2013年テレビ・サミットーレポート(2) - ハリウッドなう by Meg | TVグルーヴ オフィシャル・ブログ アーカイブ(更新終了)

ハリウッドなう by Meg


前の記事:
2013年テレビ・サミットーレポート(1)
次の記事:
2013年テレビ・サミットーレポート(3)

2013年テレビ・サミットーレポート(2)

(2013年4月18日)

今年の基調講演は、AMC Networksの最高執行責任者エド・キャロルとヴァラエティー誌編集長シンシア・リトルトンの対談形式で行われました。キャロルが統括するのは、AMC, IFC, Sundance Channel, WeTVの計4局。AMCは元々名作映画劇場局でしたが、2007年「MAD MEN マッドメン」、翌年「ブレイキング・バッド」のオリジナル作品で一躍名を馳せ、2010年「ウォーキング・デッド」で、'三種の神器'を完成させたケーブル局です。

対談では、Sundance Channelのオリジナル作品「Rectify」の放送開始戦略について、キャロルが手の内を明かしました。Sundanceは、名前通りサンダンス・インスティテュートを設立したロバート・レッドフォードをクリエイティブ・ディレクターに迎え、1996年にShowtime Networksとユニバーサル・スタジオが協力して始めたケーブル局です。サンダンス映画祭などに出品された、インディー系の映画を放送する局でしたが、2008年AMC Networks傘下に入って以来、ミニシリーズやリアリティー番組制作に乗り出しており、中でも「Rectify」は同局初のテレビシリーズとして期待が寄せられています。

abigailspencer01.jpg
「Rectify」で、兄の釈放に尽力したアマンサ・ホールデンを演じるアビゲイル・スペンサー
Tina Gill / PR Photos

AMCと同様のパターンで、名を上げたいという野望を抱いてのことです。鳴り物入りでジャーンと登場するだけでは、完全に埋もれてしまう、騒音に満ち満ちた昨今の世の中なので、「筋はシンプル、キャラは複雑」をモットーに、シーズン1はブルドーザー式に突き進む作戦です。プレミアの1週間前から、テレビ上VOD、オンラインやテレビ以外のデバイスで、3話まで無料視聴を可能にするのは、新作に飢えている視聴者が食いつき、ハマってくれれば、口コミでプレミア日に集客できると読んでのことでしょう。「初っぱなから込み入った伏線を盛り沢山にすると、視聴者が付いて来ない。シーズン1は、2に継続するための、序論のようなものだ」とキャロルは定義します。

6話しかないシーズン1の半分を無料配信して、番宣に使うという発想ですが....強姦殺人罪で、19年独房監禁され、死刑執行日を待っていたダニエル・ホールデン(エイデン・ヤング)が解放され、南部の田舎町ポーリーに帰郷してからの6日間を描く、極めて暗〜いドラマです。監禁されていた時の禅や悟りも、デジタル社会には太刀打ちできず、次々と災厄が降り掛かり、心が痛みます。パイロットだけは観ましたが、内容が内容だけに、2話以降に手が出ませんでした。無料だからと言って、3話まで「一気観」したくなるタイプのドラマではないだけに、この型破りな戦略は吉と出るか凶と出るのか?業界が見守っています。今月22日、午後9時からの2時間のプレミア時に、シーズン2継続の発表があったりして.....

Michael%20Wright%20panel.jpg
左からヴァラエティー誌リトルトン、MTV編成局長スザンヌ・ダニエル、BETネットワーク・オリジナル編成局長ロレサ・ジョーンズ、truTV最高執行責任者マーク・ジュリス、TNTライト編成局長

一方、2005年「クローザー」でケーブル局の首位に躍り出たTNTのマイケル・ライト編成局長は、「視聴者好みのドラマを次々と放出するのは当然ですが、ヒット作に、がんじがらめにならないように気を付けています」と語りました。つまり、柳の下の泥鰌狙いは、局内でもしたくないと言うのです。「視聴者が求めているドラマを作ると同時に、意表を突いた作品、TNTらしくなくても、面白い!と唸らせるドラマを生み出すのが醍醐味」と、流石に数々のヒットを生み出した実績に基づいた編成方針です。まだヒットシリーズが1本も出ていないSundanceと異なり、「ドラマはキャラと視聴者との関係が鍵」が信条のTNT。キャラの身に降り掛かる災難を自分のことのように感じ、辛苦を共にしよう!放っておけない!と思わせなければ、誰も付いて来ないと言うことです。納得!コンセプトは斬新でも、キャラ/役者に何の魅力も感じず、パイロットのみでおさらばした作品は数え切れません。

kyrasedgwick01.jpg
TNTを一躍有名にした「クローザー」は、キーラ・セジウィックが「デキる女」ながら、私生活では弱点だらけのジョンソンLAPD本部長補佐を描いた秀作。現代女性の鑑だったので、画面から消え去ったのは寂しい限りだ
Bob Charlotte / PR Photos


前の記事:
2013年テレビ・サミットーレポート(1)
次の記事:
2013年テレビ・サミットーレポート(3)

最近の記事

▲ TOP