2013年テレビ・サミットーレポート(3) - ハリウッドなう by Meg | TVグルーヴ オフィシャル・ブログ アーカイブ(更新終了)

ハリウッドなう by Meg


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2013年テレビ・サミットーレポート(3)

(2013年4月23日)

レポート初回、「チャック・ローリーとの対話」で、ローリーが「コンテンツ」とか「製品」と言う表現に抗議したことをお伝えしましたが、今回はローリーが明かしたコメディー創作、執筆、制作のコツをレポートします。

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CBS月曜日のコメディー枠はバトンタッチし、映画、ドラマ、ケーブル作品まで企画する契約を結んだチャック・ローリー。 Emiley Schweich / PR Photos

現在「ハーパー★ボーイズ」「ビッグバン★ セオリー ギークなボクらの恋愛法則」「Mike & Molly」の3本を制作しているローリー。「ハーパー」はシーズン10、「ビッグバン」は6、「Mike & Molly」3が現在進行中で、放っておいても制作は充分に機能しているため、現在は創作にエネルギーを費やしています。昨年、ワーナーと契約し、劇場用映画、ドラマ・シリーズ、ケーブル用のプロジェクトを何本も抱えているようです。

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「ハーパー★ボーイズ」アシュトン・カッチャーは、チャーリー・シーンの後を継いだ。出だしは好調だったが、番組自体の老朽化は否めない。 Barbara Henderson / PR Photos

パイロット撮影シーズン真っ最中に開催されたサミットだったので、CBS月曜日のコメディー枠用に「Mom」のパイロット撮影に忙しいのか、対談に遅れてきたローリー。「セラピーを受けてからでないと、人前に出られない」が言い訳で、開口一番笑いをとりましたが....

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セラピーを受けていて遅刻したと言い訳するローリー(左)とUTA専務ジェイ・スリスとの対談

番組の制作後記に書かれているローリーの胸の内を読んでも、いつお目にかかっても、暗〜〜いという印象しか受けず、この人のどこからコメディーが生まれるのだろう?と思っていましたが....「優秀な人材で周囲を固め、できるだけ邪魔しないように、専門職を全うしてもらうことだと、スティーブン・ボチコ(「シカゴ警察ヒルストリートブルース」「NYPD BLUE〜ニューヨーク市警15分署」制作)から学んだコツ」を肝に銘じているそうです。な、る、ほ、ど。理想ではありますが、絵に描いた餅では?と勘ぐってしまいます。’重箱の隅を楊枝でほじくる’タイプに、散々泣かされてきた人間に言わせて頂くなら、実行できる人は数えるほどしかいません。

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スティーブン・ボチコは、「マダム・プレジデント〜星条旗をまとった女神」を女大統領の家族ドラマから単なる政治ドラマに豹変させてしまった張本人。「オリジナル・クリエイターのビジョンが全うされないと、こうなる!」の好例だ。 Glenn Harris / PR Photos

コメディーは、視聴者と交わした’笑いの契約書’と信じて止まないローリーは、「スクリーンタイムは1秒も無駄にしない」モットーを守り続けていると言います。笑いがとれなければ、制作する意味がないと言うことです。シーズンを重ねる毎に、視聴率が下がって行くのが常識になったにも関わらず、先シーズン辺りから益々好調の「ビッグバン」については、女性キャラが加わって奥が深くなったこと、シンジケーション(第二次配給)のご利益、ストーリー編集を優秀な放送作家にバトンタッチしたこと、の三要因を指摘しました。「シリーズの最高のコマーシャルは、再放送を繰り返し観てもらうこと」とシンジケーションのご利益を語ります。特に、現在制作/放送中の作品だと、過去の逸話にハマり、追い付く視聴者が増える=視聴率増加に繋がります。

私は、パイロットから惚れ込んだ「ビッグバン」ファンの先駆者を自負していますが、シェルドンの人となりを知る事が'冒険'だったシーズン1と2しか太鼓判を押せません。最近、すっかり輝きを失ってしまったと思います。キャラが多過ぎるのと、シェルドンが心底意地悪になったことが要因です。昔のように、DVRに録画して、落ち込んだ時に観ようと思うカンフル剤的逸話が登場しません。1月に映像インタビュー時に会った、中国人レポーターも、ある地上波局の広報担当者2名も同意してくれました。「感情移入できるキャラかどうか?が鍵」と言うローリーは、シェルドンが年々意地悪になっていることに気付いておられないようです。

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「ビッグバン★ セオリー」シェルドン役ジム・パーソンズは、天才にありがちな傲慢さや社交性ゼロを見事に演じて、オタク文化の心理的背景をあらわにする。シーズン1、2の'どこか憎めない'シェルドンに戻ることはないのだろうか? David Gabber / PR Photos

新作を生み出すには、飽くまでも自作を死守する’尊大な戦士’であると同時に、周囲の人間のインプットや支えを素直に受ける謙遜さが必要だと学んだローリー。100年後に「チャック・ローリーって、まだ生きてるんだっけ?」と言われたいそうです。今のペースで、秀作を残し、シンジケーションでいつまで経っても放送が続けば、何の問題もなく「生きてるんだっけ?」と言われるに違いありません。


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