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Vol.4 犯罪都市の名はダテじゃない!? 空前絶後の犯罪ドラマブームを語る

2004年11月1日
「拳銃所持を認めていいのか?」とか「貧富の差が犯罪を誘発するのだ!」とか、マジな話をし出すとちょっと重くなっちゃうので、とりあえず実際の犯罪問題は脇に置いといてTVの話をすると、今アメリカのテレビ界は、空前の“犯罪ブーム”にある。

例えば、10月初旬のテレビ視聴者数を見てみても、その傾向は顕著。1位は本家『CSI』、2位が『Without a Trace』、そして3位は『CSI: Miami』と、犯罪モノがトップ3を独占(しかも、テレビ局は全てCBS)! そしてこのテレビ界犯罪ブームを支えているのが、1位と3位を獲得した『CSI』であることは言うまでもないでしょう。今年9月からスタートした『CSI』シリーズの新スピンオフ『CSI:NY』も、コンスタントに10位以内に顔を出す好調っぷり。さらになんと、再放送ですら10位以内に入ることもあるのだから、放送局のCBS的には笑いが止まらないだろう。

本当は、ABCが放送するはずだったドル箱ドラマ
とまあ、今をトキメク『CSI』だが、この成功を一番苦々しく思っているのは、CBSのライバルであるABC。何しろこのドル箱コンテンツ、本来ならABCが手にするはずだったのだ。ところが1999年にプロット版を見たABCは「あまりに内容が小難しすぎて、大衆受けしない」として、放映権を放棄。かくして行くあてのなくなったこの番組を素早くCBSが拾い上げ、金曜日のゴールンデン枠で放送したところ、これが25万人の視聴者を得る大ヒット作品に成長。気をよくしたCBSは、『Friends』や『ER』などの超人気ドラマに真っ向勝負を挑むべく、翌年の2000年から放送日を木曜日に移行。それでも人気は衰えることなく視聴者数を維持し続け、『Friends』が終わった現在では、押しも押されもせぬドラマ№1の地位を得たわけだ。

CSI人気の背景に、本物の事件あり!?
さてさて、ABCのお偉いさん方は、『CSI』の“科学捜査”というテーマを「解りづらい、爽快感に欠ける」として却下したわけだが、実はアメリカでは、このちょっと難解でマニアックすぎる感のする科学捜査を受け入れる土壌が、放送開始前から既に出来上がっていたのだ。というのも、こっちでは『Forensic Science』など、法医学や科学捜査をテーマにしたレギュラードキュメンタリー番組が山ほどあるからだ。

これらドキュメンタリー番組の構成は大概・犯罪が勃発→証拠はほとんどなく操作は難航→現場に残っていたホンの僅かな痕跡(糸くずだとか小石だとか、チューインガム)を基に科学捜査を結構→犯人逮捕→「捜査員の情熱と科学捜査の力は、如何なる犯罪をも見逃さないのだ!!」

という、やや劇画がかった勧善懲悪的なものだが、それ故に視聴者に「カッコイイ!!」と思わせる力は大きい。 さらに皮肉なことに、実際にアメリカで起きている犯罪が、これら「科学捜査の力」を証明し、一般視聴者に「マジで科学捜査ってすごいんだ!!」と思わせるのに一役買っている。

例をひとつ挙げると、現在アメリカで世間の耳目を集めている事件に、「スコット、妻殺し疑惑」なるものがある。2年前のクリスマスイブに妊娠中の女性が行方不明になり、夫であるスコットが「妻を見つけてくれっ」と涙ながらにテレビなどで訴え続けていたが、その3ヵ月後に容疑者として検挙されたのは他でもないスコット。遺体は4ヶ月間海を漂った末に発見されたが、極めて厳しい状況にも関わらず身元を割り出せたのは、DNA鑑定のおかげだった。さらに、4ヶ月間の海流や天候など様々な要因を科学的に解析し、遺体の発見現場から犯罪現場を逆算したりと、科学捜査が容疑者逮捕に多きな役割を果たしたのだから、“科学捜査株”はさらに上昇。

ちょっと予断になるけれど、この事件が注目されている最大の理由は、恐らく容疑者のスコットが、ベン・アフレック似の美男子だということだろう。何故か裁判のときもスーツをビッと着こなし、ときにニヒルな笑みを浮かべる……そんな彼の姿を見たときなどは、不謹慎なことは重々承知しながらも思わず「カッコイイ」と思ってしまう。

CSI人気が、本物の捜査員を困らす理由……
話を元に戻しましょう。
数字的にもとにかく絶好調の『CSI』だが、その人気の凄まじさを最も端的に現す現象として、近年の「科学捜査学科を希望する学生の急上昇」がある。

昨年、LA内の科学捜査関連の学科を持つ大学には、規定枠の10倍近くの希望者が殺到。さらには、従来これらの学科の希望者の8割ほどは男子生徒だったのに、近年では女生徒の希望者の方が多いくらいだと言うから、いかに科学捜査が一般的に浸透しているかということが伺える。

このような現象を受け、「実際の科学捜査員たちは鼻高々!『CSI』様さま!!」と思っているかと思いきや、これがそうでもなく、むしろ苦々しく思うことすらあるというからこれまた皮肉。というのも、ドラマの影響のせいか、最近では「不条理極まりない期待や注文を受ける」のだという。つまり検察側から「科学捜査の力で、証拠はすぐに見つかるんだろ? 早くなんか出せよ!!」とプレッシャーを掛けられるらしいのだ。 

ドラマでは、放送時間やら視聴者を飽きさせないやらの“テレビ界都合”により、DNA鑑定も指紋照合も、ものの数分で終わる。でももちろん、現実世界ではそうはいかない。捜査員たちは睡眠時間を削り、家族との団らんを犠牲にして研究や解析に没頭し、それでも証拠が出揃うまでに数年かかることもざら。だが『CSI』は、そんなリアル捜査員の苦労や情熱に対する正当評価をあっさりと崩壊させてしまう。恐るべきは、ドラマの力なり。 

それにしても「せめて検察官はドラマに影響されたりするなよな~」と思うのは、わたしだけ?