[ネタバレ]「キリング・イヴ3」プレミアを繰り上げ!予定より2週間も早くデビューしたのは、長期自宅待機で観るものがなくなった視聴者を激励するため BBCAmericaの粋な計らいはエミー賞に繋がるか?

ヴィラネルの結婚式?!で始まった「キリングイヴ3」も、5月31日に最終回を迎える。

※「キリング・イヴ3」についてのネタバレがあります。

3月中旬カリフォルニア州は、コロナウィルス感染を阻止すべく自宅待機令/外出禁止令を出しました。学校は勿論職場も閉鎖、街中はひっそりと静まり返り、かつて賑わったテーマパークもハリウッドもゴーストタウンと化して、異様な雰囲気です。普段から自宅に籠って、コツコツとものを書いている私には、食料の買出しや銀行、郵便局に行くなど、極々当たり前の用事が「命懸け」になったことを除けば、大して環境が変わった訳ではありません。ところが、親は仕事、子供は学校に通っていた一般家庭では、慣れ親しんだ日常が維持できなくなり、配給や外出禁止令が出た第二次世界大戦以来の異常事態に長期追い込まれることになりました。特に家族が狭い所に押し込められて、四六時中否が応でも顔を付き合わせる団体生活を強いられて適応できず、孤独感、閉塞感から不安、イライラ、情緒不安定に陥ったり、更に行き場がないためDVが急増、自宅待機のあらゆる弊害が急増し始めた4月初旬の話です。

外出禁止令が出て以来、配信サービスを利用する人口が激増したとは言うものの、1日中観ていれば、そろそろ観るものが無くなった頃でした。テレビでは視聴者の士気を鼓舞しようと、人類は運命共同体であると言う意味の「We’re all in this together」のスローガンが盛んに流れるようになりました。地上波局CBSは、自局の番組に出演する俳優達にスローガンを連発させ、まるで「我々も自主規制を受けて息苦しい思いをしているから、視聴者も頑張ってください!」と言わんばかりの公共広告を流し始めました。安全な場所でヌクヌクと待機しているであろう高給取りの俳優に言われてもね~と、口先だけの偽善的メッセージにウンザリしたのは私だけではない筈です。

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そんな時に舞い込んだのが、「キリング・イヴ3」のプレミア日繰り上げの吉報でした。BBCAmericaを傘下に収めるAMCネットワーク・エンターテインメント・グループ社長サラ・バーネットが「自宅待機に飽き飽き、もう観るものが尽きてしまった!面白いドラマはないの?と探しておられる視聴者及び『キリング・イヴ』ファンに、待望のシーズン3を2週間早くお届けします」と発表したのです。これでなくちゃ、嘘ですよ!視聴者やファンの身になれば、これ以上のプレゼントはありません。プレゼントで思い出したのですが、Lifetime局がイベント用に準備した手指消毒液を倉庫で眠らせておく手はないと、我々評論家にも「おすそ分けです」と郵送してくれた心遣いにも、涙がちょちょ切れました。口先だけで綺麗事を並べる偽善者とは大違いです。この異常事態に垣間見た優しさ、思い遣りです。余談ながら。

 

2018年4月に放送開始となった「キリング・イヴ」は、日本でもWOWOWでシーズン2まで放送済みです。スパイになりたい冴えないMI5保安局員とブランド嗜好のお洒落な殺し屋の愛憎の機微と、2人の摩訶不思議な関係が家族や友人に及ぼす波及効果を美しい映像とブラックユーモアで描いた、これまでになかったスパイスリラーです。シーズン1にクリエイターとして参加したフィービー・ウォラー・ブリッジが、尋常ならぬ注目を集め、昨年賞という賞を総なめしたことや、主演のサンドラ・オーとジョディ・カマーがテレビ業界の数々の賞にノミネート又は受賞したことからも、一躍注目を集めるようになった異色ドラマです。

[英国軍情報部第6課ロシア部長キャロリン・マーテンズ(フィオーナ・ショウ)は、犯罪心理分析の才能を買って、イヴ(サンドラ・オー)をリクルートした。シーズン3では、スパイ稼業から足を洗ったと言い張っても、家族や友人が狙われるので、自ずととキャロリンと手を組まざるを得ない窮地に追い込まれるイヴ。]

イヴ(サンドラ・オー)は、MI5保安局員として事務職と平穏無事な結婚生活に嫌気がさしていました。サイコパスに異常な興味を抱き、スパイになる日を夢見ています。ヨーロッパで次々と起きた要人殺人事件は、女性サイコパスの手になるものではないかと自説を公表したところ、英国軍情報部第6課(MI6)ロシア部長キャロリン・マーテンズ(フィオーナ・ショウ)に引き抜かれ、ヴィラネル(ジョディ・カマー)逮捕に公私とも身を削るようになります。

[死んだと思っていたイヴ(下)に、戦士から皇帝にのし上がった「血と汗と勝利」を象徴する特注香水で自分の威力を誇示するヴィラネル(ジョディ・カマー)。飽くまで自分が大将であることを証明しなければ気が済まない、仕切りたがり屋の為せる技だ。イヴは今度こそ殺されると恐怖を感じつつも、まだまだ未練たっぷり!?]

ヴィラネルは、パリのアパートでブランド嗜好、グルメ生活を満喫する稼ぎの良い刺客です。ターゲットに接近するプロセスを楽しみ、人間が息を引き取る瞬間が醍醐味と豪語します。暗殺計画を練り、刺客とバレないよう架空のキャラになりきって、綿密に速やかに仕事を実行。冷酷、無慈悲、良心/恐怖心/罪悪感の欠如等、教科書から飛び出したようなサイコパスは、理想的な殺し屋だったのですが. . .イヴと接触した途端、イヴの気を引くことに気をとられ、精密な殺しのマシーンだったヴィラネルがどんどん粗雑になって行きます。

[ヴィラネルのファッションを当てにして観ると、がっかりしてしまうシーズン3。シーズン1~2で見せた独特のお洒落センスを失ってしまったのか、パワーの象徴なのか、男っぽい服装が多い。]

シーズン2は、いたちごっこを続けるイヴとヴィラネルの摩訶不思議な関係が如何に展開して行くかに焦点が当てられました。ヴィラネルは、イヴが自分と同様の刺客になりたいと願っていると思い込み、イヴの好奇心や執着心は愛情であると誤解しています。ローマを舞台に血生臭い抗争が繰り広げられ、イヴもヴィラネルも夫々の上司(キャロリンとコンスタンティン(キム・ボドニア))にまんまと罠に嵌められて、二進も三進も行かない窮地に追い込まれてしまいます。ヴィラネルはアラスカに逃げようと提案しますが、ヴィラネルが銃を手にしながら、イヴに惨殺を実行させたと悟った瞬間、好奇心や怖いもの見たさは完全に消え失せました。イヴは決してヴィラネルのようなサイコパスにはなれませんし、ヴィラネルが象徴する「危険」の怖いもの見たさと、内に秘めた冷酷無情な影の部分を行動に移せるかへの好奇心からヴィラネルに接近したのだと気付きます。イヴが自分の思い通りにならないと知った瞬間に、引き金を引いたヴィラネルは「私のものにならないなら、誰にも渡さない!」と判断したのでしょう。

[シーズン1でヴィラネルの贈り物で少々垢抜けたイヴだが、元々しゃれっ気はないので、すぐに元のダサいスパイに戻ってしまう。シーズン3は、生き延びたことがバレないよう、生活環境も服装も周囲に溶け込むよう地味がモットーのイヴ。]

シーズン3は、ローマでの惨事から半年後の設定です。イヴはロンドン郊外の韓国人街ニューモールデンで、傷跡とプライドを労わりつつ、レストランのまかない職と場末のアパートに身を潜めて、細々と暮らしています。過去は水に流して堂々と生きて行けと言われるものの、罪悪感、悲痛、恨み辛み、失望、恐怖などを心の奥底に溜め込み、必死で平静を装う「英国式処理法」を選択しました。しかし、今シーズンも、イヴの大切な人達にこれでもか!これでもか!と悲劇が訪れます。誰が後ろで糸を引いているのか?イヴの好奇心が又メラメラと燃え始めます。イヴの冷酷無情な影の部分は、漸く日の目を見るのでしょうか?

[韓国料理店の賄いをして生活するイヴ。何も考えずに、黙々と餃子作りに従事していれば、人目に付くこともないし、1日が早く過ぎて行くからだ。傷ついた時には、何かに没頭して、現実逃避するのが一番。]

イヴに振られたヴィラネルは、「ザ・12(トゥエルブ)」が派遣した恩師(?)ダーシャ(ハリエット・ウォルター)の薦めで刺客に戻りますが、暗殺請負人コンスタンティンやダーシャを遣う立場=「ザ・12」の幹部職を目指しています。しかし、一匹狼ヴィラネルに、管理職はとても務まりません。今シーズンも「ザ・12」の全貌は明らかにはなりませんが、ヴィラネルが幹部職に相応しい人材であるかを見極める面接官エレーヌ(カミーユ・コッタン)が姿を現します。「ザ・12」に忍び込んだ二重スパイは誰なのでしょう?

[ダーシャ(ハリエット・ウォルター・左)からかつて特訓を受けて殺し屋になったヴィラネルは、いつまでもダーシャの言いなりでは面白くない。ダーシャは、イヴとの間を裂いて、ヴィラネルを精密な殺しのマシーンに復帰させれば、ロシアに帰郷できると信じている。]

ローマでの大失敗の責任を問われて、情報部内に居場所を失ったキャロリンは、お先真っ暗。本当に捜査したい殺人事件からは締め出され、手も足も出ません。しかも、自宅では長女ジェラルディーン(ジェマ・ウィーラン)が、ストイックなキャロリンの世話を焼き始めたから大変。公私共、身の置き場を失ったキャロリンは、イヴに救いを求めます。

[英国軍情報部で長年働いているキャロリンは、職業柄、家では仕事の話をせず、感情を露わにしない癖が祟って、何をどう感じているかも分からなくなってしまった。]

イヴは好奇心、ヴィラネルはコントロール、キャロリンは仕事と、それぞれ執着の対象は違えど、要は心痛と罪悪感に直面するのが怖くて、何かに固執していなければ生きて行けない哀しい女たちです。

[仕事の話だけしていれば、お互いの傷に触れ合うことがないので、キャロリンはイヴと一緒にいるのが一番楽だ。情緒豊かな長女ジェラルディーンとは全く波長が合わない。]

制作総指揮は、シーズン2のエメラルド・フェネルから、スザンヌ・ヒースコートにバトンタッチ。毎シーズン、新たなクリエイターが「キリング・イヴ」を制作する珍しいドラマです。シーズン2のフェネルは、政権交代発表がなければ全く気が付かなかったと思う程、会話も雰囲気もカラーも同一に仕上げることに成功。ヴィラネルのブラックユーモアに磨きがかかり、吹き出すシーンが増えたので、シーズン2がとても気に入っていました。シーズン3と言うこともあり、ヒースコートはヴィラネルとイヴの心理を深く掘り下げようとしたのでしょうか、シーズン1のようなヴィラネルの殺しのプロセス、キャラ作りなどはほとんど省略。又、ヴィラネルが産みの親を訪ねあて、生い立ちを探る逸話もあります。現在のヴィラネルを人となりを形成した母親を観ると、確かにこんな親に育てられたらこうなるのは当然!と納得し、ヴィラネルも人の子と親近感を抱かせるお決まりの展開ではありますが、私は観たくなかった!と拒否反応を抱いてしまいました。サイコパスはサイコパスで、良いではありませんか?ヴィラネルからあの気違い沙汰を取り除いてどうしようと言うのでしょう?サイコパスと言えば、コンスタンティンの14歳の娘イリーナ(ユリ・ラゴディンスキー)が今シーズン、ヴィラネル並みの冷酷、無慈悲、良心/恐怖心/罪悪感の欠如を露わにする点に、大いに注目したいと思います。

[母タチアナ(ユージニア・ドディーナ)を訪ねて、ロシアの片田舎に出向いたヴィラネルが見たのは、現在の夫との間にできた子供をチクチクと弄り、自尊心を傷つける昔と変わらない母親だった。孤児院に置いてけぼりにされたヴィラネルの恨み辛みは半端ではない。]

4月12日「キリング・イヴ3」のプレミア日に先駆けて、既に1月早々にシーズン4の更新が発表されています。イヴとヴィラネルの摩訶不思議な関係の引き伸ばし作戦は、視聴者に飽きられる最短距離ではないでしょうか?つまり、シーズン4で完となるかも?というお話でした。

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