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GIMME A BREAK! アメリカンTV字幕翻訳者のひとりごと[連載終了]詳細

Vol. 4. "ウラ取り"地獄

2000年11月1日
こんにちは! SIGGYです。(^o^)

なんだか、一気に寒くなってきちゃいましたね。変な風邪が流行っているよう ですが、お元気でお過ごしでしょうか? 今回は、翻訳作業につきものの「ウラ取り」についてお話ししたいと思います。

みなさん、「ウラ取り」という言葉を知っていますか? 最近、テレビのバラ エティ番組などでもこの言葉を使っていたので、すでに一般的に定着しつつあ る言葉かもしれませんが、念のためご説明すると・・・「ウラ取リ」とは、番組の内容に関わる事実の確認作業のこと。つまり、平たく言えば、「調べ物」 のことなんです。

翻訳って、とにかく調べ物に始まり、調べ物に終わる仕事です。私は、レギュ ラーで担当しているフォックスチャンネルの「キング・オブ・ザ・ヒル」とい うアニメのほかにも、ドキュメンタリー専門のディスカバリー・チャンネルな どの番組や字幕などを月に何本か担当しているのですが、特にこのドキュメンタリー番組のための調べ物が、も~う大変!

たとえば、ある日は「ニュートリノ」について調べていたかと思えば、次の日 は「プロパンガスの成分」と「ケニヤに住むヘビの名前」を調べなければなり ません。そのほかにも「スイス・アルプスで50年前に遭難した登山者の名前」 「死海文書」「海底の地層探査の方法」「ロッククライミングの技術」「ジョ ンベネ・ラムジーちゃんの弁護士の名前」・・・などなどなど、とにかく毎日 毎日、ありとあらゆるジャンルの調べものが待っています。

翻訳の際には、制作会社から番組のスクリプト(英語台本)を渡されますが、 その内容が正確であるという保証はどこにもありません。(実際、これが、よく間違っているんです。)そのため、翻訳者は書籍などで事実を確認した上で 、翻訳を行なうことが求められています。充分な調べ物を行なわずに訳した場合、固有名詞や技術用語などを間違って訳してしまうこともあるので、要注意 です。

たとえば、私自身、あやうくこんな単純ミスをしてしまいそうになったことが あります。アメリカ人がイタリアを旅行する番組で、こんなセリフがありまし た。「ここはFlorenceです」。これを私は、うっかり「ここはフローレンスで す」とやってしまったのです。そのまま提出したら、大目玉を食らってしまう ところでした。(^^;;) ちょっと英和辞典を引けば分かりますが、英語の「フローレンス」とは、イタリアの「フィレンツェ」のことなのです。このときは 、提出前に気づいて、慌てて「フィレンツェ」と修正し、事なきを得ました。 こんな非常に単純なセリフにも、とっても怖~い落とし穴がひそんでいるのです。(T_T)

字幕翻訳の仕事の場合、納期は一週間程度なので、調べ物もスピード勝負。最近は、インターネットが調べ物に使えるようになってきたので、本当に便利になりましたが、それでもやっぱり、一番頼りになるのは書籍です。自宅にも、 長い時間をかけてコツコツと買い貯めた辞典や資料がかなりありますが、やは り専門用語などは、図書館などで確認するしかありません。毎週のように図書館通いをしています。

私は練馬の住民なのですが、都内の図書館は、近隣の区民の利用や貸出を認め ているところが多いので、いろいろな区の図書館の貸出カードを5枚くらい持っています。資料が見つからないときには、複数の図書館をハシゴすることも 。行けば必ず貸出制限数いっぱい(5冊~10冊程度)まで借りてしまうので、 持ち運びも大変。でっかいリュックと、そのリュックに入りきらないような大 きな本を借りる場合に使う折り畳み式お買い物バッグは必携品です。

そんな苦労をして、たくさん本を借りてきても、まだ分からないことは・・・ 夜な夜なインターネットで情報の検索をして、あちこちの掲示板で質問をして みたり、または各国の大使館に電話をかけて質問したり、遠い場所にある専門 図書館まで行ってみたり、大型書店や古本屋で立ち読みしたり・・・。時間の 許す限り、あちこちかけずり回り、あらゆる手段を尽くして調べ物をします。

で、本日の結論。

翻訳って・・・ホントに、体力勝負の仕事です。 (^_^;;)

さあ、今日も気合いを入れて、がんばるぞー!