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「コールドケース 迷宮事件簿」のダニー・ピノと9年ぶりに再会 役作りは衣装から!最新作「Mayans M.C.」のミゲル・ガリンドを語る

ダニー・ピノ COLUMNS
「Mayans M.C.」シーズン2からは、ヒゲで威風堂々を表現するダニー・ピノ。ミゲル・ガリンド役は、これまでの刑事役とは正反対の麻薬密売カルテルのドン。(c) James Minchin/FX

「コールドケース 迷宮事件簿」は、米国では2003年9月~2010年5月まで、7シーズン156話が放送されました。日本では、WOWOWで2005年にシーズン1を放送開始、2011年にシーズン7で完了しました。AXN、DLifeではいずれもシーズン1~5が放送された他、関西テレビ、テレビ西日本、テレビ東京、テレビ愛知等で吹き替え版が深夜リピート放送され、根強い人気を物語っています。

「コールドケース 迷宮事件簿」は、フィラデルフィア市警察の未解決事件専従捜査班の活躍を描く一話完結型捜査ドラマです。ジョン・スティルマン警部補(ジョン・フィン)が率いる捜査班は、被害者や遺族思いのヒロイン刑事リリー・ラッシュ(キャスリン・モリス)とリリーの相棒スコッティ・バレンズ(ダニー・ピノ)のコンビを核に、「落とし」が得意なニック・ベラ(ジェレミー・ラッチフォード)、「過去への窓口」としてリリーを支えるウィル・ジェフリーズ(トム・バリー)、シーズン3からリリーの同僚になったキャット・ミラー(トレイシー・トムズ)が織りなす刑事モノです。事件関係者の現在と過去を、老若の俳優や映像の色調で巧みに表現し、事件発生当時の流行歌で雰囲気を盛り上げたモンタージュ仕上げのラストシーンと、被害者の生前のイメージで終止符を打つユニークなスタイルを確立しました。但し、流行歌を使ったのが災いして、テレビ放送権はあるものの、DVD用の版権使用許可が下りず、いまだに「コールドケース」はシンジケーション放送を観るしか視聴方法がありません。

「コールドケース」ダニー・ピノ、キャサリン・モリス

主演の刑事コンビは、ダニー・ピノ(スコッティ役)とキャサリン・モリス(リリー役)。モリスは「コールドケース」終了後、結婚して主婦に専念し、画面から姿を消してしまった。18年「Reverie」で好演したものの、打ち切りとなってしまい、現在モリスを画面で観ることはできない。

 

「Reverie」

2018年、「Reverie」に出演したモリス(左端)。(c) Paul Drinkwater/NBC

TCAプレスツアーに初めて参加した2004年夏、モリス、ピノ、クリエイターのメレディス・スティームの3人による「コールドケース 迷宮事件簿」パネルインタビューがあり、制作の舞台裏が披露されました。又、その夜、ドジャース・スタジアムで開催されたCBS主催のパーティーで3人と歓談することができ、スティームとピノのインタビューを後日実施する約束を取り付けました。

ピノはリリー夫人(偶然、ピノの奥様もリリーと言う名前)とドジャース・スタジアムで開催されたCBS主催のパーティーに参加。庶民的なピノ夫妻とすっかり仲良くなった。

 

「コールドケース」クリエイターのメレディス・スティーム。2011~15年「ホームランド」47話、「The Bridge」2013~14年26話でプロデューサー/放送作家として活躍。こんな温和な人がよくあんな残虐な物語を書けるものだ!といつも仰天してしまう。

 

翌05年冬のCBSのオールスター・パーティー(昔はCBS局で放送中の作品に関わる制作陣やキャストが一同に集まったので、この名称で呼ばれていた)に、モリス、ピノ、フィン、ラッチフォード、バリーのキャストが勢ぞろいしました。「コールドケース」軍団を見つけて挨拶に行くと、ソファーに座るよう勧められ、飲み物や食べ物をキャストが代わる代わる持ってきてくれる歓迎ぶり!無名に近かったキャストだけに、スター然としておらず、全員が配役されたことを感謝し、熱い気持ちで番組制作に関与しているのが明らかでした。それが抜群のチームワークとして画面に現れていました。放送初年度は、毎週日曜日(放送日)に集まってバーベキューを楽しんだ後、ライブで「コールドケース 迷宮事件簿」を視聴していました。更に、出番のない日でも、お互いに連絡をし合うほどの仲の良さでした。

 

06年に関わった映画「硫黄島からの手紙」のワーナー・ブラザース撮影所内の美術部が、偶然にも「コールドケース」制作本部と隣り合わせだったこともあって、私が「硫黄島」の仕事をしていた半年間、スティーム以下、キャストと幾度となく出会い、益々親交を深めました。「コールドケース」一家の一員になったような錯覚に陥ることもしばしばでした。

ピノの独占インタビューは、申し込んでから1年余り経ってやっと実施に漕ぎ着けました。本人はやる気満々なのに、間をとり持つ筈のエージェントに幾度となくつっけんどんに拒否されました。待っている間に、10回ほどピノに会って話をしたので、正式なインタビューには却って緊張してしまいました。

一番印象に残ったのは、シーズン1の婚約者エリッサの遺品を片付けるシーンだと話した所、「掛け替えのない人を失った心痛と未練を、真っ赤なドレスで表現したいと言う僕のアイデアが採用されたんだ!」と舞台裏を明かしました。ピノの役作りに対する熱い思いを感じたと同時に、きめ細やかな心の表現に気を遣う俳優なのだと感心しました。うつ病の元主人の心の暗闇を体験したことがあるだけに、私はスコッティに共感を覚え、特に思い入れの深いキャラとなりました。

「コールドケース」完了後、ピノはNBCの大人気長寿ドラマ「Law&Order:性犯罪特捜班(SVU)」に登板、2011年から2015年まで94話で、ニック・アマーロ刑事を演じました。ピノの登板を機に、「SVU」を初めて観るようになり、降板後もケリー・ギディッシュ(アマンダ役)が好きで、ずっと見続けています。最近は、実際に起こった事件が数週間後には、「SVU」でドラマとして観られ、あーこれはあの事件だ!今日は、あの事件とこの事件を巧みに組み合わせたんだ!と認識できるようになりました。

「Law&Order:性犯罪特捜班(SVU)」で共演したケリー・ギディッシュ(アマンダ役)とニックを演じたピノ。ギディッシュは、2010年の「Past Life」以来のファンで、「SVU」で今後も活躍してくれることを期待している。

 

16年には、「Brain Dead」(13話)にルーク・ヒーリーとして出演、「スキャンダル 託された秘密」にも4話に登場しました。17年には、ジョン・ビショップFBI捜査官として「Gone」で活躍していましたが、更新されず12話のみで呆気なく終了してしまいました。ビショップ捜査官は、これまでにピノが演じたどの役より「コールドケース」のスコッティに似通っていました。因みに、前出のトレイシー・トムズ(「コールドケース」のキャット・ミラー役)が、マヤ・ケネディーFBI捜査官としてピノと共演しました。

「コールドケース」のキャット・ミラーを演じたトレイシー・トムズ。「Gone」では誘拐事件の捜査に全米を駆け巡るチームリーダー格フランク・ノヴァック(クリス・ノス)の右腕ケネディー捜査官を演じる。

 

最後に会ったのは、2009年、「コールドケース」のシーズン7が更新された直後でした。CBSが更新を渋っていて、諦めかけていた矢先に吉報が舞い込みました。ピノは「ま、俳優の人生ってこれの繰り返しだからね」と極めて達観しているのにびっくりしました。毎年、更新か打ち切りかを神経ピリピリで待っていたら、体がいくつあっても足りないと言うことなのでしょう。因果な商売ですね?

2018年夏のプレスツアーで、「Mayans M.C.」のキャストとしてFX局のパネルインタビューに参加したピノに会いました。これまで刑事役が多かったピノにしては珍しいミゲル・ガリンドについて聞いてみました。ガリンドは、カタギの人間社会から学んだ世渡り術を心得ている麻薬密売組織カルテルのドンです。一見大卒の実業家に見えますが、「汚職や捜査当局との癒着など朝飯前の、政治家のような人間」だと言います。ちなみに大学はアイビーリーグで、政治学+心理学専攻したとガリンドの履歴書を自分なりに作成して演じています。そして、バイカー軍団やならず者と差別化するために、洗練されたセンスの持ち主の象徴として、布地から選りすぐった高級ブランドの背広を身につけることから始まって、衣装部と微に入り細に入り話し合ったと言います。ピノの役作りは、必ずと言って良いほど、身に着ける衣装や小物など、外見から整えて行くと言っても過言ではありません。

「Mayans M.C.」で実業家の皮を着たカルテルの親玉ガリンドを演じるピノ。このドラマは、「サンズ・オブ・アナーキー」のスピンオフ作品として、2018年からFX局で放送されている。「サンズ・オブ・アナーキー」から2年後、メキシコとの国境付近で活動するバイク・クラブ「マヤンズ」の表の顔と裏の顔を巧みに描くドラマ。

 

「Mayans M.C.」公式トレイラー

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「キング・オブ・メディア」をご覧になった読者には理解して頂けると思いますが、要は阿漕で、銃器や麻薬密売等の違法行為でのし上がった成金一家でも、何代も続く富豪一族も、富を維持して行くためには、親から叩き込まれた(見聞きして覚えたと言う方が正しいかも?)阿漕な方法を引き継いで生き延びます。米国の上位1%の富裕層の日常を描くために、「キング・オブ・メディア」制作部は、6人のコンサルタントを起用しています。ビジネス/金融コンサルタントやテレビニュース・コンサルタントは当然ですが、シーズン1の最後を飾った長女シヴ(サラ・スヌック)の結婚式をより本物らしく見せるためのウェディング・コンサルタント、シヴが一旗揚げようと足を踏み入れる政治・政界コンサルタント、文化・社会コンサルタント(豪邸のインテリアからチャリティー・イベントまで)、そしてNYの富豪の身なりや一挙一動をアドバイスするメディア・社会コンサルタントまでが、制作に関与しています。一番面白い例は、上位1%の富裕層はオーバーやダウンジャケットなどを着ないと言う事実です。ヘリコプターから数歩の所で待ち受けているリムジンにすぐ乗り込むので、寒さを感じている間が無い=スーツのみで一日行動すると言う訳です。これを聞いた時に、ピノが身なりでカルテルの親玉を表現していること、細心の注意を払っていることに納得が行きました。キャラの生い立ちや教養、野望までを、衣服が表現するからなのです。

「キング・オブ・メディア」予告編

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