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【ネタバレあり】「アナと雪の女王2」が伝えたかったもう一つのメッセージとは? エルサとアナの姉妹愛だけじゃない、人類が直面する重大なテーマとは

「アナと雪の女王2」 COLUMNS
「アナと雪の女王2」

2013年(日本では2014年公開)に世界的に大ヒットを記録したディズニー映画「アナと雪の女王」。今でも子どもたちが「ありの~ままの~」と口ずさんでいるところを見かけるほど、大ヒットを記録した名作です。

前作が公開されてから、ショートフィルムとして何度か新作が公開されていますが、長編作品としては約6年ぶりの続編となりました。

私はアナの誕生日や、クリスマスをテーマにした「アナ雪」のショートフィルムが大好きなので、今回久しぶりに続編が公開されるということで本当に楽しみにしていました。

前作は、凍ってしまったアナの心をエルサの真実の愛で溶かすという2人の“姉妹愛”がテーマとなり物語が進んでいきましたが、今作ではエルサが魔法の力を持っている理由がついに明らかになります。

アナとエルサ、2人とも今作では重要な役割を果たしているのですが、この2人の“姉妹愛”以外に、ディズニーが映画を通して伝えたいメッセージがあると感じたので、私なりに考察してみました。

※本コラムには映画「アナと雪の女王2」のネタバレが含まれています。ネタバレを気にしない!という人もできれば、映画を観てからまた読みに来てください。また、ここに書いてあることは、私が映画を観たうえで感じたことや、いちディズニーオタクとしての意見なので、こんな見解もあるんだなくらいの軽い気持ちで見てくれたらうれしいです。

謎の声を放っておけないエルサ

これまでの作品を通して、ついに家族や元の生活を取り戻したエルサ。このまま幸せが続けばと願う中、突然ナゾの声が彼女に聞こえるようになります。

あの声、少し怖くないですか?とてもキレイな声なんですが、最初聞いたとき、ちょっと怖いなと感じたのが素直な感想です。しかも、エルサにしか聞こえないっていうことが余計に怖かったです。

最初はエルサも「聞こえないふり」をして、トラブルを避けようとしますが、エルサは自分の力が日に日に強まっていることに気が付いていました。アレンデールで暮らすことは、彼女にとって幸せでしたが、どこかまだ自分の居場所ではないと感じていたのかもしれません。彼女は「その声について行きたい!」と一度、森へ飛び出します。

【動画】Idina Menzel, AURORA – Into the Unknown (From “Frozen 2”)

一方、エルサを呼ぶ声が強まると同時に、アレンデールの街から火が消え、水の流れが止まり、地面が割れたり、強風が吹いたりと様々な危険が迫ります。

そこで、エルサは声の主を見つけたら、解決への答えがわかるかもしれないと旅にでる決意をします。その際、心配するアナにエルサは「特に理由はないがこの声を信頼しても大丈夫な気がする」と伝えています。

これは、物語の後半で明らかになりますが、このエルサを呼んでいた声の正体は“2人の母親”でした。なので、エルサは最初からどこか「安心感」を覚え、付いて行ってもいい、そして「自分が呼ばれている(必要とされている)」と感じていたのだと思います。

エルサは第5の精霊

エルサとアナがまず目指したのは魔法の森と呼ばれるノーサルドラ。ここは過去にアナたちが暮らすアレンデールと精霊たちが住むノーサルドラの間で起きた紛争をきっかけに精霊たちが怒り、深い霧に覆われてしまった場所です。

そこで、エルサたちはノーサルドラの住人とアレンデールの兵士たちに出会います。エルサが持っていたスカーフがノーサルドラのものであることがわかると、ここの住人や兵士たちは、エルサたちが味方であることを理解し、争いを止め和解します。そしてエルサは5つの“精霊”について教えてもらいます。

ここでエルサは、本作では重要なカギを握っている新キャラクターである、火、風、水、土の4種類の精霊に出会います。

火の精霊はブルーニという名前のトカゲのようなキャラクター。最初はエルサと闘いますが、彼女の優しさにブルーニは心を開き、味方になります。

次に風の精霊ゲイルが登場。ゲイルもエルサと闘いますが、彼女の優しさに触れ、仲間になります。

次にアートハランに向かう途中の海で、馬のような見た目をしている水の精霊ノックに出会います。ノックはかなり強く、何度もエルサを追い払おうとします。しかし、諦めないエルサの意志を認め、最後にはアートハランへと導いてくれます。

アートハランについた後、エルサは「Show Yourself(みせて、あなたを)」と歌い、自分は味方であること信じてほしいと声の主へ語りかけます。そしてついにナゾの声の正体が母親であったこと、そして自分が第5の精霊であったことを知ります。

その瞬間、エルサは自由になりました。やっと自分の居場所を見つけたことを喜び、涙を流し嬉しそうな表情を浮かべます。そんな彼女の気持ちを表すかのように衣装もこれまでとは違った真っ白なものになり、髪もまとめず下ろしたナチュラルなスタイルに変わっています。

「Show Yourself」という歌はエルサが声の主に語りかけるのと同時に、自分自身に「真の自分の姿みせて」と歌っているのではないかなと思いました。

またこの時に母親が登場し「Come, my darling, homeward bound(おいで、愛おしい子、帰り道へ)」とエルサを呼びます。そこでエルサは「I am found(見つけてもらえた)」と安堵の笑顔を浮かべます。そして「You’re the one you’ve been waiting for(あなたこそがずっと待っていたもの)」とエルサがずっと探していたものは真の自分の姿、精霊としての姿だったことを教えています。すべてのナゾが解け、本当の自分の姿を見つけたエルサは、喜びと自信に満ち溢れていてとても美しかったです。

【音源】Idina Menzel, Evan Rachel Wood – Show Yourself (From “Frozen 2″/Lyric Video)

アナも第5の精霊?

エルサが真の自分の姿を見つけて喜んだのもつかの間、彼女は驚愕の事実を知ります。長きにわたって続いてきたノーサルドラとアレンデールの紛争は、あるダムが原因となっていたのです。2つの国の平和の証として建設されたはずのダムだったのですが、その裏でアレンデールがノーサルドラを征服することをたくらんでいたのです。いわばダムは「裏切りの象徴」だったのです。

この恐ろしい事実を知ったエルサはその場で凍り始めます。彼女はその直前、最後の力をふり絞ってエルサはなんとかすべてをアナに話しますが、それで力を使い切り、彼女がつくったオラフもいなくなってしまいます。

最愛の2人を失ったアナは途方に暮れますが、それでも「Do the next right thing(次にすべき正しいことをやろう)」とダムを壊そうと立ち上がります。

その時に登場するのが、大地の精霊ジャイアント。大きな岩の姿をして気性の荒いジャイアントをアナは上手く利用してダムを壊します。事件のきっかけとなったダムが壊されたことで、精霊は過去の過ちを許し、アレンデールとノーサルドラに再び平和が訪れます。

自分にとって一番大切な人たちを失ったアナでしたが、国のために立ち向かったアナはまさに女王にふさわしい存在であることを自ら証明したといえるでしょう。同時に第5の精霊としての役割をエルサの代わりにやってのけました。

一方、氷から解けたエルサは、アナの代わりにダムから多量に流れてきた水を食い止め、アレンデールを守ります。2人で力を合わせて、アレンデールとノーサルドラを救いました。実はエルサだけではなく、アナも第5の精霊だったといえるのではないでしょうか。

2人がすべてをつなぐ“架け橋”

ノーサルドラの住民によると、第5の精霊は、ノーサルドラとアレンデールをつなぐ“架け橋”だということでしたが、実際、エルサはノーサルドラの女王、アナはアレンデールの女王として、2つの国をつなぐ“架け橋”になりました。

魔法の力を持っているエルサだけでなく、彼女を信頼し強い絆で結ばれているアナがいるからこそ、2つの国は救われました。魔法の森をもとに戻してほしいという精霊たちの願いには、ディズニーが姉妹の絆とは別に伝えたいメッセージがあると思います。それは、「自然保護」です。

ブラスチックの袋やストローの配布を廃止する場所も増え、以前よりは環境保護に対する意識は高まってきていますが、環境汚染は未だに進んでいます。映画のなかで描かれているように、現実の世界でも人間の勝手な行動のせいで美しい自然は破壊され、オーストラリアでも大規模な山火事が発生したりと、多くの動物たちも犠牲になっています。まさに今、自然は私たちの助けを必要としているのです。

そこで本作にはエルサとアナは、私たちと自然をつなぐ“架け橋”となり人々の自然保護への関心を高め、みんなで「自然を守っていこう」というメッセージが込められているのかなと感じました。

【おまけ】個人的、お気に入りポイント

最後に私の映画のお気に入りポイントを紹介させてください(笑)今作は、これまでの「アナ雪」シリーズに比べ、ミュージカルナンバーが増え、映画中ずっと歌っていたんじゃない?と感じるほど、素晴らしい楽曲が盛りだくさんでした。

特に、クリストフのソロ曲「Lost in the Woods(恋の迷い子)」のシーンは傑作でした。80年代のバラードを再現した楽曲で、映像も80年代のミュージックビデオ風。最高なんですが、どこかギャグっぽい感じに思わずニヤニヤしちゃいました。

ディズニー映画は、基本的に主題歌のみを有名歌手がサウンドトラックで歌っているのですが、なんと今回は2019年を代表するアーティストといってもいい パニック!アット・ザ・ディスコが「Into the Unknown」、グラミー受賞歌手 ケイシー・マスグレイブスが「All Is Found(魔法の川の子守歌)」、ロックバンド ウィーザー「Lost in the Woods」を歌っているんです!

さらにウィーザーは、映画のクリストフの歌唱シーンを完全再現したMVも公開。これはもう最高の一言です。まだ見てない人はぜひ見てみてください。

【動画】Weezer – Lost in the Woods (From “Frozen 2”)

長々とつづってきましたが、最後まで読んでくれてありがとうございました。

映画「アナと雪の女王2」

上映中
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2019 Disney. All Rights Reserved.
監督:クリス・バック/ジェニファー・リー
声の出演:松たか子(エルサ)、神田沙也加(アナ)、吉田羊(イドゥナ)



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