Vol. 12 『アニーよライフル無宿』

ダークグレーのフランネル・シャツを着て、少し背中を丸めて独特な歩き方をし、銃身を短くカットしたウインチェスターを腰を屈めながら打つ『拳銃無宿』のジョッシュ・ランドルこと、スティーブ・マックイーン。彼には、「ローハイド」のローディや「ララミー牧場」のジェス・ハーパーなどにはない独特な雰囲気が、当時の我が家のチャンネルに12の数字がない丸っこい白黒テレビから出ていたのを小学生のキモサベにも感じられた。ただの賞金稼ぎのドラマではない為、全般に漂うリアルなストーリーや、低音の声優の宮部昭夫がアフレコのせいもあるけど、やっぱりスティーブ・マックイーンがかもし出す匂いだったと思う、たぶん。

とにかく、スティーブ・マックイーンのガンさばきは速くてカッコウ良かった。当時、ハリウッドのパーティーのアトラクションで行われた早撃ち大会で、一番速かったのは何とサミー・デービス・Jr.。しかしスティーブ・マックイーンが彼を抜いて優勝したという記事を読んだ事があるから、マックイーンの早撃ちは本物だと思う。ユル・ブリンナーやナイフ投げの名人役のジェームス・コバーン同様、「荒野の7人」のスティーブ・マックイーンのガンさばきのすごさは観れば判るしね。しかし、ジェームス・コバーンと、「シャボン玉ホリデー」で牛乳石鹸のシェービングクリームのコマーシャルに出ていた犬塚弘は似てるな～と、当時キモサベは思っていた。お～っとイカン、脱線。

ウインチェスターといえばライフル、ライフルといえばもちろん、厳つい顔にやさしい眼の『ライフルマン』。ルーカス・マケインこと長身のチャック・コナーズが、オープニングで数発撃ち終わった後、あの長いライフルをピストルみたいにぐるぐる回すあのアクションはいまだに忘れられない。好きな図工の時間にライフルを段ボールで作って真似たけど、一日でグニャグニャになってしまった。しょうがないからベニヤ板で作って真似して回したら、今度はランニング姿のキモサベの脇と腕の内側がベニヤのバリで真っ赤なスリ傷とささくれが刺さり、ライフルマンの真似はあきらめた。

確か、チャック・コナーズは、俳優になる前、メジャーリーグの選手だったらしいけど怪我で俳優になったと聞いた。ジャイアント馬場も、その昔、読売ジャイアンツのピッチャーだったな。ジェームス・コバーンと犬塚弘同様、コナーズと馬場はよく似てるな～と、子供心にキモサベは思っていた。

図工と言えば、図工室の隣が保健室だった。そして保健室の先生が『アニーよ銃をとれ』の主演女優ゲイル・デイビスにそっくりだったのを思い出した。髪の毛が少し赤くて顔が何となく外人ぽくて、キモサベを含めて生徒にとても人気があった。彼女が、遠足の時にどの組に引率として加わるかというのは、遠足の前日、500円以内のおやつの買い物時の話題の一つだった。いつか、三つ編みにして、テンガロンハットを首の後ろにまわし、ベストを着てピストルを構えたポーズをしてもらいたかったな～と思いつつ、名残り惜しみながらキモサベは小学校を卒業した。

ピストルといえば、いわゆるアニーが持っているようなコルト・ピースメーカーではなく、銃身の短いS&Wのチーフス・スペシャルがキモサベのお気に入りだった。お年玉と小遣いをためてアメ横の中田商会に行って米軍放出品をかき分けモデルガンのケースの中のS&Wを買いに行ったが売り切れ。そこでお店のお兄さんがすすめるブローニング・ハイパワーを手に取った。「モデルガンの中では一番弾が入るし、オートマチックだからカッコイイよ～。」の言葉にぐらつき、オプションのウッド・グリップを付けてもらいルンルンしながらおうちに帰った。

次の日、5発撃ったところで撃鉄が折れた。泣きたくなった。次の土曜日に折れた部品を持って中田商会に行ったら、なんと、ケースの中にはS&Wが鎮座していた。横目でそれを見ながらお兄さんに撃鉄を見せて同じのをくださいと、言った。電車賃と同額の部品をポケットに入れて帰る途中、頭の中はS&Wでいっぱいだった。次の日、さんざん撃ち終わった頃また撃鉄が折れた。キモサベは叫んだ。「中田のバカヤロ～。」次の次の土曜日、弟にチーフス・スペシャルを買わせようと、モデルガンの一丁ぐらい持ってないとカッコウ悪いなどと言って、弟と、そして彼のお年玉と一緒に中田商会に向かった。

ピストルと言えば事件、事件といえば警部、警部と言えばピーポー、ピーポーの『鬼警部アイアンサイド』、次回は。
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