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映画『テッド・バンディ』監督のジョー・バリンジャーにインタビュー! どうしてザック・エフロンを選んだのか? キャスティングの経緯や殺人鬼テッドの魅力を語る

テッド・バンディ INTERVIEWS

1970年代アメリカ、30人以上の女性を惨殺したとされるテッド・バンディ。IQ160の頭脳と美しい容姿で、司法・メディアを翻弄した稀代の殺人鬼を、アイドルのイメージを脱却したザック・エフロンが演じ話題となった映画『テッド・バンディ』が12月20日に全国公開される。

本作で監督を務めたのは、20年以上にわたりノンフィクション映画やテレビの世界で中心的な役割を担ってきたジョー・バリンジャー監督。複数のエミー賞を受賞した HBOの『Paradise Lost』シリーズは、殺人の不当な有罪判決から “ウェスト・メンフィス3(有罪判決を受けた3人の呼び名)” を解放する世界的な動きを生みだすなど、社会に数々の影響を与えてきたドキュメンタリー映画作家の巨匠だ。そんな彼が『テッド・バンディ』公開前に来日し、TVGrooveはインタビューを決行。ジョー・バリンジャー監督に本作の題材となったテッド・バンディについて、そして主演を務めたザック・エフロンについても伺ってきた。

ジョー・バリンジャー

――テッド・バンディの魅力というのは、恐ろしいほど強力ですね。ヒロインほか数々の女性が彼の魅力にハマっていましたが、映画の作り手の観点から、テッド・バンディに一番惹きつけられたのはどんな部分でしたか?

ジョー・バリンジャー監督:一番興味深い部分というのは、これだけたくさんのヒント(証拠)があったにも関わらず、全員がそれを見過ごして、「良いやつだ」と思っていたところだ。

最初の犯行は夜間で、一人の女性をターゲットにして成功した。それから大胆になって、レイク・サマミッシュ州立公園のビーチで2人を誘拐して殺したんだ。目撃情報からスケッチも出来上がり、テッドは自分の本名を名乗っていて、さらに現場で目撃されていた車の車種も同じ。

テッド・バンディ

しかし、シアトルの新聞で事件が報道されたとき、テッドの知り合いは「もしかして彼が?」と疑うわけではなく、逆にテッドに電話をして「お前に似てて笑えるよね」って言っていたんだ。テッドが周りの人達を信じ込ませる強い力を持っていたということが、映画作家としても非常に興味深かった。

裁判中も若い女性達がたくさん集まってきたのが印象的だっただろう。殺人犯と同じ部屋にいることが刺激的だと思って来た女性もいるが、一方で最後まで彼が殺人したなんて信じられないと無実を願う人もいた。そのことも興味深い。

テッド・バンディ

この映画の裁判のシーンは、すべて本物の記録映像そのものセリフを使っているんだが、判事が死刑宣告をしているときに「君は素晴らしい法律家になっただろう」「君に対して悪い思いはない」と発言してしまっている。そこまで周りに「良いやつだ」と思わせて、言わせる力を彼が持ち得たこと、そして周りの人たちが、これだけ邪悪なことを可能にする人物を、ここまで信頼できてしまったことに惹かれた。

ジョー・バリンジャー

――テッド・バンディをザック・エフロンが演じるということは、日本でもかなり話題になりました。ザックのファンや映画ファンからすると、それだけギャップがあったということなのですが、今回なぜテッド・バンディ役にザック・エフロンが選ばれたのでしょうか。

ザックは僕のファーストチョイスだった。彼もすぐに承諾してくれたしね。この映画では、若い人たち向けて「人を盲目的に信頼してはいけない」というメッセージを伝えたかった。

そういう意味では、ザックは盲目的に絶大な信頼を得ている。世界中に何十万人、何百万人のファンがいる。ドキュメンタリー作家としてリアリティを追求したときに、彼だったら満たすことができるって思ったんだ。殺人鬼だということも忘れるほどの“盲目さ”をこの映画で体験してほしかった。テッドを見ていて観客が誘惑されるくらいの。映画の最後に「誘惑された自分は間違いだったんだ」という体験をね。

テッド・バンディ

それだけのイメージを持っている役者はそんなに多くない。その一人がザックだった。ザックも僕と同じような考えを持っていたようだし、若い人にこのメッセージを伝える重要性を一緒に語っていたんだ。

作家として犯罪モノをこれまで扱ってきたけれど、我々は殺人鬼が常にモンスターだと思いがちなんだ。でもそうではない。常に邪悪なのであれば、みんなすぐにわかるだろう。もしそうなら、避けることができる。被害者にならなくて済む。でも現実は、自分が信頼しているような人が、そういう悪い人だったりするんだ。ザックは、どこにいっても女性の黄色い声が聞こえてくるような人物。もちろんザックはファンのことをリスペクトしているが、彼のイメージを使うことで、よりメッセージを伝えられると思ったんだ。

――本作ではまさにテッド本人としか思えないようなザック・エフロンの姿に驚きました。監督から見たザック・エフロンの演技の素晴らしい点や、役作りの面で監督がアドバイスした点はありますか?

リリー(・コリンズ)とザックと三人で話し合って、シンプルだけど一番重要したこと。それは、リズとテッドのあいだにある愛情が本物であると感じてほしかった。演技をする側である役者も、それが本物だと感じてもらわなければいけなかった。・・といってしまうと、物議を醸し出してしまうかもしれない。なぜなら、連続殺人鬼というのはサイコパスであり、サイコパスは愛情が持てないと言われている。でも僕はそうじゃない。そういう説は信じていないんだ。だれでも愛することは可能だと思う。

テッド・バンディ

よく「compartmentalization(区分化)」という言葉を使われるのだが、テッドは邪悪な行為もできるし、一方でリズのことも心から本当に愛していたと思う。だから殺人の衝動を必要する部分と、普通のものを必要とする部分が彼の中にはあったのではないかと思う。

ジョー・バリンジャー

ひとりの人間の中にその2つがあることはとっても恐ろしいことだが、それがリアリティだとし、邪悪な存在ってそういうものだと思う。だからザックには、本物の愛を表現してほしい、信じて演技してほしいと伝えた。

例えば自分が誰かを騙しているんだっていう思いでそれを描写してしまうと、観客にとって疑いが多いものになってしまうだろう。役者がすべての行為を100%信じて演じてもらえれば、究極な裏切りを描くことができるからね。

(インタビュー終わり)


原作:エリザベス・クレプファー『The Phantom Prince: My Life With Ted Bundy』 脚本:マイケル・ワーウィー 監督 ジョー・バリンジャー
出演:ザック・エフロン リリー・コリンズ カヤ・スコデラーリオ ジェフリー・ドノヴァン アンジェラ・サラフィアン ディラン・ベイカー ブライアン・ジェラティ
ジム・パーソンズ/ジョン・マルコヴィッチ 原題:Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile
提供:ファントム・フィルム ポニーキャニオン 配給:ファントム・フィルム R15+ ©2018 Wicked Nevada,LLC

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