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Vol.31 今シーズン最大のコメディ番組はコレ! ワタクシ超イチオシのドラマ『30 Rock』とは!?

2007年5月24日
「サクラ サク」

先月のコラムで「ミッドシーズン・リプレイスメント」の話をしたが、その審判の時は過ぎ、そして今またテレビ界には、平穏な日々が戻ってきている。

わたしが楽しんでいた、今シーズンからの新ドラマ『30 Rock』は、座礁するや否やの分水嶺に立たされていた半難破船だった。だからこそミッドシーズン中には、今後も無事に放送が続くのかどうか、その知らせを、『幸福の黄色いハンカチ』の高倉健のような気持ちで待っていたものだったのだ。

果たして結果は、これまた『幸福の黄色いハンカチ』同様に吉報! カウチに腰掛け、安穏としながらドラマを見られる幸福をかみ締める、今日この頃なのである。

ということで今回は、完全にわたくしめの好みに走って、この『30 Rock』の紹介をさせて頂きたい。

『Saturday Night Live』を下敷きにした、舞台裏コメディドラマ
まず同ドラマのタイトルだが、これはニューヨークにあるNBCのスタジオ名および住所に由来する。そのことからも解るとおり、ドラマの舞台はNBCスタジオそのもの。テレビ業界に従事する人々とその職場を題材にした、舞台裏的ドラマである。

その中でもこのドラマは、コメディ番組を作っている人々を登場人物に据えている。主人公は、人気コメディ番組の女性ヘッド・ライター(脚本家)。ニューヨークで暮らすキャリア・ウーマン、という誰もが憧れるような肩書きを有していながらも、その実情は、社会不適応者ギリギリのスタッフや個性的な出演者たちを部下に持ち、予測不能な現場を不規則なスケジュールでサバイバルする日々。さらには、本人もテレビやコメディが好きな、いわゆる“オタク体質”な為、オシャレや社交界などには無関心。ある意味、かつての人気ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティズ』のアンチテーゼ的な人物である。

そして実は、この主人公、リズを演じるティナ・フェイなる人物は、アメリカの人気コメディ番組『Saturday Night Live』のヘッド・ライターを務めていた、正真正銘のトップ・コメディ・ライターなのだ。『Saturday Night Live』(以下SNL)とは、日本でいえばかつての『ドリフ』や『ひょうきん族』的なコント番組。自ら同番組のコントにも出演していたティナ・フェイは、今年で30周年を迎えるこの長寿番組の歴史で初の女性ヘッド・ライターに選ばれた才媛で、つまりは『30 Rock』の主人公であるリズとは、ティナ・フェイその人がモデルと言うことができるのだ。

独善的で居丈高な上司を演じるのは、この手の役を演じることにかけて右に出る物は居ない、アレック・ボールドウィン
さて、その『30 Rock』だが、忙しいながらも活気に満ちた日々を送っていたリズとそのスタッフたちの前に、新しい上司が現れるところから物語は始まる。その新上司、ジャックは、元は家電会社の社長だった人物で、テレビのことはてんで門外漢。だが、自信家で独善的なジャックはテレビ番組の内容にまであれやこれやと口を出し、リズをはじめとするスタッフたちは振り回されて大変な目に会いはじめる……というのが、プロットの根幹だ。

この、ドラマ内での超重要人物、ジャックを演じるのが、アレック・ボールドウィン。『カジノ』や『ディパーテッド』にも出演していた現役映画俳優で、アメリカでは、彼のような映画畑の俳優がテレビドラマにレギュラー出演するのは、極めて異例なことだ。

で、わたしはこのアレック演じるジャックが、もう大好きなのである! 昔はいざ知らず、最近ではアレック・ボールドウィンが演じる人物像というのは、大概決まりきっている。容貌魁偉で大物感が漂う、初老のジェントルマン。物腰や所作は洗練されているが、何を考えているのか、次にどのような行動に出るのかイマイチ読めない。笑顔のときも決して笑っていないその目には、どこか猟奇の色が光る……そんなキャラクターばかりなのである。そしてそれはアレック本人の雰囲気そのままなので、ある意味、彼は誰を演じてもハマリ役。演じる人物のキャラクター名は異なるものの、本質は常に、「アレック・ボールドウィン役・アレック・ボールドウィン」という感じなのだ。

と、そんな風に常々思っていたのだが、そのアレック、最近では、11歳の愛娘に対して「オマエは思慮の足りない、いつも問題を起こしてばかりのブタだ!」などと電話で怒鳴り散らしている音声がネットで出回り、世間の親御さんから集中砲火を浴びている真っ最中。あのドラマや映画でのキレすぎる演技は、やっぱり“素”だったのである。

というように、先述のティナ・フェイしかりアレック・ボールドウィンしかり、このドラマに出演している役者さんたちは、ある意味、自分そのものを演じているわけである。基本は、素なのである。

ドラマ自体は冒頭にも述べた通り、テレビ番組製作現場という、それ自体が既にコメディのような状況を舞台にしたシチュエーション・コメディ(シットコム)。だが出演者たちがそんな按配なので、荒唐無稽な内容でありながらも、場を支配する空気はどこまでもマジでリアル。また、独創的なアイディアは持っているのだが社会性に欠けるスタッフ(自分も含む)や、自信家で行動力ばかりはムダにある独断的な上司など、その環境がなんなく自分がかつて属していた会社に近いこともあり、「あ~、あるある、こういうこと」と、けっこう共感しながら見られる部分もあったりするのだった。

『ER』のような病院ドラマや『CSI』のような犯罪モノに出演している役者さんたちが、トークショーで「僕は科学にうといから、ドラマ内で自分がしゃべってるセリフの意味なんてさっぱり解らない」なんて話しているのを見るにつけ興ざめしてしまう自分だが、この『30 Rock』に限り、そんなことはありえない。本物のみが持ちえる、暑苦しいまでの迫力と逼迫間で、これからも視聴者(主にわたし)を楽しませてほしい。