エミー賞根回しイベント「House of Lies」の希望の星は? - ハリウッドなう by Meg | TVグルーヴ オフィシャル・ブログ アーカイブ(更新終了)

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エミー賞根回しイベント「House of Lies」の希望の星は?

(2013年7月12日)

かれこれ1ヵ月強になってしまって恐縮ですが、エミー賞根回しイベント特集は、昨年Showtime局で始まった「House of Lies」で締めくくります。6月6日イベント開催時には、シーズン2は既に完了していたので、マット・デイモンがゲスト出演した第4話を観賞した後、キャスト5人とクリエイター、プロデューサーの計7人でパネルディスカッションが実施されました。

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左からマシュー・カーナハン、ドン・チードル、ベン・シュウォーツ。

「デクスター 〜警察官は殺人鬼」「WEEDS〜ママの秘密」「カリフォルニケーション」など、一連の過激なアンチヒーローを描いた作品で名を馳せたShowtime局が生み出した職場ブラック・コメディーが「House of Lies」です。

クリエイターのマシュー・カーナハンのお兄さんがコンサルタント業を営んでおり、コンサルタントの信じられない話をよく聞かされていたため、3年前からシリーズにしようと売り込みを開始。但し、マーティー・キーン氏の著「House of Lies: How Management Consultants Steal Your Watch and Then Tell You The Time」で紐解かれた、難解/意味不明の業界用語が土台になっていると言いますから、骨組みも筋もない用語解説本からこのシリーズが生まれたことになります。

私事で恐縮ですが、嘗て経営コンサルタントを営んでいる際に、カリスマコンサルと崇められる数人に遭遇したことがあります。取締役会や経営陣を相手にカリスマコンサルが捲し立てる有難?い(時給と有難味は当然比例)プレゼンに、外国語で話を聞いているような、「何のこっちゃ?英語で説明して!」と、不満を覚えたものです。

実在のフィクサーを基に創作されたものではありますが、「スキャンダル」がとんでもない(?)方向に進んでいるのと同じく、キーン氏の解説書をテレビ化した「House of Lies」も、チードル演じるマーティー・カーンの職場ブラック・コメディーに豹変したという訳です。制作発表の時に同席していたキーン氏ご本人は、過激でも、破廉恥でもなく、普通の人でした。名前を貸したことを後悔しているのではないでしょうか?今度、お目にかかることがあれば聞いてみたいと思いますが、本が売れれば別に....の口かもしれませんね。

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ドン・チードルに話をしたくて近寄ったら、広報のおばさんに「インタビューしに来た訳ではない」と追い返された。それでは、エミー賞の根回しになりませんから...悔しいから、写真だけ撮ってさっさと退散した。

中には、真摯で誠実なコンサルタントもいますが、カーンが代表するのは、クライアントを煙に巻き、問題を捏造した上で、救世主はこの人しかいない!この人を雇わなければ、会社の先行きが危うい!と思わせるタイプです。意味不明の業界用語は煙に巻き、恐怖心を煽る手段なのです。

毎日、はったりをきかした世界にどっぷり浸かり、クライアント獲得に躍起になっていたマーティーと子分3人ですが、シーズン2では、マーティーに真っ向から挑戦するビジネススクールの同級生タマラ(ニア・ロング)が登場して、4人の結束が崩れ始めます。マーティーは人間として、父親として、成長するでしょうか?

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ロスコー役で最も光っているレナードは、お母さんと来場。サインや写真撮影にも気軽に応じ、「これからも観てくださいね」と自己PRにも長けていた。守備を固めていない駆け出しの俳優は、誰かさんと違って、成果をあげた筈。

経営コンサルタントと接触したことがある方は、思わずニンヤリしてしまう狂気の沙汰が描かれていますが、この作品で私が気に入っているのは、マーティーの独り息子ロスコー(ドニス・レナード・ジュニア)です。ロスコーは、狂気の沙汰のど真ん中に存在する'台風の目'のような存在です。このイベントに参加したのは、この少年に会いたかったからと言っても過言ではありません。

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ロスコーの母モニカ役のドーン・オリヴィエリ。

くっついたり離れたりを繰り返す父マーティーと母モニカ(ドーン・オリヴィエリ)の間で、早々に大人にならざるを得なかった14歳のロスコーは、両親を穏やかに、温かい目で見守ります。化粧したり、ドレスで登校したり、その日の気分によって男の子になったり、女の子になったり、周囲の目を全く気にせず、gender fluid(=性分類流動性と訳すのでしょうか?)を体現して、ストレスを解消しているように見受けます。

レナードは「ロスコーが何の抵抗もなく、あるがままに生きているところが、大好き」とパネルディスカッションで述べました。レナード自身、14歳の中学生。未成年に聞かせたくない台詞やシーンは、本読み中に「ヘッドフォーンをつけさせて、聞こえないようにしている」とチードルが語りました。キャストからも、観客からも、大切にされている様子が伺えました。

レセプションでも、サインや写真撮影をせがまれているのは、レナードでした。シリーズ自体はそうそう長続きしないような気がしますが、ロスコー=レナードは、充分注目に値します。


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