パラマウント・スカイダンスによるワーナー・ブラザース・ディスカバリー買収をめぐり、映画ファンにも関係する重要な条件が明らかになった。
統合後の会社が大規模公開する映画について、劇場公開期間を最低45日間確保し、定額制ストリーミングでの配信は劇場公開から90日以降にするというものだ。今回の和解案には、このほかにも年間の劇場公開本数など、映画館に関係する複数の条件が盛り込まれている。
なぜ巨大企業の買収で、わざわざ「映画館を守る」ためのルールが設けられるのだろうか。
「45日」と「90日」は何を意味する?
まず、「45日」と「90日」は別のルールだ。
映画は公開後、劇場公開の期間を最低45日間確保する。
その後、有料レンタルやデジタル購入などで提供される可能性はあるが、Paramount+などの定額制動画配信サービスで見放題になるのは、劇場公開から90日以降となる。
つまり、
映画館 → 有料レンタル・購入 → 定額制配信
という段階を残す仕組みだ。
新作映画が劇場公開から短期間でサブスクの見放題作品になるのを防ぎ、映画館で上映する時間を確保する狙いがある。
なぜ映画館を守る必要があるのか?
背景にあるのが、パラマウントとワーナーの巨大統合だ。
両社は映画を作り、配給するだけでなく、ストリーミング事業も展開している。
映画会社にとっては、人気映画を早く自社の配信サービスへ移せば、サブスクの魅力を高めることができる。しかし、それが進めば映画館で上映される期間が短くなり、劇場側にも影響が及ぶ可能性がある。
パラマウントとワーナーが一つになれば、その影響力はさらに大きくなる。
今回の買収をめぐっては、カリフォルニア州など12州の司法長官が、統合によって映画やテレビ作品の供給が減り、価格上昇などにつながる可能性があるとして訴訟を起こしていた。今回の和解では、映画の製作・劇場公開を一定規模で続けることが具体的な条件として盛り込まれた。
【動画】パラマウント×ワーナー統合の和解条件、その意味を米PBSが解説
PBS NewsHourは9月22日、今回の和解がハリウッドに与える影響について解説。和解によって買収実現への大きな障害が取り除かれる一方、統合による競争低下などへの懸念が完全に解消されたわけではないことも伝えている。
年間30本以上を劇場公開
映画館に関する条件は、45日・90日だけではない。
統合会社には、最初の2年間は年間30本、その後の3年間は年間32本以上の映画を劇場公開することも求められている。
最初の2年間は30本のうち20本、その後は32本のうち21本をワイド公開作品とし、毎年少なくとも4本の独立系映画も含めることになっている。
つまり、「映画を何日間上映するか」だけではなく、「映画館で上映する作品そのものを一定数出し続けること」まで求められているわけだ。
配信時代でも「まず映画館」を残す
映画館と配信の関係は、ここ数年で大きく変化してきた。
ストリーミングサービスの普及によって、劇場公開された作品を家庭で見られるようになるまでの期間は以前より短くなっている。
パラマウント自身も今回の和解以前から、最低45日の劇場公開期間を設ける方針を示していた。
今回重要なのは、それが単なる会社の方針ではなく、統合後の会社が守る条件として明文化されたことだ。和解案は裁判所の承認を経て、5年間にわたって執行可能なものとなる。
巨大な映画会社が、自社の配信サービスを優先して劇場公開を急速に縮小することがないよう、一定の歯止めをかける意味がある。
DCや『ハリー・ポッター』などにも関係
統合が完了すれば、パラマウントとワーナーが抱える多くの人気作品が同じ企業グループに入る。
ワーナーにはDCや『ハリー・ポッター』などの人気IPがあり、パラマウントも『ミッション:インポッシブル』をはじめとする映画シリーズを抱えている。
こうした大作についても、米国では今後、「まず映画館で一定期間上映し、その後サブスクへ」という流れを維持するためのルールが設けられることになる。
今回の「45日・90日ルール」は、巨大買収をめぐる企業同士の話だけではない。
ストリーミング全盛の時代に、新作映画をまず映画館で楽しむ文化をどこまで残すのか。そのためのひとつの仕組みと言えそうだ。
なお、今回の条件は米国12州との訴訟をめぐる和解案に基づくもので、裁判所の承認が必要となる。日本で同じ45日・90日の期間がそのまま適用されるわけではない。






