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GIMME A BREAK! アメリカンTV字幕翻訳者のひとりごと[連載終了]詳細

Vol. 26. 翻訳者だって(たまには)褒められたい!

2002年2月12日
みなさん、風邪が流行ってますが、お元気でお過ごしですか? 私はしばらくヨレヨレでした…。(T_T) 先日、仕事が重なって睡眠不足が続いたときに、久しぶりに外出したら、いきなり強力な風邪ウィルスに感染! いやー、今年のウィルスはホントに強力ですよ~~。翌朝から高熱が出て、体中の関節が痛み、意識はモーロー。しかし、それでも仕事を休めないのがフリーのつらいところ…。なんとかパソコンの前に座り、30分仕事しては、ベッドに倒れこんで小休止、というペースで仕事をしていました。こういうときって、フリーランスの孤独感をひしひしと感じます。倒れても、誰も代わりにやってくれる人なんかいません。一度信用をなくしたらオシマイなので、苦しくてもがんばってやるしかないのです。

また、一生懸命仕事をしても、なかなか反応がもらえないのがフリーの寂しいところ。映像翻訳の仕事は、どこも厳しいスケジュールで仕事をこなしているので、エージェントさんもディレクターさんも大忙しなのです。翻訳者にいちいち感想を述べているヒマもないので、翻訳を納品した後も、「よかった」とも「悪かった」とも、何もお返事をいただけないのが普通。最初のころは不安になって、「あああ、もうダメだ、きっと品質が悪かったんだ、もう仕事なんかこないんだろうなあ…」なんて落ち込んでましたが、しばらくするとまた仕事の依頼の電話が掛かってきました。同業者の友達に聞いてみると、やはり同じような状況とのこと。いまでは、すっかり慣れてしまい、納品してすぐ電話が来るとびっくりして、「あらっ!? 何か問題ありましたか!?」なんて、つい言っちゃうくらいです。

それでも…やっぱり、翻訳者も人の子。たまにはちょっと反応が欲しくなります。そう、たま~~には、ちょっぴりでいいから、褒められてみたいなー、なんてひそかに思っていたりするのです。実は、私がお仕事をさせていただいている制作会社の担当者さんの中に、1人だけ、よかったときに「前回の翻訳、とても作品の雰囲気に合っててよかったですよ」「○○の回の訳がよかったです」等、メールで感想をくださる方がいるんですが、そういうたった一言の褒め言葉でも、翻訳者は勇気百倍! メールを読みながら、ひとり頬を赤らめて「やった! 次もがんばるぞー!(^○^)」とウキウキしてしまうのでした。

そしてもう1つ、私が心の支えにしているのが、この仕事を始めて間もないころ、父親が言ってくれたひとこと。実は私の父親は、家族の中で一番英語がデキる人な のですが、私が字幕を担当した番組のテープを送ると、じっくりと翻訳をチェックしてくれて、電話で「驚いたよ、わかりやすくていい字幕だった。立派なプロだね」と褒めてくれたのです。普段、お世辞などはほとんど言わない父親だけに、そんなことを言われた私のほうがびっくりしてしまいました。いやあ、親に褒められるってのはウレシイものですね。もちろん、うちの父親は、英語ができると言っても、翻訳のプロでもなんでもないし、娘の仕事ということで、だいぶひいき目に見てくれたんだと思いますが…。(^o^) 私を小さいころから映画館に連れて行き、洋画ファンにしたのは父親でしたから、私にとっては感慨深いひとことでした。

この仕事、辛いこともたくさんあるし、働いても働いても、なぜだかちっとも儲からなくて(^^;;)、「もう、こんなに苦しい思いをするんなら、やめちゃおうか な…」などと弱気になることも多いのですが、そんなときに頭に浮かぶのが、「よかったよ」と褒めてくれた父親の言葉。「めったに褒めない父親が褒めてくれたんだから、やっぱりあきらめずにがんばってみようかな」と、考え直すのでした。

…ということで、もし、万が一、制作会社の方がこのメルマガを読んでいたら…たまには、翻訳者さんを褒めてあげてくださいねー! きっと、やる気を出して、はりきるはずです。どうか、いいところを一生懸命探してあげてくださいね。

それではみなさん、くれぐれも、風邪に気をつけてお過ごしください。(^o^)丿