新型コロナウィルスの蔓延で国の機能が完全に麻痺してしまったお陰で、今夏のTCAプレスツアーはキャンセルとなりました。何もすることがない夏になると嘆いていましたが、7月28日から8月11日までPBS公共放送とケーブル局及びストリーマーは、初めての試みバーチャル・プレスツアーを開催しました。
このような異常事態に、毎夏開催されるTCA賞授賞式をどうするのかについて答えを求められたのは4月初旬でした。私は今年は見送る方に投票したのですが、6月に例によって例の如くノミネーション(各カテゴリーに4俳優/作品)の催促があり、今回も反対票は無視されたことが判明しました。投票させておいて、何もかもTCA幹部が勝手に決める独裁政治は今に始まったことではないので、最初から期待はしていませんでしたが、少なくとも賛成と反対票数を発表するべきではないでしょうか?そして極めつけは、授賞式はエミー賞と同様、9月早々にバーチャルで行うとの知らせがありました。
今年はまだ時間があるので、昨年7月1日に発表した「今年もTCA賞のノミネーションを見て、ガッカリ!ガックリ!」と同様、第一次選考時に私が選んだ俳優や作品と最終候補に残った俳優や作品を比べてみました。私が吟味してノミネートしても、最終候補に残る俳優/作品は、私の第一次選考リストからは程遠く、「私って、本当にメジャーじゃないのだ!」と嘆き続けて来た訳ですが、数年前に1年の総決算として好きな作品と俳優を網羅して提出すると居直りました。今年も、どうせ大きく外れるだろうと投票しましたが、意外や意外!個人功労賞ドラマ部門、最優秀ドラマ、最優秀コメディでは、1俳優/1作品が最終候補に挙がっており、何の抵抗もなく最終選考できました。
困ったのは、個人功労賞コメディ部門、2019~2020年シーズンの最優秀作品賞、2019~2020年シーズンの最優秀新作賞とミニシリーズ/限定シリーズ部門最優秀作品賞で、2俳優/2作品が私のリストと一致してしまい、(こんなことはこれまで経験したことがないので)最終投票する時点でも、どちらに軍配を上げるべきか大いに迷いました。悩みに悩んだ結果、一番上の俳優/作品に落ち着きました。
目次
*個人功労賞ドラマ部門

「アンビリーバブル たった1つの真実」で、主人公マリー・アドラーを見事に演じたケイトリン・ディーヴァー。7月末に発表されたエミー賞候補の限定シリーズ助演女優賞にトニー・コレットが挙がっているのは、知名度の高い俳優好きなテレビアカデミーの伝統だ。ゴールデン・グローブ程、新し物好きではないが、ディーヴァーに注目したTCAも捨てたものではない?
*個人功労賞コメディ部門

「シッツ・クリーク」のベテラン女優キャサリン・オハラか、「ザ・グレート」でドラマとコメディの微妙な綱渡りをして実力を発揮したエル・ファニングのいずれを選ぶべきか?「シッツ・クリーク」が完となり、今回しか受賞チャンスがないので、オハラを選んだ。
*最優秀ドラマ賞

「ザ・グッド・ファイト」に勝るドラマはないと思っているのは、私だけなのか?あれだけの秀作でありながら、エミー賞でも今年は完全に無視されている。それだけ優れたドラマが出て来たとは思えないのは、私の偏見なのか?
*最優秀コメディ賞

有終の美を飾った「シッツ・クリーク」に乾杯!ローズ一家は、(左から)長女アレクシス(アニー・マーフィー)、ジョニー(ユージン・レヴィ)、モイラ(オハラ)、長男デビッド(ダン・レヴィ)。昨年からエミーでも注目を浴びて、今年も全員コメディ部門の主演/助演にノミネートされているが、エミーは全く当てにならないので、TCA賞だけでも獲得して欲しい。
*2019~2020年シーズンの最優秀作品賞

「アンビリーバブル たった1つの真実」に是非獲得して欲しいが、何しろ強敵が多すぎる?「ミセス・アメリカ」が本命か?オタク要素の強い「ウォッチメン」はTCA会員好みではある。
*2019~2020年シーズンの最優秀新作賞

地上波局唯一ノミネートされた「Zoey's Extraordinary Playlist」は、「クレイジー・エックス・ガールフレンド」のようなミュージカル。NBC期待の新作か「ザ・グレート」のいずれを選ぶべきか、最後の最後まで迷った。
*ミニシリーズ/限定シリーズ部門最優秀作品賞

「ミセス・アメリカ」は、米国の歴史と現状に至った経緯をそれは見事に綴った秀作で、エミー賞限定シリーズ作品賞、主演女優賞ケイト・ブランシェット、助演にはウゾ・アドゥバ、マーゴ・マーティンデール、トレーシー・アルマンがノミネートされている。誰もが投票するであろう本命ではなく、ここでも敢えて穴馬「アンビリーバブル たった1つの真実」に投票した。

ハリウッドなう by Meg ― 米テレビ業界の最新動向をお届け!☆記事一覧はこちら
◇Meg Mimura: ハリウッドを拠点に活動するテレビ評論家。Television Critics Association (TCA)会員として年2回開催される新番組内覧会に参加する唯一の日本人。Academy of Television Arts & Sciences (ATAS)会員でもある。アメリカ在住20余年。