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テレビ業界の’ドン’に浮上したセクハラ疑惑と業界の合併吸収の波及が争点 2018年夏のTCAプレスツアー

2018年9月16日
2018年夏のTCAプレスツアーは、7月25日から8月8日まで15日間に渡り、例年の如くビバリーヒルトンで開催されました。

■2018年夏のTCAプレスツアーのスケジュール

CTAM会員局(25日~29日)
7月25日 HBO、Facebook、ナショナジオ
7月26日 A+E Networks、Lifetime、BritBox、ディスカバリー、Hallmark
7月27日 Viacom、YouTube Premium、AT&T Audience Network、Sony Crackle
7月28日 Starz、Amazon、AMC
7月29日 Netflix
7月30日 PBS
7月31日 PBS
8月1日 セット訪問
8月2日 Fox
8月3日 FX
8月4日 TCA授賞式
8月5日 CBS
8月6日 The CW/Showtime
8月7日 Disney ABC
8月8日 NBC Universal

ご覧のように、しばらく姿を見せなかったネット配信会社AmazonとNetflixが復帰したこと、特にNetflixは29日全日をプレゼンに当てた点が注目されます。カンヌ映画祭でネット配信の映画は評価の対象として認められず、鼻柱を折られた苦い経験に鑑みて、やはりオリジナルドラマにはTCAの太鼓判が不可欠と反省したのでしょうか?今回は、海外からのジャーナリストは抜きで、8番組のパネルインタビューを実施、午後5時から7時までのカクテル・パーティーでCTAM会員局の5日間に渡るプレゼンが終了しました。Facebookは、作品の発表はなく、ネット配信を統括するお偉方2人の質疑応答を、一方YouTube Premiumはオリジナル・コンテンツ・グローバル局長の質疑応答と新SFホラー「Origin」の制作発表を実施しました。キャストの中に、日本でもモデルとして有名な三辻茜が登場、初のドラマ出演ながらかなりの大役に期待できそうです。


SFホラー「Origin」のトレーラー。暗くて良く見えないが、三辻茜の活躍ぶりが日本では話題になると思われる。



ジュリア・ロバーツは、Amazon社の新ドラマ「Homecoming」のパネルインタビューに登場。2014年HBOの「ノーマル・ハート」の番促パネルインタビューの時とは、打って変わってご機嫌麗しく、嫌味や皮肉を期待していた評論家に肩透かしを食らわせた。退役軍人を巡る心理スリラーで、ロバーツはケースワーカーのハイディ・バーグマンを演じる。

しかし、8月に入ってからの地上波局の新番組発表は、5日のCBSを除いて、日に日に尻つぼみとなり、プレスツアーに長年参加して来た評論家仲間はいよいよ、プレスツアーも終わりか?と嘆く始末でした。ABCもNBCも局のお偉方は姿を現さず、ABCは今秋の新ドラマ2本(「A Million Little Things」「The Rookie」)、コメディー2本(「Single Parents」「The Kids Are Alright」)を発表し、金曜日のコメディー枠で放送されている継続番組4本の制作陣とキャスト総勢17人によるパネルインタビューで御茶を濁す始末です。それでも、夜にカクテル・パーティーが開催されただけ、個別インタビューの機会は設けられましたが、NBCと来た日には、今秋の期待作医療ドラマ「New Amsterdam」のパネルもなく、午前中に呆気なく終わってしまいました。最終日とあって、帰途についた評論家も多く、午後ユニバーサルスタジオで行われたBravo局の新作「Dirty John」のセット訪問には50人足らずの参加で、寂しい限りでした。但し、お昼はロブスターが振舞われ、デザートの手作りジェラートは猛暑続きの今夏プレスツアー最高のご馳走でした。


又々、医療ドラマ?と観たものの、主役を演じるライアン・エッゴールドに魅せられて、今秋必見の新作リストに挙げてしまったほど。2話まで観たが、心に響くお涙頂戴ドラマ間違い無し。医療界の汚い現実を暴く「The Resident」(Fox)とは正反対の理想的医療を描くのが「New Amsterdam」と言える。

ツアー最終日に実施されたBravo局のアンソロジーシリーズ「Dirty John」のパネルインタビュー。シーズン1は、オレンジカウンティで実際にあった結婚詐欺師ジョンに引っかかった中年女性デブラを描く。パネル左からプロデユーサーのジェフリー・ライナー、リチャード・サックル、シリーズクリエイターのアレクザンドラ・カニンガム、デブラ役コニー・ブリットン、ジョン役エリック・バナ。

ディズニーがFoxを買収した後に開かれた本年1月のプレスツアーでは、買収する側もされる側も、独禁法に触れないと連邦政府に正式認可されるまでに1年~1年半かかると思われるので、認可が下りるまでは「通常の業務」を続行すると発表してお茶を濁しました。宙ぶらりん状態にあったため、いずれも計画が立てられないからです。ところが、6月13日にNBCユニバーサルを2011年傘下に収めたComcast社から待った!が掛かりました。Huluの持ち株を2倍(Fox30%+NBCユニバーサル30%=60%)にして、ディズニーの30%に対抗するのが目的で、昨年12月にディズニーが提示した524億ドルを遥かに上回る650億ドルで買収提案をしました。しかし、6月20日に買収価格を713億ドルに引き上げたディズニーに軍配が上がり、業界の予想を裏目に早々と27日には連邦政府から合併の認可がおりました。合併吸収を繰り返して、規模でネット配信専門のNetflixに歯向かうしか手がないからですが、波及効果は?


ディズニーのFox買収ニュースが公表される以前から、ABCは三種の神器(「LOST」「デスパレートな妻たち」「グレイズ・アナトミー」)を持っていた頃に比べると、すっかり元気がなく、その分ヒットも出ないと言う悪循環を繰り返していた。そんな状況下、9月に入ってから5分おきに流れる番宣に視聴者が辟易しないかと心配するほどの新作「A Million Little Things」。心理分析ができる私好みの人間ドラマではあるが、自殺に抵抗を覚える人も多いのではないか?

AT&Tがタイム・ワーナー社を買収して、ワーナーメディアとなりました。ワーナー系だったプレミア・ケーブル局HBOは、AT&Tの傘下に組み入れられ、この巨大な組織の中でどのような変化を求められるのでしょうか?次々とヒットを放ち、数々のエミー賞に輝いたブティック局から、大量にドラマを産出しないと生き残れない、単なるケーブル局になってしまうのでは?と言うのが最大の懸念です。ワーナーメディア社ジョン・スタンキー社長が公の場で漏らした「HBOは局のカラーや方向を変えるのに大変な年になるだろう」のコメントが背景にありますが、7月25日のHBO制作局長ケーシー・ブロイスは、「HBOのブランドを傷付けるような大量生産は絶対にしない。これまで通り、手間暇かけて秀作のみを生み出して行く。HBOへの投資が増えるとまで聞いているのでご安心を」と言い切りました。「ゲーム・オブ・スローンズ」が間も無く終焉を迎え、「Veep」も7シーズンで完となるため、ヒット作の後釜を探していることに間違いはありません。

今夏のプレスツアーもセクハラに明け暮れたと言っても過言ではありません。プレスツアー開催中にNew Yorker誌で、すっかり暴露ものの権威になってしまったローナン・ファローがスッパ抜いたCBS会長兼CEOレスリー・ムーンベスの職権濫用やセクハラ疑惑をCBSがどう処理するかに集中しました。ムーンベスと言えば、泣く子も黙るテレビ業界のドンで、役者上がりと言うこともあって、プレゼンが大好きなショーマンとして、ドンとして20年余り君臨してきました。年寄りが観る局と他局からバカにされていたCBSを毎年視聴率1位を誇る地上波局に立て直し、株主を満足させる実力を発揮して来ました。しかし、親会社であるNational Amusements社社長シェリー・レッドストーンが傘下のCBS局とViacom社を合併させる計画に飽くまで反対していたのもムーンベスです。裁判沙汰になり、二人の一騎打ちが予想されていただけに、ムーンベス失脚を狙って、計画的にネタを提供したのではないか?と思うほどのタイミングの良さでした。又、浮上した職権濫用やセクハラ疑惑は、ニューヨークにあるCBSニュース部門で、1980年代の結構古い話と言うこともあって、8月5日のCBS制作局長ケリー・カールの質疑応答では、飽くまでも疑惑なので、弁護士事務所に依頼して、真偽のほどを調査する予定と発表。その間、ムーンベスは通常の業務を遂行すると言う、これまで浮上した職権濫用やセクハラ疑惑の中では、最も寛大な処理です。即刻、停職処分になった大物タレントが続いてきただけに、肩透かしを食らった感じですが、ムーンベスが30年以上君臨してきたには、それなりの揉み消しと裏工作に手を貸す手下が大勢いるからでしょう。

遂に、CBSにまで#MeTooや男尊女卑撤廃運動の波が押し寄せた感があるムーンベスの辞任劇。これも「然もありなん」組ではあるが、ムーンベスの失脚計画が隠密に進んでいた?と疑ってしまうタイミングの良さ。ムーンベスの現在の妻ジュリー・チェンやムーンベス派閥も続々と浄化されて行くのは気持ちが良い。企業文化自体を根底から覆す時が来たのだ。

このまま、有耶無耶になるのか?と思っていたところ、9月9日CBSからムーンベスは調査の結果を待たずに辞任したとのメールが送られて来ました。7月にローナン・ファローがスッパ抜いた6人の女性に加えて、更に6人が名乗りを挙げたため、寛大な処理はこれ以上続けられないとNational Amusements社社長シェリー・レッドストーンが判断したものと見られます。取締役会で任命した2弁護士事務所の調査の結果に基づいて、ムーンベスに非があった場合は、ムーンベスの退職金の一部とCBS局から合計20万ドルを#MeToo等に代表される職場での男尊女卑撤廃運動に寄付すると発表しました。又、この発表に対してTIME’S UPは、レッドストーンと取締役会に宛てて、CBS局の男尊女卑、職権濫用を許してきた企業文化を改めるべく、5項目に渡る提案を送っています。又、120万ドルと推定されるムーンベスの退職金全額を男尊女卑撤廃運動団体に寄付するべきだとも促しています。ムーンベスはワインスタインと同様、「同意のもとで関係を持った事は認めるが、職権濫用などしていない。言いがかりだ。それに何よりも30年以上前のことを今更蒸し返すのがおかしい」などと居直っています。