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最新作『ドミノ』ロバート・ロドリゲス監督にインタビュー! 今作は映画界の巨匠に影響を受けている? ベン・アフレック起用の理由は? アノ映画の続編の予定は?

最新作公開!ロバート・ロドリゲスにインタビュー FILMS/TV SERIES
最新作公開!ロバート・ロドリゲスにインタビュー

ベン・アフレック主演の最新作『ドミノ』が10月27日(金)から日本公開となる。tvgrooveは今作を手がけたロバート・ロドリゲス監督(過去作品に『スパイキッズ』『シン・シティ』など)にオンライン・インタビューを実施。今作を撮るにいたった経緯や、俳優に関するエピソード、今後の予定などについて語ってもらった。

失踪した娘を探す刑事が、その鍵を握る”絶対に捕まらない男”を追うことに。刑事が見つけたその男は、周囲の人々を操る不可解な力を持っていた・・・。

ベン・アフレックと、「映像の魔術師」ことロバート・ロドリゲス監督がタッグを組み、その挑戦的なストーリーと革新的な映像が話題になった最新作『ドミノ』。構想に20年をかけたというロドリゲス監督が作りだす新たな世界から目が離せない内容となっている。

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ーー超能力者(サイキック) を中心に据えたシリアスな物語は、監督作品の中でも初めてだと思いますが、今作の製作に至った経緯やきっかけがあれば教えていただけますか?

ロバート・ロドリゲス(以下ロドリゲス):私はもともとアルフレッド・ヒッチコック監督のファンで、ヒッチコック的な作品を撮りたいと思っていました。

ヒッチコック監督作品といえば、予測不能の展開や、1単語のタイトルですよね(※1)。20年くらい前、『めまい』がリマスターリリースされたりして、改めてヒッチコック監督作品の価値が再発見・再評価されるタイミングがありました。その時、ヒッチコック作品のようにミステリータッチで、予測不能な展開があって、そしてタイトルが1ワードの作品を考えていったんです。

※1:ヒッチコック監督の代表作には『めまい(Vertigo)』『サイコ(Psycho)』『鳥(The Birds)』などがある。

にこやかにインタビューに応じてくれたロドリゲス監督

にこやかにインタビューに応じてくれたロドリゲス監督

「ヒッチコック監督が今もまだ存命で、新たに1ワードのタイトルの作品を作っていたらどんなタイトルになっただろう」と考え出したら止まらなくなったんです。その時に思いついたクールなタイトルが『ヒプノティック(※2)』でした。

※2:『Hypnotic(ヒプノティック)』は『ドミノ』の原題。催眠剤などを意味する単語で、作中では能力者たちがこの名前で呼ばれている。

タイトルを思いついた時、この映画における「ヒプノティック」とは、まったく捕まえることのできない敵の存在を示しているのではないかと考えました。物を盗まれようと、彼らが見せたい現実しか見えていなければ盗まれた相手は何も気づかない、そんな敵です。でもそれに気づいて敵を追う刑事がいたらどうか?さらに「ヒプノティック」という能力者は複数いたりして、といっても世界で2%くらいしかいなくて…。そんな設定を考えていった結果できたのが今作です。

ーーかなり前に思いついた作品ということですが、ことあるごとに映画化しようとしていたのでしょうか。今作の題材が現代の観客にどのように響くのか、公開までの年月のズレなどに不安はありませんでしたか?

ロドリゲス:序盤の銀行のシーンや、ハサミを人に向けてしまうシーンは20年前の時点でもう構想がありましたが、その後12年くらいかけてストーリーは変わっていきました。

特に後半やエンディングに関しては、私自身が経験を積まないと書けない部分だったと思います。この映画の究極のテーマは結局「家族の絆」なので、そこに到着するまでに私自身に人生経験が必要だったんです。最終的には、2015〜2017年くらいにできたバージョンが、撮影後の完成形に近いと思います。

ベン・アフレックが、娘を追い求める刑事を演じた ©️2023 Hypnotic Film Holdings LLC. All Rights Reserved.

ベン・アフレックが、娘を追い求める刑事を演じた ©️2023 Hypnotic Film Holdings LLC. All Rights Reserved.

公開までの年月のズレには一切不安はありませんでした。それこそ、かつてよりも現在の方が、今作の題材が通じるのではないかと思います。今ほど「見えているものが本当なのかわからない」という時代はありませんからね(笑)。

今の時代、完全にオリジナルの作品を作ることは難しい。そんな時代にオリジナルでこんなアイデアが浮かんでしまったら、映画作家としてはもう作るしかなかったですよ。

ーー『ドミノ』のコンセプトのどのような部分に惹かれて映画化を目指したのか、より深く教えていただけますか。

ロドリゲス:私は映画を作るのが大好きですが、昔はマジックを披露するのも好きでした。みんなが驚く反応が好きなんです。『ドミノ』って、観ている間はそう思わないかもしれませんが、”映画作り”についての映画でもあると思います。映画を見せるのって、観客を催眠にかけているのと同じなんですよね。

みなさんはチケットを買ってまで催眠にかかりに来てくれます。観客は脚本があることも、役者が演じていることもわかっているけど、その世界を現実のように信じて笑ったり怖がったり、場合によってはキャラクターにハマってポスターを貼って崇拝までしてくれる。(映画作りを描いていると)わざわざ言わずに、でも映画作りのことを描ける。そこが『ドミノ』を撮ることの魅力だったわけです。

観客の皆さんには登場人物と同じ立場に立って、「ここで起きていることは本当なのか?どうなんだ?」と困惑しながらさまざまなサプライズにあって、催眠下に置かれるという状況を楽しんでもらえればと思います。

撮影中のロドリゲス監督 ©️2023 Hypnotic Film Holdings LLC. All Rights Reserved.

撮影中のロドリゲス監督 ©️2023 Hypnotic Film Holdings LLC. All Rights Reserved.

ーー現実に見える世界を想像力と特殊な能力で書き換える能力を駆使するようなコンセプトや出来上がった映像を見ると、さまざまな映画、最近だとクリストファー・ノーラン監督の『インセプション』やマーベル映画『ドクター・ストレンジ』なども思い起こさせるところがありました。今作の世界観作りという面について、具体的に影響を受けたような作品はありますか?

ロドリゲス:今回は視覚的にもやっぱりヒッチコック作品にインスピレーションを受けていると思います。ちなみに、視覚的にもセリフ的にも、他の映画の小ネタを挟んでみたりしているんです。例えば『デスペラード』(ロドリゲス監督の過去作)と同じジョークを言わせてみたり、過去の映画と同じ設定やポップカルチャーの要素を登場させたりもしました。そうやって敢えて他の作品と繋げてみせることで、そこに気づいた観客は「これってもしかして虚構の世界なのかな」なんて想像することもできるわけです。

きっと今作のヒプノティック(催眠能力者)たちは映画が大好きなんです。シネフィルが現実を書き換えると、やっぱりその現実には映画の要素が入ってきますよね(笑)。

ーー近年は日本や韓国でも特殊能力をテーマにした作品が増えています。特殊能力をテーマにした作品で、監督のお気に入りの映画やコミックなどはありますか。

ロドリゲス:ポスターが最高で大好きな映画は(デヴィッド・クローネンバーグ監督の)『スキャナーズ』です。映画の内容とポスターのイメージはちょっと違いますけどね(笑)。

(特殊能力が出てくるような映画の)設定は、作り手をクリエイティブに自由な状態にしてくれます。ルールも物理的な法則もない、なんでもありの世界観であれば、主人公に何をさせたっていい。それが映画製作者にとって非常に魅力的で、ワクワクするんです。

ーーベン・アフレックとの仕事はどうでしたか。

ロドリゲス:最高でしたよ。

ヒッチコック監督の映画って、『めまい』のジェームズ・スチュワートも『北北西に進路を取れ』のケイリー・グラントもそうですが、大スターをキャスティングしながら「普通の一般人」を演じさせることが多いですよね。そのおかげで、観客は演じているのが大スターだと知っていても感情移入しやすいんです。

だから今回、大スターでありながら、「家族を心から愛する一般人」という柔らかい側面と、「娘をなんとしてでも助け出そうとする刑事」の側面の両方を見事に演じられる素質を持ったベンに、同じ役割を担ってもらいました。

ベン・アフレックとロドリゲス監督 ©️2023 Hypnotic Film Holdings LLC. All Rights Reserved.

ベン・アフレックとロドリゲス監督 ©️2023 Hypnotic Film Holdings LLC. All Rights Reserved.

もう一つ最高だったのが、私とベンがお互い、1990年代のスピーディーに済ませる撮影に慣れていたことです。『ドミノ』の撮影期間はコロナ禍の影響で20日間も短くなってしまいましたが、私たちのルーツである「どんどん撮影していくスタイル」にベンは楽しく乗ってくれて本当にありがたかったし、大変な状況でこなしてくれたことが逆に映像にいいエネルギーを与えてくれたと思います。

ーーこの機会に、日本の映画ファンに一言いただきたいのですが、自由度の高い世界観で想像力が膨らむロドリゲス監督の映画といえば、『アリータ:バトル・エンジェル』もありますよね。日本にも『アリータ』の続編を待つファンがたくさんいます。ロドリゲス監督も続編には前向きだとのウワサを耳にしたのですが、いかがでしょうか。

ロドリゲス:権利問題などの障壁があってすぐには動き出せませんでしたが、私もジェームズ(『アリータ』のプロデューサーであるジェームズ・キャメロン)も『アリータ』の続編については頻繁(ひんぱん)に話していて、製作意欲は満々です。(ジェームズ・キャメロン監督の)『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』も上手くいったし、私も公開が控えている『スパイキッズ』の最新作が終わったら、改めてジェームズとしっかり話を進めていきたいと思っています。3月に日本を訪れた時にも感じたけど、日本にはたくさん『アリータ』ファンがいますよね。続編が作れたらいいなと思いますよ。

(インタビュー以上)

映画愛、とりわけヒッチコック愛が詰まった『ドミノ』は、長年の構想を経てついに10月27日(金)から日本公開。

『スパイキッズ:アルマゲドン』も2023年全米公開(日本でもすでにNetflixで配信中)、そしてもしかしたら近々『アリータ』の新作にも着手してくれるかもしれないロドリゲス監督の今後から目が離せない。

作品情報

『ドミノ』
2023年10月27日(金)全国ロードショー

監督:ロバート・ロドリゲス『シン・シティ』『スパイキッズ』
出演:ベン・アフレック、アリシー・ブラガ、ウィリアム・フィクナー
原題:HYPNOTIC|93分|アメリカ|カラー|シネスコ|5.1chデジタル|字幕翻訳:松浦美奈

<STORY>
刑事ダニーは、ある日、公園で、一瞬目を離した隙に娘を見失い、娘は行方不明となる。強迫観念にとらわれてしまったダニーだが、正気を保つために仕事に復帰。そんな彼のもとに、銀行強盗の予告のタレコミが入り、現場で、接する人々を操る不可解な動きをする男を発見。
その男が娘の行方に関与している手がかりを見つけたダニーは、男を追い、やがて現実と見
紛う<世界>に踏み込み、追い詰められていくー。

提供・配給:ギャガ、ワーナー・ブラザース映画
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