パラマウントによるワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)買収が、成立に向けて大きく前進した。
米カリフォルニア州司法長官は現地時間9月21日、買収差し止めを求めていた12州がパラマウントと和解したと発表した。さらに、別の訴訟を起こしていた全米脚本家組合(WGA)もパラマウント側と和解。買収を阻んでいた大きな法的障害が取り除かれることになった。
ただし、12州との和解には裁判所の承認が必要で、現時点で買収そのものが完了したわけではない。
買収を阻んでいた2つの訴訟
今回の買収をめぐっては、カリフォルニア州をはじめとする12州の司法長官が7月、買収を阻止するための訴訟を起こしていた。
巨大スタジオ同士が統合すれば、競争が減り、映画やテレビ番組の制作本数が減少するおそれがあるほか、価格上昇や業界従事者の雇用悪化につながる可能性があると主張していた。
WGAも別の訴訟を起こし、脚本家を雇う企業同士の競争が弱まることで、仕事の機会や賃金に悪影響が出ると訴えていた。
パラマウントはすでに買収契約上必要な規制当局の承認を得ており、9月上旬の時点では、この2つの訴訟が買収成立を阻む最後の大きな障害だとしていた。
今回、その双方が和解したことで、買収はいよいよ最終段階に入った形だ。
【動画】パラマウントCEOが語ったワーナー買収後の構想
年間30本以上の映画公開を約束
特に注目されるのが、12州との和解でパラマウントが受け入れた条件だ。
統合後の会社は今後5年間、一定数以上の映画を劇場公開する。
最初の2年間は年間30本、その後の3年間は年間32本を公開。このうち、最初の2年間は年間20本、3年目以降は年間21本を大規模公開作品とする。
さらに、毎年少なくとも4本のインディペンデント映画を公開することも条件に盛り込まれた。
もし年間の公開本数を達成できなかった場合には、傘下のMiramax(ミラマックス)を売却し、未達となった映画1本につき3,000万ドルを労働組合の医療・退職基金などへ拠出するという条件も設けられている。
巨大スタジオ同士の統合によって「映画の本数が減るのではないか」という懸念に対し、具体的な公開本数を約束させた形だ。
米国内の映画製作に15億ドルを追加投資
映画製作への追加投資も求められている。
パラマウントは、統合後の会社による米国内での映画製作費を、2025年の水準から5年間で少なくとも15億ドル増やす。
また、買収によって仕事を失う可能性がある業界従事者を支援するため、5年間で4,750万ドルの基金も設立。職業訓練やキャリア支援などに充てる。
既存の労働協約を尊重し、労働組合との交渉を続けることも条件となっている。
CNNとCBSの「編集の独立性」も守る
今回の和解条件は、映画だけにとどまらない。
パラマウント傘下にはCBS、WBD傘下にはCNNがある。買収が成立すれば、米国を代表する2つのニュースブランドが同じ企業グループに入ることになる。
そのため、統合後の会社にはCNNとCBSの編集上の独立性を守るための「News Editorial Independence Board(ニュース編集独立委員会)」を設置することも義務付けられた。
また今後5年間、パラマウント系とワーナー系のベーシックケーブルチャンネルについて、テレビ事業者などとの契約交渉を別々に行うことも求められている。
Pluto TVのような無料ストリーミングサービスについても、継続することが条件に含まれている。
DC、ハリー・ポッター、HBO、パラマウントが同じグループに
パラマウントによるWBD買収は約810億ドル規模。負債を含めた取引価値は約1,110億ドルに達する巨大案件だ。
成立すれば、Paramount Pictures、CBS、Paramount+などを抱えるパラマウントと、Warner Bros. Pictures、HBO、CNN、DC Studiosなどを擁するWBDが一つの巨大メディアグループになる。
「ハリー・ポッター」や「DC」といった世界的人気フランチャイズから、映画、テレビ、ニュース、ストリーミングまでを幅広く抱えることになり、ハリウッドの勢力図を大きく変える再編となる。
ただし、今回の和解で買収が正式に成立したわけではない。
12州との和解には今後、裁判所の承認が必要となる。大きな障害を乗り越えたパラマウントとWBDだが、正式な買収完了まではもう一段階残されている。
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