界ではウォールマートと死闘を演じています。


最早、独禁法など過去の遺物です。シリコンバレー・モデルは、規模、データ、テクノロジー、アルゴリズム、財力を駆使して、市場シェアを拡大拡張し、世界制覇を目指します。そして投資家は、従来の儲けを出す会社に投資するのではなく、赤字でも中小企業をどんどん飲み込んで、お山の大将になり得る会社の規模や世界制覇の可能性に賭けるからです。ランドグラフCEOは、「親会社の21世紀センチュリー・フォックスは年間70億ドルの利益を出す。それに引き換えオリジナル作品に放出するあるストリーミング配信会社(N社を暗示)は、25億ドルの赤字だ」と指摘しました。年間95億ドルの予算があったらどんな作品を選ぶのだろう?と一瞬想像したランドグラフですが、即「自分で品定めして、好みの商品のみ扱えるブティックが好き」と切り返しました。品質、素材、詳細にこだわりがあれば、当然ブティックですよね〜。「世界制覇を目指している訳ではない。買手独占を何とか阻止したいだけ!」と訴えます。


食傷気味になる程、多数の作品が制作/発表されますが、大型量販店(=ストリーミング配信会社)が赤字を承知で買い漁るからです。このシリコンバレー・モデルには、製造業者が培って来た所謂’ブランド’は、利鞘が減るので無用の長物なのです。要は、市場シェアを二分するアマゾンかウォールマートに卸さなければ、いずれは商売が立ち行かなくなるからです。この様な買手が優位な態勢にあることを、買手独占と言います。クリエイターや俳優などのアーチストにとって、買手が数社しかない=選択肢が限定されると、才能を発揮できる機会が減少すると言うことです。


更に、落ち込む理由として、各業界を二~三大企業が牛耳っていて、それを阻止する法律も規制も無く、野放し状態であると言う点が指摘されました。アマゾン対ウォールマート、フェイスブック対グーグル対アップル、インスタグラム対スナップチャット、ネットフリックス対アマゾン対地上波+ケーブル局が好例です。ネットフリックス対アマゾン対地上波+ケーブル局の死闘から供給過剰が生まれ、数限りない水増しされた平均以下の作品が世に送り出されているのが現状です。


シリコンバレー・モデルのとどのつまりは、地上波+ケーブル局が合併吸収を繰り返して規模を大きくしても歯が立たないネットフリックスとアマゾンしか生き残れない、視聴者には何の選択肢もない社会です。テレビの将来は、夢も希望もないのでしょうか?テレビを愛する我々は、今何をすれば良いのでしょうか?飛びつきたくなる17年秋の新作がゼロという事実も相まって、8月9日以降、気が重くなる一方の私です。

2017年TCA賞「THIS IS US 36歳、これから」と「Leah Remini: Scientology and the Aftermath」の受賞に乾杯!いずれもエミー賞獲得を祈りつつ....

2017年のTCA賞授賞式は、去る8月5日夜に開催されました。毎年6月に私が選んだ俳優や作品のリストをTCAに提出します。手間暇かけて、一年の総決算だと信じて、無駄な演習に終わってしまうのを承知の上で、自分なりの候補を選んで自己満足しているだけです。


今年も12カテゴリーに6俳優/作品が選ばれ、最も得票数の高かった俳優あるいは作品にTCA賞が贈られました。毎年、私が贔屓にしている俳優やハマっている作品は最終候補にも挙がらず、今年は自棄のやんぱちで、該当するカテゴリーは全て「THIS IS US 36歳、これから」に投票しました。5日お昼前に、受賞者のリストがメールで送られてきて、「THIS IS US 」と「Leah Remini: Scientology and the Aftermath」の受賞が判明しました。翌日早朝からABCの映像インタビュー10本が入っていて、質問の準備に忙しく、今年は不参加を決め込むことにしました。


今年の打率は6分の1で、例年よりは良い(?)結果でした。「THIS IS US 」の健闘を期待していたのですが、蓋を開けてみたら、最優秀新作賞のみの受賞に終わってしまいました。絶賛されたドラマだけに、総ナメではないか?と思っていたのですが....現実は厳しいものです。それにしても、心温まる人間ドラマが根暗ドラマに押し潰されて、まるで蛍の光です。来年の夏は、トランプ公害で空気が淀んで、蛍はTCAに戻って来ないような、悪い予感がします。


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中央の演壇で新作賞受賞の喜びを語る「THIS IS US 」のダン・フォーゲルマン(クリエイター)。左手には制作関係者、主要キャストの面々は右手に勢揃い。 (c) Frederick M. Brown, Getty Images

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授賞式会場に到着したばかりのマイロ・ヴィンテミリア。エミー賞ドラマ部門の最優秀男優賞候補に挙がっているが、8月1日NBCパネル後にお祝いの言葉を述べたところ、「候補に挙がっただけで、何も変わらない!」と手放しで喜んでいる様子ではなかった。授賞式で撮影されたどの写真を見ても、仏頂面のヴィンテミリア。何かあったの?と心配してしまう。 (c) Frederick M. Brown, Getty Images


エミー賞の最優秀ドラマ候補をはじめとして、6部門にノミネートされている「THIS IS US 36歳、これから」です。地上波局のドラマが最優秀作品賞の候補に上がったのは、2011年の「グッドワイフ」以来のことで、完全にケーブル局の暗~~い、夢も希望もないドラマに長年圧倒されてきた地上波局ですから、是非本作で挽回して欲しいものです。


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2017年の新作賞は、「THIS IS US」が受賞。メインキャストの(左から)ヴィンテミリア、マンディー・ムーア、ジャスティン・ハートレー、スターリング・K・ブラウン、スーザン・ケレチ、クリス・サリバン、クリシー・メッツ。エミー賞最優秀ドラマ賞は、受賞できるか? (c) Stewart Volland


心温まる家族ドラマとは、まるで正反対の「Leah Remini: Scientology and the Aftermath」ですが、私とは好みが全く違う評論家が、このピカイチ!リアリティー番組に投票したことは、青天の霹靂です。信じられません!


私が宗教団体の内部告発モノ(例:HBO「Mea Maxima Culpa: Silence in the House of God」)やカルト教団の内幕暴露モノ(例:HBO「Going Clear: Scientology and the Prison of Belief」Showtime「Prophet's Prey」など)が大好きなのは周知の事実です。2015年9月27日の「事実は小説よりも奇なり!を実証する最近のドキュメンタリーが面白い」で「Prophet's Prey」を、古くは2013年1月30日の「TCA冬のプレスツアー」で「Mea Maxima Culpa: Silence in the House of God」をお薦めしました。

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受賞の喜びを語るリア・レミニ(中央)。左には、サイエントロジー暴露番組に不可欠の元教団幹部から内部告発者に転じたマイク・リンダー、右手は番組のプロデューサー。 (c) Frederick M. Brown, Getty Images


シーズン1は、サイエントロジーの起源や創始者のL・ロン・ハバードの生い立ちから奇行に始まり、レミニ自身のセレブ布教活動や教団内体験、脱退あるいは逃げ出さざるを得なくなった元信者の苦難がドキュメンタリーとして綴られました。又、サイエントロジー盲信者の手になる体罰、性的虐待、脅迫、違法行為など、個人的体験談を記録しました。サイエントロジー教団撲滅運動を率いる元信者で女優のリア・レミニの勇気と行動力、熱意に大いに触発されました。


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日本では知名度は低いが、「The King of Queens」で9シーズンも主役を務めたレミニ。2013年にサイエントロジー教団を脱退、15年11月「Troublemaker: Surviving Hollywood and Scientology」を出版、内部告発者として教団から様々な罪状で糾弾されている。エミー賞を獲得して、撲滅運動を続けて欲しい。 (c) Stewart Volland


サイエントロジーの根深いマインドコントロールは、2015年アレックス・ギブニーが制作した「Going Clear: Scientolology and the Prison of Belief」が描写した’信仰と言う名の檻’が脱退者の体験談から克明に描かれました。この映画の中で紹介された元教団幹部マイク・リンダーが、「Scientology and the Aftermath」では、レミニの右腕となり、脱退者が仕返しの恐怖に慄きながら語る暗い過去を披露します。


カルト教団叩きは、映画→ドキュメンタリー・シリーズ→テレビドラマと変遷しています。E!局のオリジナル・ドラマ第二弾「The Arrangement」は、ヴァニティ・フェア誌2012年10月号が暴露したトム・クルーズの花嫁選びオーディションと背後で糸を引くサイエントロジー教団の陰謀を彷彿させる面白いドラマです。もう1本、’信仰と言う名の檻’を見事に描いているシリーズは、「ザ・パス」(Hulu)です。このドラマは、教祖になる為には教えに反することでも平気でやってしまうサイコパス、教団で育った女性と外部の男性が築こうとする理想の夫婦/家庭、親子三代の信仰度の差などを描く、これまでになかった秀作です。日本でも視聴できるので、是非チェックしてください。

トランプの悪政や独裁者振りを茶化して嘲笑するしか鬱憤晴らしの手がない?笑っている場合ではない米国の切羽詰まった政情不安。

今年1月のプレスツアーが、トランプ対策一色だったことは、2月8日の記事でご報告しましたが、去る7月25日~8月9日に開催された2017年夏のプレスツアーは、目に余るトランプの悪政や暴言を嘆き、一触即発の米国を案じる暗~~いツアーとなりました。


それでも咋夏のように、誰もが涙、涙した「This is Us」級の、毛色の違うドラマが1本でもあれば、一抹の光が差したに違いありません。残念ながら、パイロットを何度見直しても、鈍い光を放つ作品さえ見当たりません。ドラマの本数が増えている割に、コレッ!と思う作品は毎年減少を続けてきましたが、ここに来て遂にお薦めできる作品が底を突いてしまいました。情けないと言うか、悲惨と言うか....世知辛い社会を反映しているのか、逃避する場所をドラマが提供してくれないから、暮らし難い世の中になってしまったのか?卵が先か、鶏が先か?問答なので、悩んでも無意味なのですが....


カオスが生き甲斐のトランプは、毎朝大統領にあるまじき「つぶやき」を垂れ流して、常識人を震え上がらせ、世界から浴びる注目をエネルギー源に、野放しの悪ガキ/’いじめっ子’が天下を取ったような行動を続けています。取巻きにまともな大人がいないことが問題で、無法な振る舞いは国民に広がって浸透し、非常識と勝手気ままがまかり通る’超住み難い国’に成り下がってしまいました。


米国民は遣る瀬ない思いを、トランプ叩きを一手に引き受ける深夜のトーク番組やコメディーに託し、前代未聞のホワイトハウス茶番劇を嘲笑して何とか対処しようと試みます。選挙運動中は、ニュース番組の視聴率が跳ね上がりましたが、トランプ政権が始まって以来、政界風刺コメディーに視聴者が集中して、視聴率が下がる一方のドラマを尻目に、盛り上がりを見せています。


それが証拠に、ケーブル最終日(7月29日)「悪政が深夜トーク番組を盛り上げた?」と題して、パネルインタビューが実施されました。深夜トーク番組の放送作家4名が参加し、評論家から質問攻めに会いました。
クリスティーン・ナングル(「The President Show」Comedy Central局)
ハリー・ハグランド(「The Daily Show with Trevor Noah」Comedy Central局)
ジェイソン・リーチ(「The Jim Jefferies Show」Comedy Central局)
アッシュリー・ニコール・ブラック(「Full Frontal with Samantha Bee」TBS局)


4月27日から放送されている「The President Show」は、トランプのモノマネで名を馳せたアンソニー・アタマナクが自作自演する政界風刺コメディーです。メディアを敵に回したものの、元々主演することに生き甲斐を感じているトランプが、自身のトーク番組を持ったら?の想定で創作されました。深夜のトーク番組形式をそっくりそのまま模した上で、アタマナクが演じる大統領が司会、毎回、テーマに因んだ著名人のゲストをインタビューします。


Donny Goes to School - The President Show - Comedy Central


大統領の活躍振り(?)を記録したコーナーもあり、涙が出るほど笑った例として、このビデオをご紹介しました。悪ガキをコントロールしようと四苦八苦するペンス副大統領(ピーター・グローツ)の姿が哀れです。

トランプはオバマ内閣入りできなかった’負け組’を取り巻きにしてきました。「(胡散臭い連中の)外見を茶化すのは手っ取り早いけど、コメディーのネタとしては薄っぺらい。トランプの狂気の沙汰を心理分析して、何故大統領にのし上がったのかを掘り下げ、のし上らせてしまった米社会を斬ることが目的」と番組の趣旨を明らかにしたのは、ヘッドライターのナングルです。


ゲストの中で、トランプの痛い所をぐさりと突いたのは、ディーパック・チョプラでした。「問題はあなたの自己嫌悪です」と、真顔で繰り返し指摘しました。あの尊大さは、自己嫌悪の裏返しなんですね。な、る、ほ、ど!納得、納得です。更に、アタマナクのコメントに注意深く耳を傾けると、トランプが偽トランプの10分の1でも自分の傲慢さに気が付けば、少しはまともな人間になれるのに....と思うものの、70歳過ぎて今更改心する訳がありません。トランプを1日も早く罷免したいと願う、常識ある視聴者の自己満足に終わってしまわないと良いのですが....

Russia and North Korea Test the U.S.: The Daily Show


「ザ・デイリー・ショー」は、1996年から放送されているニュース・ダイジェスト番組で、2015年南アフリカ出身のトレヴァー・ノアが三代目の司会者となり、「The Daily Show with Trevor Noah」が生まれました。上の映像を選んだのは、北朝鮮の脅威を米国民がどのように捉えているか?似たり寄ったりの怖~~い独裁者トランプとキム・ジョンウンが交わした売り言葉に買い言葉に、身の危険を感じたのは私だけではないと読み取って頂きたかったからです。


ライターのハグランドは、「オバマ大統領時代には、世界中のニュースを取り上げる余裕があって勉強になったけど、トランプのやることなすことが国民の逆鱗に触れるから、結局毎日トランプネタで埋まってしまう。1週間前に、一度トランプのトも出ないニュースを扱ったんだけど、何とも気分爽快だった(笑)」と、トランプの暴挙暴言に辟易しているコメントでした。視聴率を維持するためとは言え、毎日狂気の沙汰を繰り返し体験するのはPTSD(心的外傷後ストレス障害)ですよ。


Bill Cosby's Mistrial and the Fame-to-Blame Ratio - The Jim Jefferies Show

オーストラリアのコメディアンが司会する「The Jim Jefferies Show」が、コメディー・セントラル局の3作目です。知名度と起訴率が反比例することをグラフにして説明するジム・ジェフリーズをご覧ください。中には、これ誰?と首を傾げる顔写真もありますが、思わずニンマリのビデオです。

唯一のコメディエンヌによるトーク番組「Full Frontal with Samantha Bee」は、カナダ人サマンサ・ビーが、ヒラリー派の第一人者として、トランプをこき下ろすダイジェスト版です。トランプ政権が始まった3~4週間は、毎朝、目が覚めると、「さー、今日は何をしでかしたのかな?」とニュースをチェックしていましたが、観るに耐えないので、「Full Frontal」 の1週間分の纏めで充分だと悟りました。トランプが選んだ官僚が女性に如何なる被害をもたらしているかをレポートすることで、他の政界風刺コメディーとの差別化を謀ります。政治に何の興味もなかった私でも、女性の将来を左右する法律を学び、トランプの一挙一動を監視しておくべきだと思うようになりました。更に、「The President Show」で、失態や失言の根源を分析することにしています。

Heir to the White House Throne | Full Frontal with Samantha Bee | TBS


トランプを取り巻く女性、特に元民主党派だったと発表した娘イヴァンカが、ホワイトハウスで何をしているのか?は、大いに笑えるのでご覧ください。他にも、時代錯誤の米国南部で女性がどのような扱いを受けているか、ニュースとして取り上げられたことがない信じられない話題を取り上げます。


「The President Show」は、大統領のトーク番組形式ですが、今回ご紹介した「デイリー・ショー」「The Jim Jefferies Show」「Full Frontal 」の司会者は、全て外国人です。米国で生まれ育った人の盲点を突けるのは、第三者としてこの国に住む外人にしかできませんが、外人にいちゃもんをつけられて、アメリカ人は平気なんでしょうか?


放送作家4人の不平不満を纏めてみました。
1)制作会議が終わった時点で、トランプの「つぶやき」が入ってきて、朝決めたことを覆さざるを得ず、振り出しに引き戻されること。早朝の制作会議の意味がない。
2)官僚の雇用や解雇など、事情が刻々と変わるので、油断も隙も無い。どこにいても、何をしていても、携帯を切ることができない。
3)疲労困憊!!!いつまで続くの?!


「The Jim Jefferies Show」のヘッドライターを務めるリーチも、声を大にして「四六時中、トランプネタなんて、楽しい訳がない。もううんざり!」と言います。トランプ政権半年にして、辟易するのは悪政の被害を被っている国民のみではありません。制作側がうんざりしているのですから、視聴者も当然、そろそろ笑っている場合ではない?!と気が付いているのではないでしょうか?異常が平常になりつつある今が、何とかする潮時かもしれません。

ネイルサロンのソプラノズ!?5人の強かな女の波瀾万丈の生き様は現実逃避に持ってこい!演技派ニーシー・ナッシュ、キャリー・プレストンが光る「Claws」

ケーブル局は、地上波局が一休みしている夏は書入れ時!とばかりに、面白い番組をデビューさせてきましたが、今夏は少々様子が違います。地上波局はここまで手抜きして大丈夫?と言いたくなるほど怠慢を決め込み、ケーブル局からもコレッ!と言う作品が登場しません。ゴールデンタイムはDVDを観るか、DVRに撮り溜めしておいたものを観るしかなかったのですが....



6月11日からTNTで放送されている新作「Claws」は、意外にも続きが待ち遠しいドラメディーとなりました。昨年、暗~い、極道の女たち路線を目指して、「Animal Kingdom」と「Good Behavior」を発表したTNTなので、「Claws」も?と思ったのですが、「Good Behavior」級にはまってしまいました。2016年12月19日「ペテン師と殺し屋の丁々発止のやり取りが面白い『Good Behavior』」で述べたように、「Good Behavior」の主人公レティ(ミシェル・ドッカリー)と同様、根っからのワルではない、努力するものの最後の押しが足らず、ずるずると悪事に引きずり込まれてしまう、応援したくなるキャラが勢揃いしているからです。


舞台はフロリダ州マナティ郡(人口約34万)。マイアミのような洗練された都会ではなく、労働階級が集まる町です。行き場のない閉塞感漂う、フロリダ・ノワール(犯罪ドラマ)ですが、「ブラッドライン」とは異なり、ネイルサロンで働く5人の強かな女達の超シリアスな面と超コメディーの側面のコントラストが面白いドラメディーに仕上がっています。

デズナ(ニーシー・ナッシュ)は、自閉症の弟ディーン(ハロルド・ペリノー)を抱え、街角のネイルサロンを経営する姉御肌。夢は高級ネイルサロンを居抜きで買い取って、フランチャイズ展開し、大邸宅で暮らす一大実業家になることです。資金稼ぎに、地元の暴力団ディキシー・マフィアが経営するペイン・クリニックのマネー・ローンダリングに手を貸しています。毎日、取り立てにやって来る暴力団の幹部ローラー(ジャック・ケシー)が自宅で銃殺されて、デズナの計画が大きく狂ってしまいます。

デズナが家族のように大切にしているのは、ネイルアーティスト2人と守衛です。金髪グラマーのジェニファー(ジェン・ライオン)は、暴力団の親分クレイ(ディーン・ノリス)の甥っ子/第一子分ローラーの兄ブライス(ケヴィン・ランキン)と結婚していますが、極力関わらないように頑張ってきました。年寄りから大金を巻き上げて詐欺罪で服役していたペテン師ポリー(キャリー・プレストン)は、出所した足で古巣に舞い戻ります。店の守衛を務めるクワイエット・アン(ジュディー・レイエス)は、あだ名通り口数が少なく、嘗てインテリ階級の男性と結婚していた等、時々意外な事実が口をついて出ます。


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左から姉御デズナ(ニーシー・ナッシュ)、ジェニファー(ジェン・ライオン)、ポリー(キャリー・プレストン)と、守衛アン(ジュディー・レイエス)の職場家族。ジェニファーのみが曲がりなりにも家族を養っているが、現在の夫ブライス(ケヴィン・ランキン)の将来に不安を抱く。Courtesy of TNT

ポリーのピンチヒッターとして雇われたヴァージニア(カルーシェ・トラン)は、元娼婦だったことに引け目を感じており、教養の無さや非常識を見下されるのがいやで、突っ張りとハッタリをきかせる余り、デズナの職場家族からつまはじきにされます。点稼ぎ(?)のために、デズナに暴力を振るっているローラーを銃殺したことから、このドラマは始まります。


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ヴァージニア(カルーシェ・トラン)は、フィリピン系ではあるが、「サイゴン」とか「中国人形」などのあだ名で呼ばれる。娼婦上がりのネイルアーティストだが、どう突っ張っても赤貧メンタリティーを拭い去ることができない。ゴリ押しでデズナの仲間に入ったものの、誰も信用してくれず、稚拙な策略が裏目に出て、益々信用を失う。Courtesy of TNT

マフィアの跡取りにしようと猫可愛がりしていたローラーの死を嘆き悲しむ親分クレイが、真犯人追求に乗り出したから大変!デズナとヴァージニアの証拠隠滅、犯人のでっち上げ、尋問をはぐらかす等、信じられない茶番劇が始まります。デズナ姉御は、次々と押し寄せる大波をうまく乗り切ることができるのでしょうか?フロリダ・ノワールの代表作「ブラッドライン」のような、一難去ってまた一難が....


5人の女友達の会話、設定のバカバカしさもさる事ながら、演技派ナッシュとプレストンに魅了されてしまうこと間違いなしです。暴力団の手先にならなければのし上がれない底辺に生きる女達は、人種差別、階級差別、男尊女卑等の手枷足枷を付けたまま、閉塞感を抜け出すことはできるのでしょうか?


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ポリーを好演するプレストンと、デズナ役のナッシュはいずれも演技派。プレストンは「グッドワイフ」の個性的な敏腕弁護士エルスベス・タシオネ以来のシリーズ出演。ポリーは、見た目は陽気だが、窮地に追い込まれると勘の鋭さと分析力で、沈着な判断を下す。デズナは、幼い頃から弟を守ってきたので、母性本能が強く、問題児を拾ってきては職場の家族/サポートシステムに変えて行く。Courtesy of TNT


フロリダの炎天下で繰り広げられる暗~くて奇妙奇天烈な犯罪の数々。ネイルサロンやプールサイドでのダンスシーンと惨たらしい殺害シーンが同時進行する明暗のコントラストが、印象的な現実逃避に最適のドラメディーです。

遂にバブル弾けた?ネットフリックスの相次ぐ打ち切りが引き金?

ここ数年、脚本を基に制作されるドラマとコメディーの本数がウナギ登りを続けてきました。毎年、夏のプレスツアーで秋の新作本数に注目してきましたが、特に2016年9月13日に公開した「バブル弾けず2016~17年シーズンに突入。新作の傾向は?」で説明した通り、我々評論家はFX局のジョン・ランドグラフCEOの考察に耳を傾けてきました。「2015か16年にピークに達し、本数が減少するであろう」と予測したランドグラフCEOは、16年8月9日のプレゼンで1年前の「予想が外れました。バブルは2018~19年まで、膨らみ続けるような勢いです」と発表しました。


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2013年以降のドラマとコメディーの急増振りが明らかに読み取れるグラフ。ピークは15か16年と予想されていたが、バブルは弾けることなく、16~17年シーズンに突入した。Courtesy of FX Networks Research

ところが、今年に入って、供給過剰状態「ピークTV」に異変が起こり、確実にバブル崩壊に向かっている現象が次々と起こりました。先ず、ケーブル局A&Eが5年前にオリジナル作品として打ち出した「ベイツ・モーテル」を最後に、オリジナルドラマ制作を放棄。A&E局は、「Those Who Kill」(米国版)「ザ・リターン」「アンフォゲッタブル 完全記憶捜査」のオリジナルドラマで散々な目に遭ったにも関わらず、意欲作「ベイツ・モーテル」で挽回できると思っていたようですが、視聴率の低迷に諦めざるを得なくなりました。


次に、オリジナルドラマを放棄したのは、「Salem」「Manhattan」で少々名を挙げたWGN America局です。ドラマ「Underground」と「Outsiders」(米国版)を打ち切り、「予算や人材はドラマ以外の分野に移行する」と親会社トリビューン・メディア社のピーター・カーンCEOが発表しました。


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2014年8月5日公開の「原爆作りに携わった人たちのドラマ」で紹介した「Manhattan」は、日本人としては観るに堪えない作品だった。シーズン2更新の発表に、誰が観ているのだろう?と疑問に思ったが、結局は2で打ち切りとなり、納得!しかし、オリジナルドラマで視聴者獲得が如何に至難の技であるかを学習したWGN America局は、ドラマ制作を全て放棄した。Courtesy of WGN America

そして、オリジナル作品を配信開始する毎に、視聴者数を飽くまでも公開拒否しつつ「前代未聞の大ヒット」と自画自賛してテレビ業界の顰蹙(ひんしゅく)を買ったネットフリックス社が、「センス8」と「ゲットダウン」を打ち切った時点で、ランドグラフCEOの予想より1年早く、バブルが弾けました。


もっとも、ネットフリックス社がオリジナルドラマを打ち切ったのは、初めてのことではありません。古くは「リリーハマー」「ヘムロック・グローヴ」「マルコ・ポーロ」「ブラッドライン」(6月29日「『ブラッドライン』結末に不平不満殺到。時期尚早の打ち切りの所為?....」を参照して下さい)などがキャンセルの憂き目に会っています。「ゲットダウン」が特に注目を浴びているのは、シーズン1配信のみで継続しないと、地上波局並みの決定を下したからです。


’下手な鉄砲も数打てば当たる’と言わんばかりに、懐の暖かさを笠に着て、プレミアケーブルHBOに追い付け、追い越せ!と新作を超高値で買い漁ってきたネットフリックス社も、供給過剰には勝てない、視聴者を維持できない事実を不本意ながら認めたような決断です。


「センス8」と「ゲットダウン」が何故打ち切りの憂き目に会ったかに関しては、多数のコメントがメディアを賑わせているので、私は心身ともに投資してきた「ブラッドライン」が打ち切られた理由を探ってみました。


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2015年、鳴り物入りで登場した「ブラッドライン」。シーズン2のプレミア前にネットフリックス社の力の入れようが大きく変貌したことは明白だった。作っておいて、宣伝や広報無しで、如何に生き残って行くのだろう?と思っていた矢先に、シーズン3更新が発表され、続いて打ち切り、逸話数削減など、まるでジェットコースターに乗っているような体験となった。Courtesy of Netflix


先ず、業界で’ピカイチ’ドラマとして価値を認められなかったこと、ネットフリックス社オリジナルの中では、地味でシリアスなドラマなので、「ハウス・オブ・カード」や「アンブレイカブル・キミー・シュミット」ほど視聴者を集めなかったことです。視聴者数をテコでも発表しないネットフリックスとしては、説得力ゼロの言い訳です。更に、派手さで勝負!のソーシャル・メディアで話題にならなかったことも、視聴者を獲得できなかった理由として挙げられています。従来のメディアを大手メディアのみに絞り込み、インタビューを許可しなかったシーズン2以降のマーケティングに大いに難あり!と、私は口を酸っぱくして何度も訴えてきました。


しかし、最大の理由は、採算が合わなくなったことでしょう。フロリダ州で映像制作する会社に税優遇措置が適用され、「ブラッドライン」はシーズン2までその恩恵に浴していました。シーズン3制作開始前に同支援制度が完了してしまい、制作費が高騰してしまったのです。クリエイターが希望する5~6シーズンなどとんでもない!赤字が出ることは明白と判断して、打ち切り!となってしまったに違いありません。


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フロリダ州キーウェストのイスラモラダ村を舞台にレイバーン一族の愛憎劇が繰り広げられた「ブラッドライン」。シーズン3の撮影開始前に、税優遇措置が期限切れとなったことが運の尽き?信憑性を追求する余り、打ち切りの憂き目に会った可能性は高い。税優遇措置が再開されたLAに舞台を移せば、もう少し引き伸ばせた?Rod Millington/Netflix


更に、ネットフリックス社独占の’オリジナルドラマ’のレッテルを維持して行くには、制作会社(ソニー・ピクチャーズ・テレビジョン)に制作費全額+プレミアを支払わなければなりません。再放送権を他局に販売されないように、儲けが出ようが出まいが、プレミアを前払いするシステムになっているからです。「ブラッドライン」は、一話につき700~850万ドルかかった計算になると業界紙は報道しています。要するに、3シーズン33話に2億5千万ドルを費やしたものの、「ストレンジャー・シングス 未知の世界」や「マスター・オブ・ゼロ」程話題にもならず、同社が期待したほど成果が上がらなかったと言うことです。


長い目で見れば、今後何十年もかけて初期投資を回収すれば良いので、無駄骨を折った訳ではありません。要は、フロリダ州の支援制度の期限切れに端を発したタイミングの悪さが災いして打ち切りとなったと考えられます。2013~15年の拡張・拡大時期なら、ネットフリックス社も我慢の子を維持できたかもしれませんが、16年第二四半期の新規加入者は170万人と15年同期から半減し、これまでの気負いに翳りが差し始めました。それでも、同社CEOリード・ヘイスティングスは、「ヒット作を生み出すには、打ち切りを躊躇せず、リスクを負うこと!」と息巻いています。負け惜しみに聞こえるんですが....


バブルが弾けて、やっと観なければならない本数が減る!と喜んだのも束の間、待ってました!とばかりに、Appleがテレビ業界(オリジナルコンテンツ制作)参入に本腰を入れました。打ち切り率を上げると息巻いているネットフリックス社の後釜に座り、「シールド」や「ブレイキング・バッド」級のシリーズを買い漁るぞ!と手ぐすねを引いています。「本年末には、脚本のあるオリジナル番組を提供する予定」と発表しましたが、ネットTVで流してケーブル局に対抗する元々のコンセプトを廃棄し、Apple Musicで配信するようです。但し、話はコロコロ変わるので、6月16日にソニー・ピクチャーズ・テレビジョンから引き抜いた幹部ザック・ヴァン・アンバーグとジェイミー・アーリクトが率いる番組制作部門の動きを見守って行くしかありません。ネットフリックスの過去3年の体験から学ぶことは山とある筈ですが、何しろ「人のふり見て我がふり直せ」が通用しないエンタメ業界です。一旦、弾けたバブルに、新たな息を吹き込む立役者がAppleなのかもしれません。戦国時代はまだまだ続く気配です。

「ブラッドライン」結末に不平不満殺到。時期尚早の打ち切りの所為?尻切れとんぼ感は否めないものの、私は深い意味を読み取った

※「ブラッドライン」日本未配信シーズンに関するネタバレがあります。


2015年、鳴り物入りで登場したネットフリックスのオリジナルドラマ「ブラッドライン」。鳴り物=売りは、「ダメージ」以降初のダニエル・ゼルマン、トッド・A&グレン・ケスラー創作のドラマであること、主人公ジョン・レイバーンを演じるのが、’品行方正、実直’を絵に描いたような、昨今希少価値のカイル・チャンドラーだと言う点です。


元々、クリエイタートリオは5~6シーズンを目論んで制作していましたが、シーズン2配信開始直後にシーズン3更新、3ヶ月後には3シーズンで打ち切りと言い渡され、後日逸話数が削減される等、前代未聞の紆余曲折を経て、去る5月26日から最終シーズン配信に至りました。ところが、最終回を観た視聴者から「シーズン4はいつ始まるのか?」「あの終わり方では、納得が行かない!」「続きが観たい!」など、打ち切りの事実を無視した投稿が舞い込んでいます。


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シーズン3のポスター。左奥から三男ケヴィン(ノーバート・レオ・バッツ)、末娘メグ(リンダ・カーデリーニ)、二男ジョン(カイル・チャンドラー)、母サリー(シシー・スペイセク)。Netflix


前回「グッドワイフ」の’完’が、クリエイターに声明発表を強いる程、論議を醸し出した事実をお知らせしましたが、「ブラッドライン」は納得できない派が圧倒的多数のようです。悪事を働いた人間が処罰を受けていないとか、’ワル’の順位を決めたり、実験的ドラマの欠点を突いたり、果ては大物俳優を揃えた割には、無意味なドラマだったとの酷評も目にしました。


有終の美を飾るかどうかで、シリーズの良し悪しが決まると信じて止まない私は、古くは2014年12月30日に「有終の美を飾った『ホワイトカラー』」、15年4月30日には「ナース・ジャッキー」完了時に出来映えを得点で評価してきました。当然のことながら、えーっ!それ何?と混乱するエンディングは好みではなく、あり得ない!!の最たる例は「マッドメン」と、安直な死に落ちが未だに腹立たしい「LOST」の2本です。とは言え、エミー賞、TCA賞投票も然り、ドラマの終焉の良し悪しも然り、毎年私は少数派であることを思い知らされます。「グッドワイフ」同様、主人公ジョンの今後はご想像に任せます....と委ねられたからには、上っ面の解釈に飽き足らず、クリエイタートリオの意図を読み取らねば!と2回通しで観て、10点満点の8点と評価しました。3話削減されたための時間切れなのか、あのキャラ/謎/展開は何だったの?的’宙ぶらりん’が気になりますが、少数派の私には納得の行く、現実的且つ奥深い教えが余韻を残す哀しい終結です。



私がカイル・チャンドラー贔屓であることは、衆知の事実です。「ブラッドライン」を色眼鏡で観ていることは、シーズン1について書いた2015年3月25日の「国民的英雄コーチ・テイラーTV復帰作『Bloodline』」とシーズン2のジョン救助願望をご紹介した16年7月1日の「祝チャンドラー&メンデルゾーン!『Bloodline/ブラッドライン』の魅力」を読んで頂ければ、一目瞭然です。チャンドラーが演じるキャラなら、クリエイタートリオが突きつけるいかなる挑戦も受けて立ってきました。兄ダニー(ベン・メンデルゾーン)を殺めたことも、「窮鼠猫を噛む」の行動と解釈し、失うものが山とあるジョンを追い詰めたのはダニーで、逆に極限まで追い詰めて真の姿を暴いてやろうと言うダニーの復讐ではないか?とまで疑いました。


シーズン1は、’品行方正、実直’を絵に描いたようなチャンドラーが、レイバーン一族の救世主/火消し役を押し付けられた二男ジョンの怒りと葛藤を見事に演じました。不良少年ダニーはマイアミで落ちぶれ、両親の’後押し’で何度も難を逃れてきましたが、今回は故郷に戻り不始末や不義理を償いたいと言います。厳しい父ロバート(サム・シェパード)に許しを乞うことなど以ての外と承知しているダニーは、ジョンに橋渡しを頼みます。ダニーに手をかけた自責の念にかられたロバートは、ダニーの前途を左右する決断を弟妹三人に委ねます。父親の無神経さに、堪忍袋の緒が切れたジョン、三男ケヴィン(ノーバート・レオ・バッツ)、末っ子メグ(リンダ・カーデリーニ)の反応は想像に難くありません。


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口裏を合わせないと、とんでもないことになると説明するジョン(チャンドラー)と、ミニ・ジョンの役目から何とか抜け出そうとするメグ(カーデリーニ)。最終シーズンの中盤以降、メグのみがレイバーン一族のしがらみ脱出に成功する。Saeed Adayani/Netflix


クリエイタートリオは、家族の秘密、生まれ順に形成される性格、兄妹の力関係などを血縁のしがらみと定義します。レイバーン一族が織り成す愛憎模様を症状として描いたのがシーズン1なら、家長ロバートと諸悪の根源ダニーの死後、一家の力関係が如何なる変遷を遂げるかを綴ったのがシーズン2です。


兄を殺めたジョンと、屍体の始末や証拠隠滅に手を貸したケヴィンとメグの関係が崩壊して行きます。ダニーと言う名の’敵’を失い、長年一丸となって闘ってきた兄妹の絆が切れ始めます。ジョンほど切れないケヴィンとメグは、口裏を合わせることさえできず、秘密がバレることを恐れて、アルコールや薬物で現実逃避に走ります。共通の敵が消えた今、お座なりしてきた心痛の種(恥、嫉妬、後悔、自責の念等)に正面から立ち向かう’自分探しの旅’を余儀なくされてしまったからです。


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パートナーのマルコ(エンリケ・ムルシアーノ)の葬儀に参加するジョン。マルコは、メグに振られてからダニー殺害嫌疑をレイバーン兄妹にかけ、知り過ぎて口を封じられた。Jeff Daly/Netflix


ジョンはダニーの亡霊はおろか、ダニーを尋ね当てて芋づる式に姿を現わす息子ノーラン(オーウェン・ティーグ)、ノーランの母親エヴァンジェリン(アンドレア・ライズボロウ)や不逞の輩=マイアミ時代の悪友達に苛まれます。ロバート亡き後、家長の座についたサリー(シシー・スペイセク)は溺愛してきたダニーの変死を調べるうちに、救世主ジョンが隠し事をしていることに気付き、疑心暗鬼になります。19歳で産んだ長男ダニーが不慮の死をとげ、守り切れなかったという自責の念に駆られているからです。


四面楚歌のジョンは、保安官事務所や麻薬取締連邦捜査官の目を盗んでは、証拠隠滅やもみ消しに余念がありません。パートナーのマルコ(エンリケ・ムルシアーノ)は、聞き込みを続ける内、ケヴィンに接近して、ジョンの神経を逆撫でします。ダニー殺害の罪を着せた筈の地元の麻薬元締めラウリー(グレン・モーシャワー)には違法行為を強いられる、チンピラに口封じ金を渡す等、ジョンは益々深みにはまって行きます。


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ケヴィンを守るために、証言を強いられたジョン。メグにマルコ殺人の容疑が向けられると、サリーが敢えて証言台に立ち、メグのアリバイを証明して難をのがれた。レイバーン一族は、嘘つきのプロだが、サリーは家族を守るためにつく嘘は嘘ではないと叩き込んだ。Rod Millington/Netflix


5月26日から配信されているシーズン3は、鎮火したかと思いきや、とんでもない所で火の手があがり、遂に木っ端微塵になる一族を描きます。まるで、ジョンと一緒にモグラ退治ゲームに挑戦したような10時間でした。叩いても叩いても、次々と頭を出すモグラのように、レイバーン一族への怨みつらみは様々な姿形で襲撃してきます。心の拠り所である筈の妻ダイアン(ジャシンダ・バレット)の冷酷な仕打ちや、母サリーの残虐さ等、身内からの攻撃も半端ではなく、ジョンを心身共に極限状態に追い込みます。独りできりきり舞いするジョンの緊張と疲労困憊の極限でゲームオーバーとなり、見終わった時には、安堵の涙が止まりませんでした。ハッピーエンドではないものの、最後まで一時たりとも見放さず、何とかジョンを救いたい一心で観たドラマが曲がりなりにも完結したからです。


英文評


今シーズンは、レイバーン一代目ロバートとサリーが、地方の名士にのし上がるために敵に回した人々と、ひた隠しにしてきた醜い過去が明るみに出て、心理分析が容易でした。「親の因果は子に報い、因果は巡る」と言いますが、正にロバートとサリーの罪が何代にも渡って引き継がれて行く悲劇が描かれました。最大の被害者は、一族の救世主に仕立て上げられ、役目を忠実に果たせば果たすほど孤立無援になってしまうジョンです。


ダニーとケヴィンは同じ穴のムジナではないでしょうか?懲りない人間は、学習能力に欠けるので、付け焼刃が剥げやすいのと同様、何度救っても抜本的に変わることはありません。「変わろう!」と自ら決めない限り、人間は変わらない、変われないからです。ジョンは、十代で両親から押し付けられた救世主の役を生真面目に演じてきました。それが証拠に、レイバーン一族の門番を務めるのは、保安官/刑事を職業にしたジョンと、末っ子でありながら、ミニ・ジョン的性格を発揮して弁護士になったメグの二人です。生真面目な人間が常に貧乏くじを引くものです。


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サリー(スペイセク)は、何事も後始末はジョンに押し付けるが、9~10話で本性を露わにし、ジョンの折角の苦心も水の泡となる。Rod Millington/Netflix


サリーの生い立ちと五人の子供への期待が、このドラマを分析する上での鍵です。「嘘ついたのね」とジョン、ケヴィン、メグを咎めて、いかにも傷ついたように振る舞いますが、家族を守るためにつく嘘は嘘に非ずと幼い頃から叩き込んだのは、どこのどなたでしたっけ?と思わず反論したくなります。勿論、サリーの過去と現在の全体像が見える視聴者だから言えることなのですが、サリーは自分の行動が、子供にどのような影響を与えたかなど、反省したことがありません。「一体、どこでどう間違ったのかしら?」とトンチンカンな問いかけを耳にすると、何も考えずに生きてきたサリーに開いた口が塞がりません。こんな親に育てられた子供は良い迷惑です。


とかく、生真面目人間は、親の期待に添いたい一心で、親の敷いたレールに乗って頑張ってしまいます。ジョン・レイバーンは、「グッドワイフ」のアリシア・フローリックと同様の生真面目人間です。唯一の違いは、アリシアは、職場で学んだ生きる知恵を私生活に応用して成長し、自由を手に入れて大空に羽ばたきましたが、ジョンは’自分探しの旅’に出たこともなく、親が決めた役目を盲目的に果たしてきただけと言う点です。幸せかどうかなど考えたこともないに違いありません。特に、シーズン3は、闇雲に目先の問題解決に奔走し、一瞬一瞬を呆然と消化していることが明らかです。


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ジョンは、極度のストレスを発散する手立てもなく、独りできりきり舞いを続ける。9話は、妄想か現実か不明の不可解な逸話だ。Jeff Daly/Netflix


大人になるとは、親が貼ったレッテルを剥がし、親が敷いたレールを敷き直して、自分の人生を切り開いて行くことです。残念ながら、ジョンはレッテルやレールの存在にすら気がついていない上、自ら課した数々の「~~すべき」や「~~であるべき」を生真面目に実行して、’幸せになってはいけない’という檻に自分を閉じ込めてしまったのです。あれだけトラウマやストレスを体験し、逃亡や逃避を試みたものの、ケヴィンの電話1本で、そそくさと旧の鞘=檻に収まってしまいました。檻は心理的拘束ですから、架空で鍵がかかっていないにも関わらず、ジョンは檻の外に出るなど、想像も付かない筈です。人里離れた町で、ノーラン、ケヴィン、エリック・オバノン(ジェイミー・マックシェーン)、ダイアンと子供に償うだけの余生(40年ほど?)を送ることの方が、殺人罪で服役するよりも荷が重いことでしょう。人助けは、先ず自分から。一生続く償いや目に見えない檻からジョンを救出できなかったことが心残りで仕方ありません。

日本では「グッドワイフ1」開始、米国ではスピンオフ「The Good Fight」シーズン2更新

※「グッドワイフ」日本未公開エピソードについてネタバレが含まれます。


日本ではシーズン3まで、NHKで放送された後、尻切れとんぼになっていた21世紀の二大秀作の1本「グッドワイフ」ですが、5月22日からDLifeで、シーズン1に遡って放送されいるのをご存知でしょうか?日本の「グッドワイフ」ファンには、近年最大の吉報です。


このコーナーで最後に「グッドワイフ」に触れたのは、2016年4月27日に公開した記事「『グッドワイフ』’完’への秒読み開始〜不死鳥アリシアの行く末は?」です。あーでもない、こーでもないと想像しましたが、昨年5月8日に放送された最終回は、想像だにしなかった結末となりました。「アリシアの鍛錬」と銘打ったシリーズに相応しい終わり方だったので、私は有終の美を飾ったと思いますが、視聴者の3分の2は納得できない!と不評を買いました。


当然のことながら、ウィル・ガードナー(ジョシュ・チャールズ)の突然の死放送直後と同様、クリエイターのロバート&ミシェル・キング夫妻が、CBSのサイトで声明を発表しました。7シーズン(156話)がハッピーエンドで幕を閉じなかったことが、不評の最大の原因です。人生はそんなに甘くはありませんし、何もかもスッキリ片付くことなど不自然極まりないと思いますが、何でもかんでもハッピーエンドにしたがる、アメリカ人の悪い癖です。’終わり良ければすべて良し’を盲信している能天気な人間が多いと言うことでしょうか?(笑)


最終回の詳細は、米国在住のブロガーが微に入り細に入り説明しているので、ここでは控えますが、パイロット版=シリーズ幕開けと同様、ピーター・フローリック(クリス・ノース)の辞任記者会見と茶番劇の舞台裏で、アリシア(ジュリアナ・マルグリーズ)が如何に成長したかが見事に描かれました。おっかなびっくりの良妻賢母が7年に渡る試練から学習し、自信に満ちた大人の女になり、独立独歩生きる第一歩を踏み出すシーンで締めくくられました。実際にどのようなキャリアを選び、独りで生きて行くのか?再婚するのか?などは、視聴者のご想像に任せますと言わんばかりの意味深の’完’でした。


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「アリシアの鍛錬」を7年間演じたマルグリーズは、デキる女の先駆けは「クローザー」だと指摘する。特に思い入れの深い逸話は、1)パイロット、2)ケイリーと法律事務所を立ち上げようとしていることがバレて、ウィルの捨て台詞が冷たく心に突き刺さった95話(シーズン5「Hitting the Fan」)、3)ウィルの惨死を描いた105話(シーズン5「Dramatics, Your Honor」、4)アリシアが初めて切れまくって醜態を演じた147話(シーズン7「Judged」)。WENN.com


自分のことだけ考えて、自分のために生きる第一歩を踏み出した、筋金入りアリシアの後ろ姿に感涙しました。家族を優先するために、自分を殺して生きるのは、もう御免!と浮き世のしがらみを断ち切ったアリシアは、正に大空に羽ばたいた不死鳥を思わせる荘厳さでした。マルグリーズが「納得のいく、心にしみる、切ない終末」と描写した訳です。数限り無い失望を味わい、酸いも甘いも噛み分けた大人になったアリシアは、21世紀を生きる女性の鑑と言えるでしょう。


キング夫妻が創り出したシカゴの法曹界・政界に二度と足を踏み入れることはないのか....と、寂しい思いでしたが、スピンオフ制作の発表があったのは、最終回放送10日後の5月18日、NYアップフロントの席でした。



「グッドワイフ」完了と同時に、若いプロデューサーにバトンタッチして身を引く予定だったキング夫妻です。今年1月の「The Good Fight」制作発表のパネルインタビューの席で、ロバート・キングは「グッドワイフ」がオバマ時代に生まれ、オバマ政権下で存続したドラマであることを指摘した上で、「トランプ当選で、世の中が豹変。悔しいけれど、トランプのお陰で、反骨精神に目覚めたと言える」と復帰の動機を語りました。つまり、天と地がひっくり返った無秩序、騒乱の真っ只中で、ミシェルの思いつき「ダイアンを黒人ばかりの法律事務所に送り込むのはどうかしら?」を実現したのが、「The Good Fight」なのです。2月19日のCBSとCBSオールアクセス(ストリーミング配信)でのプレミアを前に発表した英文評です。


英文評


「The Good Fight」の主人公は、三人の女性弁護士です。「グッドワイフ」第一話から、常に善悪を判断し、正義を貫いてきた’理想に燃える’進歩派弁護士ダイアン・ロックハート(クリスティーン・バランスキー)と、最終シーズンでアリシアの腹心兼共同経営者でもあったルッカ・クィン(クッシュ・ジャンボ)の既にお馴染みのキャラを使います。「The Good Fight」のアリシア役には、ダイアンが娘のように可愛がっている新米弁護士マイア・リンデル(ローズ・レスリー)が起用されました。


バランスキーは「プロヴァンスで余生を楽しもうと計画していたダイアン(60代)が、ルッカ(34歳)とマイア(25歳)に女の底力を引き継ぐべく戻ってくるの。念願の初の女性大統領が生まれ損なったご時世だから、まだまだ女の闘いは続くと言う意味で、このタイトルがとても気に入ってるの」とご満悦のようです。


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バランスキーはダイアン役で、何度かエミー賞助演候補に挙がったことはあるが受賞したことはない。「The Good Fight」では主役なので、主演女優賞候補として今年最も有力だ。ドラマもコメディーも同様に演技が光る役者なので、是非エミー賞を獲って欲しい。 WENN.com


スピンオフは、「グッドワイフ」の最終回から1年後、トランプの就任式を呆然と観ているダイアンのアップから始まります。プロヴァンスに家を買って、余生を楽しもうと退職を発表した直後、地位・名誉・富すべてを失い、ダイアンは人生双六の振り出しに戻ってしまいます。トップの座に上り詰めた挙句の果ての’失脚’は、半端ではありません。自ら立ち上げた法律事務所には拒絶され、働きたくても、スキャンダルが災いして、誰も雇ってくれません。弁護士歴2年で家庭に入り、夫の失態で復職せざるを得なくなったアリシアの再出発など、比べ物になりません。


ダイアンの’失脚’の引き金となったのは、旧友ヘンリー・リンデル(ポール・ギルフォイル)が巨額金融詐欺容疑で逮捕されたことです。ダイアンに救いの手を差し伸べたのは、黒人ばかりのレディック・ボウズマン・コルスタッド法律事務所で、公民権運動や近年横行する警察の残虐行為に目を光らせています。ダイアンの口利きで、同事務所に入社したシカゴの名門リンデル一族の一人娘マイアは、ルッカに支えられて仕事に没頭するものの、人間不信は否めません。本シリーズのアリシアに例えたのは、マイアも一族の巨額金融詐欺スキャンダルの渦中で、巷の中傷、非難、捏造記事に苛まれながらも、一人前の弁護士になろうと頑張る芯の強さと底力を発揮するからです。但し、駆け出しの怖いもの知らず故の’猪突猛進’は、アラフォーのアリシアにはとても真似のできない強みです。


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華奢な体格からは想像できない、芯の強い新米弁護士マイアを演じるレスリー。渦中の人として認識されない場所で、周囲の弁護士に支えられて仕事に没頭するが、あらゆる媒体から総攻撃を受ける。WENN.com


ルッカ(34歳)は、歯に絹着せぬ物言いとドライなユーモアが売りの敏腕弁護士です。「グッドワイフ」シーズン7で漸くアリシアが巡り合った親友がルッカで、悩みを打ち明けたり、飲みに行ったり、無くてはならない存在となりました。アリシアとジェイソン(ジェフリー・ディーン・モーガン)の仲を取り持ってくれたのも、アリシアが初めて切れまくった時に暖かく抱擁してくれたのもルッカです。


「The Good Fight」は、ルッカが働くレディック・ボウズマン・コルスタッド法律事務所の世界に、ダイアンとマイアが飛び込んでくると言う設定です。アリシアから学んだスキャンダルを生き延びる方法をマイアに伝授して、何かと手を貸すルッカですが、親友アリシアの不在で、また一匹狼に戻ってしまった感があります。コリン・モレロ検事補(ジャスティン・バース)との恋愛とも単なるお遊びともとれる摩訶不思議な駆け引きは、カリンダ・シャルマ(アーチー・パンジャビ)を彷彿させ、どうも頂けません。「グッドワイフ」シーズン7のルッカに戻って欲しいと思うのは私だけでしょうか?


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ジャンボが演じるルッカは、型破りな弁護士だ。親友アリシアの現況を口にしたがらないのは何故か?もう親友ではないから?その内、アリシアへの気持ちを明かしてくれることを期待したい。WENN.com


今年1月のプレスツアーは、トランプ対策一色だったとお伝えしましたが、蓋を開けて見ると、トランプの逆鱗に触れまいと、遠回しに批判する程度のドラマが多かったように思います。真っ向からトランプを批判するのは、トーク番組や偽トランプ主演のコメディーに限定されています。トランプ政権下の大混乱の中、全米一進歩派が集中するシカゴの法曹界がいかに反応するかを描くのは、「The Good Fight」の他にありません。


「トランプ当選を知ったのは、パイロット撮影8日目。ヒラリーが当選するものと思って4話書き溜めしてあったけど、遣い物ものにならないのでボツにしました。トランプ就任式を呆然と観ているダイアンのアップも、当然プレミア前に撮り直したものです」とロバート・キングは舞台裏を明かしました。「ダイアンがヒラリーと一緒に撮った写真を箱に収めるシーンの意味が逆転した」と指摘したのは、バランスキーです。「選挙前日には、ヒラリーが大統領になったから、ダイアンだってどん底から這い上がる力を持っている!の心意気を込めて、写真を箱に収めた訳だけど、選挙当日、レディック・ボウズマン・コルスタッド事務所のシーンを撮り終わって楽屋に戻ったら、トランプの当選がほとんど確実と知って....奈落の底に突き落とされて、スローモーションで落ちて行く感じがしたわ」と付け加えました。同じシーンなのに、選挙前と開票後では、ダイアンの心意気/勇気/やる気が落胆/混乱/絶望に変わってしまったと言う前代未聞の大逆転を感慨深く語るバランスキーでした。


トランプが次期大統領と決まって以降、「引力を失って、上下の区別がつかない、無秩序な社会になってしまった」とロバートは現況を読みます。キング夫妻が得意とする「天と地がひっくり返った時こそ、人間が成長する又とない機会」主義が、スピンオフにも応用されています。足場を失い、宙を舞うような不安定極まりない状況を味わう「The Good Fight」のキャラ達は、進歩派のシカゴ住民のみならず、全米の反トランプ派常識人を代表してくれて、気分爽快です。

心理分析に長けた犬と、アラサー飼い主の不思議な世界「Downward Dog」

地上波局の2016~17年シーズンが終了し、ケーブル局では夏シーズンが始まりました。とは言え、ケーブル局が発表する新作も今年は余り期待できるものがなく、毎晩録画を楽しむか、DVDを満喫する時期に突入しました。


9月末の新シーズン開始まで、地上波局は軽いノリの夏番組で埋めるのが恒例ですが、5月16日に登場した「Downward Dog」(ABC)が意外にも新鮮です。


【動画】Downward Dog (ABC) "We're in This Together" Promo HD


喋る犬はキャラとして過去にも存在しましたが、「Downward Dog」は一味違います。どこがどう違うのかと言うと....マーティン(ネッド)と言う名の雑種犬が、動物愛護センターから救い出してくれた女神ナン(アリソン・トールマン)の世界で如何に生きて行くかを描くロマコメになっている点です。マーティンは「ナンは絶世の美女。こんな美人、見たことがない」と崇めますが、1日の大半をどこでどう過ごしているのか、どんな夢を抱いているのかなどは知る由もありません。勘違いの最たるものは、ナンの夫として人間の立場から夫婦関係を心理分析することです。最も一日中、番犬として内に篭っている訳ですから、他に考えることがないと言えば、ないのですが....ナンが仕事や負け組彼氏ジェイソン(ルーカス・ネフ)にかまけて、放ったらかしにすると、鬱憤晴らしに靴や家具を噛んで不満を表現したり、近所の猫ペパーとは犬猿の仲など、当然ながら犬らしさも持ち合わせています。




時々、姿を現わすジェイソンは、ナンとマーティンの夫婦(?)関係に水を差す宿敵ではあるものの、散歩に連れ出し、遊んでくれるので、そうそう邪険には扱えません。但し、ナンは仕事に打ち込んで何らかの生きがいを見つけようとする向上心の高いアラサー女性ですが、ジェイソンは特に夢も希望も出世欲も無く、結婚には極めて物足りない相手なのです。


飼い主ナンとの関係を心理分析する、感じやす~い、男の何十倍も繊細な変な犬マーティンの冒険と言った方が良いかもしれません。「人間として言わせてもらうなら....」とコメントする反面、「犬だから仕方ないでしょ」と言い訳することもあり、イマイチ良く解っていないんだと笑えます。但し、寂しい人間への思いやりは格別で、ホロリとするほど優しい友達犬なのです。


クラーク&ボウ衣料の広告部門で働くナンは、男尊女卑を絵に描いたような上司ケヴィン(バリー・ロスバート)の反対・妨害行為にも関わらず、マーティンが自分を崇める目線を元に「誰でも絶世の美女!」をスローガンに店頭ディスプレーを企画します。仕事仲間ジェン(カービー・ハウェル・バプティスト)の後押しもあって、全国展開できそうな所まで漕ぎ付けますが....


元々、サム・ホッジスが同名のウエブシリーズとして展開していたものを、マイケル・キレンと組んでABCでテレビ化に成功した新作です。成功の秘訣は、シカゴの動物愛護センターから引き取った新星ネッドの起用です。表情が豊かで、特に後ろめたそうな上目遣いが特技です。更に、マーティンの独特な喋り方が効いています。声優も務めるホッジス自体から確認を取ることはできませんでしたが、文末や区末を下げて言い切るのではなく、判断や同意を視聴者に委ねるかのように、上昇調イントネーションを使うValleyspeakができる犬なのです。説明が難しいので、トレーラーのマーティンの台詞のイントネーションに注目してください。3~4語毎に、意味も無く飛び出す「like」と「for sure」がキーワードです。


【動画】DOWNWARD DOG Official Trailer (HD) Allison Tolman Comedy


今夏は、6話限定と呆気なく終わってしまいますが、正式のシリーズに格上げして欲しいものです。

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