※日本放送未定の「BH90210」についてのネタバレがあります。
今日は8月7日米国で放送開始となった「BH90210」についてレポートします。プレスツアーで本作のパネルインタビューが開催されたのは、プレミアのおよそ9時間前で、前回ご報告したHulu「ヴェロニカ・マーズ」と同様、大手メディアの評論家以外は内覧を許されないまま臨むインタビューとなりました。
米国では、1990年10月から2000年5月まで、地上波局Foxで10シーズン293話が放送された長寿番組です。原題の「Beverly Hills 90210」が示す如く、郵便番号90210地域の超高級住宅地ビバリーヒルズに住む特権階級のティーン(高校白書)と大学生(青春白書)が織りなす青春群像劇です。日本では1990年~2000年まで放送された「ビバリーヒルズ高校白書」と「ビバリーヒルズ青春白書」が海外ドラマの走りだったので、まだ記憶に新しい読者も多いのではないでしょうか?
最近のリブート/リメイク・ブームの波に乗って、登場する運びになった「BH90210」は、本サイトの記事「90年代の超人気ドラマ「ビバリーヒルズ青春白書」がこの夏、帰ってくる! オリジナルキャストが、ほぼ復活」(2月28日付)「『ビバリーヒルズ青春白書』復活版にブレンダ役シャナン・ドハーティー出演決定」(4月29日付)で報道されました。但し、リブートなのか?リメイクか内容が今一つ明確でなく、「復活版」となっている点にご注目ください。
8月7日のFox局開催のパネルインタビューに登場したのは、制作総指揮を担当するクリス・アルバージーニ、マイク・ケスラーと、オリジナルキャストのジェニー・ガース(ケリー役)、トリ・スペリング(ドナ役)、アイアン・ジーリング(スティーブ役)、ブライアン・オースティン・グリーン(デビッド役)、ガブリエル・カーテリス(アンドレア役)とシャナン・ドハーティー(ブレンダ役)の計8人でした。俳優全員がプロデューサーの肩書きをもらっていることも、注目に値します。
Foxがイベント・シリーズと呼ぶ「BH90210」は、主にガースとスペリングのアイデアを元に制作されました。スペリングは「高校時代に友達と語り合ったものの、結局叶わなかった夢を実現している感じとでも言うか. . .アイデアは山ほどあるから、何シーズンも続けられるわ!」と語りました。
「キャストもファンも、復活を待ち望んでいたけど、単なるリブートならやりたくないって、全員一致したの。30年前に始めて、10年も続いた長寿番組に関与して来た訳だから、あの経験を上回ることなんて絶対無理!だから、オリジナルのように新鮮で画期的なことをしよう!って決めたわけ」と創作の意図を語ったのもスペリングでした。
内容については、ガースが「あれだけゴシップ誌で叩かれた当時のイメージを逆手にとって、更に一捻りして展開することになったの。乞うご期待!」と付け加えました。はー?!どう言う意味?聞けば聞くほど混乱する、意味不明のパネルインタビューでした。
そこで、パイロットを観たところ. . .ブレンダやケリー、ドナ等「ビバヒル」のキャラは登場せず、キャストの私生活が披露されます。シリーズ完から19年後、オリジナルキャスト6人がラスベガスで開催される「ビバヒル30周年記念イベント」に参加する所からドラマが始まります。
さて、どのような設定になっているのでしょうか?
スペリングは、既婚で6人の子持ち。プライドが高くて大きな仕事しか引き受けない夫ネイト(イヴァン・セルゲイ)を頭に一家で出演していたリアリティー番組が打ち切られ、収入源を求めて四苦八苦しています。そして、突如閃いたのが、「ビバヒル」復活版と言うことです。
グリーンは、ビヨンセ風の売れっ子歌手シェイ(ラ・ラ・アンソニー)のキャリアを支えるため、3人の娘の世話をするイクメンです。長年、業界から離れていましたが、テレビ復帰は満更でもなく. . .
ジーリングは、フィットネスグルのステイシー(ジェナ・ローズナウ)の言われるままに、夫婦揃ってコマーシャル撮りなどに甘んじて、妻のキャリアに貢献しているつもりだったのですが. . .ステイシーは浮気に走り、夫婦仲は前途多難です。
カーテリスは、孫までいるキャリアウーマン。(架空の)アメリカ俳優ギルド会長として、エンタメ業界で活躍しています。
プリーストリーは、テレビの逸話監督をして生計を立てていますが、喧嘩っ早いのが玉に瑕。妻カミール(ヴァネッサ・ラシェイ)の広報力で、何とか独立系の映画制作にこぎつけようと躍起になっています。
ガースは、3度目の夫が離婚訴訟を起こし、男運の悪さ、かつてのスターパワーや美貌、若さを失って行くこと等、悩みの種は尽きません。決して幸せなアラフォーではありません。
ドハーティーは、世界中を飛び回って、動物の救援活動に余念がありません。但し、「ビバヒル30周年記念イベント」にもアフリカから衛星中継で参加。キャストと疎遠になっている事は明らかです。
放送当時、ドハーティーの態度が悪いとか、キャストとの不仲など様々な不良少女/タカビー的噂が絶えませんでした。一時は仕事にあぶれて、オンライン専門学校のコマーシャルに出演、ギャラは2,000ドルだったと本人が語っている映像まであります。
一方、スペリングは、シリーズ完了後、母親との不仲が原因で、「ビバヒル」クリエイターの父アーロン・スペリングが残した遺産を相続できなくなり、リアリティー番組に片っ端から出演。甲斐性無しの夫と5人の幼子を抱えたスペリングの惨めな現実を全米に披露したことも、母親と疎遠になった理由とか?又、カーテリスは、SAG/AFTRAの会長としてハリウッドでは有名です。日本ではゴシップ報道されていて、地元の人間より俳優の私生活の詳細をご存知の読者も多いかも知れませんが、キャストの私生活の逐一を知らないと、どこまでが真実でどれが作りごとなのか、意味不明なドラマに終わってしまう可能性があります。又、各俳優の配偶者は俳優が演じている上、本名を使っていないのも、混乱の原因ではないでしょうか?
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◇Meg Mimura: ハリウッドを拠点に活動するテレビ評論家。Television Critics Association (TCA)会員として年2回開催される新番組内覧会に参加する唯一の日本人。Academy of Television Arts & Sciences (ATAS)会員でもある。アメリカ在住20余年。