過去10年に続出したミレニアル詐欺師の実話ドラマ化 第一弾「令嬢アンナの真実」は、真実追求に奔走するジャーナリストとカモの観点から綴るアンナ・デルヴィーの全貌 法廷ファッションで一躍有名になった自己愛性ソシオパスは怖い!

NYポスト紙に「アホで業突く張りの似非名士」呼ばわりされたことが許せず、裁判に持ち込んだものの、刑務所送りとなったミレニアル詐欺師アンナ・デルヴィーこと、アンナ・ソローキン。被害を受けても誰かが穴埋めしてくれる特権階級は無視して、自腹を切らねばならなかった最大の犠牲者レイチェルの身になって観て欲しいドラマだ。

今回は、「スキャンダル:託された秘密」(ABC 2012〜18年)以来初めてションダ・ライムズが書き下ろした「令嬢アンナの真実」(原題:Inventing Anna)をご紹介します。ネットフリックス社のお抱えプロデューサーになったライムズにとっても初のドラマで、2018年に映像権を買い取って以来、大いに期待が寄せられていた限定シリーズは、来たる2月11日に全世界同時配信となります。

 

2018年5月にジェシカ・プレスラーが「The Cut」(ニューヨーク・マガジンの子会社)に掲載した「How Anna Delvey Tricked New York’s Party People」記事にヒントを得た限定シリーズ。プレスラー自身が制作陣に加わり、作中はヴィヴィアン・ケントのキャラで登場します。利益窃盗、第二級重窃盗、第一級窃盗未遂の起訴内容の裁判を待つ間、身柄を拘束されている「ソーホーの詐欺師」ことアンナ・デルヴィー(ジュリア・ガーナー)に独占インタビューを取り付けて、アンナの全貌をルポしようと奔走するマンハッタン・マガジン社のジャーナリスト、ヴィヴィアン(アンナ・クラムスキー)の視点から全9話で綴ります。

尊大を絵に描いたようなアンナ(ジュリア・ガーナー)は、初対面のヴィヴィアン(アンナ・クラムスキー)に、「お腹が大きいの?それとも、メチャデブなの?」「なんでそんな恰好してるの?お金がないとか?」等、嗜虐的攻撃に出ることで、優越感や自尊心を高める。マジ腹立つ、イケ好かない小娘が、NYのハイソサエティを如何にアンナ旋風に巻き込み、次々と犠牲者を出したのか?ヴィヴィアン自身にも、ジャーナリストとして汚点がつきまとい、実力を証明しなければおちおち子供なんか生んでられない!の迫力を感じる。(c) Nicole Rivelli/Netflix

 

飽くまでも「男社会に楯突いたから、魔女狩りされたの!私は犠牲者よ!何も悪いことなんかしてない」と言い張るアンナは、過去や素性は明かさないばかりか、事業に必要なスタッフで脇を固めただけで、味方になってくれる友達はいないと言います。それもその筈、自己愛性ソシオパス(反社会性パーソナリティ障害)は、思い通りに事が進まなければ責める人間や甘い汁を吸う餌食はいても、遠路遥々面会に来るほどの友情を育む能力は持ち合わせていません。仕方なく、ヴィヴィアンはアンナがニューヨークに来た2013年以来の足取りを、インスタグラムから辿り、起訴されるまでにカモにした知人、投資銀行家、実業家、慈善家、食い逃げしたレストランや踏み倒したブティックホテル等の証言を聞き込みして、アンナの全貌パズルを完成させようと奔走します。それにしても、一体、アンナは幾つの顔を持っているのでしょう?

ヴァニティ・フェア誌の写真編集員レイチェル・デローシュ・ウィリアムズ(ケイティ・ロウズ)、トレーナー/ライフコーチのケイシー・デューク(ラヴァーン・コックス)、アンナ、12ジョージホテルのコンシェルジュ/アンナの秘書替わりネフ(アレクシス・フロイド)は、羽振りが良い時は友達だったが、レイチェルとケイシーをお供にモロッコに行き、レイチェルに支払いを肩代わりさせたことで破局を迎える。ネフだけは、アンナのペテン師振りに共鳴、法廷ファッションをインスタにアップして、フォロワー兼サポーターを激増させるほどの友達振りを発揮する。(c) Aaron Epstein/Netflix

 

本名アンナ・ソローキン。ロシア生まれのアンナは16歳でドイツに移住しましたが、まともにドイツ語が喋れない移民として人種・階級差別を受けました。(あれっ?7ヶ国語がしゃべれるんじゃなかった?一から十まで、嘘かハッタリと証明しましたね?)学校でも、つまはじきにされて、イジメに遭い、いつか煌びやかな業界で脚光を浴びて見返してやろうと、ファッション雑誌に現実逃避する一匹狼になりました。学校や職場で見聞きした、特権階級の言動をそっくりそのまま拝借し、60万ドルに及ぶ信託財産(親が税金対策として、子息の将来を約束する財産分けとして貯蓄。親が指定した満期日までは一切、手をつけられない定期預金)を抵当として遣えるドイツの資産家の令嬢と言う触れ込みで、ニューヨークの上流社会に殴り込みをかけます。

ミレニアル詐欺師(1981年〜1996年生まれ)は、大言壮語と図太さで桁外れの詐欺を働くデジタル時代の賜物です。今後、ミレニアル詐欺師のドラマを順次ご紹介して行きますが、アンナは貧しい星の元に生まれた不運を呪い、社会に復讐心を燃やす余り、インスタグラムで億万長者の優雅な生活振りをこれでもか、これでもか!と見せつけて、自分の理想像を捏造して根回しに成功した好例です。良家の令嬢らしいブランド衣類を身にまとい、資産が山とある故にお金に超無頓着、世界は私のためにあると確信する誇大な言動で、NYのハイソサエティにまんまと入り込みます。人脈も資産も権力もない小娘が、VIP優遇を受けるために、パーティーで見かけただけの著名人や実力者と’面識’がある=「私は比類のない特別な人間よ!」とお得意のハッタリと嘘で体当たりし、守りが固い筈の扉をこじ開けることに成功したのです。傲慢且つ尊大に振る舞い、有名人の名前を出して、大風呂敷を広げる人間を同類と勘違いし、身元確認(資産査定等肝心の手続き)をすっ飛ばして、信用してしまうハイソサエティの盲点を突きました。そして、絵画に造詣が深いだけで(一種の才能?)、全世界のアーチストが集うソーホーハウスのような会員制クラブ「アンナ・デルヴィー財団」をパークアヴェニューの一等地に創設するのだ!と、すっかり実業家気取りで資金調達に乗り出します。殊更、斬新なアイデアではない点を突かれると、プロジェクトへの熱い想いを語るのではなく、「経験がないから?」「男だったら、すぐに乗るくせに」と男尊女卑を責め立ててはぐらかします。

2017年7月、ザ・ビークマンとダブリュー・ホテルから宿泊料滞納を告発されたアンナ。この軽犯罪が引き金となり、元友人(?)レイチェルや被害を受けた投資銀行家などが芋づる式に出てきて、被害額や規模は比べ物にならないが、故バーナード・マドフ式のネズミ講詐欺事件に発展する。(c) Nicole Rivelli/Netflix

 

ドラマは2話以降、アンナの詐欺や窃盗に絡んだ関係者や不覚にも巻き込まれた被害者の名前を副題とし、アンナ旋風の犠牲者たちの観点を集め、丹念にパズルを組み合わせて全貌を暴こうとするヴィヴィアンの記者魂がストーリーを進めて行きます。但し、実話を基にしたドラマ化なので、実名で登場するキャラと仮名/架空のキャラが混在していたり、踏み倒されたブティックホテルも実名(ダブリュー・ホテル、ザ・ビークマン等)と仮名(11ハワードを捩って、12ジョージと命名)で登場するので、NYに熟知していない私は、プレスラーの「How Anna Delvey Tricked New York’s Party People」を何度も読み返すと同時に、ネット検索して真偽の程を確認しなければなりませんでした。又、アンナの興亡を順を追って書いたプレスラーの記事と違って、関係者/被害者キャラの観点から綴られているため、「これって、いつの話?」「ばら撒く程の100ドル札はどこで手に入れたの?」と何度観ても、混乱する事しきりです。

2017年からアンナの弁護士を務めるトッド・スポデック(アリアン・モーイエド)。三流弁護士という引け目から、勝たなければ!と生き残りを賭けて弁護するが、アンナは「非を認めるくらいなら、獄中生活を選ぶ!」と飽くまで自分が正しいと主張するナルシスト振り。ヴィヴィアンは、トッドの事務所に届いたトラック1台分の証拠開示書類見たさに、足繁く通い、アンナ側に立つ仲間意識を抱くようになる。人手不足ということもあって、「こんなもの着て出廷したら、私のブランドが台無し!」と駄駄を捏ねるアンナの衣類を買いに走ったのも、自分の白いワンピースを刑務所に届けたのも、ヴィヴィアンだった。(c) David Giesbrecht/Netflix

 

前回、「となりの精神科医」でご紹介したソシオパスは、メンタルヘルスの権威だと信じてセラピーを受けてみたら、治療する側が精神疾患を抱えており、患者の事なかれ主義を手玉に取って、私腹を肥やす言語道断の精神科医でした。「患者に害を成さない」と宣誓した医師が職権を濫用し、患者の弱味をフルに利用して、30年近く搾取し続けた事例で、「悪いようにはしない」が口癖のソシオパスに警鐘を鳴らすドラマでした。ソシオパスの行動パターンは、1)極度のナルシスト、2)無責任、3)衝動的、4)平気で嘘をつく、5)欲しいものを手に入れるには手段を選ばない、6)恐怖・戸惑いを感じない、7)共感できない、8)ルール・法律等無いも同じ、9)人を欺き、巧妙に操る、10)自責の念や羞恥心の欠如です。もう一点、私的体験から付け加えたいのは、人の痛みを感じられないにも関わらず、ソシオパスは初対面からお涙頂戴話で同情心をくすぐろうとする点です。但し、余りにも唐突あるいは場違いな発言なので、「はー?」と意図を疑い、今のは何だったの?と考え込んでしまうこと間違いなしです。これは、ガスライティングと呼ばれる心理的虐待の一種で、他人を混乱させて責任を錯覚させる心理操作です。証拠があるのに「そんなことは言っていない」と過去の発言を否定したり、自分のせいであっても白々しくターゲットを責め立て、周囲の人間に陰口を叩いては、ターゲットに反感を向けるよう根回しする等、混乱が人を弱らせることを百も承知した上での、沈黙を強いる行動です。警察に通報などしようものなら、執拗に嫌がらせを繰り返し、仕返しがエスカレートするのを恐れて、どんな酷い目にあっても、沈黙を選ぶように仕向けるずる賢い操作です。

 

マンハッタン・マガジン社の陽の当たらない一角スクライベリアに追いやられた’使いようの無い’ジャーナリスト軍団(日本の窓際族のようなもの)は、ヴィヴィアンにベテランの入れ知恵をするバリー(テリー・キニー)、モード(アンナ・ディーヴァー・スミス)、ルー(ジェフ・ペリー)の3人。暇に任せて、証拠開示書類からアンナの足取りを辿ったり、負けるな!出産前に完成しろ!などと発破をかけてくれる強い味方。(c) David Giesbrecht/Netflix

 

但し、ヴィヴィアンが指摘するように、アンナは「超セクシーでも超魅力的でもなく、逆に横柄でイケ好かない女」で、映画やドラマに登場した好感度の高い、従来のソシオパスではありません。例え見掛け倒しだとしても助けたくなる、映画「キャッチ・ミー・イフ・ユウ・キャン」のフランク・アバグネイル(レオナルド・ディカプリオが演じたから?)や、ドラマ「レバレッジ〜詐欺師の流儀」で1%の1%懲らしめを疑似体験させてくれる、’必要悪’のチョイ悪軍団とは訳が違います。ナルシスト(自己愛)度の高いソシオパスは、根拠もないのに自分は超ユニークだと誇大な幻想を抱き、エリート中のエリートとしか交わらない特権階級意識満々です。自分の得になることしか興味がなく、事なかれ主義の操り人形のような人間で脇を固め、一人芝居の自作自演は勿論のこと、プロデューサー、ディレクター等、何もかも自分でやってのけるからです。脇役は、利用価値がなくなれば、ゴミのようにポイと捨て、次の餌食を探します。おめでたい人間に事欠くなど、あり得ません。嫉妬心が人一倍強いと同時に、自分も世間から妬まれていて、常に狙われていると信じているのも、ナルシストとソシオパスの最悪の組み合わせならではのこと。そして、正体を見破られそうになったり、痛い所を突かれるとキレまくって、人格を否定するような暴言を吐いて相手を深く傷つけますが、自衛本能だと信じているため、嗜虐性の高い攻撃です。私を激怒させるような事を言う方が悪い!騙される方が悪い!など、要は常に自分だけが正しくて、無条件の賞賛を受けて当たり前と確信しています。無敵・不屈を誇るアンナは、それが証拠に罪と罰は付き物、「刑務所だって社会学的実験の場だ」と公言したほどです。刑務所で何を学び、吸収したのかを考えると、ぞっとしませんか?

いかなる状況においても、謝罪、罪悪感、後悔ゼロのアンナに有罪判決が下りると、意外にもヴィヴィアンもトッドもアンナを守り切れなかったと反省する始末。自分達は一躍有名になったのに、アンナは自由を奪われたと罪の意識に苛まれ、ヴィヴィアンに至っては、幼い頃のトラウマ体験から、お騒がせアンナが生まれたに違いないと言う持論を証明するために、アンナが育ったドイツの小さな町を訪れ、聞き込みをする程の念の入れようです。結局、親に見捨てられたアンナへの母性本能(出産直後だったこともあって)をくすぐられたものの、正義の領域、良心の領域が無いアンナは、社会のルールに縛られずに行動できるので、自然淘汰にも難なく適応できる稀代の詐欺師だと納得したようです。心理学者に診断してもらった訳ではありませんが、哀しいかな、自己愛性ソシオパスを改心・更正させることはできないと悟ったようなので、ちょっと安心しました。

ドラマは、2021年2月11日に釈放されたアンナ・ソローキンが、翌3月にはビザの有効期限切れ違法滞在者として移民局に勾留され、いずれ強制送還されることを明示していますが、スター気取りでテレビインタビューに応じたり、サングラスをかけてベッドで自撮りした写真と「The Queen is back in NYC」のメッセージをインスタにアップするなど、転んでもただは起きない、懲りない女です。法廷ファッションで一躍有名になり、ポップカルチャーのアイコンか、未だに女には禁断の金と権力を手に入れようと男社会に殴り込みをかけた反逆児の武勇伝として、21世紀のヒロインに祭り上げられることを心配するのは私だけでしょうか?詐欺ではありませんが、私はルールも法律も良心も無い世界からきた犯罪者一家の、パワハラ、ガスライティングに毎日泣かされきた被害者なので、殺人鬼ではないからとソローキンを野放しにするのは、絶対に反対です。精神的虐待にも、後遺症があり、その爪痕は永遠に残ります。キャンセルされるどころか、フォロワーを唆して、益々増長するのは目に見えています。一日も早く、ドイツに強制送還される事を祈って止みません。尤も、同じ穴のむじなトランプを大統領にしてしまった国です。お〜、怖い!逃げるが勝ちですかね?

「となりの精神科医」番宣ポスターも、オープニングシークエンスと同じく、マーティの頭に住みついて、四六時中マーティの言動を操作するドクター・アイクを見事に表現。

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