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ハリウッドなう by Meg

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「ブラッドライン」結末に不平不満殺到。時期尚早の打ち切りの所為?尻切れとんぼ感は否めないものの、私は深い意味を読み取った

※「ブラッドライン」日本未配信シーズンに関するネタバレがあります。


2015年、鳴り物入りで登場したネットフリックスのオリジナルドラマ「ブラッドライン」。鳴り物=売りは、「ダメージ」以降初のダニエル・ゼルマン、トッド・A&グレン・ケスラー創作のドラマであること、主人公ジョン・レイバーンを演じるのが、’品行方正、実直’を絵に描いたような、昨今希少価値のカイル・チャンドラーだと言う点です。


元々、クリエイタートリオは5~6シーズンを目論んで制作していましたが、シーズン2配信開始直後にシーズン3更新、3ヶ月後には3シーズンで打ち切りと言い渡され、後日逸話数が削減される等、前代未聞の紆余曲折を経て、去る5月26日から最終シーズン配信に至りました。ところが、最終回を観た視聴者から「シーズン4はいつ始まるのか?」「あの終わり方では、納得が行かない!」「続きが観たい!」など、打ち切りの事実を無視した投稿が舞い込んでいます。


BloodlinePoster.jpg
シーズン3のポスター。左奥から三男ケヴィン(ノーバート・レオ・バッツ)、末娘メグ(リンダ・カーデリーニ)、二男ジョン(カイル・チャンドラー)、母サリー(シシー・スペイセク)。Netflix


前回「グッドワイフ」の’完’が、クリエイターに声明発表を強いる程、論議を醸し出した事実をお知らせしましたが、「ブラッドライン」は納得できない派が圧倒的多数のようです。悪事を働いた人間が処罰を受けていないとか、’ワル’の順位を決めたり、実験的ドラマの欠点を突いたり、果ては大物俳優を揃えた割には、無意味なドラマだったとの酷評も目にしました。


有終の美を飾るかどうかで、シリーズの良し悪しが決まると信じて止まない私は、古くは2014年12月30日に「有終の美を飾った『ホワイトカラー』」、15年4月30日には「ナース・ジャッキー」完了時に出来映えを得点で評価してきました。当然のことながら、えーっ!それ何?と混乱するエンディングは好みではなく、あり得ない!!の最たる例は「マッドメン」と、安直な死に落ちが未だに腹立たしい「LOST」の2本です。とは言え、エミー賞、TCA賞投票も然り、ドラマの終焉の良し悪しも然り、毎年私は少数派であることを思い知らされます。「グッドワイフ」同様、主人公ジョンの今後はご想像に任せます....と委ねられたからには、上っ面の解釈に飽き足らず、クリエイタートリオの意図を読み取らねば!と2回通しで観て、10点満点の8点と評価しました。3話削減されたための時間切れなのか、あのキャラ/謎/展開は何だったの?的’宙ぶらりん’が気になりますが、少数派の私には納得の行く、現実的且つ奥深い教えが余韻を残す哀しい終結です。



私がカイル・チャンドラー贔屓であることは、衆知の事実です。「ブラッドライン」を色眼鏡で観ていることは、シーズン1について書いた2015年3月25日の「国民的英雄コーチ・テイラーTV復帰作『Bloodline』」とシーズン2のジョン救助願望をご紹介した16年7月1日の「祝チャンドラー&メンデルゾーン!『Bloodline/ブラッドライン』の魅力」を読んで頂ければ、一目瞭然です。チャンドラーが演じるキャラなら、クリエイタートリオが突きつけるいかなる挑戦も受けて立ってきました。兄ダニー(ベン・メンデルゾーン)を殺めたことも、「窮鼠猫を噛む」の行動と解釈し、失うものが山とあるジョンを追い詰めたのはダニーで、逆に極限まで追い詰めて真の姿を暴いてやろうと言うダニーの復讐ではないか?とまで疑いました。


シーズン1は、’品行方正、実直’を絵に描いたようなチャンドラーが、レイバーン一族の救世主/火消し役を押し付けられた二男ジョンの怒りと葛藤を見事に演じました。不良少年ダニーはマイアミで落ちぶれ、両親の’後押し’で何度も難を逃れてきましたが、今回は故郷に戻り不始末や不義理を償いたいと言います。厳しい父ロバート(サム・シェパード)に許しを乞うことなど以ての外と承知しているダニーは、ジョンに橋渡しを頼みます。ダニーに手をかけた自責の念にかられたロバートは、ダニーの前途を左右する決断を弟妹三人に委ねます。父親の無神経さに、堪忍袋の緒が切れたジョン、三男ケヴィン(ノーバート・レオ・バッツ)、末っ子メグ(リンダ・カーデリーニ)の反応は想像に難くありません。


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口裏を合わせないと、とんでもないことになると説明するジョン(チャンドラー)と、ミニ・ジョンの役目から何とか抜け出そうとするメグ(カーデリーニ)。最終シーズンの中盤以降、メグのみがレイバーン一族のしがらみ脱出に成功する。Saeed Adayani/Netflix


クリエイタートリオは、家族の秘密、生まれ順に形成される性格、兄妹の力関係などを血縁のしがらみと定義します。レイバーン一族が織り成す愛憎模様を症状として描いたのがシーズン1なら、家長ロバートと諸悪の根源ダニーの死後、一家の力関係が如何なる変遷を遂げるかを綴ったのがシーズン2です。


兄を殺めたジョンと、屍体の始末や証拠隠滅に手を貸したケヴィンとメグの関係が崩壊して行きます。ダニーと言う名の’敵’を失い、長年一丸となって闘ってきた兄妹の絆が切れ始めます。ジョンほど切れないケヴィンとメグは、口裏を合わせることさえできず、秘密がバレることを恐れて、アルコールや薬物で現実逃避に走ります。共通の敵が消えた今、お座なりしてきた心痛の種(恥、嫉妬、後悔、自責の念等)に正面から立ち向かう’自分探しの旅’を余儀なくされてしまったからです。


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パートナーのマルコ(エンリケ・ムルシアーノ)の葬儀に参加するジョン。マルコは、メグに振られてからダニー殺害嫌疑をレイバーン兄妹にかけ、知り過ぎて口を封じられた。Jeff Daly/Netflix


ジョンはダニーの亡霊はおろか、ダニーを尋ね当てて芋づる式に姿を現わす息子ノーラン(オーウェン・ティーグ)、ノーランの母親エヴァンジェリン(アンドレア・ライズボロウ)や不逞の輩=マイアミ時代の悪友達に苛まれます。ロバート亡き後、家長の座についたサリー(シシー・スペイセク)は溺愛してきたダニーの変死を調べるうちに、救世主ジョンが隠し事をしていることに気付き、疑心暗鬼になります。19歳で産んだ長男ダニーが不慮の死をとげ、守り切れなかったという自責の念に駆られているからです。


四面楚歌のジョンは、保安官事務所や麻薬取締連邦捜査官の目を盗んでは、証拠隠滅やもみ消しに余念がありません。パートナーのマルコ(エンリケ・ムルシアーノ)は、聞き込みを続ける内、ケヴィンに接近して、ジョンの神経を逆撫でします。ダニー殺害の罪を着せた筈の地元の麻薬元締めラウリー(グレン・モーシャワー)には違法行為を強いられる、チンピラに口封じ金を渡す等、ジョンは益々深みにはまって行きます。


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ケヴィンを守るために、証言を強いられたジョン。メグにマルコ殺人の容疑が向けられると、サリーが敢えて証言台に立ち、メグのアリバイを証明して難をのがれた。レイバーン一族は、嘘つきのプロだが、サリーは家族を守るためにつく嘘は嘘ではないと叩き込んだ。Rod Millington/Netflix


5月26日から配信されているシーズン3は、鎮火したかと思いきや、とんでもない所で火の手があがり、遂に木っ端微塵になる一族を描きます。まるで、ジョンと一緒にモグラ退治ゲームに挑戦したような10時間でした。叩いても叩いても、次々と頭を出すモグラのように、レイバーン一族への怨みつらみは様々な姿形で襲撃してきます。心の拠り所である筈の妻ダイアン(ジャシンダ・バレット)の冷酷な仕打ちや、母サリーの残虐さ等、身内からの攻撃も半端ではなく、ジョンを心身共に極限状態に追い込みます。独りできりきり舞いするジョンの緊張と疲労困憊の極限でゲームオーバーとなり、見終わった時には、安堵の涙が止まりませんでした。ハッピーエンドではないものの、最後まで一時たりとも見放さず、何とかジョンを救いたい一心で観たドラマが曲がりなりにも完結したからです。


英文評


今シーズンは、レイバーン一代目ロバートとサリーが、地方の名士にのし上がるために敵に回した人々と、ひた隠しにしてきた醜い過去が明るみに出て、心理分析が容易でした。「親の因果は子に報い、因果は巡る」と言いますが、正にロバートとサリーの罪が何代にも渡って引き継がれて行く悲劇が描かれました。最大の被害者は、一族の救世主に仕立て上げられ、役目を忠実に果たせば果たすほど孤立無援になってしまうジョンです。


ダニーとケヴィンは同じ穴のムジナではないでしょうか?懲りない人間は、学習能力に欠けるので、付け焼刃が剥げやすいのと同様、何度救っても抜本的に変わることはありません。「変わろう!」と自ら決めない限り、人間は変わらない、変われないからです。ジョンは、十代で両親から押し付けられた救世主の役を生真面目に演じてきました。それが証拠に、レイバーン一族の門番を務めるのは、保安官/刑事を職業にしたジョンと、末っ子でありながら、ミニ・ジョン的性格を発揮して弁護士になったメグの二人です。生真面目な人間が常に貧乏くじを引くものです。


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サリー(スペイセク)は、何事も後始末はジョンに押し付けるが、9~10話で本性を露わにし、ジョンの折角の苦心も水の泡となる。Rod Millington/Netflix


サリーの生い立ちと五人の子供への期待が、このドラマを分析する上での鍵です。「嘘ついたのね」とジョン、ケヴィン、メグを咎めて、いかにも傷ついたように振る舞いますが、家族を守るためにつく嘘は嘘に非ずと幼い頃から叩き込んだのは、どこのどなたでしたっけ?と思わず反論したくなります。勿論、サリーの過去と現在の全体像が見える視聴者だから言えることなのですが、サリーは自分の行動が、子供にどのような影響を与えたかなど、反省したことがありません。「一体、どこでどう間違ったのかしら?」とトンチンカンな問いかけを耳にすると、何も考えずに生きてきたサリーに開いた口が塞がりません。こんな親に育てられた子供は良い迷惑です。


とかく、生真面目人間は、親の期待に添いたい一心で、親の敷いたレールに乗って頑張ってしまいます。ジョン・レイバーンは、「グッドワイフ」のアリシア・フローリックと同様の生真面目人間です。唯一の違いは、アリシアは、職場で学んだ生きる知恵を私生活に応用して成長し、自由を手に入れて大空に羽ばたきましたが、ジョンは’自分探しの旅’に出たこともなく、親が決めた役目を盲目的に果たしてきただけと言う点です。幸せかどうかなど考えたこともないに違いありません。特に、シーズン3は、闇雲に目先の問題解決に奔走し、一瞬一瞬を呆然と消化していることが明らかです。


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ジョンは、極度のストレスを発散する手立てもなく、独りできりきり舞いを続ける。9話は、妄想か現実か不明の不可解な逸話だ。Jeff Daly/Netflix


大人になるとは、親が貼ったレッテルを剥がし、親が敷いたレールを敷き直して、自分の人生を切り開いて行くことです。残念ながら、ジョンはレッテルやレールの存在にすら気がついていない上、自ら課した数々の「~~すべき」や「~~であるべき」を生真面目に実行して、’幸せになってはいけない’という檻に自分を閉じ込めてしまったのです。あれだけトラウマやストレスを体験し、逃亡や逃避を試みたものの、ケヴィンの電話1本で、そそくさと旧の鞘=檻に収まってしまいました。檻は心理的拘束ですから、架空で鍵がかかっていないにも関わらず、ジョンは檻の外に出るなど、想像も付かない筈です。人里離れた町で、ノーラン、ケヴィン、エリック・オバノン(ジェイミー・マックシェーン)、ダイアンと子供に償うだけの余生(40年ほど?)を送ることの方が、殺人罪で服役するよりも荷が重いことでしょう。人助けは、先ず自分から。一生続く償いや目に見えない檻からジョンを救出できなかったことが心残りで仕方ありません。

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