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Vol.35 魅惑的な南部訛り

2002年10月16日
「サザン・ドロール」という言葉を知っていますか? 英語で書くと「Southern drawl」で、Southernはご存知の通り「南の」という意味。そしてdrawlは、辞書を引くと「ものうげに言う」「母音を引き伸ばして言う」「ゆっくりとした話しぶり」などの訳が載っています。実は、これはアメリカ南部に住む人特有の英語の訛りを指す表現。ちょっと差別的なニュアンスもありますので、使用するときは要注意ですが、特徴を捉えたおもしろい言葉なので覚えておいてください。実は、私はこの南部訛りがけっこう好きなんです。上記の訳にもあったとおり、母音を引っ張り、ものうげに、鼻にかかったような感じで柔らかく発音します。

たとえば「police」は「ポウリ-ス」、「Dance」は「デエアンス」と発音。(はい、みなさんもご一緒に、ものうげな感じで言ってみましょう!)「I」は「アイ」の「イ」が非常に弱くて「アァ」という感じ。「I suppose so」は「アイサポーズソー」ではなくて「アァスポーウソウ」てな感じです。そして「can」の「a」は「エ」に近い感じに音が潰れて「キェイン」、「eggs」は「エィグズ」という風に聞こえます。また「L」の発音が弱く「cold」は「コゥド」、地名「Albany」は「オウバニー」。fやtの音をにごり気味にして「fifty cents」を「フィディセンツ」という人もいます。さらに、「みなさん」という意味で「y’all」(「you all」の略で、ヨールと発音)をやたらとちりばめるのも特徴です。「Good evening, y’all!」というふうに、最後につけるケースが多いようです。とにかく、全体的な印象としては、のんびりとして優しい発音。とくにアフリカ系アメリカ人のおじいちゃんなんかが話してくれるとすごくいい感じ!そして若い女性の南部訛りもなかなかセクシーです。

去年公開された「オー・ブラザー」は、そんな南部訛りの英語にどっぷり漬かれるステキな映画でした。「ER」のロス先生ことジョージ・クルーニーも出演していましたね。彼はやたらと髪にポマードを塗りたくるナルシストな男の役で、どこへ行っても「ポマード! ポマードはどこだ!」と連呼する姿に爆笑してしまいました。また、私が翻訳を担当しているFOXチャンネルのアニメ番組「キング・オブ・ザ・ヒル」はテキサスを舞台とした作品。主人公ハンクの上司で女好きオヤジのバック・ストリックラド社長、ハンクの父親である頑固な退役軍人のコットンじいちゃん、隣人の浮気妻ナンシーはだいぶ強いアクセントの持ち主です。

南部訛りを特徴としている有名人で、すぐに頭に思い浮かぶのは大御所カントリー歌手で映画の出演作も多いドリー・パートン、そしてカーター元大統領。カーターさんの英語はアメリカ人でもだいぶ聞き取りづらかったそうです。日本の同時通訳者の草分け的存在である村松増美氏のエッセイによれば、カーターが大統領に立候補したとき、当時の現役大統領フォードとテレビ討論会を開いたのですが、ときどきフォード大統領がカーターの言葉を聞き取れず、困った表情を見せていたとか。やはり南部訛りはあなどれません! 翻訳者としては、ぜひ現地取材を行って、本物の南部訛りを実際に聞いてみなくては!!

…ということで、突然不安を感じた私は、南部へ緊急取材旅行を実施することにしました。旅費はもちろん「経費」として計上します。まったく、この忙しいときに取材に行かなくちゃならないなんて、うんざりです。



なーんていうのは、もちろん真っ赤っ赤~な嘘です。本当は、半年前から心待ちにしていたアメリカ南部への観光旅行に出発します。なんと私は、いまテネシー州メンフィスへ向かう飛行機の中でこれを書いております。字幕翻訳のお仕事は非常にストレスがたまる(!)ので、私は数年前からゴスペル・コーラス教室に通って発散しているのですが、そのグループで音楽三昧のツアーを組み、南部に乗り込むことになりました。ツアー名もずばり「ゴスペルのルーツを訪ねる旅」! 映画「ブルース・ブラザーズ」に出てくるようなバリバリのゴスペル教会で本場のゴスペル音楽を堪能し、B・B・キング経営のバーでブルースに浸ったあと、ついでにニューオーリンズへ移動し、ジャズも楽しんできます。

アメリカ南部に関連する表現で、もうひとつ有名なのは「サザン・ホスピタリティ」という南部の人々の気質を表した言葉。人情に厚く、旅人を厚くもてなすことで有名なんだそうです。ああ、すっごく楽しみ! もうワクワクです。今年はGWも夏休みも返上で働いていたので、たっぷり遊んでこようと思っています。また去年のNY旅行みたいに、読者のみなさんへのお土産も買ってきますね。それでは行ってきまーす!(^O^)/