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GIMME A BREAK! アメリカンTV字幕翻訳者のひとりごと[連載終了]詳細

Vol. 9. 21世紀は「音声自動翻訳装置」の時代!?

2001年1月8日
あけましておめでとうございます!

年末年始はいかがでしたか? 私は、仕事ざんまいでした。フリーランスになってから、ほぼ毎年こんな状態です。(T_T) とにかくもー、パソコンの前に座りっぱなしなので、自宅にいながら「エコノミークラス症候群」になっちゃうかと思いましたよ。ああ、運動しなくっちゃ!(^^;;)

ところで、読者のみなさまがたのなかで、朝日新聞を取っておられる方、元旦の第一面の「日本の予感」という記事を読まれましたか? 私はこれを読んで、けっこう驚いてしまいました。最近「音声自動翻訳装置」が、めざましい発達を遂げているそうです。

たとえば「紅葉がきれいですね。何という木ですか」なんて日本語で質問をすると、それが瞬時(なんと、1秒以下!)に英語に翻訳されて相手に伝られ、「赤いのはカエデ。もうすぐ葉を落しますよ」なんていう、ごく自然な回答が、瞬時に英語から日本語に翻訳されて、音声になって出てくるんだそうです。こりゃすごい!

その上、「海外旅行で使える日英の音声翻訳ソフト」も「3、4年後には商品化される見通し」なんですって! す、すごすぎる! これ、ホントに実現するんでしょうか? 実現したら、いったいいくらで売り出すんでしょうね?

そのうち、テレビにもそういう装置がついちゃって、海外ドラマも機械翻訳の音声で見るようになったりすることも考えられますね。さらに技術が進むと、元の俳優の声に近い音声で翻訳文を読み上げるようになるのかもしれません。そうなったら、やっぱり翻訳者はいらなくなっちゃうなあ~~。前回のエッセイで、「字幕翻訳が機械化されるのは、50年たっても無理(かも)」なんて豪語(?)しちゃった私の立場はどうなるのでしょう??(^^;;)

でも、記事をよく見たら…この翻訳装置、現在のところ、語彙数はやっと「1万3千」だそうです。な~んだ。(ホッ。)1万3千語じゃ、全然足りませんよね。たとえば、ネットで公開されている大辞林第二版の語彙数は「23万3千語」だそうです。さらに辞書には載らない流行語などを加えたら、もっと膨大な数になってしまいます。スラングのアメリカの番組を自然な日本語で翻訳できるようになるまでには、いったい、どのくらいの語彙数が必要になることやら…。

音声認識のソフトウェアも、一般向けに売っているレベルのものは、まだまだ使い勝手が悪そうです。少し前にうちのダンナさんが市販のソフトウェアを(面白半分に)試してみていましたが、本当に大変そうでした。文字を入力するのは、はきはきと大きな声でしゃべり、文節で区切って発音しなければなりません。

たとえば、「私は今日、映画を見に行きました。」という文を打つには、画面に向かって大きな声で「わたしはっ、きょうっ、てんっ、えいがをっ、みにっ、いきましたっ、まるっ!」と叫びます。さらに、漢字変換の候補を選ぶには、「へんかんっ!(と言うと、漢字の候補一覧が表示される) したっ、したっ、したっ、したっ!けっていっ!(これは、漢字の一覧で、上から4番目の漢字を選んでいるところ)」と叫ばなければならないのです。短い文を入力するだけで、へとへとになったと言っていました。

ちなみに、今から100年前の報知新聞(いまの毎日新聞の前身)のお正月の記事では、22項目に渡って「21世紀に実現できること」を予測した記事があったそうです。この中に「無線電話が発達する」とか「7日間で世界一周が可能となる」などという項目に混じって、「獣語の研究が発達する」という項目があります。「獣語の研究進歩して、小学校に獣語科あり。人と犬猫猿は自由に対話することができる」というのです。残念ながら、これは実現しませんでしたね~。もし実現していたら「犬和・和犬辞典」なんて辞書が発行されていたんでしょうか? 「猫語翻訳者・馬語会話も多少可」なんて翻訳者がいたりして。なんだか、想像すると楽しいです。(^_^)

それでは、本年もよろしくお願いいたします!(^o^)丿