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悪い予感的中! シーズン1のみで完となった「アラスカ・デイリー」と「リスキーな結婚相手」

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デイリー・アラスカン紙のスタンリー・コーニック(ジェフ・ペリー)編集長は、先住民女性ロズ・フレンドリー(グレイス・ダブ)とキャンセルされたベテラン調査報道記者アイリーン・フィッツジェラルド(ヒラリー・スワンク)にチームを組ませて、先住民女性の未解決事件に挑戦する。(c) Darko Sikman/ABC

3月9日の「22年秋の希少価値作『ソー・ヘルプ・ミー・トッド』と『アラスカ・デイリー』の現況」でお知らせしたように、私の悪い予感が的中しました。アップフロント(地上波局/ケーブル局/動画配信社が、スポンサーに次期シーズンの番組編成を発表し、広告販売交渉をするイベント。毎年4〜5月にNYで実施される)を控えた5月12日(金)に、ABCは昨秋の新ドラマ「アラスカ・デイリー」と今春の新ドラマ「リスキーな結婚相手」(原題:「The Company You Keep」)の打ち切りを発表しました。

「アラスカ・デイリー」は、アカデミー賞受賞者トム・マッカーシー(映画「スポットライト 世紀のスクープ」)が、アンカレッジ・デイリー・ニュース紙+プロパブリカによる連載記事「無法」を読んで創作し、都落ちした調査報道記者役をアカデミー賞受賞女優ヒラリー・スワンクが演じるオリジナルドラマ。米国では22年10月6日〜23年3月30日まで11話を放送しました。放送当日ライブで観た視聴者+放送後7日間のVOD再生視聴者は、4月末現在、平均530万世帯を記録したとABCは発表しています。

3月30日に放送された最終話では、先住民女性グローリア・ナンマック殺害事件が一件落着したことで、アイリーン・フィッツジェラルド(スワンク)がアラスカに乗り込んできた使命を果たし、ジャーナリストとしての名誉を挽回しました。しかし、Missing and Murdered Indigenous Women and Girls(=MMIWGとは、全米・カナダの先住民族女性や少女が何世代にも渡って受けてきたあらゆる迫害や暴力等、白人による残虐行為の解決を促す運動)の初めの一歩をやっと踏み出した所で、完となりました。地方新聞社の運命は風前の灯状態ですが、アイリーンが大手新聞社からのリクルートを蹴って、アンカレッジ市に居残り、デイリー・アラスカン紙で仕事を続けて行く決心を固めます。

やっと、本題に挑戦できる!とホロリとした最終シーンが結局無駄になってしまいました。MMIWGが、他人事と言ってられない有色人種女性の抱える問題提起兼重厚な社会啓発ドラマだった事、更にメディアの端くれとして仕事仲間が現実に直面している地方新聞の生き残りを賭けた哀しい闘いを描くドラマだった事もあって、心から共感できるドラマでした。一般の視聴者には、題材が余りにも深刻で、現実逃避にならないばかりか冷たい現実を直視するドラマだから、視聴率がとれなかったのでしょう。残念無念です。

最終回の追悼式シーン。グローリア・ナンマック殺害犯人は捕まったが、被害者全員が報われるわけではない。法律や構造/組織/制度的偏見や差別を根こそぎにしなければ、何も変わらない。(c) Darko Sikman/ABC

 

4月3日「マイロ・ヴィンティミリア の出世役ジェスが大人になったような詐欺師役」で、ご紹介したヴィンティミリア主演・制作総指揮、韓流ラブコメ「ダーリンは危機一髪」の焼き直しドラメディー。今年2月19日に放送開始となった「リスキーな結婚相手」(原題:「The Company You Keep」)は、愛と信頼の絆を模索する詐欺師チャーリー(マイロ・ヴィンティミリア)とCIA潜入捜査官エマ(キャサリン・ハエナ・キム)に未来はあるかを10話で綴りました。

恋なんか面倒!と斜に構えている時に出会った二人は、職業も含めて真の自分をさらけ出すことに慣れておらず、急接近したり突き放したりを繰り返す、複雑な間柄になります。仕事中に鉢合わせしそうになるスリル満点、ハラハラ連続のシーンがあったのは、第二話まで!第三話では、チャーリーがエマを家族に引き合わせる、第五話が終わった時点では、エマの仕事がチャーリーにバレる、エマの父ジョゼフ・ヒルがチャーリーに不審を抱く、チャーリーの父レオが不治の病を患っている等々、そんなに早く化けの皮が剥がれると1シーズンで終了してしまうのでは?と心配してしまう程のスピーディーな展開でした。

5月7日に放送された最終話では、背景も階級も全く異なるニコレッティ一家、ヒル一家、アイルランドの暴力団マッガイヤー組の三つ巴が、誰と結託して家族を守りつつ生き延びるのか?となり、相関図を手に息もつかずに観ないと分からなくなる程複雑になりました。4月3日の記事で発表した私の予想は当たらずとも遠からずでしたが、更にもう一つ捻りが効いていました。詐欺師とCIA潜入捜査官は、悪人善人の両極端の立場ですが、ど真ん中とまでは行かないまでも、お互いが真ん中に歩み寄っていると言う感じで完となりました。

結局、エマ(キャサリン・ハエナ・キム)とチャーリー(マイロ・ヴィンティミリア)がくっつくのかどうか?がポイントだったのか?それにしても、もう少し引き伸ばして欲しかった。(c) Raymond Liu/ABC

 

打ち切られても、更新されても、どちらに転んでも尻切れトンボにならないような終焉としたのは、多分ドラマの将来が見えなかったからに違いありません。尤も、放送当日ライブで観た視聴者+放送後7日間のVOD再生視聴者は、4月末現在、平均400万弱世帯を記録したとABCは発表していますが、やはり競争率の高い日曜日枠に放送する程の視聴率がとれなかったからでしょう。こちらも残念無念!

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