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Vol. 6. 字幕翻訳は数字との戦い!?

2000年11月28日
私は小さいときから算数が苦手でした。おおざっぱで、細かいことはあんまり気にしない性格だからかもしれません。「数字アレルギー」と言ってもいいくらい。自慢じゃありませんが、中学と高校では赤点もいっぱい取りました。(^^;;) 高校卒業後は短大の英文科に進み、すっかり数字とも縁が切れ、ほっと安心していたのですが……30過ぎでCS放送の字幕翻訳の仕事をはじめてから、またしても数字に苦しめられる毎日なのです。

翻訳の仕事なのに、なんで数字が関係あるの?と思う方もいらっしゃると思いますが・・・字幕翻訳って、字数の計算が大変なのです。私は、翻訳だけでなく、字幕が出るタイミングを決める「スポッティング」という作業もひっくるめてお仕事をいただいているので、毎日が、まさに数字との戦いです。昔は、このスポッティングという作業は、その道のプロの方が担当されていたのですが、最近は、翻訳者がスポッティング作業まで依頼されるケースが、だんだん増えています。特に(私のような)新人翻訳者の場合は、スポッティングまでできる人が歓迎されるようです。

字幕翻訳の手順は、まず「ハコ書き」からスタート。これは、ビデオを見ながら、字幕を出すタイミングを決める作業です。字幕は、画面に表示できる字数の関係上、1回につき6秒程度しか出せませんので、セリフを6秒以下に切る作業が必要です。英文のスクリプトにスラッシュマーク(/)を入れ、順番に番号を振っていきます。スラッシュで区切られた単位を「ハコ」といい、1つのハコが1枚の字幕になります。

そして次が「スポッティング」。細かい説明は省きますが、要は、業務用のビデオデッキを使い、字幕の始まる位置と終わる位置を、30分の1秒単位で調べ、パソコン入力する作業です。60分の番組なら、字幕の数はだいたい500程度。1つの字幕につき、開始位置と終了位置の両方を確認しますから、ハコが500個なら、ぜんぶで1000回も数字を入力することになります。ビデオの音声の位置を探すには、「ジョグシャトル」を使い、テープをコマ単位でぐりぐりと進めたり戻したり…という作業を繰り返します。もー、これが、やたらと細かくって、時間のかかる作業なんですよー。(^^;;)

スポッティングができたら、次はセリフの長さの計算。「ハコ」の終わりの点から始まりの点を引き算して、1枚の字幕の長さを出します。

さらに、そのハコの長さをもとに、翻訳に使える字数を計算します。字幕の字数は「1秒4文字」と決まってるので、セリフの秒数に4を掛けます。たとえば、ある俳優が、「Hello, how are you?」というセリフを1.5秒かけてしゃべっていたとすれば、そのセリフは1.5×4=6文字で訳すことになります。

以上の入力と計算の作業が終わったら……やっと、晴れて翻訳に取りかかれるのです! 

ほらね~、数字との戦いでしょう? 最初のうちは、「わたしは翻訳の仕事をしてるのに、なんでこんなに数字ばっか見てなきゃいけないんだあ~~~(T_T)」と、がくぜんとしちゃいました。「おおざっぱな性格」で「数字アレルギー」の私なのにー。でも……最近では、いいかげん慣れました。単純作業なので、翻訳に詰まったとき、息抜きとしてスポッティングの作業をしちゃうくらい。(^^;;) だけど、あいかわらず、暗算は苦手なので、単純計算はエクセルにお任せして、自動的に字数を出せるようにしています。

さあ、今日も、セリフの長さをはかってはかってはかりまくるぞー。(^o^)