昨春から首を長くして待っていた「Whiskey Cavalier」、2月末より放送中。楽しくて、辞められない、止まらない!こんなスカッとするドラマを待っていたのだ!!!

左からFBIプロファイラーでウィルの腹心スーザン(アナ・オルティス)、元NSA分析官エドガー(ウィリアムス)、フランキーのCIA仲間ジェイ(ヴァー・ダス)、フランキー(コーハン)、ウィル(フォーリー)。NYにある隠れ家からヨーロッパ各地に送り込まれるFBIとCIA合同チーム。©ABC/Larry D. Horricks

2019年冬のTCAプレスツアーでは、2月5日(今回も半日と言うお粗末な)ABCの日に、今春の新ドラマ「Whiskey Cavalier」のパネルインタビューが開催されました。この日、登場したのは、ウィルを演じるスコット・フォーリーと、相手役フランキー役のローレン・コーハン、エグゼクティブ・プロデューサー2人(ビル・ローレンス、デビッド・へミンソン)でした。但し、最近の傾向通り、フォーリーもプロデューサーの一人で、過去に制作の実績があるだけに、名目上ではない事は確実です。

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パリのアパートに篭り、ロマコメと失恋ソングに浸って悲嘆にくれる、繊細でロマンチストのウィル・チェイス(フォーリー)。最近振られたばかりで、絶望のどん底から立ち直ることができないのは、何を隠そう、パリ駐在のFBI特別捜査官の精鋭コードネーム「ウィスキー・カバリエ」です。仕事に打ち込めば忘れられると自分に言い聞かせて、国家安全保障局(NSA)の分析官エドガー・スタンディッシュ(タイラー・ジェームス・ウィリアムス)を拘束して、パリに連行する任務に志願します。エドガーは国務省にハッキングして入手したCIA秘密諜報員の機密文書を隠し持っており、漏洩を恐れて、拷問にかけてでも機密文書を奪還したいCIAが送り込んだのは、色仕掛けなんて朝飯前、任務を執行するためなら汚い手も厭わない一匹狼フランキー・トロウブリッジ(コーハン)CIA秘密諜報員コードネーム「ファイアリー・トリビューン」です。モスクワからパリまで、両極端のウィルとフランキーのエドガー奪回珍道中が始まります。負傷したフランキーは、任務を放棄しますが. . . 二人の功績が認められ、ヨーロッパを駆け巡って世界平和に貢献するFBIとCIAの合同チームが結成されます。但し、チームを率いるは、「繊細な熱血漢ウィル」か「自己チューで薄情な冷血漢フランキー」のいずれ?を巡って、又しても闘いが始まります。

 

クリエイターのへミンソンは、「激戦地に飛び込んで使命を完うした後、彼女をどうやって取り戻したら良いか?と明け方に電話してくるCIAの友達がモデル」と、本作発想の種明かしをしました。離婚手続の真っ最中、私は所構わずビービー泣いていましたが、涙を流す毎に少しずつ癒されると気が付きました。精神衛生上「涙活」は大いにお薦めしますが、集中力や秘密厳守が不可欠のスパイにはどんなもんでしょう?感受性豊か、痛みに敏感なスパイなど、現実には1日たりとも保たないに違いありません。フォーリーは「昔からアクション・ヒーローって、とかくストイック人間として描かれてきたけど、21世紀のスパイはもっと人間らしくないとね。少なくとも、僕はもっと心優しい等身大のキャラが観たかったんだ」と本作の趣旨を語りました。つまり、従来の男性優位主義の象徴ジェームス・ボンドからマチズモを削除して、ヒーローを再定義する目論見なのです。同時に、過去には’女々しい’と批判された男の言動、’女のくせに’で阻まれた女の言動を逆手に取ります。又、従来ドラマの男女コンビは、視聴者を飽きさせる事なく、くっつきそうでくっつかない微妙な関係を何シーズン引き延ばせるかが勝負でしたが、本作ではウィルとフランキーが正反対の気質を巧みにチームワークに織り込みながら、世界平和の為に悪党と闘うかがテーマです。


エドガー(右)が隠し持っている機密文書を敵から守り、パリの米国領事館に送り届けるため に、命を張るウィル(左)。フォーリーは、「スキャンダル」のジェイク役の前には、「ザ・ ユニット 米国極秘部隊」のボブ・ブラウンで鍛えられている。 ©ABC/Larry D. Horricks

プラハでの撮影風景。最初の2~3話は秋に撮影したので問題なかったが、撮影器具が凍りつく冬は厳しい。今年「北極より寒い」異常事態を体験したシカゴ並み?©ABC/Bruno Calvo

ヨーロッパの美しい風景や超大作に欠かせない音楽効果など、3話以上の予算を費やしたに違いないパイロットの出来で、私はウキウキ、ワクワク、こんなドラマを待って いた!と嬉しくなってしまいました。但し、この手の絢爛豪華なパイロットが必ずしもヒットに繋がると言う数式は成り立たないので、2話以降続けられるか?と懸念する評論家も多々いました。しかし、「キャスト、制作班とも、プラハに引っ越して、それぞれに住居を構え、正にヨーロッパを股に掛けて制作する」と発表があり、クロマキー合成で世界中を駆け巡ることなど朝飯前のご時世に、アニメの実写化ではなく、軽いタッチのアクション・ドラメディーにABCがどれほど期待を寄せているかが明らかになりました。

パイロットは、ウィルとフランキーの丁々発止の議論が、私の大好きな「探偵レミントン・スティール」のローラ(ステファニー・ジンバリスト)とレミントン(ピアース・ブロスナン)を彷彿とさせ、正に21世紀版「レミントン・スティール」であることに気づきました。但し、ブロスナンの出世作となった探偵モノジャンルに属するドラマでは、才色兼備で行動派のローラに対して、ローラがデッチ上げた探偵事務所所長役を買って出た’レミントン’は、おしゃべりな割にはストイックで得体の知れない謎の存在です。女が所長では信用度が低く、仕事の依頼がないと言う80年代を反映しています。男性優位主義(=やっぱり男がいないと何も始まらない)は明らかですが、男女の役割が未だ未だ明確だった時代です。現代版では、従来の男女の役割を再分配。繊細、気配り、敏感、甘いもの好き等をウィルに、自分の欲望や情念を抑えて、自ら定めた目標を達成しようとする余り、自分にも他人にも厳しい一匹狼をフランキーに振り当てている所が味噌です。


フランキーとウィルの絶え間ない丁々発止は、80年代に一世を風靡した探偵モノ「探偵レミントン・スティール」(1982~87年)の現代版と言える。但し、男女の役割は巧みにミッ クスされている。©Craig Sjodin/ABC

私の読みは的中、フォーリーは「子供の頃に観た『探偵レミントン・スティール』『こちらブルームーン探偵社』『探偵ハート&ハート』『Simon & Simon』みたいな、軽いノリの1時間ドラマが懐かしくてね。コメディー要素が存分に盛り込まれていなければ、アクション・ドラマをジャンル通りにやっても意味が無い」と述べました。

同日、午後1時からホテルの宴会場でABCオール・スターパーティーが開催されました。ABCの「A Million Little Things」クリエイターDJ・ナッシュ、ジョン役のロン・リビングストン、 「エージェント・オブ・シールド」のデイジー役クロエ・ベネット、春の新ドラマ「The Fix」クリエイター(O・J・シンプソン事件の元首席検察官)マーシャ・クラーク、ABC系列のFreeform局の「NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち」のサットン役メーガン・ファヒーと相手役リチャード役サム・ページと話をしました。


ゲストにベラミー・ヤング(右端)を迎えた第2話「The Czech List」の一場面。ヤングは「スキャンダル」でメリー・グラントを演じたので、友情出演? ©ABC/Larry D. Horricks

話したくて、うずうずしていたフォーリーには、もう諦めて帰宅しようと思い最後に会場を一周していて、やっと巡り会えました。バンザーイ! 2018年6月7日「勧善懲悪なんてどこ吹く風?ムカつく『スキャンダル』の結末. . .」でご報告したように、貧乏くじを引いて罪の償いを独りで担うことになったジェイク・バラードの怨念をいつか晴らしたかった私です。開口一番、「ここだけの話、この作品は『スキャンダル』で酷い仕打ちを受けた’残念賞’なの?」と聞いてみました。側で聞いていたフォーリーのエージェントも広報担当者も、「メチャ、腹立つよね!!」と賛同してくれたので、「DVRに貯めてた『スキャンダル』を全部消したわ。ったく、ムカつく!」と再度フォーリーの反応を求めました。やっと、「あんな終わり方は酷だよね?」とフォーリーは認め、「’残念賞’じゃないけど、もう血まみれの暗いドラマは懲り懲り! 楽しいのがやりたかったから. . .」と笑います。ですよね。世も末!的ドラマが蔓延し過ぎて、楽しく逃避できる世界が希少価値となってしまいました。今の時代、趣味の心理分析はさて置き、何も考えずに笑って楽しめる別世界、カオスの現実から逃避できる見た目だけでも美しい世界が欲しかったのです。


46歳とはとても思えない、軽やかな身のこなしのフォーリー。「危険だから駄目!と禁じられない限り、何でも挑戦する」のが若さを保つ秘訣?10歳以下の子供が3人いるからかも知れない。 ©ABC/Larry D. Horricks

幼い頃、父親の転勤で日本で暮らしたことがあるフォーリーだけに、今回のプロジェクトで奥方マリカ・ドミンスクと幼い一女二男を連れて、プラハに引っ越したと言います。「子供たちは学校に通って、もうすっかり、地元の生活に慣れたよ」と、海外体験させることができるようになったことが、何よりも嬉しそうです。2018年1月10日に、最後のセット訪問をした「スキャンダル」以来ですが、今回は仕事が楽しいのか、家族と一緒に過ごす時間がたっぷりとあるからか、晴々としていて、私も思わずルンルンで帰途に着きました。