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【映画レビュー『胸騒ぎ』】“胸糞映画”ファン必見・・今年トップクラスに不安と不快感を煽る、衝撃的で“人コワ”な現代の寓話【あなたなら、どこまで人を信じ、許せる?】

© 2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures REVIEW
© 2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures

映画で嫌な気持ちになりたい方、いわゆる“胸糞映画”が好きな方に朗報がある。2020年代トップクラスに不快な気持ちになれる、衝撃的な作品が日本にやってくる!それが5月10日(金)公開の映画『胸騒ぎ』だ。

映画『胸騒ぎ』レビュー

【予告編】『胸騒ぎ』

『胸騒ぎ』あらすじ

旅先で偶然出会い、意気投合した家族からの招待状。断りきれない“おもてなし”は、悪夢への入り口だった———。

イタリアでの休暇中、デンマーク人夫婦のビャアンとルイーセ、娘のアウネスは、オランダ人夫婦のパトリックとカリン、その息子のアーベルと出会い意気投合する。数週間後、パトリック夫婦からの招待状を受け取ったビャアンは、家族を連れて人里離れた彼らの家を訪ねる。

再会を喜んだのも束の間、会話のなかで些細な誤解や違和感が生まれていき、それは段々と広がっていく。彼らの「おもてなし」に居心地の悪さと恐怖を覚えるも、その好意をむげにできないビャアンとルイーセ。善良な一家は、週末が終わるまでの辛抱だと自分たちに言い聞かせるが——。

徐々に加速していく違和感は、観客を2度と忘れることのできない恐怖のどん底へと引き摺り込む。

© 2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures

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メンタルに自信がある人はぜひ。

北欧デンマークの新たなる鬼才・クリスチャン・タフドルップ監督によるこの1作。正直、注意喚起せずにはいられない、衝撃的な映画だ。メンタルを追い詰められる映画が苦手な方にはオススメできない。

しかし、逆に言えば、それほどに刺激や恐怖、不穏さを映画に求めているホラー/スリラーファンからすれば“大好物”といえる映画でもあるということ。『ファニーゲーム』や『屋敷女』のような不快感とスリルを求めている方々に、ぜひこの『胸騒ぎ』をオススメしたい。

© 2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures

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その衝撃度合いを保証するかのように、なんと今作、すでにジェームズ・マカヴォイ(『スプリット』)主演、ブラムハウス(『ハッピー・デス・デイ』『パージ』)製作でハリウッドリメイクが決定している。

違和感が不快感に変わっていく…。

“ちょっとした違和感”が本当の不快感になっていくというのはホラー/スリラー映画の王道ではあるが、今作はそのグラデーションが非常に巧み

最初から少し違和感はあるのだが、それは音楽や撮影によるものであって、主人公夫妻が簡単に気づけるものではない。それが徐々に主人公夫妻にも明白な違和感に変わっていき、ついには誰もが不快になる展開が次々に訪れる。

俳優の表情ひとつひとつも使って徐々にジワジワと侵食してくるその狂気・不快感を味わいながら、「自分ならどこで逃げ出すだろうか」「どこまで人を信じるだろうか」そう考えさせられるのが『胸騒ぎ』だ。

© 2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures

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他人をどこまで信じ、許すべき?

危険な人物が自分から危険だと名乗ることはない。当然、悪人だって善人を名乗る。我々はどこまで他人を信じるべきだろうか。

人は繋がりを求める生き物だと思う。誰のことも信じず、仲を深めなければ危険な目にも遭わないかもしれないが、「それでは寂しい」と感じてしまう人も多いだろう。ではどこまで人を信じ、人を許すべきだろうか。あまりに“お人好し”が過ぎると、リスクを回避できないところまで行ってしまいかねない。今作ではそのような“正直者がバカを見る”展開によって、“他人と交流すること”の恐怖をまざまざと描き上げている。

© 2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures

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「さすがに警戒しろよ!」「まだ引き返せるぞ!」「もう帰れよ!」…そんな風に主人公たちにツッコミを入れる我々。しかし自分が当事者なら、“よくしてくれる人々”にそう簡単に強く出られるだろうか。そうも思わされるのだ。

どこか浮世離れした“寓話性”

『猿の惑星/キングダム』のレビューで“映画は弱者の味方”と断言したばかりだが、正直この映画は弱者にも容赦ない。なんていじめっ子気質な映画だろう。しかし、この映画はどこか寓話のような浮世離れした雰囲気があり、そういう意味では世の“弱者(バカな正直者)になりかねない人々”に教訓を与えてくれているような気もしている。

今作は上述したとおり、主人公たちが違和感すら覚えていないうちから、撮影の構図や効果音、BGMを使って観客に違和感を与えてくれる。最初から今作を語る視点は主人公夫妻ではなく、第三者の視点なのだ。主人公に直接感情移入させずに、主人公の失敗を通して教訓を伝えてくる語り部的な視点で常に語ることで、今作には寓話性が生じているのではないか。

© 2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures

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今作を見て少しでも「危険な目に遭いたくなければ、リスクヘッジが大事だな」「知らない人の親切心にはしっかり警戒しよう」などと観客が思ったなら、今作はしっかり「弱者の味方」をしてくれたことになるかもしれない。

とはいえ、今作を一番楽しむなら、まずはそのような穿った見方をせず、しっかり主人公と一緒になって振り回され、不快になり、怯え、震え、怒り、落ち込むことをオススメしたい。そうして観るホラー/スリラーが結局一番楽しいのではないかと思うし、今作には人を極限まで凹ませるだけの衝撃・パワーがある。

2020年代トップクラスの“胸糞映画”のひとつ、衝撃作『胸騒ぎ』は5月10日(金)より、新宿シネマカリテほか全国公開。

映画『胸騒ぎ』作品情報

監督:クリスチャン・タフドルップ
脚本:クリスチャン・タフドルップ、マッズ・タフドルップ
出演:モルテン・ブリアン、スィセル・スィーム・コク、フェジャ・ファン・フェット、カリーナ・スムルダース
2022年/デンマーク・オランダ/ カラー/2.39:1/5.1ch/97分/英語・デンマーク語・オランダ語/英題: Speak No Evil/原題:GÆSTERNE/PG-12
配給:シンカ
宣伝:SUNDAE
提供:SUNDAE、シンカ
© 2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures
sundae-films.com/muna-sawagi

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