グラミー賞受賞ミュージシャンNe-Yo(ニーヨ)が、子供の性自認に関して意見を口にし、インターネット上で批判を浴びた。
7児の父でもあるミュージシャンNe-Yo(代表曲に「So Sick」「Because of You」など)は8月4日、『VladTV』でのグロリア・ヴェレスとのインタビューで、未成年者がジェンダー適合ケアを受けることが許されるべきかどうかについて疑問を呈した。(『VladTV』の当動画は会員のみ視聴可能)
なお、米国医師会と米国小児科学会は「ジェンダー適合ケアはトランスジェンダーの若者にとって安全であるだけでなく、非常に有益であり、しばしば救命にもつながる」という点で合意しており、未成年へのジェンダー適合ケアは通常、性別の表明、公的な名前の発音や名前自体の変更、思春期ブロッカー(本人の合意のもと、第二次性徴を遅らせる薬)の使用などが中心となる。
自ら他人を定義づけする気はないスタンスを表明
Ne-Yoは「僕はLBGTにも、誰にも問題なんて感じてないよ。人は自分が愛する人を愛し、することをするだけ。僕個人としては”男は男、女は女”という時代に育ったし、2つの性別しか存在しないというのが僕のロックだった」と、ジェンダーに関する自分のスタンスを明らかにする。
そして「君が自称金魚でも僕は気にしない。僕には関係ないからね。わざわざ僕を関わらせるなら、僕は君を金魚とは呼ばないよ。でも金魚になりたいなら、金魚になってればいいんだよ」と続けた。わざわざ他人を定義づけることはないが、定義づけを強いられるなら自分の基準に従う考えのようだ。
ヴェレスとNe-Yoはその後、ソーシャルメディア文化や大量のトリガー警告(※)など、世界が“とてもセンシティブ”になっていることを非難した。Ne-Yoは「僕たちは奇妙な時代を生きている。コメディアンはもうジョークを言うことができないよ」と世界からユーモアが失われつつあると主張した。
※トリガー警告:不快な感情や記憶を思い起こす可能性がある物や事に対する警告,インターネット上の投稿、映像や写真の内容に関する注意警告など
子どもは性別を決めるには早いと主張
続けてNe-Yoは「親が親の役割を忘れかけているように思うんだ。君の幼い息子が『パパ、僕女の子になりたい』と言っただけで、親がただ承諾するのか?5歳の男の子なら、一日中キャンディを食べさせただけでそう言い出すかもしれないよ?5歳児、6歳児、12歳児に、自分で人生を左右するような決断をさせることが、いつから”良いこと”になったんだ?理解できないよ」「運転免許も持てない子が性別を決めてもいいって言うのか」と、子供は大きな決断をするには幼すぎることを繰り返し強調した。
SNSでのバッシングと、それに対する弁明
動画が最初に公開された後、Ne-Yoはソーシャルメディア上ですぐに批判を浴びたが、その後ヴェレスがTwitterで、InstagramでのNe-Yoのコメントをシェアした。
Well said @NeYoCompound
??☝?❤️ pic.twitter.com/fNZW44LI5y— Gloria Velez (@GloriaVelez) August 6, 2023
彼は「何よりまず、僕は誰も非難するつもりはないし、誰かを非難する立場にないだろう?君の人生、君の子供、君の選択だ。僕は質問されたからそれに答えたんだ。僕の意見は僕のもの。誰かに賛同を求めるつもりもないし、子供たちに何をしていいか、何をしてはいけないかを他人に指示するつもりもない。僕はある問題について自分の意見を述べた、それだけだよ」と自身の姿勢を改めて表明。
彼は続けて「君たちは自分の意見が誰かを怒らせようが気にしないのに、なぜ僕は自分の意見が君たちを怒らせるかどうか気にしなければいけないんだ?意見ってスペシャルなものじゃなくて、誰もが持っているものだろう。人々はいつだって、聞かれようが聞かれまいが、自分の意見を口にするじゃないか。僕は直接意見を聞かれたんだ。反対意見に賛成することを宣戦布告のように捉えるべきではないよ」と、あくまで自分の意見を聞かれて答えただけで、賛同も批判も求めていないことを強調している。
さまざまな考えはあって当然だが、やはり発言に影響力のあるアーティストは意見を聞かれることすら火種になってしまうようだ。
【動画】Ne-Yo「What If」ミュージック・ビデオ
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。