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ハリウッドなう by Meg詳細

異色ロマコメ・ミュージカル「クレイジー・エックス・ガールフレンド」最終シーズン放送開始 レベッカはアリシア(「グッドワイフ」)級の不死鳥になって飛び立てるか?

2018年10月26日
「クレイジー・エックス・ガールフレンド」シーズン4のポスターは、1940年代のピンナップガール風。「クレイジー・エックス・ガールフレンド」シーズン4のポスターは、1940年代のピンナップガール風。
(c) Terence Patrick/The CW
2015年10月、The CW局に登場した異色ロマコメ・ミュージカル「クレイジー・エックス・ガールフレンド」は、10月12日から最終シーズン(全18話)の放送を開始しました。前代未聞のオリジナル・ロマコメ・ミュージカルを創作したのは、「トリプル・スレット+α」鬼才レイチェル・ブルームと、映画「プラダを着た悪魔」の脚本家アライン・ブロッシュ・マッケンナです。番組で使われる曲は全てオリジナルで、作詞/作曲家チーム(アダム・スラセンジャー、ジャック・ドルゲン、ブルーム)が担当。2016年11月14日「『Crazy Ex-Girlfriend』シーズン2進行中。奥の深い名曲をご紹介」で名曲トップ5をご紹介しましたが、幅広いジャンルを網羅し、さり気なく、時にどぎつく心理の奥底を突いてきます。丁寧に何度も聞くと、歌詞は下手なセラピーの何十倍も役に立つ意味深な内容であることが判明します。

創作コンビ(ブルームとマッケンナ)は、シーズン毎にテーマを決めて展開して来ました。シーズン1は出世を棒に振ってまで、NYからジョシュ(ヴィンセント・ロドリゲス3世)を追いかけてきた事実を飽くまで否定するレベッカのストーカー行為を描く「否定」、シーズン2は漸く恋に一歩踏み込むことに成功したレベッカの「確信」、シーズン3は正にタイトル通り「復讐」に狂うレベッカと変遷して来ました。そして、遂に迎えた最終シーズンでは、「吹っ切れた女の飛翔」あるいは「リブート・レベッカ」「レベッカ2.0」などで総称されるレベッカの成長ぶりを描きます。

英文評はこちらをご覧下さい。

レベッカ(ブルーム)はマンハッタンの法律事務所で、出世街道をまっしぐらに走るデキる女ですが、母親が敷いたレールに乗っかっていただけで、幸せとは何か?自分は今幸せか?等、自分探しの旅に出たことがありません。そんなある日、10年前、サマーキャンプ終了と共に振られたジョシュ(ロドリゲス3世)と街でバッタリ再会します。逃がした魚の大きさに気付いたレベッカは、運命の糸に引かれるように、ジョシュの故郷カリフォルニア州ウエスト・コヴィーナに引っ越し、焼け木杭に火をつけるべく、元カレ奪還作戦を開始します。

無邪気な十代に味わった幸せを取り戻そうと、初恋のやり直しを試みるレベッカですが、赤面の至り!的言い訳を繰り返し、職場の母親替りの存在ポーラ(ドナ・リン・チャンプリン)の協力を得て、ジョシュ奪還作戦と称してストーカー行為を続けます。一時三角関係にあったグレッグ(サンティーノ・フォンタナ)が完璧な彼氏にはなり得ないという厳しい現実に直面すると、10年間の募る想いは、どんどん膨らみ、ジョシュは現実逃避の恰好の対象になってしまいます。自分の想いがやっと伝わったと確信するレベッカですが、実は恋は盲目、大いなる勘違いだったのです。ジョシュは悪い人間ではありませんが、能天気で箸にも棒にもかからない浅はかなダメ男でしかありません。一見、軽いノリのロマコメ・ミュージカルですが、自らうつ病を患ったことがあるだけに、ブルームが意図するのは、「恋愛って何だろう?自分を100%受け入れずして、人を愛せるのか?」を面白おかしく探ることです。

(c) Robert Voets/The CW

シーズン3の崖っぷちエンディングは、自称レベッカの彼氏トレントを突き落とした罪で起訴され、数え切れない悪行(違法も含めて)や迷惑を償うために、罪状を認める場面だった。シーズン4は、自ら望んで入獄したものの、いかに罪を償ったものか見当も付かず、芝居グループのリーダーの道を選ぶレベッカのムショ生活から始まる。

それが証拠に、2016年シーズン2開始前に、「Psychology Today」オンライン版のインタビューで、「若い頃(?)は『男狂い』だった」とブルームは告白しています。ブルームの「男狂い」の定義は、「妄想に取り憑かれ、感情の制御不全、片想いに自尊心が複雑に絡み付いた状態」です。「デキる女が何故そこまで妄想の犠牲になって、ダメ男にすがる屈辱に甘んじるのかを描きたかった」とも述べています。因みに「Psychology Today」は、ブルーム自らのうつ病、不安障害、恋に燃やす執念を基に制作された「女心を超現実的に分析する近年稀なる秀作」と賞賛しています。

焼け木杭に火/元カレ奪還作戦や初恋のやり直しなど、叶わぬ夢を叶えてくれる「クレイジー・エックス・ガールフレンド」。シーズン3は、結婚式当日にすっぽかされ、恥をかいたレベッカが卑怯者ジョシュに仕返しを試みる「復讐」がテーマでした。上司ナサニエル(スコット・マイケル・フォスター)がジョシュ破壊作戦に手を貸してくれにも関わらず、レイチェルの裏工作や悪行がバレて、ジョシュ以下、ポーラや友達にまで見放されてしまいます。行き場を失ったレベッカは、母ナオミ(トーヴァ・フェルドシャー)の元に身を寄せますが、これも裏目に出て、自暴自棄の極みに….。そして入院先で新たに下された診断は、境界性パーソナリティ障害(BPD = Borderline Personality Disorder)なる聞いたこともない不安障害でした。優等生レベッカは、勉強・研究すればBPDを克服できると信じて全力投球しますが、頭で理解できても、気長に実践して行く辛抱が足りません。

境界性パーソナリティ障害は、物事を白か黒かでしか判断できないため、両極端に振り回されてしまい、常に生き辛さや虚しさを感じる状態です。レベッカの問題は、心の底では親にかまって欲しい反面、こんな自分にした親を許せないと言う、白か黒かの判断しかできないことです。また、幼い頃に父親に見捨てられたため、捨てられることを何よりも恐れています。BPD兆候の中核は、捨てられることを避けるためには、なりふりかまわない努力をすること、いつも全力投球することです。信じて裏切られる対象は常に一人で、理想化し過ぎて些細なことに幻滅する両極端に走ります。夢中になって、ジョシュしか見えなくなったレベッカですが、実は大学時代にも同じ経験をしています。信頼を全力投球して、過度の期待を寄せる悪い癖があります。シーズン3の境界性パーソナリティ障害の診断で、シーズン1からのレベッカの行動に説明がつきましたが、いつもここぞと言う時に、伸びたゴムが元に戻るように、昔のレベッカに戻ってしまいます。

(c) Terence Patrick/The CW

最終シーズンは、「悟りを開いたレベッカ・リブートにまでこぎつける」とクリエイターはメールで知らせて来た。「グッドワイフ」は、良妻賢母アリシアが大空に羽ばたいた不死鳥を思わせる荘厳さで「完」を迎えたが、レベッカにも同様の「完」を期待する。

結婚にさえ漕ぎ着ければ、全てが解決する、明るい未来が待ち受けていると確信していたレベッカの誤算です。自分の問題は彼氏/夫に解決して貰おうなど、とんでもありません。彼氏/夫は、救世主ではありません。シーズン2の最後に、ジョシュが飛び込んでプロポーズする寸前に、自分が抱える問題(父親不在、母親の操縦に振り回されて、恋に現実逃避、見捨てられることが最大の恐怖など)がうっすらと見えて来て、しばらく独りで自分探しに専念した方が良いのかな?と考えたレベッカです。いつもの癖が出て、結婚と言う名の容易な道に走ってしまったのは残念ですが、それではシーズン3も4も存在し得ません。

遂に迎えたシーズン4が最終シーズンとなる訳ですが、悟りを開いたレベッカ・リブートでさえ、当然のことながら、完璧ではありません。悟りを開いたとは言え、まだまだ鍛錬が足らず、以前と同様の過ちは冒しますが、理由や原因をしっかりと自覚しています。そして、シーズン後半には、ロマコメの原点に戻るとか?全く想像がつかないのですが、マッケンナから届いたメールには、「『レベッカ2.0』は引く手数多になりますので、お楽しみに!」と書かれていました。いずれレベッカに見合う、素敵な王子様が現れることを祈っていましたが、引く手数多とは羨ましい限り!です。そんな贅沢を味わったことのない私は、これも「星に祈れば、願いが叶う!」をレベッカを通じて体験させてもらえると期待に胸を膨らませています。恋人候補が何人もいると言うのは、赤外線追跡型対空ミサイルの様に、逃した魚ジョシュに攻撃目標を絞り込み、最終的には「この人しかいない!逃してなるものか!」とジョシュを理想化して自爆したレベッカに、選択の権利が与えられると言うことです。



でも、慌てて恋に落ちるのは考えものです。しばらく、独りになって、じっくり自分と付き合ってみてはいかがですか?独りも捨てたものではありません。立っていた地面が崩れ落ちて、奈落の底に真っ逆さまに落ちて行く途中、たまたま姿を現した人ならだれかれ区別なく、しがみつきたくなるのが人情です。でも、それでは元も子もありません。また、同じことを繰り返すだけです。親からもらい受けたありがた迷惑な価値観や真の自分を見直すために、恋は障害物でしかありません。男に気を取られていると自己達成ができないからです。男優先を叩き込まれて来た女性は、独りになって自分を見つめ直し、自分を優先順位の1位に置く、新たな訓練が必要なのです。

おっかなびっくりの良妻賢母アリシア(「グッドワイフ」)が7年に渡る試練から学習し、自信に満ちた大人の女になり、独立独歩生きる第一歩を踏み出した様に、自分のことだけ考えて、自分のために生きる、筋金入りレベッカになって欲しいものです。家族を優先するために、自分を殺して生きるのは、もう御免!と浮き世のしがらみを断ち切ったアリシアは、正に大空に羽ばたいた不死鳥を思わせる荘厳さでした。数限り無い失望を味わい、酸いも甘いも噛み分けた大人になったアリシアは、21世紀を生きる女性の鑑(少なくとも私にとっては)と言えるでしょう。王子様が現れても、現れなくても、レベッカも不死鳥になって大空に羽ばたいて欲しいと思います。


女性はとかく、結婚にゴールインすることを人生最大の目標として固執して来ましたが、21世紀の社会は女性のどの側面に価値を見出すかを考え直す時ではないでしょうか?長い目で見れば、結婚50周年ともなると、ある意味の達成感はあるでしょうが、天職や任務を全うした時に味わう達成感とは別物です。今時、良妻賢母の保証シールのみを目指している女性は何人いるでしょうか?母親の敷いたレールに乗っかって、弁護士になり、ジョシュに導かれてカリフォルニアにやって来たレベッカに一言。至福を味わえる天職を探すのが先決問題かもしれませんよ?どんな結末を迎えるのか、大いに期待しています。