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6月に放送開始される新ドラマ、更新番組をご紹介 不屈の魂を持つヒロイン/ヒーローに乾杯!

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左のアリソン(アニー・マーフィー)は、新ドラマ「Kevin Can F*** Himself」で、右のエカチェリーナ2世(エル・ファニング)は、Hulu「ザ・グレート」で、夫の横暴ぶりに失望し、抹殺計画を練る。時代は違えど、一介の主婦とロマノフ朝の女帝が同一の悩みを抱え、謀反を起こそうと企てている共通点に気が付いて、我ながら仰天してしまった!400年余り経っても、何も変わっていないのか?

6月3日配信開始 Paramount+「Why Women Kill 2」

2019年10月15日本コラム「『デスパレートな妻たち』のクリエイターが放つ『Why Women Kill』. . .実は女性に自分探しの旅を促すブラックユーモア劇」でご紹介。

「デスパ」のクリエイター、マーク・チェリーが創作したブラックユーモア劇シーズン1は、2019年8月15日からCBS All Accessの新オリジナルとして配信されました。パサデナの豪邸の住人、1)1960年代の典型的専業主婦ベス・アン(ジニファー・グッドウィン)、2)80年代のやり手女実業家シモーヌ(ルーシー・リュー)、3)2019年の政治活動家/弁護士テイラー(カービー・ハウェル=バプティスト)が、夫の浮気/裏切りにどう反応し、自分探しに繋がって行くかを描きました。

Paramount+(元CBS All Access)で、6月3日より配信開始となる「Why Women Kill」シーズン2(アンソロジー)は、1949年のロサンゼルスを舞台に、虚栄心の強い2人の中年女性の一騎討ちを面白おかしく描きます。

 

美貌で玉の輿婚を勝取ったリタ・カスティーヨ(ラナ・パリーヤ)は、ガーデン・クラブと言う名のハイソ井戸端会議を仕切って采配を振る有閑マダムです。世間体を意識する割には、若いツバメ(俳優の卵)を囲って昼下がりの情事にいそしむのは、80歳になる夫カルロ(ダニエル・ザカパ)から優しさを期待できないからです。何の因果か、カルロが全身不随になり、看病を名目に嫁かず後家のキャサリン(ヴェロニカ・ファルコン)が乗り込んできて、リタの奔放な浪費生活に水をさすどころか、父の財産をアバズレ後妻に持って行かれてたまるかと、一挙一動に目を光らせているから堪ったもんではありません。

良妻賢母を真面目に務めてきたアルマ(アリソン・トルマン)の夢は、愛娘ディー(BK・キャノン)を一日も早く嫁がせる事、ガーデン・クラブに入って有閑マダムの仲間入りをする事です。しかし、もっちゃり、ダサい、存在感ゼロのアルマは、有閑マダムのボス猿リタから見下されっぱなしで取りつく島もなかったのですが、入会を推薦してくれる人の出現で、一抹の光を見出します。そんな折、獣医の夫バートラム(ニック・フロスト)の奇妙な趣味(?)が発覚し、スキャンダルになって入会拒否材料となるであろう夫の秘密を命がけで守ろうと決意するアルマです。窮鼠猫を嚙むとはよく言ったものです。「良い子ちゃん」アルマ(=ネズミ)を追い詰めると、リタに代表される弱い者イジメに徹する御山の大将(=猫)はどうなるか?を、チェリーは実に見事に描いています。

私から、アルマに一言。煌びやかな(=入会審査が厳しい)排他的組織は、「あんなに苦労して入ったのに、こんな筈では!?」と失望するものです。特に、ガーデン・クラブ類のボランティアから成る非営利団体には、地位/権力の亡者が吸い寄せられてきて、それは醜い派閥争いを繰り広げています。財力も地位もない1940年代の有閑マダムは、社会で采配を振る事が出来ない分、非営利団体で仕切りたがり屋として台頭し、日頃の怒りや不平不満を発散する場に変えてしまうからです。クワバラ、クワバラ!逃げるが勝ち!ですよ。

6月14日放送開始 The CW「The Republic of Sarah」

アメコミ実写版+SFファンタジースリラーのオンパレード局になってしまったThe CW。時折、評論家好みの心温まるドラマやロマコメを思い出したように発表する統合失調症的(?)放送局が放つ、久々の異色作が「The Republic of Sarah」(サラ共和国)です。

米国ニューハンプシャー州最北端の町グレイロックは、カナダ国境沿いの牧歌的な田舎町。IT機器に不可欠のタンタルコンデンサー部品の原料となるコルタン(別名:青いゴールド)の鉱脈が見つかり、ライドン産業が州の力を借りて、グレイロックに乗り込んで来ます。住民の生活を脅かす大企業の営利追求は、環境破壊に繋がる上、閉山後ゴーストタウン化することは明らかです。グレイロックの存在自体が脅かされています。家屋取り壊しに乗り入れたブルドーザーの前に立ちはだかったのは、高校教師サラ・クーパー(ステラ・ベイカー)と生徒達。しかし、相手は金に糸目を付けず、市長を買収するなど、あらゆる手を使って、立ち退き命令を実行しようとします。

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歴史に詳しいサラが提案した苦肉の策は?グレイロックが米国の一部でも、カナダの一部でもない中立地帯である事実を発見し、住民投票の結果、独立を宣言します。しかも、共和国の代表者に推されたサラは、元グレイロック市長や州知事など、四方八方から横槍が入り、四面楚歌になってしまいます。

現在、放送中のドラマ(例:「THIS IS US 36歳、これから」「ニュー・アムステルダム 医師たちのカルテ」「A Million Little Things/無数の小さなもの」等)は、パンデミックやBLM運動など2020年の出来事を蒸し返し、程度の差こそあれ、全世界が体験したトラウマや早く忘れたいと思っている凶事を再び体験させます。はっきり言って、観るのが辛い/シンドイので、DVRに録画したまま、再生するのを躊躇してしまいます。「The Republic of Sarah」は、非現実的なドラマではありますが、今の若者ならやりかねない話ではないかと思うのと、サラの家族内の揉め事(DVの母、幼くして家出した兄ダニー(ルーク・ミッチェル)との複雑な関係)や友達や学生との深い繋がりなどが背景にある、希望に満ちた(=今、私が一番求めているもの!)ドラマである点を大いに買って、このリストに挙げることにしました。

6月20日放送開始 AMC「Kevin Can F*** Himself」

2月24日掲載の「2021年夏に期待できる!?女性中心主義の新作3本をご紹介」で取り上げたAMC局が放つ「Kevin Can F*** Himself」です。

長年完璧な専業主婦に甘んじてきて、幼稚で自己チュー、口の悪い夫ケヴィン(エリック・ピーターセン)に振り回され、自分を見失ってしまったことにはたと気がついたアリソン(アニー・マーフィー)が、「耐える女」を演じるのはもう御免!と怒り心頭に発して謀反を起こし、自らの人生を切り開いて行く、現時点の女性全般の怒りを反映するドラマです。

マルチカメラで公開録画するシチュエーション・コメディ・フォーマットでは、煌々と照らし出されたセットでケヴィンと取り巻き連中に嘲笑されるアリソンと、シングルカメラで追うアリソンの超暗い現実(ケヴィンが出演しない場面+外の世界)を擦り合わせる画期的且つ痛烈な風刺ドラマです。

クリエイターのヴァレリー・アームストロングは、「4年前から温めてきたアイデア。脚本を書き始めた頃に、#MeToo運動が始まってしめしめと思っていたら、昨年パンデミックで自宅に監禁状態になって、女の不平不満が沸点に達したから、『これ以上我慢ならぬ!』と怒り心頭に発するアリソンが共感を誘う筈」と語りました。

男女同権運動は、日本より30年先を行っていると思っていた米国で、再び「男に振り回されない自立した女になれ!」と呼びかける本作「Kevin Can F*** Himself」が登場するとは、意外や意外!

既に、評論家に送られてきたスクリーナー4話を観て、お先真っ暗!の閉塞感と「こんな筈では. . .」と落胆し希望を失って行くアリソンに150%共感し、正直落ち込みました。とにかく、暗いの一言に尽きます。夫をこの世から抹殺して、自由になろうとするアリソンは、2020年9月8日「ロシア・ロマノフ朝の啓蒙専制君主として34年君臨したエカチェリーナ2世を描く『ザ・グレート』. . .」でご紹介したエカチェリーナ2世を彷彿とさせます。アリソンはマサチューセッツ州ウースター市に住む一介の主婦ですから、エカチェリーナ2世が成し遂げた偉業とは比べものにはなりませんが、窮鼠猫を嚙む現象は、今も昔も同じと言う事です。クリエイターのトニー・マクナマラが、エカチェリーナ2世を「現代女性の鑑」と呼んだのが頷けます。それにしても、400年余り経っても女の闘いに何の変わりもないと言う点は、嘆かわしいとしか言いようがありません。

6月24日配信開始 Paramount+「グッドファイト5」

2020年12月18日の「益々猛威を振るうパンデミックに翻弄される米テレビ業界 ー ドラマ編」でご紹介。

毎年、数百本のドラマが制作されますが、トランプ政権下で(ほとんど)リアルタイムで果敢にトランプに刃向かったドラマは「グッドファイト」以外にありません。「天と地がひっくり返った」シーズン1、「魂の闇夜」シーズン2、「激動」シーズン3、「八方塞がり」シーズン4と、トランプ就任以降、悪政/独裁政治のもとで善良な市民が体験する悪夢を見事に描きました。民主主義に巣食うガン細胞の親玉トランプが、曲がりなりにも公の場から摘出された後のシーズン5(10話)は、トランプの置き土産(悪・不正)、特に白人至上主義の特権階級にどう対処するかが、描かれるのではないでしょうか?

 

現時点では、エイドリアン・ボウズマン(デルロイ・リンド)とルッカ・クィン(クッシュ・ジャンボ)が抜けたRBL法律事務所(’黒人の、黒人による、黒人のための’)を、リズ(オードラ・マクドナルド)と二人で経営して行く意味があるのかと疑い始めるダイアン(クリスティーン・バランスキー)を描くことと、レギュラー出演が決まったマンディ・パティンキンが、コピー店でシロウト裁判を開くハル・ワックナーを演じることしか、公表されていません。

いずれにしても、政権交代、メインキャスト2人の降板、コロナ禍など、パラダイムシフトした後のこれまでに観たことのない世界をダイアンがどう生きるのかは、待ち遠しい限りです。

6月25日配信開始 Amazonプライム・ビデオ「BOSCH/ボッシュ7」

3月23日掲載「吉報!『BOSCH/ボッシュ』のスピンオフ制作決定」でご紹介。

プライムビデオが誇る最長寿シリーズ「ボッシュ」の最終シーズンが、意外と早く観られることが判明しました。今シーズンは全8話で、相変わらず弱い者いじめに余念のない富豪や大企業、汚職政治家/警察などに、真っ向から立ち向かう、不屈の魂ハリー・ボッシュ(タイタス・ウェリバー)を描きます。

既に、ボッシュ父娘がハニー・’マネー’・チャンドラー弁護士(ミミ・ロジャース)と一緒に仕事をするスピンオフ制作が発表されているので、シーズン7では、正義を貫いたボッシュが、誰の逆鱗にふれてLAPDを追放されるかが描かれる筈です。乞うご期待!

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