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GIMME A BREAK! アメリカンTV字幕翻訳者のひとりごと[連載終了]詳細

Vol. 25. 「翻訳とは何か」

2002年1月9日
みなさん、明けましておめでとうございます!
2002年が、みなさんにとって楽しいこといっぱいの年になりますように。

さて、今回は、私が去年の年末に購入した1冊の本をご紹介しましょう。タイトルは「翻訳とは何か 職業としての翻訳(山岡洋一著、日外アソシエーツ、1600円)」。これは翻訳者を目指す人なら必携の1冊です。内容は「第1章 翻訳とは何か/第2章 歴史のなかの翻訳家/第3章 翻訳の技術/第4章 翻訳の市場/第5章 翻訳者への道/第6章 職業としての翻訳」という構成で、宣伝文句は「当代一流の翻訳者が論じる本格的翻訳論」。こんな宣伝文句を聞くと、すごく難しいことばかり書いてある硬い本のように聞こえて、尻込みされる方もいると思いますが、とても読みやすい本ですのでご安心ください。ただし、文章は読みやすくても中身は辛口コメント満載。学校へ通うことで翻訳を学ぼうとする学習者への苦言も多く、翻訳学校出身の私は赤面しながら読みました。とにかく、翻訳の業界や翻訳養成学校の実態について、容赦なく暴露! …じゃなかった、懇切丁寧に説明してくださっているので、とてもタメになる本です。これから「翻訳でもやろうかな…」なんて考えている方、この本の第4章と第5章だけでも、ぜひ読んでみてください。

私は、この本で「おおっなるほどっ」とか「ええっそうなの!?」と思った箇所に付箋を付けていったのですが、見事に付箋だらけになりました。たとえば、こんな言葉が載っています。「三十歳をすぎて、学校へ行けば教えてもらえると考えているようでは、翻訳はできない」(私、30を過ぎてからも、学校に行きました…赤面)「翻訳は狭い自宅で内職としてできるほど簡単な仕事ではない」「翻訳とは語学力を生かした仕事ではない。何よりも日本語でものを書く仕事である」「辞書は引いても信じるな」「たかが辞書、信じるは馬鹿、引かぬは大馬鹿」。…ね、タメになりそうでしょう? このように断言する理由も、すべてきちんと説明されています。

著者の山岡先生は経済・経営・金融分野を中心とする出版翻訳と、産業翻訳の世界でご活躍なさっている方です。なぜ「先生」とお呼びするのかって? 実は…むかーしむかし、今を去ること約10年前、私は某翻訳学校で先生の授業を受けたことがあるのです。クラスの落ちこぼれだったので、おそらく覚えていらっしゃらないと思いますが。(^^;;) 講座の名前は「経済翻訳」。いまでこそ字幕翻訳なんてヤクザな(?)仕事をしている私ですが、そのころは「文芸翻訳や映像翻訳なんか、需要が少ないんだからダメ。実務翻訳で手堅く稼げるようにならなくちゃ」なんていう、賢明な考えを持っていました。

しかーし、やっぱり無理があったのでした。必死に(昔から嫌いだった)経済の勉強をしてがんばったのですが、クラスでの成績は散々。でも結局、それで吹っ切れて経済翻訳家への道を諦めたことが、字幕翻訳の道を目指すきっかけになったのですから、人生分からないものです。成績通知書をにぎりしめ、くやし涙をぬぐいながら(←ちょっと誇張)「ええい、こうなったらもう、(ホントは一番やりたかった)字幕のクラスでも受けちゃえ!」と、半ばヤケ気味に字幕翻訳のクラスに飛び込んだことが、いまの仕事につながりました。

著書の中での山岡先生のお言葉は本当に厳しいものばかりですが、ホントはとても柔和な感じで、面倒見のいい方なんですよ。授業中の先生の様子や、当時一緒にがんばったクラスメイトのことなど、懐かしく思い出しながら読みました。

上記の本は、日外アソシエーツのサイト
に、紹介があります。

ご興味のある方、ぜひ読んでみてくださいね。 それではまた! (^o^)丿