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GIMME A BREAK! アメリカンTV字幕翻訳者のひとりごと[連載終了]詳細

Vol. 10. ホラーな年末年始

2001年1月24日
みなさん、ホラー映画はお好きですか? 私は全然ダメなんです。何がダメって、「血」が写るシーンとか、「痛そう」なシーンが耐えられません。ごく普通の映画を見ていても、注射のシーンがあっただけで、ひええ~~!と、目を覆ってしまうような軟弱者なのです。字幕翻訳のお仕事を受けるときも、「なるべく血の出ない作品を…(^^;;)」などと小声でお願いしているのですが、そこは、駆け出し翻訳者の悲しいところ。そう作品をえり好みするような贅沢はできません。ですから、たまには、血みどろシーンの入っている番組なども回ってきます。そういうときには覚悟を決め、勇気をふりしぼって翻訳に挑みます。しかし、この年末年始ときたら…。もう、悲鳴を上げたくなるような作品の連続でした。(T_T)

まず、年末にいただいたお仕事が、映画「セブン」のDVDの「特典映像」の字幕翻訳。(私は、CSの番組のほかに、DVDの関連のお仕事もしています。)特典映像とは、映画のメイキング映像や、未公開のシーンなどがDVDのおまけとして入っているものです。あのブラピの「セブン」ですが、公開当時から「怖い」という評判でしたから、当然ながら劇場では見ていません。(^^;;) でも、今回、お仕事をいただいたので、おっかなびっくりビデオを見てみました。思ったよりグロテスクなシーンが少なくて、ホッ。しかーし! 安堵するのは早かった…。「未公開シーン」には、描写が残酷すぎるのでカットされたシーンなどが入っていたり、映画では少ししか写っていなかった、本物(!)の死体写真などが、延々と写っていたのです。あああ、怖いよお~~~!(ToT) と、泣きながら翻訳を仕上げました。

それでも、なんとか「セブン」を終わらせて、ほっと一息。でも、その次に来たお仕事が…ディスカバリーチャンネルの「トラウマ:緊急救命室での生死」という番組。これは、ホントの「ER」(緊急救命室)のドキュメンタリーです。この番組は、番組ガイドで内容を読んだだけで戦慄していたので、「次は“トラウマ”という作品です」とクライアントさんに告げられたときには、「…来てしまったか…」と、頭を抱えてしまいました。(ちなみに、「トラウマ(trauma)」という言葉は「外傷」の意味。「幼児体験がトラウマになった」などとという表現の場合は、「精神的外傷」の意味です。)

ドラマのERと違って、こちらはドキュメンタリーですから、もちろん、患者さんも、血しぶきも、なまなましい傷口も、すべて本物!! 警官に顔を撃たれて上アゴが吹っ飛んだおっさんだの、芝刈り機にうっかり足をはさんじゃった男の子だの、交通事故で腸が押しつぶされちゃった人の緊急手術のシーンだの(しかも手術中の内臓のアップあり)…とにかく、血のオンパレード!! まさにスプラッター!! あああ、書いているだけで、怖くなって涙が出そうです。ビデオを見るときには、テレビの輝度を低くし、「赤」のコントラストを目一杯さげて見ました。(でも、そうすると、赤がどす黒くなって、これがまた怖いのなんのって…。)

ホントに私の“精神的外傷”になりそうな「トラウマ」を2本連続で仕上げた後、次に来たお仕事が、「サイエンスフロンティア/サイケデリックサイエンス」という番組。こちらは、なんと「麻薬」ネタ。といっても、こちらもディスカバリーチャンネルの番組なので、いたってマジメな内容です。しかし、またしても注射針がぶすりと腕に刺さるシーンが…。ああ、なぜこんなに、私の苦手な番組ばかり連続するのでしょう。世間のみなさまが、クリスマスだのお正月だのと楽しくお祝いをしている間、私はずっと血みどろの画面や、注射器の画像を見つめ続けていたのでした。(T_T)

こんな番組が続いたので、調べ物の内容も、注射針の種類とか麻酔薬の名前とかドラッグの名前とか、そんなのばっかり。年末年始に私がアクセスしたホームページのログを調べられたら、ただのアヤシイ人です。(誰も、調べる人はいないと思いますけどね…。)

「一年の計は元旦にあり」といいますよね。今年のお仕事が、こんなホラーな作品ばっかり続く年になっちゃったらどうしよう、と暗くなっている私です。どうか、今後は、楽しくってウキウキするような作品ばっかりが続きますように!!