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Vol.19 悲喜こもごもの2006年。華やかなゴールデングローブの裏で、次々に番組の打ち切りが発表に

2006年2月3日
いきなりだけれど、 1月24日は公式に“一年で最も憂鬱な日”らしい。学者さんたちが定義したと言うのだから、きっと本当なんだろう。根拠もちゃんといくつかあって、まずはクリスマス・シーズンに使い込んだ多額のお金の請求書(アメリカでは、クレジットカードで支払った額の請求書が翌月に銀行から送られてくる)が、この時期に届くから。さらには、一年の始めに心に誓ったはずの“新年の目標/決意”が早々に破られてしまい、自己嫌悪に陥ってしまうのもこの頃だからなのだという。

という訳で、1月中旬~下旬はただでさえ気が滅入りがちな季節だというのに、テレビ関係者たちにとってはさらに心労がかさみそうなイベントが、この時期にはテンコ盛りなのだ。

まずは、ゴールデングローブというテレビ界のビッグイベントが1月中旬にはある。ノミネートされた人たちにとっては、授賞式までの数日はドキドキの毎日だろうし、授賞式後は、受賞できなかった人たちはメランコリーな日々を過ごすことになってしまう。さらには、テレビ局のお偉いさんたちにとっては、もっと深刻な問題もある。そう、数字の取れなかった番組たちの清算をつけなければならないのだ。そして……この“一年で最も憂鬱な時期”を最も陰鬱な気持ちで過ごしたテレビ関係者は、間違いなくNBCの社長さんだろう。

【ロングランドラマも次々と打ち切り……。NBCの明日はどっちだ!?】
“全米4大ネットワーク”(ABC、CBS、NBC、FOX)の中で一番ジリ貧なのは、満場一致でNBCだ。それはNBCの社長自身も「視聴率が厳しいことは隠すまでもない」と、あっけらかんと認めてしまっているくらい。毎週発表される視聴者数ランキングでも、トップ20にNBCの番組がひとつも入らないことが珍しくないという按配なので、確かに「隠すまでもない」のだけれど……。

そしてこの1月、NBCはいくつかのロングランドラマの終了を発表した。まずは、日本でも根強い人気を誇っていた『ふたりは友達?ウィル&グレイス』。同性愛といったナーバスな主題をコミカルに描ききった長寿ドラマだが、今シーズンをもって8年の歴史に終止符を打つことになった。昨年末から今年にかけ、映画界では『BROKEBACK MOUNTEN』や『TranceAmerica』など、同姓愛や制転換をテーマにした作品が次々に大ヒットし「空前絶後のゲイ作品当たり年」などと言われていただけに、同時期に『ウィル&グレイス』が打ち切りになったのは、なんとも皮肉な話だ。

さらには、ホワイトハウスを舞台にしたドラマ『ザ・ホワイトハウス』(原題"The West Wing")も、7年の歴史に幕を下ろすことに。今シーズンは、ABCが女性大統領を主人公に据えたドラマ『Commander in Chief』をリリースし、これがそれなりに好評を博している(主演のジーナ・デイヴィスはゴールデングローブで主演女優賞を受賞)だけに、まるで玉突きで押し出されたかのように『ザ・ホワイトハウス』が終焉を迎えるのは、これまたなんとも皮肉。

【まだまだ終わらぬNBCの悲劇! まさか……あのドラマまで!!】
そんなこんなで次々にドラマの打ち切りを表明しているNBCだが、ファンに最大級の衝撃を与えたのは、やはりこの発表だろう。そう、『フレンズ』のスピンオフドラマ『ジョーイ』が、「今後の方向性等を審議するため、当分のあいだ放送を見送る」という処分になったというのだ。NBCサイドは「2月は冬季オリンピックの放送もあり番組スケジュールがイレギュラーになるため、見直す時期としてはベストであり、あくまで“一時的”な処置」と主張しているが、現時点で放送再開の目処は立っていないとのこと。これって、実際には打ち切りになった漫画の最終回に「第一部・完」って書いてあるのと同じことなんじゃ……。

いずれにしても、’90年代のNBC黄金時代の象徴であった『フレンズ』の威光を以ってしてももはやNBCを支えられないという事実は、けっこうショッキングだ。

あとは、日本の方々には1ミリも影響を与えないことではあるけれど、個人的にちょっとショックだったのが、今シーズンから始まったドラマ『The Book Of Daniel』も打ち切りになったこと。 

この『The Book Of Daniel』は聖職者のお話で、放送開始と同時に各方面で物議をかもしていたのだ。というのも、主人公のダニエルさんは、神に仕える身というだけでなく、なんと神様そのものと会ってお話ができちゃうのだ!! このドラマの面白さは、ちょっと口(文章)では表現しきれないエキセントリックさなのだが、とにかくキリストさんが普通に一キャラクターとして登場し、ダニエルと普通に話をしているのである。宙に浮いてるとか半透明だとか、そんなありがちな表現効果は一切無し。身の丈もダニエルとほぼ同じ。白いローブを着て長髪に髭を生やした、よく宗教画で見るキリストのような出で立ちではあるのだが、妙に顔がバタ臭い。というか、俗物っぽい。ハンバーガーとケチャップで育った感じなのである。そんな彼が、モダンなキッチンでダニエルと家族の問題についてチャッティングしたりしているのだ。そうそう、言い忘れたが物語の舞台は現代のアメリカ。もちろんダニエル以外の人には彼が見えていないという設定なのだがテレビ的には丸見えなので、他の人が彼を完全にシカトしているのがなんだか気の毒な感じ。粗末な服着てるし。

そんな哀れなキリストさんの姿を見せられたクリスチャンたちは当然のごとく「これはキリストに対する侮辱だ!」と騒ぎ立て、世紀の珍ドラマ『The Book Of Daniel』は、多くのバラエティ番組に楽しいネタを提供しただけで終わってしまったのだった。

かくのごとく、長年に渡り放送されていた人気ドラマは次々と終わるし、意気揚揚とスタートしたはずのドラマも跳ねず、そして一発逆転の“神頼み”も袋叩きに合いと、まさに迷走に迷走を重ねているNBC。憂鬱な1月を終えた後に待っているの、は明るい未来なのかどうか……もはや神様ですら知る余地もない。