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スペイン映画界の鬼才が仕掛けた、壮絶な姉妹ケンカ! サイコ・スリラー『ネスト』

2015年9月1日
スペイン映画界の鬼才監督アレックス・デ・ラ・イグレシアと、その妻で女優のカロリーナ・バングが製作総指揮を務めた映画『ネスト』は、アパートの一室を舞台に繰り広げられる、姉妹の愛憎劇を描いた血まみれのゴシック・スリラーだ。

監督を務めたのは、これが長編映画監督デビューのファンフェル・アンドレスとエステバン・ロエルのコンビ。イグレシア監督の妻カロリーナが脚本にほれ込んで、今回の映画化に至ったという。映画『ビースト 獣の日』『スガラムルディの魔女』で知られるイグレシア監督の持ち味は、ブラックユーモアとハイテンションなアクション。しかし『ネスト』ではその嗜好は影を潜め、女同士の陰湿な嫉妬、狂気的愛、近親相姦などの題材が織り込まれたヘヴィーな作りとなっている。



特に注目なのが、2人暮らしのアパートの一室で美しい妹を支配下に置こうとする姉を演じた、女優のマカレナ・ゴメス。失踪中の父親の幻影に悩まされ、精神的にも疲弊した姉・モンスという役どころで、広場恐怖症となり、自宅から一歩も外に出る事が出来ない。妄信的クリスチャンでもあり、妹が外で男とイチャイチャしようものなら、カーテンを引きちぎり、血がにじむまで妹をしばき倒す暴挙に出る。

ある日、アパートに負傷した男が転がり込んでくる。その男の色気にやられたモンセは、看病という名の監禁で、男に自分の愛を一方的に伝える。男に対する姉の愛を知った妹は日頃の恨みとばかりに、男に姉の異常性を訴え、逃げる事を提案する。さらにそこに男の婚約者が現れたことから、モンセの危うい精神は音を立てて崩壊。時を同じくして、妹に対する支配的態度の真の理由が明かされると共に、血まみれの惨劇が幕を開ける。



モンセ役のゴメスは、透き通った白い肌と零れ落ちそうな大きな目が印象的な女優で、現在37歳。スチュアート・ゴードン監督のゴシック・ホラー映画『DAGON』(2001)では、海底に棲む女王役をヌードもいとわぬ熱演でインパクトを残し、今ではイグレシア監督の作品にも好んで招かれる演技派に育った。本作では、精神のバランスが崩れに崩れた姉をほぼスッピンで演じきる。モンセの狂気はのちに悲劇的境遇ゆえのものと発覚するのだが、影の落ちた皺だらけの顔にギロりと光る眼だけでも怖いものを、そこに血しぶきが加わり、ホラー度は一気に加速。その“顔力”ゆえに同情も一気に吹き飛んでしまう。その憑依的演技は当然評価され、スペインのアカデミー賞と称されるゴヤ賞では最優秀主演女優賞にノミネートされた。



ゴシック調のストーリー展開に大きな起伏はなく淡々と進む一方で、過去と現在が混同する幻覚的シーンには切なさが込められており、そこから醸し出される雰囲気ゆえに、過去との対峙という奥深いドラマを根底に読み取ることも出来る。その切なさを生み出した過去との対峙が、クライマックスでのキーとなる。物語構造の中には映画『キャリー』『ミザリー』の影響と同時に、その原作者であるスティーヴン・キングへの偏愛も感じられることから、ファンフェル・アンドレスとエステバン・ロエル監督の次回作はキング原作もの……ということもあるかもしれない。(石井隼人)

DVD『ネスト』は、10月2日より発売。

COPYRIGHT 2014 POKEEPSIE FILMS Y NADIE ES PERFECTO ENTERTAINMENT

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