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GIMME A BREAK! アメリカンTV字幕翻訳者のひとりごと[連載終了]詳細

Vol. 24. SSTというシステム

2001年12月3日
先日、RESFESTという映画祭の仕事をしました。RESFESTとは、サンフランシスコ、ロンドン、日本など世界14都市で開催される「世界最大規模のデジタル映画祭」。デジタル技術を駆使した実験的な映像作品が、最新のデジタル・プロジェクションシステムで上映されます。私は去年初めてこの映画祭の仕事をいただいたのですが、今年の開催もとても楽しみにしていました。

楽しみだった理由の1つは、この映画祭では、他ではほとんど見られないような新進気鋭の映像作家の作品をたくさん見ることができるということ。「おおお! すごい! この人は将来大物になるぞ!」と思わせるようなスタイリッシュな映像があるかと思えば、「なんじゃこりゃ?(^^;;)」と、首を傾げる理解不能なヘンテコ作品あり。見たことのない映像がてんこもりです。

そして、第2の理由は、この映画祭が、自分の字幕を大画面で見られる数少ない機会であるということ。これは普段CS放送とビデオの仕事をしている私にとっては、かなりのドキドキ体験なのでした(前回のエッセイで、「ある映画祭」と言っていたのは、実はこのRESFESTのことです)。

また、この仕事では「SST」というシステムを使って作業ができることも楽しみの1つです。「SST」とは「スタジオ外完結型字幕スーパーシステム」という謳い文句のシステム。このシステムの翻訳者用のソフトを使えば、普通のWindowsパソコン上でビデオを再生しつつ、ビデオ画面に直接字を打ち込んでゆくような感覚で翻訳作業を進めることができます。以前は業務用の機械を買わなければできなかった「スポッティング」(字幕の位置を決める作業)もパソコン上でできちゃうので、これまた便利です。

今まで私たち翻訳者は、ビデオと自分の作った字幕データを交互ににらめっこしつつ、画面の中に自分の字幕が入ったところを一生けんめい想像しながら翻訳するしかありませんでした。これが意外と難しくて、放送を見たときに「あら?なんだか字幕と画面が合ってない…」とガックリすることも。ですから、自宅パソコンで字幕の“のり”具合(お化粧の“のり”みたいなもんですね)を確認しながら翻訳できるこのソフトは、ちょっと嬉しい存在です。

このシステムは、もともとアメリカで開発されたもので、日本では大手制作会社などでも現在導入を検討中だそうです。ただ、映像をCD-ROMに焼かなくてはならない手間があったり、既存のビデオデッキのジョグシャトルを使う作業に慣れている人には、パソコン上での作業がちょっとつらかったり…と、若干難点があるのですが、これからもユーザーの意見を取り入れて改良してゆくそうなので、今後に期待です。

それから、このソフト、お値段もちょっと高め…。翻訳者用の簡易版でも30万円です。字幕翻訳者の数なんてたかが知れてますから、販売する本数が少なくなるため、単価が高くなるのはあたりまえのことなんですが…それにしても、パソコンのソフトに30万円…(T_T)。貧乏翻訳者にはちょっと負担できない額です…。(今回は、日本映像翻訳アカデミーという学校の機材を借りて作業をしました。この学校を始め、いくつかの翻訳学校でSSTを使った授業が行われているということです。)

こんなソフトがご家庭用のパソコンで動くようになったのも、技術革新のおかげですよね。私も、自分の翻訳技術を革新できるように、がんばります。(^o^)丿