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GIMME A BREAK! アメリカンTV字幕翻訳者のひとりごと[連載終了]詳細

Vol. 33.「ハンサム」か「二枚目」か「イケメン」か?

2002年8月7日
最近、すごくショックを受けたことがありました。まだまだ若いつもりだった私ですが(って言っても、今年でもう37歳ですけどね)、「ああ、私もオバさんになったんだなあ」とつくづく感じた事件でした。

なーんて書くと、ものすごい大事件のような印象を受けるかもしれませんが…。たいしたことではありません。実は先日、私は無意識に「死語」を使ってしまったのでした。

その死語とは「ハンサム」。「あの俳優はハンサムよね」なんていう表現は、私は今でも普通に使います。字幕でも使っていました。しかし先日、発見してしまったのです…この「ハンサム」という言葉がインターネットで「死語」のリストに載っていることを!! それから私は、会う人ごとに「ねえ、ハンサムっていう言葉、使う?」と尋ねて回りました。すると、20代の人は口をそろえて「意味はわかるけど、使ったことはないなあ」答えるんです。

これには本当にショックでした。今までずっと、字幕では流行語や死語を使わないように(私なりに)細心の注意を払っていたし、そういう「死にかけ」の言葉に関しても(それなりに)敏感なつもりだったのに…。もちろん、「ナウい」とか「チョベリバ」なんて言葉が完全な死語なのは百も承知の上ですよ。で、でも、「ハンサム」なんて…私の感覚では、現役バリバリの、フツーの言葉でした。(^^;;)

「じゃあ、かっこいい人のことをなんて言うの?」と若い人たちに聞くと、いまは「いい男」か「二枚目」が普通なんだそうで。「二枚目」なんて、もっと古臭い響きなのになあ…。「イケメン」なんて言葉もありますが、これも死にかけてますね。

日本語は非常に流行語の多い言葉で、その多くが半年ほどのサイクルで死滅していくそうです。一方、アメリカも「俗語が多い」国、ということになっていますが、流行語の寿命は日本よりずっと長いとか。一時すたれかけた「cool」なんて古い俗語も、最近はすっかり復活して、若者が普通に使っています。

字幕翻訳では、流行語を使うことはご法度です。古いレンタルビデオを見ていたら「ナウい」なんて字幕が出てきて、雰囲気ぶち壊しでガッカリしちゃった、なんていう経験はありませんか? 長期間保存され、繰り返し再生されるビデオやDVDはもちろんのこと、テレビ番組の場合も再放送があるので気が抜けません。数年先の鑑賞を見越して「死にそうな言葉」を極力使わないように気をつけています。(実際、CS放送では私がデビューしたてのころに訳した番組がいまでも再放送で流れていて、いろんな意味で冷や汗ものです。)

それにしても、こういう流行語をチェックするとき、ネットって本当に便利ですね。ネット上には「死語リスト」がたくさんあるので、アヤシイ言葉を確認できます。オバサンになったころにネットという存在ができて、ホントに助かったなあ、と思う今日このごろです。

ところで、この「ハンサム」という言葉、英語では女性にも使われる言葉だということをご存知でしたか? いろいろな辞書を見ると、「a handsome woman」は、「美しい(きりっとした目鼻立ちの)女性」「大がらで魅力的な、堂々とした女性」「りりしい女性」などの訳があります。映画などを見ていると、スーツを着たバリバリのキャリア・ウーマンなどに使う表現のようです。私もいつかさりげなく使ってみたいなあ、とひそかに思っていた言葉の一つだったのですが、今回、このエッセイを書くために辞書を再確認したところ、重要な記述を発見しました。小学館の「ランダムハウス英語辞典」によると「中年以後の女性の美しさにhandsomeを用いることがある」と書かれているではありませんか! 若い女性に使うと、むっとされちゃうかもしれない表現だったんですね。ああ、確認しといてよかった。

それではまた!