国民的英雄コーチ・テイラーのTV復帰作「Bloodline」 - ハリウッドなう by Meg | TVグルーヴ オフィシャル・ブログ アーカイブ(更新終了)

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国民的英雄コーチ・テイラーのTV復帰作「Bloodline」

(2015年3月25日)

暗~いドラマがお得意のNetflixが、3月20日新作「Bloodline」の配信を開始しました。「ダメージ」完了以来、ダニエル・ゼルマン、トッド・A・ケスラー、グレン・ケスラーが、いずれ作りたいと話し合ってきた、兄弟の役割や感情のもつれを描くドラマです。

【動画】「Bloodline」予告編

1月7日にTCAプレスツアーの制作発表会に登場したクリエイタートリオは、初っ端から「『ダメージ』とは全く違う家族ドラマ+スリラーだ」と強調しました。3話まで視聴しましたが、確かに従来の家族ドラマジャンルには収まらず、主人公ジョン・レイバーンの血縁のしがらみを描くスリラーと表現する方が相応しいのではないかと思いました。


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左からトッド・A・ケスラー、ダニエル・ゼルマン、グレン・ケスラーのクリエイタートリオ。兄弟のしがらみを長年語り合った仲で、今回やっとドラマ化にこぎ着けた。グレンがアイデアだけで、カイル・チャンドラーに会いにテキサス州オースティンまで出向いた。 Marion Curtis/Star Pix for Netflix

フロリダキーズの名士ロバート・レイバーン(サム・シェパード)と妻サリー(シシー・スペイセク)は、ホテルやマリーナを経営して一大事業を築き上げましたが、一事が万事というわけではありません。一家の’面汚し’長男ダニー(ベン・メンデルソーン)が故郷を飛び出して以来、二男ジョン(カイル・チャンドラー)に一族の火消し役のお鉢が回って来た上、フロリダキーズ諸島を守る保安官の職責も担っています。三男ケヴィン(ノーバート・レオ・バッツ)は、船舶改修を片手間仕事にする遊び人、末っ子メグ(リンダ・カーデリーニ)は、ホテル経営にも関与する弁護士です。

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保安官ジョン・レイバーン(チャンドラー)は、胡散臭いダニー(メンデルソーン)の行動に気が気でない。爆弾を抱えているような緊張感や暗い過去と地上の天国のような背景の対比が面白い。
Saeed Adejani (c) 2014 Netflix, Inc. All rights reserved.


親族が一同に集まるホテル設立45周年祝賀会に、ダニーが帰郷したことから、一族がひた隠しにする暗い過去が蒸し返され、更なる悲劇に発展して行く過程が描かれます。クリエイタートリオが「ダメージ」で使ったフラッシュフォワードが、本作でも用いられ、パイロットでダニーの死が示唆されています。

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左から、メグの婚約者で保安官代理ディアスを演じるエンリケ・ムルシアーノ、ジョン役チャンドラー、ジョンの妻ダイアナ役のジャシンダ・バレット、ダニーの悪友エリック・オバノン役のジェイミー・マクシェーン。 Marion Curtis for Netflix


「ダメージ」以降初のゼルマンとケスラー兄弟創作のシリーズである、「一気見」可能なNetflixで配信する点が話題になっていますが、何よりも注目されているのは、主人公ジョン・レイバーンを演じるのが、カイル・チャンドラーだと言う点です。2006年から11年まで「Friday Night Lights (以下FNLと省略)」で、理想のアメフト・コーチ/良夫賢父(私の造語です)エリック・テイラーを好演し、この国民的英雄キャラで、2011年エミー賞主演男優賞を受賞したチャンドラーが、同作完了後4年余りかけて厳選したキャラなのです。

日本ではほとんど無名に近いチャンドラーですが、古くはドラマ「弁護士ジャック・ターナー」の悪役、最近の映画では「キング・コング」「SUPER8/スーパーエイト」「アルゴ」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」などの脇役で登場しています。チャンドラーの代表作「Homefront」(1991~93年)、「Early Edition」(1996~2000年)、「FNL」(2006年~11年)が、いずれも日本には配給されていない悲しい事実も認めなければなりません。私が初めてチャンドラーを目にしたのは「Early Edition」で、きっと役者チャンドラーの地=キャラに違いない!と思うほどの律儀で、生真面目な好青年振りを観て、即座に「死ぬまでに会いたい人」のリストにあげたほどです。


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1月7日、TCAプレスツアーの制作発表会に登場したメンデルソーン(左)とチャンドラー。デビュー以来、実直を絵に描いたようなキャラを演じてきたチャンドラーは、「この作品に心魂を傾けた」と言います。四人兄姉の末っ子の私的体験を「Bloodline」に盛り込もうと、レイバーン兄妹のキャラ設定に積極的に参加するほどの気の入れよう。 Marion Curtis for Netflix


’我らが’コーチを演じ、「FNL」が秀作であったことも相まって、チャンドラーは米国では押しも押されもせぬスターにのし上がりました。しかし、「HOMELAND/ホームランド」「パーソン・オブ・インタレスト」「Longmire」など、テレビ復帰役としてオファーされた40男の役を全て蹴って、辿り着いたのが「Bloodline」なのです。

実直な役ばかりを演じるのは、役者として面白くないのは重々承知の上で、敢えて「汚れ役」を選んだ理由を尋ねたところ、「今だに、町で『コーチ、元気?』と声をかけられます。番組が終了して5年近くになるのに...そろそろイメチェンが必要かな?と思いました」と苦笑いのチャンドラー。

いつまでも、’永遠の好青年’を維持して欲しいチャンドラーも、今年9月で50歳を迎えるからでしょうか?「実直なキャラでも、これだ!と感じるものがあったら、引き受けていたと思いますが...」と必ずしも、コーチのイメージをぶち壊すのが動機ではなかったことをチャンドラーの口から聞いて、ほっと安堵しました。アンチヒーローが横行する昨今、善良なキャラを探すのは至難の技なのです。例えタイプキャストと非難を浴びても、いつまでも、’品行方正、実直キャラ’の箱に収まっていて欲しいと思うのですが....

しかし、クリエイタートリオの思惑は正に「国民的英雄コーチ・テイラーへの思い入れを逆手にとること」だったのです。シーズン1の頭では、コーチ同様の品行方正で、親孝行な二男として視聴者の目に映るジョンですが、ダニーと接している内に、次第に化けの皮が剥げて行きます。「翳りは、コーチ・テイラー/カイル・チャンドラーのファンへの挑戦!」と、グレン・ケスラーは手の内を明かしています。つまり、誰からも慕われる、尊敬されるお馴染みのキャラ=俳優が、心外な悪事を働いても、ファンはついて来るか?と言うことです。

クリエイタートリオの挑戦を受けて立ちましょう!ジョンは、根っからの卑劣な人間ではなく、環境と生い立ちが、救世主に仕立て上げてしまったからです。肉親、名声、秩序など、守らなければならないものが山とある人間の悲しい性が描かれている「Bloodline」は、「ダメージ」同様の秀作になりそうです。


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