今秋の異色作「Jane the Virgin」が受ける理由 - ハリウッドなう by Meg | TVグルーヴ オフィシャル・ブログ アーカイブ(更新終了)

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今秋の異色作「Jane the Virgin」が受ける理由

(2014年10月 1日)

TCAでは、昨年からプレスツアー後に、期待の新ドラマや新コメディーを会員が投票し、公開するようになりました。9月17日のブログに書いたように、今秋のドラマ、新作共「Gotham」が1位の座を占めましたが、蓋を開けて見ると、FOXが期待したほどの視聴率は獲得できませんでした。

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7月18日に配られた番宣プロモ品は、ジェーンが蓋に印刷された缶入りキャンドル。ジェーンが手にしているのが、妊娠検査スティック!とは、大いに笑える。

TCA会員が選んだ昨年のニューフェースは「スリーピー・ホロウ」のトム・マイソンでしたが、今年は大多数の会員が、異色作「Jane the Virgin」のジーナ・ロドリゲスを選びました。プレミアは10月3日ですが、9月22日にCW局が3話追加制作を発表するという鼻息の荒さです。前評判が良かったから気を良くしての決定だとは思いますが、CWは視聴率とは無縁の世界で放送しているような、説明のつかない決断をする局なので、当然と言えば当然ですが....果たして、吉と出るか、凶と出るかと言う所でしょうか?

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「ジェーン役を待っていた!」と熱く語るロドリゲスは、ユダヤ+プエルトリコのハーフ。「有色人種を代表して、この人種はこの職業/役所という固定観念を破り、少女達に夢と希望を与えたい」と抱負を述べて、株が上がった。「アグリー・ベティー」のアメリカ・フェレーラを彷彿させるが、ロドリゲスの庶民的な人柄は吸引力抜群。 WENN.com

「Jane the Virgin」は、一言で説明するなら「アグリー・ベティ」と「ギルモア・ガールズ」を掛け合わせたような、ベネズエラのテレノベラ「Juana la Virgen」米国版です。マイアミを舞台に働き者で信心深い、ラテン系三世23歳のジェーン(ロドリゲス)の生き方を描きます。

「アグリー・ベティ」と同様、「あり得ない!」が次々と身に降り掛かり、人生経験の浅いジェーンが障害に如何に反応し、悩み、対処するかが描かれます。ジェーンの「あり得ない!」の発端は、結婚するまでは純潔を守り抜くと祖母アルバ(イヴォンヌ・コル)に誓い、彼氏マイケル(ブレット・ダイヤー)も了解していたのに、産婦人科の定期検診で人工授精されて、バージン/未婚の母になってしまったことです。更に、嘗てジェーンが恋い焦がれていたホテル王の御曹司ラファエル(ジャスティン・バルドーニ)が’一粒種’を儲ける最後の頼みの綱だったと聞いてしまったから、心が揺らぎます。

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ダイヤー(左)が演じるマイケルは刑事だが、暗い過去が.....。一方、バルドーニ演じるラファエルは、ジェーンも嘗て熱を上げた元遊び人で、強欲なペトラが裏で糸を引いている。 WENN.com

祖母は聖母マリアのような無原罪懐胎だと大喜びし、母ジオマラ(アンドレア・ナヴェド)は16歳で生んだジェーンに、未婚の母のイバラの道体験を語りますが、最終的にはジェーンに選択肢を示すことが義務だと信じています。「ギルモア・ガールズ」の友達親娘要素です。「あり得ない!」発覚前にマイケルがプロポーズしましたが、ラファエルの子供がお腹にいることが二人の門出を阻みます。果たして、ジェーンの決断は如何に?

【動画】「Jane the Virgin」トレーラー

「何じゃこりゃ!?」としか表現しようのないパイロットですが、クリエイターのジェニー・スナイダー・アーマンは「テレノベラへの恋文よ!」と説明します。嫉妬、疑惑が渦巻くドロドロさ、欲望ギラギラ、怒りバチバチ、吹き出しそうになる程大袈裟な身振り、手振り、口振りがテレノベラの世界ですが、米視聴者に嫌われないよう、かなり水増しされています。それでも、パイロットを観て「大丈夫かな?」と思ったのは、私だけではありません。

ところが、7月18日本作のパネルインタビューで、インディー系映画出身のロドリゲスがLifetime局の「Devious Maids」(マーク・チェリー、エヴァ・ロンゴリア制作)をパスして、ジェーン役を選んだのは、独立独歩の逞しいジェーンに惚れ込む前の事情や信条を熱く語って、評論家の心を鷲掴みにしたのです。

「サンダンスの後、ABC局お抱え俳優の契約を結んだら、『Devious Maids』のメイド役しかなくて、ラテン系の女優がもらえる役所には限界があるな〜って....アメリカ人が書くストーリーに登場するラテン系の役って、決まり切ってるじゃない?シカゴの英語社会で育った私は、お決まりのラテン系アメリカ人の役に抵抗を感じるの。悪事を働いて生きているんじゃないから、『Devious Maids』の役が悪いって言ってる訳じゃないのよ。私の家族にも、お手伝いさんをして一家を支えてきた人間は大勢いるわ。だけど、その固定観念を破って、次の世代に、違う職業、生き方を映像で示すのが私の仕事だと思うの。哀しいことだけど、未だにラテン系は、お手伝いさん、庭師、未婚の母の箱に分類されてるじゃない?」と、ハリウッドの現状を説明するロドリゲスでした。

因に、「Devious Maids」のビデオインタビューをした際、「FBI失踪者を追え」でデルガド捜査官を演じたロズリン・サンチェスに「FBI捜査官を演じた後、ビバリーヒルズの豪邸のお手伝いさん役ですか?」と私は尋ねてしまいました。「役は役だから」的、納得の行かない答えが返ってきた記憶があります。やはり、ラテン系にもハリウッドは厳しい世界なんだろうな....と思うと同時に、私が女優なら脇役でも良いから逞しい、前向きな女の役を敢えて選ぶな〜などと、勝手な憶測をしました。

その直後に、PBSのラテン系民族の米国浸透を記録したドキュメンタリーに出演したエイミー・ガルシアと話す機会があり、「Devious Maids」について尋ねてみました。「Trauma」で逞しい救急救命士を演じていたガルシアは、「私は敢えて強い女やキャリアウーマン役を選んできたから、今更メイドの役なんて、考えられないわ」と笑っていました。役を選ぶ信念と気力を感じました。

従来ハリウッドが求める主役像は、1)白人、2)サイズ0、3)若い女性と決まっていました。銀幕や画面に「同類」が見当たらない=有色人種が辿り着く職場がないと解釈して今に至ったロドリゲスは、「私が夢を叶えれば、希望をお裾分けすることができるわ。肌の色や文化は違っても、『ジーナと私は同類。他にも仲間はわんさといる!頑張らなくちゃ!』と少女達がついて来てくれたら儲け物!って思うの。だから、これまで女性を前進させる役しか演じなかったし、テレビの初仕事は、繰り返し語られてきたストーリーに加担する役じゃなくて、固定観念を打ち破る役じゃないとお手本になれないもの。『ほら、私の「同類」が医者、教師、脚本家、弁護士をやってる!私にだってできるわ!』って思ってもらわなきゃ!」と真摯に語りました。

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「Jane the Virgin」のキャスト。左から、祖母アルバ役のコル、ジェーンの父親ロヘリオ役のハイメ・カミル、ロドリゲス、ダイヤー、バルドーニ、ペトラ役のヤエル・グロブグラス。 WENN.com

有色人種の十字軍の戦士ロドリゲス!頑張れ!と密かに応援している人は大勢いると思います。それが視聴率に繋がるかどうか?何しろ、裏番組が「ザ・ヴォイス」「スリーピー・ホロウ」と「Scorpion」なのです。ロドリゲスが「お手本」になりたいと願っている少女世代が、オンラインでも、DVRでも何でも良いから、観てくれますように。


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