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「風の勇士 ポルダーク4」、米国で9月30日放送開始! 魂を売って政治家になったポルダークのロンドンでの冒険、試練を描く!人生の荒波に乗り出した三夫婦の運命は?

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魂を売って政治家になったロス・ポルダーク(エイダン・ターナー)は、故郷コーンウォールとロンドン間(480キロ余り)を行ったり来たりすることになる。単身赴任中は国会に幻滅、デメルザがロンドンに出て来ると、とんでもない騒動に巻き込まれる。魂を売って政治家になったロス・ポルダーク(エイダン・ターナー)は、故郷コーンウォールとロンドン間(480キロ余り)を行ったり来たりすることになる。単身赴任中は国会に幻滅、デメルザがロンドンに出て来ると、とんでもない騒動に巻き込まれる。© Mammoth Screen for BBC and MASTERPIECE

※「風の勇士 ポルダーク」シーズン4についてのネタバレがあります。

今シーズンも中心となるのは、18世紀コーンウォール地方の名士ポルダーク夫妻、ウォーレッガン夫妻、エニス夫妻です。どの夫婦も結婚に幻滅しており、結婚が如何に山あり谷ありの険しい道であるかを如実に描きます。

英文評はこちらをご覧ください。

シーズン3でロス・ポルダーク(エイダン・ターナー)がフランスの捕虜収容所から救出したヒュー・アーミテージ(ジョシュ・ホワイトハウス)が執拗にデメルザ(エレノア・トムリンソン)に言い寄ったのを覚えておられますか?二人は遂に不倫に走り、今シーズンはそのツケが回って来ます。前回も指摘しましたが、デメルザはエリザベス(ハイダ・リード)のように育ちが良くありませんから、礼儀作法や貞節な妻の何たるかを教えられていません。ロスの命を救うために判事に色目を使ったことは許せるとしても、次々と登場して言い寄る男達に色目を使うのは、飽くまでもロスの気を引く為です。

一方、ロスは’逃した魚’エリザベスを忘れることができません。二人で生活の苦労をしたことがないので、悪いところが全く見えない、幻滅していないからです。若かりし頃、ロス、従兄弟フランシス(カイル・ソーリー)とジョージ・ウォーレッガン(ジャック・ファーシング)の3人が恋い焦がれたのがエリザベスですが、エリザベスのお目当ては永遠にロスなのです。その「永遠のロス」とだけ結婚し損ねたのは、余りにも皮肉としか言いようがありません。

理想のエリザベスと常に張り合って来たデメルザが、不倫に走ったのは頷けますが、これまで恋仇がいなかったロスは、ヒューの亡霊にはとても太刀打ちできません。しばらく、距離を置こうと、意外や意外、あれ程嫌っていた政治家になり、ウエストミンスターに向かいます。自ら「魂を売って政治家になった」と言いますから、いつの世も政治家がいかに正義の味方、英雄ではないかが明らかです。ロンドンで繰り広げられる政界ドラマは、まるで現在の米国を見ているようで笑えます。地元の繁栄と富を満遍なく分かち合うことが第一のロスですが、理想に燃えても経験ゼロ、渋々政治家になった準貴族は、退廃した政界の荒波をどう乗り切るのでしょうか?ロスに地位を奪われたジョージは、あらゆる汚い手を使って、地位を買い取り、ウエストミンスターに返り咲きます。その裏には、権力に目が眩んだエリザベスの力添えがあったなど、ロスは想像だにしていません。ロスの立案は次々と却下され、国会への幻滅と不満は募るばかりです。元々は、ドイツの諺ですが、米国でも良く耳にする「政策(法律)とソーセージは作る過程を見ない方が良い」が映像化されています。つまり、良い政策でも、立法過程(=政治)は根回し、賄賂などで、目を背けたくなるほど醜悪だからです。ロスがこの諺を自ら体験するのがシーズン4です。

一方、鍛冶屋から叩き上げた成金三代目のジョージは、相も変わらず財力と汚い手を駆使して、ウエストミンスターに返り咲き、弱い者苛めとロス及びポルダーク家撲滅に全力を注ぎます。誇大妄想狂ジョージは、ロンドンは制覇したので、最後の望みはナイト爵位(国家の功労者(男性)に与えられる一代限りの栄爵)を受けて、歴史に残る出世を果たせば、目の上のたん瘤/宿敵ロス・ポルダークを見返すことができると信じて止みません。長男ヴァレンタイン(ラファエル・J・ビショップ)の出生に疑心暗鬼を生じたものの、確たる証拠がなく、エリザベスの説得に一旦は納得しましたが….今シーズン、ポルダーク本家唯一の跡取りジェフリー・チャールズ(ルイス・デイヴィソン)が発した「ロス伯父さんにそっくりだ!」の一言に疑いの余地がなくなってしまい、エリザベスとの間に距離を置く、だんまりを決め込むなど、陰険男を絵に描いたようなジョージお得意の消極的攻撃性を発揮します。エリザベスと略奪結婚した意味がありません。最後に笑うのは、ジョージの目を盗んで子供まで作ってしまった、ロスとエリザベスだからです。エリザベスは、出世街道まっしぐらのジョージに満更でもなく、妻の立場を守るために、第二子も早産すればジョージの疑いを晴らすことができると策略を巡らしますが、裏目に出てしまいます。

© Mammoth Screen for BBC and MASTERPIECE

今シーズンも、この三夫婦が中心となる。左からジョージ・ウォーレッガン(ジャック・ファーシング)と妻エリザベス(ハイダ・リード)、ロス・ポルダーク(ターナー)と妻デメルザ(エレノア・トムリンソン)、ドワイト・エニス医師(ルーク・ノリス)と妻キャロライン(ガブリエラ・ワイルド)。

ドワイト・エニス医師(ルーク・ノリス)は、「ポルダーク」シリーズ唯一の繊細で優しい青年ですから、苦悩、試練は今シーズンも尽きることはありません。妻キャロライン(ガブリエラ・ワイルド)は、渋々母性愛を試す旅に出ますが、悲劇に終わってしまいます。完璧なイメージに傷がつき、プライドが許さず、ドワイトに頼る代わりに、そそくさとロンドンに逃げてしまいます。キャロラインは富も地位もある特権階級、社交界の名士です。貧しい医者と、どちらが強いと思いますか?悲劇を乗り越えるだけの絆はあるのでしょうか?

21世紀の現在でも、真に平等な夫婦などほとんど存在しませんから、男女の役割がしっかり定義されていた18世紀の男尊女卑社会英国では尚更です。家柄、富などで優位に立つ人(ロス、ジョージ、キャロライン)は、当然のことながら伴侶の自尊心に多大なる影響を与えます。追従する伴侶デメルザ、エリザベス、ドワイトは日に日に孤立して行き、心が空っぽになって行きます。消極的攻撃性は、怒りや不満を表現し、相手をコントロールしつつ、口論や面倒な話し合いを避けられる効果的な対処法です。夫婦の時間がない、何度同じことを注意しても何も効果がないとなると、何を言っても無駄!と投げやりになり、だんまりを決め込むのが立場の弱い伴侶の常套手段になります。又、女性はキャロラインのような特権階級でない限り、何の力もないので、デメルザのように色目を使って、ロスの気を引くことくらいしか手がありません。デメルザの場合、これが常套手段ですが、シーズン4では、ヒュー亡き後も、ロンドンでプレイボーイ議員に言い寄られ満更でもなく、ロスの怒りが爆発すると、「つっけんどんな応対をすると、出世に響くのでは?」と変な言い訳をしてそそくさとコーンウォールに逃げ帰ります。ロスが世のため、人のためと頑張っているのに、つまらないことをして、足を引っ張るのはやめてください。あの時代の主婦は家庭を守ることしか仕事がなかった訳ですから、下手にしゃしゃり出ないで、田舎に引っ込んでいて欲しいものです。厄介な弟が二人もいるのですから、揉め事に巻き込まれないように見張るのも、姉の仕事ではないのでしょうか?

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