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放送・配信開始が待ち遠しい2022年第四四半期の作品 「ホワイト・ロータス2」「レバレッジ:リデンプション2」「エミリー、パリへ行く3」等

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「ホワイト・ロータス  諸事情だらけのリゾートホテル」は、第74回エミー賞の限定シリーズに授与される5賞とテクニカル部門の5賞、計10賞に輝いた2021年の秀作。第二弾は、シチリア島を舞台に、地元のセックスワーカーが触媒となって生まれるVIP客間の複雑な人間関係を描く。

2022年10〜12月に放送・配信開始となる、更新作3本と新クライムサスペンス1本をご紹介します。

10月30日放送開始

「ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル2」

シーズン1放送中に、限定シリーズからアンソロジーシリーズに切り替えて更新された時点では、東南アジアの何処かを舞台にすると言うことでしたが、約1ヶ月前に届いた「ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル2」のトレーラーは、シチリア島のホワイト・ロータス高級リゾートが舞台です。

シーズン1同様、持てる者と持たざる者が人生から期待するものの格差を描く、マイク・ホワイト特有の社会風刺劇です。シーズン1からどれ程の時間が経過したのかトレーラーからは不明ですが、女実業家タニヤ・マックワード(ジェニファー・クーリッジ)は、グレッグ・ハント(ジョン・グリース)と結婚したらしく、苗字がマックワード=ハントとなっています。ロマンチックな逃避行を期待してシチリア島にやって来たグレッグは、タニヤが連れてきたアシスタント、ポーシャ(ヘイリー・ルー・リチャードソン)の存在が目障りで、仕方ありません。

シーズン2に登場するリゾートのVIP客は、御先祖様を探し当てようと、マフィア発祥の地シチリア島にやって来たバート・ディ・グラッソ(F・マレー・エイブラハム)、息子ドミニク(マイケル・インペリオリ)と孫アルビー(アダム・ディマルコ)の父子三代、何不自由なく暮らす実業家キャメロン・サリバン(テオ・ジェームズ)と専業主婦ダフネ(メーガン・フェイヒー)に追随してやって来た最近リッチになったキャメロンの大学時代のルームメート、イーサン・スピラー(ウィル・シャープ)と妻ハーパー(オーブリー・プラザ)、英国から休暇で訪れたクエンティン(トム・ホランダー)と甥ジャック(レオ・ウッドール)の三組9人です。シチリア島のホワイト・ロータスを仕切るのは、マネージャーのヴァレンティーナ(サブリナ・インパッチャトーレ)で、スタッフからは完璧を要求してやみませんが、海上に浮かんできた死体(複数の)には、どう対処するかが見ものです。

シーズン2は、舞台がイタリアと言うこともあって、人種差別や格差社会など、wokeな話は登場せず、リゾートで金目当てにたむろする地元の美女達が張った蜘蛛の巣に、VIP客が引っかかり、複雑な人間模様を描きます。今回も、唸るほど面白い格差社会の惨状風刺劇を期待できそうです。

11月3日放送開始

「サスペクト」原題「The Suspect」

マイケル・ロボサムの2004年の処女作「容疑者」(邦題)を基に、ITVがドラマ化。英国では今年8月に高視聴率を獲得しヒット作となり、米国ではSundance NowとAMC+配信サービスで、11月3日から全5話を配信します。「風の勇士 ポルダーク」でテレビファンを熱狂させ、未だに次期ジェームス・ボンド候補のトップの座を譲らないエイダン・ターナーが、濡れ衣を着せられ、仕事も家族も何もかも失いそうになる、臨床心理学士ジョー・オーロフリンを演じるクライムサスペンスです。

 

42歳の若さで難病を告知されたジョーは、心痛を忘れようと深酒した挙句の果てに、午前様帰宅しますが、どこで何をしたのか全く記憶がありません。翌日、若い女性の変死体が墓地で発見され、ジョーは判事から精神鑑定を依頼されたボビー・モラン(ボビー・スコフィールド)が固執する数字と変死体の刺し傷に接点を見出し、守秘義務に気を遣いながらも、統合失調症患者(?)ボビーの犯行ではないかと悩み始めます。プロファイラーとして警察に協力したつもりが、アリバイ、被害者との関係、咄嗟についた嘘などが災いして、容疑者として嫌疑をかけられてしまいます。冤罪を執念で晴らそうとするジョーですが、足掻けば足掻く程、深みにハマって二進も三進も行かなくなります。

小説「容疑者」を読んだことはありませんが、ターナーの大ファンとしては、ジョーの無実を確信しています。贔屓目に観ても、警察が自宅に来たにも関わらず、全く動揺を見せない冷たい妻ジュリアン(カミラ・ビープット)、ジョーの旧知の医師ジャック(アダム・ジェームズ)、開業パートナーで臨床心理学士仲間レイチェル(シアン・クリフォード)、給湯器の修理に来て居着いてしまったような配管工、第一容疑者候補ボビー等々、濡れ衣を着せる動機もチャンスもたっぷりの怪しいキャラに囲まれているからです。ミステリーの基本、ジョーがいなくなって「得」をするのは誰か?と考えながら、ハラハラ、ドキドキを堪能できる、謎解き好きには格好のドラマです。

11月16日開始

「レバレッジ:リデンプション2」

「レバレッジ〜詐欺師たちの流儀」のリブート版「レバレッジ:リデンプション1」は、昨年8話ずつ、二回に分けて配信されました。オリジナルのキャストで登場しなかったネイト・フォード(ティモシー・ハットン)の代わりに、必殺仕置人チームを率いるのは、ネイトの妻ソフィー(ジーナ・ベルマン)で、殴り屋エリオット(クリスチャン・ケイン)、天才ハッカーのハーディソン(オルディス・ホッジ)と泥棒パーカー(ベス・リースグラフ)が、「必要悪」メンバーとして活躍します。但し、多忙で数回しか出演できなかった俳優ホッジのハーディソンに代わって、新米ブリアナ(アリース・シャノン)がメイカーとしてリデンプション・チームに入りました。

 

 

リデンプションの権化として、富豪や特権階級の法の抜け道を画策した元フィクサー兼弁護士のハリー・ウィルソン(ノア・ワイリー)がリブート版に加わり、ハリーの罪滅ぼしの旅が始まりました。数あるリブート版の中で、オリジナルのキャストが成長して、大人の観点から仕事に取り組み、新米ハリーに「真の罪滅ぼしは、プロセス」「一件片付ける毎に、魂のかけらを取り戻すもの。先は長い!」と諭すなど、他のリブート版に見られないキャラの成長ぶりが書き込まれていたからこそ、シーズン2があると確信しています。但し、昨年12月に放送されたシーズン1最終回では、ハリーがチームを抜けると宣言してメンバーに別れを告げて幕を閉じました。エー!ハリーがいないシーズン2!?の崖っぷちで終わりました。

しかし、怖々観たトレーラーにも、シーズン2のキーアートにも、ハリーがいます!!誇大広告でないことを切に願います。

12月21日全世界同時配信

「エミリー、パリへ行く3」

コロナ禍の外出禁止令下で観た「エミリー、パリへ行く1」は、ワクワク度の高いロマコメで、どの角度から見ても、新鮮そのものでキラキラと輝いていました。しかし、エミリー(リリー・コリンズ)の三角関係と公私混同故の、もやもや、ねちねちの何ともスッキリしないシーズン2は、字幕の鬱陶しさも手伝って、手放しで楽しめないロマコメに変身してしまいました。

 

シーズン2最終回、恋も仕事も板挟みになったエミリーは、何を決心したのか?そして、その決心の展開がシーズン3で描かれることは間違いありませんが、今年6月に撮影が始まった時点でも、コリンズは「詳細は何も聞いていないの」と告白しています。出産間近にも関わらず、シカゴから乗り込んできた上司マダリン(ケイト・ウォルシュ)の「超醜いアメリカ人」振りが祟り、サヴォア従業員から総すかんを食らいます。降って湧いた仕事とは言え、漸く「醜いアメリカ人」「田舎モン」枠を脱出したエミリーは、サヴォアの大口クライアントを引き連れて、「フランス革命」を起こしたシルヴィー(フィリピーヌ・ルロワ=ボリュー)から、新会社に来ないかとお誘いがかかります。この期に及んでですが、露骨な儲け至上主義の米国式ビジネスに対して、義理や人情等古くからのおつきあいを重視するフランス商法の一騎打ちです。

パリに残るか、シカゴに帰って上級ブランド・マネージャーに昇進するかは、ガブリエル(リュカ・ブラボー)、アルフィー(ルシアン・ラヴィスカウント)のいずれを恋人に選ぶか?にもよります。シーズン2最終回に、ガブリエルはカミーユ(カミーユ・ラザ)と縒りを戻すどころか、同棲することになってしまいましたが、かと言って、正真正銘独身のアルフィーを選んでも、ロンドンに呼び戻された以上、今後遠距離ロマンスになる訳ですから、パリにいる意味が半減すると言うものです。

シーズン3も、エミリーの波乱万丈のパリ奮闘記になることに間違いはありませんが、鬱陶しい字幕と、ミンディー(アシュリー・パーク)の歌唱力で、コンテンツ薄をカバーするのは勘弁して頂きたいものです。

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