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GIMME A BREAK! アメリカンTV字幕翻訳者のひとりごと[連載終了]詳細

Vol. 16. 250ドルのクッキーレシピ

2001年4月23日
ある日、友達から、アメリカから転送されてきたという、おもしろいメールのコピーを受け取りました。「ダラスにある百貨店ニーマン・マーカスのレストランで食事をしたら、おいしいクッキーが出てきたので、レシピを聞いた。すると、あとで自宅に秘伝レシピの伝授料として250ドルもの請求書が来た。悔しいので、レシピのコピーをできるだけ多くの人に回してほしい」というメッセージに、チョコチップ・クッキーのレシピが添付してあるものです。

しかし、これを読んだ私は、「むむむ? どっかで聞いた話だけど、どこだっけ?」と首をかしげてしまいました。必死に記憶の糸をたぐりよせたのですが、クッキーの話はどうしても思い出せません。でも、「高額のレシピ」という言葉が、どうしてもひっかかるのです。

そして…ふと思い出したのが、10年以上前、ダンナに借りて読んだ「消えたヒッチハイカー」というアメリカの都市伝説(フォークロア)の本でした。

都市伝説というのは、「ファーストフードのハンバーガーはネコの肉でできてるらしい」とか、「東京の下水道に、ワニが棲んでるらしい」とか、都市に流れる根も葉もない(と思われる)ウワサ話のことです。古いところでは、「わたし、き~れ~い~?」の「口裂け女」の話なんかもありましたね。(この話、今の若い人は、知らないんでしょうねえ。「ポマードが嫌い」ってのは、いったい何だったんでしょう?(^^;;))

アメリカにもこの手の話はたくさん存在しています。上記の「消えるヒッチハイカー(ジャン・ハロルド・ブルヴァン著、新宿書房刊)」は、全米の都市伝説を収集して研究を続けている大学教授が書いた本です。

たしか、似た話が載ってたはず…と思って、探してみると…ありました、ありました! 「ウォルドローフ・アストリア・ホテルのレッド・ベルベット・ケーキ」のレシピについて、そっくりな話を紹介するチェーンメールがあったそうです。こちらもやはり、ホテルにレシピを聞いて、高額の料金を請求され、腹いせにコピーを配るという内容です。

この本によれば、類似の話は1950年代から出回っていて、さまざまなバリエーションが存在し、数十年前から全米各地の新聞などにも取り上げられているそうです。もちろん、ウォルドローフ・アストリア・ホテルもニーマン・マーカスも、噂話を全面的に否定しています。ニーマン・マーカスでは、レストランでクッキーを出したことすらないそうです。

これが本当なら、50年くらい地球上をさまよっているチェーンメールが、めぐりめぐって私のところへ届いたことになりますね。そう考えると、なんだか、感動すら覚えてしまします。最初は手書きで、せっせと手紙を書いて出していたのだと思いますが、Eメールの時代になって、転送も簡単になり、膨大な数のコピーが世界中に出回っていると思われます。ネットで検索してみると、「もう300通以上、同じメールを受け取った! これ以上、俺にクッキーのレシピをよこすな!」という悲鳴のような抗議文を載せているサイトもありました。

まあ、ただの噂話と片付けてしまえば、それまでなんですが、これも立派な文化(?)です。都市伝説を題材としたホラー映画などもありますので、やはり、字幕翻訳者としては、できるだけ押さえておきたい情報です。私は、こういうサブカルチャーを甘く見てはいけないと考え、英語文化に関する知識を蓄積するため、英語のチェーンメールやダイレクトメールなどには、いつもこまめに目を通すようにしています。(…なーんて、ウソです! ホントは、おもしろがって読んでるだけです…。(^^;;))

ちなみに、この話にはオチがあって、クッキーをレシピどおりに焼いてみると、本当においしいんだそうです。クッキーのレシピを知りたい人は、サーチエンジンで、「250ドル」「クッキー」「レシピ」の3つのキーワードを入れて、検索してみてください(日本語バージョンもありますので、日本語でもOK)。でも、元はチェーンメールですから、くれぐれも、友達には転送しないでくださいね! 

どうしても誰かにこの話をしたくなった人は、このメルマガのページのURLを教えてあげてください。このメルマガのことを、明日までに5人の人に教えると、きっとあなたは幸福になれる…ような気が私はするのですが、保証はまったくできません。あしからず。(^^;;)

それではまた!(^o^)丿