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Vol.24 テレビ番組に反映される、アメリカの人種に対する“ステレオタイプ

2006年10月11日
【人種の坩堝を舞台としたドラマで、人種が持つ意味合いとは?】
みなさんは、アメリカに存在する「人種」と言って、何を思い浮かべますか? 白人、黒人……それから、アジア人?

実際には、アメリカではこの地上に存在するほぼ全ての人種が仕事をし、学校に通い、買い物したり車を運転している。そして、人々の日々の暮らしを切り取るテレビの世界においては、この「人種」がしばしば論争の種になったりするのだった。また時には、ドラマ内でどのような描き方をされているかを見ることで、それぞれの人種に対する偏見や先入観を知ることもできたりする。

かつて『フレンズ』では、白人(アングロサクソン)以外の人種がほとんど登場しないということが物議の対象になったらしい。その際に番組サイドは、「批判も解るが、たとえ多くの人種がいると言っても、実際には同じ人種同士で付き合っていくもんだ」という趣旨の発言をしたという。そしてそれが“人種の坩堝のリアルな姿”であるというのが、実際にロサンゼルスに住んでみての実感だ。確かにロサンゼルスには、多くのラテンアメリカ人、アジア人、インド人、アラブ人など多種多様な人種がいるが、彼らはたいがい同じ人種同士でつるみ、時間を共有している。

また、同ドラマに登場した中国系アメリカ人の女優は、「『フレンズ』に出て以来、多くのアジア人が私のところに来て『アジア人がこれだけ大きなドラマに主要なキャラクターとして出演し、訛りもない流暢な英語を話すなんて、本当にすごいことで誇らしい』って言ってくれるの」と話していたが、裏を返せばこれは、アジア人はたとえアメリカ生まれだとしても訛った英語を話し、あくまでマイノリティだという捉え方をされているということだろう。

【ドラマの中で描かれる“日本的エッセンス”とは?】
日本人の描かれ方となると、これはもう本当に決まりきっている。

アニメ、ゴジラ、キチィちゃん、女子高生、満員電車……ほとんどこれらのキーワードのみで構成されているのだ。そしてなんとなく、日本人としては「バカにされている!」という印象を抱いてしまう。

今シーズンから始まった新ドラマ『Heros』は、世界各地で“特殊能力”に目覚めた平々凡々な人物たちが、運命に導かれるように一所に集い、地球に災厄をもたらす“悪”に立ち向かう……というプロットのドッキリビックリ、スーパーヒーロー物語だ。

その“ヒーロー”のうちの一人に、日本人のサラリーマンがいる。彼のスーパーパワーは「時空を操る」というものなのだが、彼の職場のデスクにはゴジラの人形やアニメフィギュアが飾られ、パソコンのモニターにはアニメ(超脱力系)のスクリーンセーバーが流れる。そして、社員全体でラジオ体操に興じる姿や、満員電車に揺られ通勤する様などが、日本の日常風景として描かれているのだ。

ほとんど真実に近い描写なのに、屈辱的な気分になってしまうのは何ででしょう? そして、日本人を演じている役者さん(恐らく日系アメリカ人)の日本語が、ほとんど何を言っているのか解らないのは何故でしょう?

ちなみに余談になるが、この日本の満員電車シーンというのは国際的に「ビックリ映像」としてかなり有名らしく、わたしは多くの外国人(アメリカ人のみならず、ドイツ人やブラジル人も含む)から、「電車に人が乗ろうとしているのに乗り切れず、駅員がグイグイ押し込んでいるシーンを見たことがあるんだけれど、本当にあんなことってあるの?」と聞かれるのだった。 

またアメリカでは、「日本人は外人好き」という認識も浸透しているようだ。『フルハウス』では、売れないミュージシャン(でもハンサム)が日本のみで大ブレークするという展開があったし、『フレンズ』でも、売れない俳優(でもハンサム)が日本のみでCMに採用されたというエピソードがあった。日本は、マイナーで才能はイマイチだがルックスだけはそれなり、という人たちが、予想外の大ブレークを起こす場所として確たる地位を築いている模様。

【アメリカの中でも群を抜くコスモポリタン・シティ、ロサンゼルスでの人気番組は?】
これはドラマから少し離れてしまうのだが、こちらで大人気のリアリティショーに『サバイバー』というものがある。日本でも同プロットの番組が一時放送されたことがあるのでご存知の方も多いかもしれないが、これは無人島などの過酷な環境に一定数の男女を送り込み、彼らに文字通りの「生き残りレース」をさせるというものである。この番組は今シーズンで6年目を迎えるのだが、今年はこの「生き残りレース」に「人種対抗」というエッセンスを加えてしまったために、大きな物議をかもした。つまりは、白人チーム、黒人チーム、アジア人チーム、ラテンアメリカ人チームの4グループに分けて競わせた訳である。

予想外の世間の拒絶反応におののいたのか、番組は放送わずか3回目にして、2チームずつを合併して、大きな2つのチームの対抗形式にした。番組側は「これは、番組放送前から始まっていた規定路線で、世論は関係ない」とコメントしたものの、やはりビビッタ感は否めない。

そんな訳で、アメリカ、特にアメリカ内でも多数の人種が集うニューヨークやロサンゼルスを舞台にしたテレビ番組を作成する際には、人種のバランスやその扱いは、十分に注意を払わなくてはならない重要項目なのである。

ちなみにわたしは、「ラテンアメリカ人やアジア人の多いロサンゼルスで人気のある番組は、おそらくアメリカ全土の平均と比べたとき大きな違いがあるはずだ」と思い立ち、ロサンゼルス市内の視聴者数ランキングを見てみたのだった。果たしてわたしが予想したとおり……いや、結果はこちらの予想を上回るものだった。ロサンゼルスの人気上位3番組は、スペイン語専用チャンネルで放送されているソープオペラ(昼メロ)だったのである。