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LA直送!海外ドラマやじうまレポート詳細

Vol.30 生き馬の目を抜く、アメリカのドラマ業界。この試練の時期を、幾つのドラマが生き残れるか!?

2007年4月16日
「おっと、もうすぐお気に入りのドラマが始まる時間だ! 
今日は、どんな展開になるのかな……」と胸躍らせながらテレビ前に据えたカウチに座り、用意したポテチの袋に手をかけて(嗚呼……典型的な“カウチ・ポテト”の姿がココに……)、リモコンをポチッと押すと……… 

ちっ、違う! お目当てのドラマとは異なるそれが放送されてるっ!!!と焦ることが、最近しばしばある。
「あれっ、曜日を勘違いしたっけ? 今日は何か特番がある日か? それとも……まっ、まさかキャンセルされちゃったの!!??」

と一通り冷や汗をかききった後に、「ああ、そうか。今はミッドシーズンかぁ」と、理由に思い当たって一安心、といった具合だ。

そう、わたしが毎週欠かさず見ている新ドラマ『Heroes』も『30 Rock』(このドラマについては、次回あたりで書く予定)も、実は今は“ミッドシーズン”中のために、しばし休止中、なのである。ちょっと寂しいのである。

そこで今回は、このミッドシーズンを中心に、アメリカのドラマ放送の仕組みについてお話したいと思う。

【生き残りか、打ち切りか……!? 運命が決する審判の日】
これまで何度かこのコラム内で、「○○はキャンセルされた」「□□は延長が決まった」という記述をしてきたことかと思う。これ、始まった時点で放送回数が決まっている日本のドラマの感覚からすれば、ちょっと不思議に響くことだろう。このアメリカのドラマ放送のサイクルは、日本で言えばアニメのそれに近いかもしれない。日本もアメリカも、テレビのシーズンは3ヶ月(約13週)か半年(約24週)を一単位をしており、視聴率の芳しくないコンテンツは、その区切りで打ち切られてしまったりする。余談になるが、かつて日本のアニメでキャンセルの憂き目に会いながら、その後伝説的作品に成長したものとして、『機動戦士ガンダム』がある(『ガンダム』の場合は、当初52話の予定が43話になった)。

アメリカのドラマの場合は、通常、半年がシーズンの一単位とされ、その1シーズンを前半部と後半部に分ける中間点の4~6週間が“ミッドシーズン”と呼ばれる。つまりは、まずはミッドシーズンに至るまでの13週間というのが、ドラマにとり大きな試金石になるのだ。そして、この世に流されたドラマの中で、この分水嶺を越えることなく座礁したドラマの何と多いことか? ミッドシーズンとは、1シーズンを航海し切れなかった座礁ドラマたちの墓場とも言えるのだ。 

そう思って注意深く見てみると、現在は放送から数年たち、今や揺るぎない人気を誇るドラマたちですら、最初のシーズンの13週目あたりというのは、そこでドラマがキャンセルされることも考慮し、それなりの区切りになっていることが多いもの。例えば『24』では、ジャックがテロリストにより拉致された妻と娘を救い出し、事件に一応の解決を見たのが13話。仮にここでキャンセルされても、なんとか大団円に持っていける展開になっていたのだ。

【虎視眈々と出番を伺う、ドラマ交代要員たち】
さて、ここまで読んだところで、皆さんの頭にふと疑問が思い浮かんだのではないだろうか?

「じゃあ、ドラマがキャンセルされた場合、その後の3ヶ月ほどはどうなるの?」と。そう、不評ドラマをキャンセルしたところで、その後の放送枠に穴を開けてしまっては一大事だ。そこで用意されているのが、雨傘番組的なドラマ予備軍であり、彼らは“ミッドシーズン・リプレイスメント”と呼ばれる。日本語にすれば「交代要員」と言ったところだろうか。

彼ら「交代要員」の出番としては、大きく分けて
(1)番組のキャンセルが正式に決定したので、その後の空白を埋めるため
(2)当確線上のドラマに代わり、ミッドシーズン中に放送される
(3)視聴者のリアクションを見るため、「お試し期間」的にミッドシーズン中に放送される
の3パターンがある。

(1)の場合は、何はともあれ、シーズンの後半戦をそのまま任されることになる。もしここで好評なら、そのまま翌シーズンも放送される可能性大、という訳だ。

(2)の場合は、ミッドシーズン放送中に好評ならば、その前に放送されていたドラマに取って代わり、そのまま放送が継続されるという按配。 

(3)は、あくまでお試し期間として5~6週のみ放送される。もちろんこの場合も、そこで好評なら翌シーズンから正式にドラマのラインナップに加わる、という寸法である。

実は、この“ミッドシーズン・リプレイスメント”としてドラマ界メジャーデビューを果たし、そのまま一軍に定着した番組例も少なくない。最近では、現在全米No.1人気ドラマと言っても過言でない『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』が、その最たる成功例だろう。また、昨年のエミー受賞作である『オフィス』や、今年放送10年目を迎えるアニメ『シンプソンズ』も、元は“ミッドシーズン・リプレイスメント”として世に放たれたクチだ。そうそう、放送が終了した今もカルト的な人気を誇る『炎のテキサスレンジャー』(1993~2001年)の存在も忘れてはいけない。

という訳で、現在“ミッドターム・リプレイスメント”が流されてまくっているアメリカのドラマ界は、まさに受験シーズン真っ只中、といった様相を呈している。4月に入り、晴れてシーズン後半戦への門出を迎えられるのは、どのドラマか!?

ミッドシーズンが終わり、シーズン後半部が始まるのは4月上旬のこと。その頃を迎え、「おっと、もうすぐお気に入りのドラマが始まる時間だ! 今日は、どんな展開になるのかな……」と胸躍らせながらテレビ前に据えたカウチに座り、用意したポテチの袋に手をかけて、リモコンをポチッと押したその時そこに映るのは、無事に帰還を果たした先達ドラマの姿か、はたまた、好評のままにその場を奪った「交代要員」ドラマなのか!? 「サクラ サク(あるいはチル)」の電報が届く日は、もうそこまで迫っている。